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いい国つくろう!  作者: みのまむし
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其之九 萌国と対応

『つまり対応方法としてはね』と言いながら僕は副官を見る。


「対応方法

まず戦うか降伏するかの二択だよね。

んで、戦うならだけど……。

どこまでやるのかって話にもなるんだなぁ。


1ー帝国と連合諸国との全面戦争に踏み切る。最終目標は帝国の首都を制圧、帝国皇帝の首を獲り連合により帝国領を占領する。


2ー同じく帝国相手に攻勢に踏み切る。流国を占領した流国占領軍(推定一万~二万)のいる流国へ行きこれを撃破、流国の奪還を目標にする。


3ー帝国の侵攻は流国占領のみを目的としていたと判断、流国の占領を黙認する。連合諸国は城に籠ってこちらからは一切手を出さない、帝国が新たに連合のいずれかに攻め込んできた場合のみ、連合を挙げて撃退する。


の三つかな。

……とまあこのくらいで僕達がとれる道ってのは意外と少ないんだ。


いま必死にウチの外交大臣が帝国との和平交渉、というか奴らが何処まで連合を潰しに来るのか探りながら話を進めてるけど、問題は帝国が連合すべてに戦争を仕掛けてくるのか、それとも流国だけに向けた戦争で流国を占領してもう満足したのか、って所かな。


帝国が連合すべてを敵にするつもりなら、次はこの萌国の可能性が高いだろうね。流国無き今、連合の交通の要所であるこの萌国だからだ、さらに言えば兵力も萌国は連合の中で弱小もいいところだしね」


一息に副官に向かって言葉を紡ぐ。

彼女が遊学に出ていた一年でこの国の状況も大分変わった、伝えておいて損は無いだろう。

僕が語った内容を彼女が脳に叩き込む間に、脇にあった煙管に火を付け紫煙を吐き出す。


「今すぐ連合国主会議をするべきじゃないか?」


副官の答えは至極真っ当なものだった。

『連合国主会議』。その名の通り連合の国主が数年に一回集まり連合の方針を決定する会議の事だ。

だが今回のような危急の時には連合に属する国主が呼びかける事により急遽開催されることもある。

過去に臨時開催されたのはいつだったか……。

確か旧帝国が大規模侵攻してきた四、五十年前だったように思う。


「……なんで帝国は新たに連合のいずれかの国を攻めないんだろう?」


副官の答えの代わりに出たのはそんな質問。

副官はそんな突然の質問に怒る事もなくしばしの沈黙の後に、ゆっくりと答えた。


「試してるんじゃないか……。

『連合』という組織を。

それに属する各国の『国主』を。

『盟約』という連合を紡ぐ約定が本当に今も機能してるのかを」

 

試すか……。

流石、我が副官。面白い事を考える。

僕はてっきり、流国占領で予定以上に戦力を消耗したから回復を図っているか、願望込みで流国占領でもう満足したと思ってたけど……。

さてさて。

試される側としてはどうしようかね。

流国占領を黙認して舐められるのも癪だし、かと言って戦うのはいいが勝算は立たない。


「話を戻そうか。連合国主会議はまだどこの国も開催を宣言していない、連合国主会議は開催を呼びかけた国に各国の国主を招いて開催されるからね。流国が占領されてどこも泡喰って防衛戦力を整えるのに精一杯なのにそんな事やっている余裕は何処も無いはずだ。

かく言うウチもだ、流国が落とされて内が帝国と新たに面してしまった。つい先日までいた頼りないお隣の友人が、一晩したら、あら不思議!お隣さんには怖い山賊さんが住んでいましたとさ。って感じだよ!砦の補修もあるし、新しく徴兵した兵士の訓練もある。これに会議開催の準備して連合全ての国と日程調整やって、訪れた各国国主とその護衛の宿舎手配までやってたら僕とウチの内政方達がぶっ倒れる」


大分フザケタ口調だが、これは久しぶりに再会した副官だからだ。

僕も含め、城にいる人間は大分、殺気立っている。

今、連合中を悩ませているのは帝国だけではない。

その悩みの種はなんと『逃げ出した流国の民』だ。

……流国から逃げた民たちが各国で帝国の恐ろしさを口々に語る。

本来ならばこの時点で噂を流すなと取り締まればよかったのだが……いや無理だったろうな。

人の噂を止める手段なんて、その口を開く人間を殺す事でしか噂を止める事が出来ないのだから。

そして同じ連合の民である者を、片っ端から切り捨てる事なぞできはしないのだから。


結果、その語り草は、各国の民に不安と恐怖を与え、伝染した。

町から笑顔と余裕が失われギスギスした不協和音が流れ始め、その音は支配層である兵士、侍達にも伝わる。

同時に、着の身着のまま逃げ出した流国の民がひもじさから、軽犯罪に走り元いた各連合の民と問題を起こし始め、治安が悪化。

兵士は対応に追われ帝国への不安もあり流国の民に苛烈な取り締まりをついしてしまう。

一日、一日毎にこの国の全員の余裕が奪われていた。

余裕が無くなれば失敗も増え、失敗が重なればますます余裕が無くなって、失敗も更に増加する。

なんという悪循環!

おかげで僕も眉間の皺が大分増えた様に思う、全然嬉しくないがね!


「なぜ直ぐに流国を取り戻さない……連合諸国は流国占領を認めたのか?先の選択の『3』を選んだのか?」


副官にも不安が伝染したのか眉間に皺が寄っている。

うん、恐い。

筋肉質の日焼けした大柄な女が眉間に皺よせて目の前にいたら逃げたくなるね。

ま、それでも僕は副官が好きだから逃げないけどね。 



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