其之十三 萌国国主と流国姫
『萌国・城内応接間にて 流国姫との会話』
この連合風の城には珍しく帝国風の応接間を真似ている。
床は畳ではなく板張りで、その上に赤を基調とした絨毯を敷き、中央にテーブルを配置。それを左右から挟むように帝国風の椅子が置かれる。
テーブルの上にはギヤマンでできたグラスと商国産の果実酒が置かれ、鮮やかな色合いを発していた。
その応接間の一室で僕は彼女と向き合っている。
『良く考えてみてほしい』
彼女を見ながらそう思った。
帝国にとって攻め滅ぼした旧支配者の一族がどれだけ今後の統治に邪魔になるかを。
また、逆にどこまで利用できるのかを。
まず、旧流国の土地を支配するのにどうするか?
新しい指揮官なり領主を派遣し、その下に兵士を配備して民を監視するだろう。
当然ながら占領地の民が喜んで従って、税を納めると思っているならそいつの頭はスカスカなカステラみたいな脳が詰まっているのだ。
流国の兵は殆どが死に絶えたが、すべての兵が死んだわけではないだろう。
在野に逃げて雌伏の時を待つ者、民を纏めて不正規戦を目論見、帝国に抵抗するもの。
それらが完全に落ち着くのはかなりの時間が掛かる。
そして、彼らの掲げる『目的』はこの姫をもう一度流国のあの城に帰らせ、彼らの国を復活させる事だ。
ゆえに彼ら、流国の生き残りにとって、目的であり、希望であり、最後の命綱なのだ。
彼女が死ねば彼らは戦う意味を保てなくなる。
その面では帝国にとって彼女は『旧支配体制の最後の危険人物』となるわけである。
逆に、利用する面ではどうだろうか?
彼女は女だ、それだけで意味はある。
まず、この姫をやや強引にでも帝国に『招き』、皇帝や重臣の側室にして子を産ませる。
その子を名目上の領主に据えて、お飾りにして……実際はその側近である帝国の人間が取る。
流国の抵抗勢力も彼女の血が入っている者が後を継ぐのならば、かなりの数が恭順を示すだろう。
容易く想像できる未来だ。
そう思考を巡らせる僕に声を掛けたのは、当然ながか目の前の姫さんだ。
「久しぶりですね」
流国の姫様は長旅で頬は少々こけていたが、その美しさは損なわれる事は無かった。
流国からここに着くまでにかなりの苦労があったらしく、我が城に到着後、そのあまりの身なりの酷さに侍女が先に湯あみをさせたとの事だ。
愛らしい人懐っこい大粒の瞳、桃色の柔らかそうな唇、腰まで伸ばされた黒くも艶やかな髪。
湯上り後のせいか、少し頬が上気しているように見える。
「ああ久しぶりだね。姫さん、いや流石にこの呼び方はお互い立場が在るし、まずいかな」
僕は苦笑して笑顔を造っている、少なくともその努力はしている、僕はそう思っている。
「いえ、それで構いません。私も貴方に流国王女と堅苦しく呼ばれたくありませんし」
「そうか……、そうだね」
僕はテーブルの上の酒を開けると、『飲むかい?』と彼女に促すと同時に僕は返事を聞く前にさっさと二人分注いでしまう。
「商国からの直輸入品だ、値打ちものだぜ」
「……いただきます」
僕の注いだグラスを、彼女は一気に傾け中身を臓腑に送り込む、彼女はにっと笑い……激しくむせた。
僕に言わせれば無理して大人ぶっているのが丸見えでそれが微笑ましい。
「高い酒なんだからもっと大事に飲めよ」
「ふん、酒なんか腹にはいればみな同じ、大切なのは酒に感謝して飲むことでしょう」
そう言って勝手にグラスに酒を注ぐ。
「くくっ、そう、それだよ。それこそ姫さんだ、三年前の連合の花見の席で君にぶん殴られたのを未だに覚えてるよ」
少し楽しげに笑う僕の声は自然と大きくなった。
「初対面の人間にいきなりセクハラかます馬鹿には良い薬でしょう」
「そうだった、そうだった。やたらかわいい酔っぱらいがいて商売女だと勘違いして手を出そうとしたんだ。あの時はお互いに取っ組み合いのケンカになったんだっけ、各国の首脳達は皆真っ青な顔してたよな。
あれは本当に楽しかった……」
「あの時にはお互いにまだ若かっですし、それにあの時のあなたはまだ国主ではなかった」
「そう、そしてあの時の姫さんは『まだ一国の姫』だった」
僕は言葉に明確な棘を植え付けた。
その言葉に……ピクリと彼女のグラスを持つ手が振るえた。
「……私はまだ流国を指揮する一族の一員ですよ」
僕はそのままグラスを眺め、彼女には目を合わせずに口を開く。
「正直に言おう、帝国は姫さんを血眼で捜している。
占領地をうまく治めるには旧支配者を利用した方が圧倒的に楽だからね。
そして連合内で前から帝国と国境が接している武国、老国は帝国との戦に慣れてるからまだいいかもしれない。
だけど流国無き今、新たに国境が面してしまった我が萌国では姫さんを匿ってまで帝国と正面きって戦う気はない……という意見までが出る程切羽詰っている」
そこまで聞いて姫さんの目が驚いたように見開かれる。
「同じ連合である我が国を見捨てると言うのですか」
彼女の音量が段々下がっていく。
「……もはや流国は存在しないんだ、見捨てるんじゃないよ。病人は施せば助けることはできるかもしれないが、死者はどんなに施しても生き返らない。ならば施すだけで無駄というものさ」
天井を見ながらぼやくように、僕は感情をできる限り殺して淡々と事実を告げた。
「まだ私がいます、滅ぼさせるものですか。決して……」
彼女が持つグラスが震える、国土を蹂躙した帝国への憎しみか、それとも力を貸さない僕への怒りか、はたまた自分の過酷な未来を想像したのだろうか?
「ならせめて、流国を取り返す為の兵を貸して下さい」
「取り返す?こちらから仕掛けるってことか?この国の兵を使い、君の指揮で?」
溜め息混じりに僕は呆れた。
萌国がこの姫様に兵を貸してその兵が帝国領になった旧流国領に攻め込めば名称は流国兵だが中身は萌国兵なのは一目了然。
その瞬間、帝国は理由を見つけ嬉々としてこの国に攻め込んでくるだろう。
このままでも攻め込んでくる危険は十分にあるのだが、大事なのは開戦の時期を遅らせて、こちらから仕掛ける事だ。
大軍を前に、先手を渡し受け身に回っても碌な事が無い。
「じゃあ聞くが、どうして流国は先に戦争を仕掛けなかったんだ?帝国は戦争に次ぐ戦争、征服に次ぐ征服で肥大化した軍事国家だ。ましてや近年、大規模な軍事演習や武器の購入をしていたのは知っていたはずだ。なんで攻められる前に攻めなかったんだ?」
そう聞いて姫さんの表情が僅かに曇る。
「あの国に攻め込んで勝てるわけがない、藪をつついて蛇を出すよりは蛇に怯えながらも藪には近づかないようにしていたのだろ?そして藪から蛇が出て来ない事に賭けたんだろう?」
僕は別に責めているわけじゃない。逆の立場になれば僕も同じ手段を取っただろうから。
「結局、姫さんたちは賭けに負けたのさ、気の毒だが流国を取り戻してやる義理も、利益もないしな」
僕の中で彼女の評価が一段下げられた。
その姿はおかしを取り上げられ今にも泣きそうな子供のようだ。
この物知らずな姫さんは少し教育しないと駄目だ。
流国国主は彼女に何も教えなかったのだろうか?
「……連合は外敵に対して団結して事にあたると『盟約』で決まっているはず、今回は明らかに盟約が適応される事例のはずでしょう」
彼女はキッと睨んでくる、憎悪、怒り、そんな感情が込められていた。
……がその瞳には『自信』に欠けている。
「否定はしないよ、だけど言いたくはないが言わせてもらう」
僕はテーブルを人差し指でトンッと叩いた。
彼女がこれから聞くであろう言葉に心構えをしろというニュアンスだ。
正しく伝わったのか彼女の体が身じろぎして僕の顔ではなくテーブルの僕の指を見る。
「今回の帝国の襲来を前もって察知できなかったのは仕方ないにしても、この短期間での敗北は君達の責任だ。そして君達があと一カ月支えてくれれば、武国を盟主として連合諸国の援軍を送れただろう、そして僕もこの国の兵を率いて、それらに加わって参加していただろう」
それに僕はポツリと、『今の萌国じゃ大した兵力は出せなかったろうけど』と付け加える。
「……それは我が兵が弱かったと言いたいのですか」
僕は彼女の顔を見ようと思ったが彼女は唇を噛んで下を向いていて表情は見えない。
「いやそうじゃない、そうじゃないさ」
僕は下を向いている彼女の顎に人差し指をかけると無理やり上を向かせる、そして彼女の目を見る。
少し涙が滲んでいる、そんなものを見せられたらもっとイジメたくなるじゃないか。
僕はこんなに性格が悪かっただろうか?
そんな僕を左腕が嬉しそうに脈打つような気がした。
「兵が弱かったんじゃない、きっと流国兵は自分自身の国を守るために必死に戦ったんだろう、なのに負けたんだ」
僕は片側だけの唇を器用に釣り上げ笑みを作る。
「指揮をした君達が弱かったのさ、無能だったのさ。
一番の無能をさらしたのは戦死した君の兄だな。
一か月しか持たずに本拠地の城を落とされるなんて連合の面汚し以外の何物でもない」
言葉の暴力というやつは使うのは簡単だ、受け取る相手の事を思いやらないで口を動かせばいい。考えなければ意図も簡単に言葉が浮かぶ。
しばらく言葉の意味が解らずに固まった姫さんだがすぐに表情に敵意が現れる。
憎悪と殺意、久しぶりに誰かに感情をぶつけられた。それがこう言った負の感情だなんて……。
『最高』だ!
背筋に氷があてられたようにゾクゾクする。こんな国主なんて仕事やっているとおべっか使う奴ばっかりで心の底を見せる奴なんていやしない。
「最後まで勇敢に戦った兄様に!ましてや死人に鞭を打つなど……」
「あははは、負け犬に施しなんて必要ないさ。
負け犬に必要なのは追いつめて止めを刺すこと。
君の兄は勇敢に戦ったかもしれないが結果として連合の歴史に残る惨敗を期した無能な国主、そして君は闘争に負けて追い出された土地を取り返そうとする野良犬さ!君が来たおかげでこの国の上層部は帝国に攻め込ませる口実を与えたと戦々恐々さ!僕に言わせれば君は厄病神以外の何物でもない、本当ならすぐ帝国に君を差し出して敵対しないと表明したいところさ。
僕がそれをしないのはただ一つ、それをしたらこの萌国が今度は連合諸国に裏切り者として潰されるからさ!」
僕は彼女の目を真正面に見据えながら言う、他人に対してここまで言うのは初めてかもしれない。
「姫さんはさっきこの国の兵を貸せって言ってたけどさぁ……。君は理解しているか怪しいから言っとく。それは君の勝算も無い我がままに付き合ってうちの国の兵士に死んでくれって言ってるんだぜ」
彼女の憎悪の視線を一身に受け、それでも僕は口を動かす。
僕には多数の悪名があるが、それらが示す通り相手の感情を逆なでするのは得意技だ。
「君は『兄様の仇を討つ』という行為さえできれば、その道半ばで力尽きても満足で死んでもいいとか思ってるかもしれないけど、うちの兵にしてみれば迷惑、厄介以外の何物でもないよ。
今の君は帝国という狼を呼び寄せてしまう哀れな羊、いや……厄介な死神さ。
今の君には何の価値もない……、いや価値はあるか、女としての価値はね。商国にでも行ったらどうだい?そこで血筋目当ての金持ちの男でも捉まえてそこそこ楽しく生きたらど……」
『どうだい?』その言葉は最後まで続かなかった、彼女の光速に近い強烈な平手打ちが僕に対しての演説料だった。
頬がヒリヒリする。
「しばらく会わないこの数年でとことん下種な男になり下がりましたね!少なくとも当時のあなたは乱暴者ではあったけど、ここまで……ここまで腐ってはいなかった!……私の『婚約者』であった頃のあなたはこんな男ではなかった!!」
目からは大粒の涙がこぼれ、その唇は怒りに震えている、顔色は予想通り真っ赤だ。
軽蔑しただろうか?
軽蔑しただろうな……。
僕だって……。
「……」
僕は無言で彼女の前に立つと彼女がしたように、彼女の顔に平手打ちをかました。
無論手加減なんてしていない、男の力で顔に衝撃を受けて彼女はよろめき頬を抑えるが……、それでも立ったままこちらを睨んでいた。
彼女の口から赤い血が垂れていた。
「殴るのも、はたくのも簡単だ。
でもそれをしたらやり返される覚悟はしておけよ。
僕は相手が殴りかかって来るのに女子供だからと言って黙って殴られてやるほど人間が出来ていないし、これからもなるつもりもない。
更にここは非公式な場だからいいが、公式の場でこんな振る舞いをしたら君は生きてこの国を出れないよ?」
我が個人副官は空気の読めない、言いたいことを率直に言う女だし、僕もそれを望んでいるが公式の場、評決での重臣が集まる場合には礼儀と敬語を使うくらいの事はしている。
「あなたは国を無くし、家族を無くし、身一つの私に対して何の憐れみも……」
そこまで言いかけて彼女はやめたようだ。
彼女のプライドが許さなかったのだろう。
僕にはよくわかった。
僕も昔、やろうとしたことがある。
今彼女は……僕に『同情を買おう』としたのだ。
すべてを無くし強大な敵国に追われる哀れな少女、それだけで大衆は憐れみ、慈しみ、共感し、同情するだろう。そこにある程度の見てくれの良さも加われば効果は増大。
涙ながらに帝国の悪評を列挙し、流国の窮地と奪還する事の正当性を説く彼女。
話を聞いた民衆は、誰もがこの哀れな姫様を助ける為に、おとぎ話のような悪鬼羅刹な帝国に立ち向かう……侍や英雄のように自己陶酔して徴兵に応じるかもしれない。
もしほとんどの民衆が戦を望んだ時、僕は民を敵に回して開戦熱を押さえる事ができるだろうか。
そう考えると僕にとって望まぬ戦を呼び込む魔女とも言えるのだが……。
帝国相手に無心で決断できるほど僕は楽天家ではない。
まぁ、僕の協力が得にくいこの場面では有効な切り札の一つとも言える。だけどそれをすれば大衆に、そして相手に媚びへつらうと考えてしまったのだろう。
同じ連合とはいえ、関係ない民を巻き込む事は流石に良心も痛んだのだろう。
そういった幼さは、気高さは、僕は嫌いではない。嫌いではないが……。
将来に彼女はこのまま成長すればプライドの為に判断を誤ることがなければいいけどな、などと考えた。
「『何の憐れみも』なんだい?続きは?言いたくないなら僕が言おうか。『何の憐れみもわかないのですか』かい?『敵に追われて困っている可愛い私を助けるなんてあたりまえでしょ、可愛い女の子が涙を流しているんだからそれを止める為に、命をかけて助けてよ』」
「やめて……」
彼女が耳を塞ぐ。
「『愛する兄様を失った可哀想なお姫様の私の為に』」
「やめて……」
彼女がうずくまる。
「『悪いのは帝国だけ、兄様も私も悪くない。可哀想な私の為に』」
「やめてよ……」
堪え切れず彼女の目から涙か溢れる。
「『連合の兵士はみんな、みんな、可哀想な流国を取り返す為に戦って死ぬの。可哀想な私の為に』」
「やめてぇ!!」
彼女が絶叫した。
「……最後にはっきりと言っておいてやる。僕は『この国』の国主だ。
国主の役目は己の国の民の安堵と領地の繁栄。これは古今東西すべての国での共通事項であり覆せない大前提だ。
同じ連合の同盟国とはいえもはや滅んだ国の為に、まして、何の利益にもならない女の為に使うべき兵は無い。
兵はおもちゃではないし、使うつもりも無い。
帝国がこの国攻めてくるのなら僕は民の為に、泣き叫び、恐怖に震えながらも先陣を走ろう。
勝利の時には一人でも多くの首を獲り、一切の慈悲もなく追撃しよう、一人でも多くの敵を殺そう。
敗戦の時には殿として一人でも多くの味方を逃がす為に血を流そう。
だがな流国の姫よ……。
お前は僕の『守るべき者』の中に入っていない。
愛すべきこの国の兵ではない。守るべきこの国の民ではない。
万が一お前や、お前の手下がこの国の民を傷つけたり、お前の国の難民がこれ以上この国に負担を掛けるようなら僕はすべてを一切の躊躇なく排除する」
率直で、明確で、一切の慈悲もかけないという宣言……。
「僕にとって流国の姫であるお前の命は、この国の乞食にすら劣る」
そう僕は言葉の刀で彼女を切り捨てた。
この国の民ならば僕は乞食にも慈悲を掛けよう。この国の民ならば不治の病に侵されようとも僕は最善を尽くそう。
だが……、守るべき民を守らず逃げ出した王族なんぞに慈悲はいらない。
いつの間にか椅子から落ち、うずくまりながら、耳を塞ぎ、泣きなら、子犬のように震える『小娘』を僕は立ち上がり冷たく見下ろしていた。
同時に『スッ』と音がしてふすまが開いた、入ってきたのは僕の個人副官だった。
彼女は無言で部屋を無言で入ると何も言わずに、姫さんの前に立った。
そしてうずくまって涙と唇の血でグジョグジョの彼女を力いっぱい強く抱きしめた。
服に口から滴る血が付くが気にしたそぶりもない。
抱きしめながら耳元で囁く、『大丈夫、大丈夫ですから』という声がぼそぼそと僕の耳に入ってきた。
どれくらいそうしていただろう、姫さんは泣き疲れて眠ってしまったようだ。
個人副官は彼女を器用におんぶすると、僕の前に立った。
視線を合わせると問答無用で強烈な拳を僕の顔面に叩き込んだ。
人一人背中に抱えているに腰の入ったいい拳だ、手加減すらない。
『本当に良く殴られる日だ』、そんな事を脳裏によぎらせながら、無様に潰れたヒキガエルの様に床に大の字で転がった。
「やりすぎだ、いくらなんでもな!」
「痛つつ……、んでその姫さんどうするのさ?」
「私が数日、面倒みる」
気に入らない。
「ふん、そうやって……なんでもかんでも拾って、助けて聖母様にでもなったつもりかよ……」
気に入らない、気に入らない、気に入らない。
「私が聖母様か……。なら一つだけ思い出せ。その『聖母様』を拾ったのは昔のお前だぞ」
それだけ言って個人副官は出て行く。
閉まるふすまの音を聞きながら、代わりに僕の口が開いていた。
「気に入らない、気に入らない、気に入らない。……だけど一番気に入らないのは僕自身だよ、畜生」
誰もいない応接間で、その独り言は僕以外には誰にも聞こえない。
コクシュハ ヒメサマニ セイシンコウゲキ ヲハナッタ
コウカハ バツグンダ
ヒメサマノ ココロハ ダイダメージヲウケタ
昔、大好きだった女の子と今の守るべき地位とで板挟みになっている主人公。
そんな感じに書けていれば成功です。