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ヴォルの話をまとめると、どうやら私は誰かと恋愛しなければ帰れないらしい。

レースゲームでどうやって恋愛するのかって?

それは私も聞いてみた。


「君がレースで1位、もしくは3位以内に入れば、君を除いて3位以内に入った人の好感度が上がるようになってる」

「3位以内?…絶対無理無理」


今までで一番良かった順位は26位。

ちなみに30位中の26位だ。

あとは大体いつものメンバーで最下位争い。


「いや、僕も失敗したと思った。人選ミスだと思った」


もう絶望的だ!と嘆くヴォルを横目に私はアクセルを全開にする。

皆忘れてたと思うけど、今レース中だから。


「ねぇ、思ったんですけど、それだと私が相手選べなくないですか?」


私を除く3位以内ってことは、常に1位争いをしている赤と青のスポーツカーのどちらかに限定される。


「まぁそうなるねぇ」


案の定選択肢はないらしい。


「車から降りてきた男がすっごくブサイクだったらどうするんですか!」


実際、車体しか見たことがない。

見たくても相手はヘルメットをかぶっているのだ。

というか、会ったこともない相手と恋愛とか何考えてるんだ、この生物は。

ヴォルが妙なオプションさえ付けなければ、こんなことにはならなかった。

ヴォルの評価?知りません、ボーナスカットでもされてろ。と言ったらヴォルがメソメソと泣き出したので、頑張るしかないのである。


*****


「一応ゲームのキャラだし、ブサイクじゃないと思うんだ。君の趣味ではないかもしれないけど」


現在24位。

後尾から発射される真っ赤なカラーボールを華麗に避けている最中にヴォルは言った。

え、このタイミング?

空気を読むという教育はされなかったのだろうか。

気が逸れて避けきれなかったカラーボールがベシャッと嫌な音を立てて車体に当たった。

次のレースではいつの間にか綺麗にはなっているが、気持ちが良いものではない。


「いや、もう正直どうでもいいです」


考えれば、今まで特にゲーム中のイベントなどないのだ。仮に恋愛ができようが、イベントがあるわけでもなく、私は元の世界に帰るので問題ないのではなかろうか。


「まぁ3位とか夢のまた夢だしねぇ」

失礼なやつだ。


「ちょっとずつ順位上がってるし」


あと20台とちょっと追い抜いたらいいだけだ。うん、果てしない。


「あ、赤さんだ」


サイドミラーを見ると、赤いスポーツカーがあり得ないスピードで後ろの車を追い抜いていた。

赤さんが速過ぎて最後尾に追いついてしまったらしい。

ちなみに車が赤いから赤さん、青いから青さんと名付けたのはヴォルである。ネーミングセンスがないことには突っ込まないであげてほしい。


「相変わらず飛ばしてるよねぇ」


あっという間に私の車まで追いついた赤いスポーツカーに、先ほどレース中に拾ったアイテムを投げつけてみる。

ちなみに、どういう原理で車に乗りながらアイテムが拾えるのかは私にも分からない。

完全に油断していたのか、簡単にアイテムは赤いスポーツカーに当たった。


「わぁすごい!当たったね!何のアイテムだったの?」


ヴォルが隣で無駄に羽をパタパタと動かし、興奮気味に尋ねてくる。


「いや、何のアイテムかは知りません」

そもそも拾ったアイテムの大半は用途が分からない。とりあえず投げて反応を見ているだけである。

どうせ今回もいつもの嫌がらせアイテムだろうと様子を見ていると、高らかな音楽が車内に響き渡った。


「信じられない。ミラクルだ…」

「ヴォル、これ何の音?」


私にはこの音楽の意味が分からないが、ヴォルには分かったらしい。


「いや、もうなんていうかね。1位になっちゃった」

「え?誰が?」

「君が!」


全く要領を得ないヴォルの話に首を傾げながら、嘘だろうと順位を確認してみる。

ちなみに順位はフロントガラスに小さく表示されている。わき見運転はダメ絶対。


「え、なにこれ。なんかバグってるの?」


見たことのない順位がフロントガラスに表示されていた。


「さっき投げたアイテムだよ!順位を交換するアイテムだったんだね!」


マジか。

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