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第37話 偵察! 密林の先へ進め!!

前回のあらすじ:主人公(フィアル)は、街中を見回ってる最中に不気味な骨を見つけ、それを教会へと持ち込んだ。そこに待っていたヒーロー仲間の勇により、それがかつて翔を苦しめた死霊術師の骨と知る。

一方、その骨の主と仲間達は、不可思議な魚人に案内されて彼らの巣へと足を踏み入れる。そこで魚人の長から蛮族騒動の原因を、コーツランの街北にある遺跡にある『生命のマナ』の暴走と知らされた。彼らは一攫千金を夢見て、魚人達と協力して、その遺跡を牛耳る何者かと敵対することになったのだった。

 時間は深夜。やって参りましたは高等学校の学生が寝泊りする宿舎、そこから徒歩三分ほど離れた場所にある倉庫の中!


 カビ臭くて暗い中、ルナティクスの魔法によって人払いの結界が張られた倉庫に身を寄せるのは、五名の男達! 内一名は男の娘!


「フィアル……今、何か馬鹿な事考えなかった?」


「え? いや、眠いなーとか、かな……」


 殺気を感じたので、ルナティクスの目を真っ直ぐ見返してとぼける。疑わしい眼はそのままだったが、それ以上の追求は止めてくれた。


 薄暗い倉庫に居るのは、僕ことフィアルとヒーローギルド仲間の勇、ルナティクス。そして僕らの上司にあたるデルキウス王子|(普段はジョルジュ先輩)と転生仲間の忍者、義影だった。

 ちなみに、サラと玄衛門さんはお留守番だった。彼らにはまた別命があるらしい。


「私語は慎め。……さて時間も無い事だ、早速本題に入るぞ」


 そう言うと、デルキウス王子は倉庫の樽に座り直し、僕らを見下ろす。


「現在、遠征軍は町の防衛施設の修理、及び防衛態勢の強化を主に活動している。だがこの遠征は、蛮族の発生源の根絶が最終目標だ」


 黙って聞きながら、チラッとだけ義景に目を向ける。すると、ばっちり目が合った。

 一瞬のアイコンタクトで読み取れたのは、先輩の話にはまだ何かしらの含みがあるという事だけだった。


「蛮族が魔法生物の一種という可能性はお前達の分析で高まった。ならば、その発生源たる魔法装置がどこかにある筈だ。恐らく、この街の北にな。それを探して来い」


 さっと青くなる僕らの顔。気楽に言ってはくれるが、その労苦の凄まじさは本当に理解しているのだろうか?


「あの、殿下……それは数万の蛮族の屍を踏み越えていけと? 一晩では絶対無理ですよ?」


「ならば七日七晩かけてやれ。一週間経っても成果が出ないようなら、改めて方針を考える」


 うわぁい、サバイバル生活も追加されちゃったー。


「殿下、ちなみに食糧とかは……?」


「……飯くらい、魔法で作り出せないのか?」


 逆にきょとーんとした顔で不思議そうにルナティクスを見る王子様。そういえば、出来るんかな?


「えっと……お菓子の家を召喚することはできますけど……」


 おお、メルヘンチックだが凄い魔法があるな。三食お菓子は勘弁して欲しいが。


「ただそれって、いわゆるトラップ魔法で……一口でもかじると、激怒した魔女が襲い掛かって来て、家に連れ込もうとしてくるの」


「連れ込まれたらどうなるん?」


 勇の素朴、かつ切実な問いかけに、ルナティクスは目のハイライトを消してぼそりと呟く。


「……製作者のオタク魔法使いは、『陵辱モノ』とかが大好きだったらしいわ……。しかも男女逆転型で、グロ趣味もあったっけ……」


 もういい、それ以上思いだすな……!


「一生封印しておいて、その魔法。多分使いどころ無いから」


「ですよねー……。というわけで、食べ物は出せません」


 ルナティクスが頭を下げると、王子様は頭を搔きながら思案する。


「ふむ……ならば仕方無い。町の外まで、サラと玄衛門とかいうゴーレムに食事は輸送させる。一週間は特別任務扱いで、この町から出れるようにしているから、今夜このまま出立しろ」


「ご、ご無体な……! フィアルはともかく、魔術師ギルドや教会はどうするんですか!?」


 勇が抗議と反論で無茶苦茶な任務を何とかして撤回させようとするが、王子様はニヤリと笑って親指で首を切る。


「心配するな、ギルドや教会にもコネはある。安心して逝って来い」


 開いた口が塞がらずに固まる勇。ルナティクスは頭を抱えているが、既に諦めているようで押し黙っている。義影は、ただ黙って頭を下げて了解の意を伝える。


「さて、フィアル。どうする?」


 楽しそうに僕を見下ろすデルキウス王子。この人に仕えて本当に大丈夫かと心配になって来たが、腹は括った。

 どうせヒーローギルドの活動としても、やる事は大差無さそうだし。大義名分をくれて動き易くしてくれるだけ恩の字だ。


「謹んで、御下命を拝領いたします」


「おう、励めよ」


 精一杯の抵抗として慇懃無礼に頭を下げてみたが、王子様はそれすら面白いとばかりに、勝ち誇ったように笑うのだった。



 ◆



 で、街の外に放り出された僕らの最初の仕事は……


「ここをキャンプ地とする!」


 荒地の中でも、岩や丘に囲まれた小さな窪地で野営の準備をする事だった。ここならば、蛮族もそうそう入り込みはしないだろう。見つけてくれた義影には感謝だ。


 と、思っていたら義影がテキパキと指示を出し始めた。


「とりあえずテントの設営を翔と勇に頼む。乱、隠していた水樽を持ってくるから、魔法でそれに水を注いでくれ。ルナティクスにならなくても、水を出す魔法は使えるだろう?」


「そりゃあ、『湧水クリエイト・ウォーター』の魔法くらいは習得してるけどさ……」


「待った。義影、もしかして……元からここで生活してたの?」


 もしそうなら、先日一人で威力偵察に行かされて、ぶつくさ言ってた我が身が恥ずかしい。僕が恐る恐る聞いてみると、義影は口の片方を盛り上げて、楽しそうに目を細める。


「ま、忍者だからな…………冗談だ。ここは偵察に出た時の拠点にしてただけで、今まで滞在しても精々一泊する位だった」


 くそっ、一瞬釣られかけた! 申し訳無くてうな垂れた姿を嘲笑されて、こちとら激おこぷんぷん丸ですぞ!!


 だが、義影は僕の敵意をそよ風のように受け流しつつ、水樽を持って来て、ついでに僕らにテント用具を投げ渡す。


「ほらっ、明日も早いんだからさっさとテント張って寝るぞ。ヒーローには早寝早起きの習慣は無いのか?」


 とんだ正義の味方だな、とまたいやらしい笑みで僕らを見つめる義影。このダークヒーローめ、いつかギャフンと言わせてやる……。


「勇、やるぞ」


「へいへい。……いつかキャン言わしたるからな」


 勇も心の内は一緒だったらしく、ヤンキーがメンチ切る時みたいな顔して、義影を威嚇している。それすら愉快だ、と義影は笑うだけだった。



 ……



 四人ともテントに入って寝袋にくるまったはいいが、僕はどうにも寝付けなかった。まるで、修学旅行に行っていつもと違う環境に興奮して寝付けない中学生みたいだ。


 ふと、横を見れば背中を向けて寝ている義影の姿がある。ちなみに、逆側には勇と乱がすでに寝息を立てていた。


「義影……起きてるか?」


「何だ。便所にでも付いて来て欲しいのか?」


 子ども扱いも大概にせえよ、同い年。


「違うし。……親御さん、どんな人だった?」


 前聞いた話では、既に死別していたらしいけど……僕らと一緒で、いいご両親にめぐり合えたのだろうか?


 義影は背を向けたまま、沈黙を選択した。無視して寝てしまったわけで無いと分かったのは、一分くらい経ってからだった。


「そうだな……元居た世界の親父とお袋に比べれば、とても一般的な、普通の親なんじゃないか?」


「何故に疑問系。まあ、不幸な幼少時代では無かったようだね」


「別段、元の世界でも不幸と思った事は無かったんだがな。成るべくようにして成っただけだ」


 大人だなぁ。僕は家族を悪の組織に殺されて、一時期はそれこそ世の中全てを憎むような気持ちになっていたのに。……その残り火は今も多分、ある。


 そしてきっと、それがヒーローをやってる理由の一つだ。僕以外の誰かに、そんな想いをして欲しくないから。


 ふと、前世で義影がどんな最期を迎えたか思い出す。


「なあ、確か義影って最後に里に行って、里の忍者と戦ったんだよね? ……親御さん達は」


「ああ、俺が斬った」


 僕の言葉尻を食って、義影は凄惨な記憶をただ息を吐くだけのように吐き出した。


「……!?」


「嘘だ。シノビの言葉を易々と信じ過ぎるな。俺が里に行った時は、他の場所に出ていて不在だったよ」


 また釣られクマー!!


「義影ぇ……。仕舞いにゃ変身するぞ、おい」


「もう寝ろ。人の過去を根掘り葉掘り聞く暇があったら、自分の将来の心配でもしておけ」


 呆れたような声を最後に、義影の背中からは寝息しか聞こえて来なくなった。

 むう。組織は違えど、同じ実働部隊として、そして何よりも同じ転生者として友好を深めようとしたんだが……ままならないな。


 仕方ないので、目を閉じて闇に身を委ねる。

 眠りの中へと意識を手放す最後の瞬間、義影が両親を斬ったという嘘は、本当に嘘だったのだろうかという疑問が浮かんでいた。



 ◆◆



 さて、次の日。朝日がちょっとだけ顔を出しかけた頃、愛機『レッドプラズマ』を駆って、僕はコーツランの街へ向かっていた。

 無論、街そのもので無く、その近辺の待ち合わせ場所だ。


『翔君、玄衛門さんからの信号受信したわ。もうすぐそこに来てるわね』


「ありがとう、朱美さん」


 バイクのAIである朱美さんの情報に従い、速度を落として目の前に見えていた小高い丘の麓に停車する。


 すると、カーテンを開けるような仕草で、周囲の情景を映し出していた布をはらい、サラと玄衛門さんが現れた。


「おはよう二人とも。その光学迷彩みたいな布も秘密道具?」


「ふっふっふ、そうでやんス。…パンパカパーン! 『親御さんの白い目からも隠れよう・ヒキコモリーン』~~!!」


 やめたげてよう。製作者の悪意に満ちた命名規則はほんとに何なんだ。頭が痛くなってきた……。


 僕の頭痛はさて置かれ、玄衛門さんの解説が始まる。


「これは周囲の情景と溶け込むスクリーンっス! 伸縮自在、形状自由な針金が仕込んであるんで、使い方次第でテントにも簡易更衣室にもなるっス! まあ、存在自体は消せないっスから、これを使って逃げ切れたニートや引き篭もりは皆無だったっス」


 つーか、引き篭もりが部屋に居ないって篭ってないしな。……違う、今大事なのはそこじゃない。


 僕は玄衛門さんにばかり構っているせいで、白い目を向け続けているサラに急いで向き直った。


「やあ、わざわざ食糧持って来てくれてありがとう、サラ! 折角なんで、一緒に朝御飯にしない?」


「……悪いけど、僕は宿舎で食べないと怪しまれるから」


 ああん、懐柔失敗! サラがさらにむくれてしまった。


 黙って食糧の詰まった袋やバスケットをスクリーン内から取り出すサラの後ろで、僕と玄衛門さんはどうご機嫌とったものかと、おろおろして挙動不審に左右を見渡す。


 それを尻目で見ていたのか、サラはくすりと笑みを溢すと、苦笑しながら僕に頭を下げる。


「ごめんね、意地悪しちゃった。昨日リンと仲良くしてたのと、今さっきの放置は許してあげる」


 上目遣いに目を細め、妙に艶のある笑みを浮かべるサラ。普通、上目遣いってもう少し可愛らしいものの筈だが、何だか背の低い女王様が立っている下僕を愛でる時のような妖艶さを感じる。


 親友の魔性が増している事に、一抹の不安が増していく。そろそろ百抹くらいになりそうだ。


 が、一転して不安そうで悲しそうな顔に変わった時は、昔ながらの親友そのままだった。


「でも大丈夫? しばらく街には居られないって殿下が言ってたし……。ヒーローギルドの皆がいるのは分かるけど、フィアルが無茶するんじゃないかって心配で……」


「何とかなるさ。レオンティンも、それに義影も居るし、その上僕が居るんだから、すぐに任務を終わらせてみせるさ!」


 などと胸を張って格好つけてみる。親友の前では頼りになるところを見せたいわけだが、成功の目処すら立っていないのを隠している事実が、チクチクと僕の心を刺す。


 だけどもサラは、そんな強がりを疑うことなく受け入れて微笑んでくれた。


「うんっ! 早く帰ってきてね。フィアルがいないと、やっぱり寂しいから」


 そしてさり気ない素振りで近付いて、ギュッと抱擁してくる。ああ、サラの髪は今日もサラサラでいい匂いだなぁ……。


 いかん、トリップしそうになっていた。


 薔薇の園に踏み込む勇気はまだないので、やんわりとサラを引き離す。名残惜しげに顔を曇らせる親友には悪いが、これもお互いの為だと思うんだ。


「食糧ありがとね。じゃ、また今度!」


 僕は食糧を次元の穴に収納すると、急いで『レッドプラズマ』にまたがって走り出す。早く帰らないと勇とかが文句言いそうだしね。




「……やっぱりまだ駄目かぁ……」




 風に乗ってそんな囁きが聞こえた気がしたが、記憶の奥底にコンクリ詰めにして沈めといた。つまり、聞かなかった事にしたのだった。



 ◆◆◆



 朝食を終えた僕らは、拠点にしてる岩場から北上しようとした。

 しかし、コーツランの北に広がる野原で頻繁に蛮族の小集団に出くわし、やり過ごすのに苦労して中々進めずに居た。


 そこで、勇の式神と僕のセンサーを組み合わせて空から監視を行う事にした。鳥型の式神にセンサーをくっ付け、数羽を空に向けて放す。


「OK、感度良好。そのまま北上させてて」


「おう」


 センサーの状態を確認しつつ、勇に指示を出す。勇が念じると、センサーは更に速度を上げて北に向かっていく。


 上空から地上の状態を監視すると、笑える程に大量の蛮族が野原を行き交っているのが分かった。


「千……二千……三千……。駄目だ。カウンターの上がる速度が速過ぎて、追いつかない」


「どんだけ居るんだよ……さすがにまともに相手してられないな」


 勇のげんなりした声が聞こえる。乱も声には出さないが、表情は雄弁に面倒くささを語っていた。義影だけは口も顔も黙って僕の報告を待っている。

 カウンターは、万に近付いたあたりで漸く速度を落とし始めた。


「……今のところ、一万二千くらいの蛮族が野原をパトロールしてるみたいだ」


「大規模襲撃一回分か? まあ襲撃要員でなくパトロール要員だろうがな。いずれにしろ、蛮族共を薙ぎ払いながら進むのは余り現実的ではないな」


 義影の意見も尤もだ。やってやれない事はないだろうが、本拠地にはこれ以上の数が控えているかも知れないと考えると、下手な攻め方をしても数で圧殺されそうだ。


 だからと言って何かいい案が思いつくわけでも無いんだが。


「……ん? これは……」


 と、思考停止しかけていたところで、センサーから送られてくる映像に変化が起きた。

 今まで野原だった地上の光景に、急に緑が増えたのだ。今、式神達は生い茂る密林の上を飛行しているらしい。


「なんだ? えらく唐突に森が出てきたな」


「映像を見せろ。……変な森だな、樹木が密生し過ぎじゃないか? それに変に捻れた木が多い」


 さすがの観察眼と言うべきか、前世では山育ち? の経験か。義影は送られてくる映像に眉を寄せて疑問を呈している。


「そうかな? どう思う、勇?」


「言われてみれば、ってところか」


 今の世界では田舎育ち組の僕と勇も観察してみるが、確かに真っ直ぐ育っている木々はむしろ少ない方で、隙間を埋める様に歪に伸びて変形した木が多い気がする。


「ちょっと待って。この現象って確か……」


 すると、一人沈黙していた乱が、何かを思い出そうとしているのか頭に手を当てて声を発する。

 それに僕らが釣られて顔を上げた瞬間、突然、映像が乱れ始めた。


「何だ!?」


「センサーの故障か? 朱美さん!」


『違うわ! 強力な妨害電波でジャミングされてる! 発生源は……』



 ブツッ



 映像は唐突に途切れ、ホログラムで表示していた画面には、『SIGNAL LOST』の文字が浮かんでいるだけだ。


『駄目。大体の方角は分かったけど、位置までは分からなかったわ。ごめん、翔君……』


「謝ることなんて無いよ、朱美さん。何かある方角が分かっただけでも僥倖だ」


「……くそっ! 式神の反応も消えた!? 何かの方法で迎撃されたかな……」


 目を閉じて印を組んでいた勇は、悪態を吐きながら荒々しく印を解除した。

 しかし、一体何者が……?


「しかし、この世界で妨害電波とはな……どう思う?」


 考え込んでいると義影が意味深な視線を向けて来た。それについては、実は僕も思うところがある。


「……前から気になっていた事があるんだけど、聞いてくれる?」


 改まって話し始める僕に、皆の視線が集まる。

 ずっと前から、頭の隅にだけあった懸念事項。でも全くその気配が無かったから今まで口にはしなかった事だ。


「僕らは、謎の神様の手で別の世界から集められた、まあ正義のヒーロー達なわけなんだけど……」


「俺を含めるな」


「はいはい、義影は別でいいよ。で、だ。じゃあ逆もありなんじゃない? って思うんだ」


 勇と乱の瞳孔がきゅっと開いたのを感じる。恐るべき未来の予感に、きっと体が警戒して興奮状態になったんだろう。



「……僕達と対極を為す様な悪の存在が、別の世界からこの世界に来ているかも知れない。今さっきの妨害電波の件で、その可能性は高くなった」



 沈黙が場を支配する。


 何かの間違いであって欲しいが、宇宙人産の超科学の産物であるセンサーをジャミングした事言い、勇の式神を破壊した事言い、今までこの世界で戦ってきたどの相手よりも高い技術力の存在を感じさせる。


「義影、今までに別世界から来た悪人らしき存在を見た事ってある? 嘘や誤魔化しは無しで頼む」


「無い。俺の雇い主の金市を含めて、別世界出身の人間はどいつもこいつもお人好しばっかりだ。俺を除いてな」


「はい、嘘発見~~。義影も大概お人好しだろ?」


「俺はビジネスでやってるだけだ」


 なんて冷たい目を向けてくるが、金市に薄給で扱き使われながら人助け同然の事をさせられて、それでもその状況をしとしている人間が、お人好しでないわけが無い。


「まあ義影君のクーデレはともかく、今回が別世界悪人の第一発見例かも知れないから、皆気をつけよう」


シノビを舐めているようだな。お前の学校に、ある事ない事お前の噂を流すことなんて造作もないんだが?」


 おおっと、脅迫行為なんて非人道的。早くも悪人発見かな? などと皮肉を言おうと口を開けかけたところで、乱が手を上げた。


「僕も今思い出したけど……あの森の歪さ、その原因に心当たりがあるんだ」


「マジで? じゃあ乱が居た世界のオタク魔法使いがあの森に……」


 僕の言葉を手で遮り、ふるふると乱は首を横に振る。


「違う。あの現象は、この世界の魔法……と言うか『生命のマナ』の暴走と似ているんだ」


「『生命のマナ』? 魔力の暴走ってこと?」


「うん。魔力には種類があるって、騎士学校でも習うでしょ? 『生命のマナ』は傷を癒したり、失った体の復元をしたり、大儀式を行えば死者の蘇生すらできるらしい。でも、それが無秩序にばら撒かれると周辺の生命体の成長を異常増殖させる」


 さすが、魔術師ギルドで研鑽した知識は伊達では無い。乱はスラスラと淀みなく解説を続ける。


「似たような現象は『自然のマナ』でも起こりうるけど、こっちはもっと秩序立って森が形成される。『生命のマナ』の暴走で一番分かり易いのは、動植物の多産や奇形だね。異常に動物の子どもが増えてたり、四肢が多かったり妙なこぶが体にあったりするらしいよ」


 いやん、想像するだけでグロイ。



「そして……上手く使えば、簡易的な生命体、つまり魔法生物の創造も可能だと思う。蛮族の原因はこれじゃないかな?」



 一気に核心に近付いて来たと感じる。今更ながら我がギルドは優秀な人材に恵まれているな。

 義影も感心した様子で何度も頷いている。


「有りえそうだな。やっぱりお前達をここまで引っ張ってきたのは正解だった」


「これで王子様のご機嫌も斜めならず、ってとこだね。後は証拠と、その『生命のマナ』が暴走している場所を特定しよう」


 デルキウス王子の目的は、蛮族発生の原因を排除、それを自分の手で成し遂げる事だ。僕らの役割は、そのシナリオ通りに事が進む為の段取りだ。


 その為に、まずは王子が演じる舞台の状態をチェックしないとね。


「一度、森の近くまで行ってみよう。その後は出来るだけ奥まで探索しつつ、森の様子や動植物のサンプルを入手して、王子の下へ戻ろう」


「どうやって森まで近付くんだ?」


 勇の質問にしばし考える。


「強行突破は難しいから……ルナティクスのワープ魔法じゃ駄目?」


「……まあ、どうせ変身の必要はあるだろうから、いいけどさ……」


 乱は微妙に嫌な顔をする。出来るだけ変身したくないのは知ってるだけに、大変申し訳ない。


「方針は決まったみたいだな。森での先導くらいは俺に任せろ、楽をさせてやる」


 最後に義影が軽口で締めくくる。だけど彼の体から立ち上る静かで怜悧な気配は、歴戦の忍者の頼もしさを僕らに印象付けていた。



 ◆◆◆◆



 森の近くまでは、わりとスムーズに行く事ができた。ルナティクスの魔法の触媒を勇の式神が森の近くまで運び、それを目印に転移してたのだ。


 蛮族の居ない場所を選んだので、警戒される心配も無い。ただ、問題もあった。


 ガリガリガリガリ……


「あぎゃー!?」


「おお、翔が面白い顔してるぞ。やっべ写真撮っておきてー」


「……っ! 勇、ちょっとこっちゃ来い」


 センサーが発する凄まじいノイズに耳をやられた僕の顔を、思いっきり笑った罰を与えてやる。


「謹んで辞退します。で、こっちのセンサーはやっぱり駄目だそうです、センセイ」


「ならこっちの仕事だ。俺の後ろに付いて来い、多少距離は離せよ」


 義影は首まで下ろしていた覆面を上げて口元を隠し、身を低くすると森に分け入って行く。丈の高い草が生えているにも関わらず、全くと言っていいほど音を立てずにするすると進むので、注意しないと僕らも見失いそうだ。


「よし、僕、勇、ルナティクスの順に義影の後を追うぞ」


「リョーカイ!☆ やーん、草が沢山生え過ぎてて、ルナティクスの珠のお肌に傷がついちゃいそー☆」


 できるだけハイテンションを維持しようと、常にも増して魔法少女っぽい?言動を吐き出すルナティクス

 僕と勇はその姿を直視できず、哀れさに涙がこぼれそうになるのを耐えて、森に入ったのだった。



 ……



 森の中では、不気味なほどの濃厚な生命の気配を感じていた。


 足元のそこかしこから虫の鳴き声と這い回る音。遠くでは獣同士が争う咆哮がいくつも響いて来て、僕らの接近に警戒する鳥の鳴き声は非常ベルのように連続している。


 森そのものは視覚的に生命力をアピールさせる。昼前の晴れの日だというのに、上は密生した森の葉が光を塞いでやたら暗い。それでも下の地面には草が繁茂していて、浮石のよう点在する石や岩には苔がびっしり張り付いている。

 たまに見る果樹には大量の果実が実っていて、その下には森の動物達が食べたであろう食べ残しの欠片が強烈な腐敗臭を放っていた。


 濃密な生命の存在感は気分が悪くなりそうなほどだった。



 カサリ……



 ふと前方に動きがあって注意すると、先行する義影が軽く手を挙げていた。


 僕はすぐに身をかがめ、後ろの二人もなるべく音を立てないように草むらや木の陰に身を隠した。

 義影の見つめる先を見ると、草地の一部が獣道のように一方向に倒れこんでいた。そして、その先からこちらに向かってくる集団の足音が聞こえる。

 獣の音ではない。あんなに騒々しく森を闊歩する存在は、蛮族以外ありえない。


 このままやり過ごそうと思っていたところ……



 アーッ! アーッ!



 僕ら、正確には僕の頭の上で騒々しくがなり立てる鳥の鳴き声が響いた。


「……っ!? !! !?」


 わたわたと身を震わせたのがまずかった。鳥はさらに警戒して大声で鳴き始め、それに釣られて周りの鳥も喚き始める。


 蛮族の足音が、明らかにこっちに進路を変えた。……あ、皆の視線が痛い。


「……はぁ。少し待ってろ」


 呆れきった溜息が聞こえ、その後に森を駆ける風の音が聞こえて義影の姿が消える。


 直後、道に蛮族の集団が現れる。先頭は通常の蛮族達だが、奥の方にいい武装をした蛮族大将の姿もある。全ては見えないが、総数は百に達するんじゃないか?


「義影……!?」


 こんな見通しも足場も悪いところで集団に囲まれたら、幾ら僕でも苦戦は免れない。僕は義影の安否を確認しようと腰を浮かせかけた。


 その動きに先頭の蛮族が反応しこっちを向いた瞬間、その脳天に手裏剣が突き刺さった。


 煙に変わる蛮族。完全に戦闘態勢に入って武器を構え出して周囲を見渡す他の蛮族達。その中の一人が、ある一方を指差す。



 そこには、岩の上に佇み腕を組む義影の姿があった。



「阿呆かー!? かっこつけてる場合か、忍べよ忍者!?」


 思わず大声て立ち上がる僕。……あ、やっちゃった。


「……ゴフ、ゴフッ!!」


 蛮族大将は岩上の義影と僕の方を指差して、くぐもった声で部下に攻撃指示を出す。それに従い、蛮族は二つのグループに分かれて動き出した。


「やばいやばいやばい!? みんな、戦闘準備して!」


「リーダー、まずお前はそのツッコミ体質を治してくれ」


「敵方にボケ役が居たら、あっという間に掴まりそうだねっ★」


 後方の二人の怒りが恐いです、はい。

 冷たい目のルナティクスを見ていると、明るい調子の語尾もどす黒い怒りに染まっている様に聞こえる。


「ごめんなさい、二人とも! 『開け、次元の門オープン・ディメンジョン!!』」


 閃光と共に僕の体は赤いヒーロースーツに包まれる。


「……ゴフゥ!」


 その瞬間、蛮族大将が新たに指示を出す。すると僕らの方に来ていた蛮族達は、少し離れた所から横に広がって僕らを囲むようにし始めた。


「? こいつら、何だか変だな」


「おい、義影! そっち行ってるぞ!?」


 ふと奇妙な疑問に支配されかけた頭に、勇の声が入ってきて覚醒させる。慌てて首を巡らせれば、もう義影はすっかり取り囲まれていた。


 そして蛮族達は、タイミングを合わせたように一斉に襲い掛かる。




「義影ェーーー!?」




 彼が絶命する瞬間、火の粉を散らしながら一本の燃える苦無クナイが、どこからともなく彼の元へと飛来した。



 ……ズズンッ!!



 突如、轟音が森を揺らした。炎と衝撃波が蛮族を薙ぎ払い、黒煙が蛮族達の視界を塞ぐ。黒い煙には衝撃波にやられた蛮族の白い煙が次々と混ざり、灰色に染まっていく。


「まさか、微塵みじん隠れの術!?」


「知っているのか、勇!?」


 愕然と呟く勇に思わず聞き返す。劇画調に顔を濃くした勇は、『ドドド……』と効果音がしそうな勢いで喋り始める。


あらかじめ火薬を隠しておき、自分の姿を囮に敵を引き付けて、集まったところに着火して一網打尽にする忍術……。火薬の量を間違えたり、タイミングを外すと自らも死ぬ危険な技。本来は身を隠す穴なども火薬と一緒に用意しておくんだが……」


『安全圏から着火できるなら、別に穴は必要無いぞ。それより、勇は忍者オタクだったか』


 山彦のように義影の声が木霊する。どこから話しているんだ!?


 蛮族リーダーも狼狽した様子で頭を右往左往している。それが滑稽なのか、義影の声にくぐもった笑い声が加わった。


『くっくっく……どこを探している? おれはここだぞ』


『ゴフッ!』


 蛮族大将の横合いの茂みから義影の声が聞こえて来る。蛮族大将は自分の周囲を守らせていた蛮族達に向けて腕を振る。それに応えて、残っていた蛮族達は茂みに殺到する。



 残った大将は、一人になった。



 突然、蛮族大将の後ろの地面が盛り上がると、鋭い刃の煌きが蛮族大将の脇腹に吸い込まれていった。


「嘘だよ。俺は本音をさらすのが嫌いでね」


 蛮族大将を後ろから刺したのは、土にまみれた義影だった。彼は手に持っていた忍者刀を蛮族大将の脇腹に深々と刺し、捻りこんだ後に一息の下に引き抜く。

 蛮族大将はしばし痙攣していたが、やがて大きく息を吐き出して動きを止める。


 取り残された蛮族達は数秒間、動きを止めていたが、徐に僕らに襲い掛かりだした。だがその行動は統制が取れたものでなく、とりあえず近い奴から殴ろうというような、大雑把なものだった。



「『マジカル・ルナ・スターレイン』!!」



 それに先んじて、僕の背後でルナティクスの魔法が発動する。可愛くデフォルメされた星の数々が、虹色の尾を引いて蛮族達へと飛んで行く。


 ドガッ! ドゴッ! ズガガガガガ……!!


 なんか、コンクリートの塊が思いっきりぶつかった様な凄く痛そうな音が連続し、頭や体を星型にへこませた蛮族達が次々と消失していく。


「翔、それと勇も! まだ蛮族の数は多いんだから、早く加勢して!」


 ルナティクスの叱咤に我を取り戻した僕らは、急いで構える。


「分かった! みんな、蛮族を掃討するぞ!」


 そう宣言しつつ、僕は手近な蛮族を蹴り飛ばしたのだった。



 ◆◆◆◆◆



 しばらくして、森に平穏が戻った。

 静寂はまだ訪れず、大暴れした余波で、興奮した鳥や獣の声が遠巻きに聞こえていた。


「ふん、もう少し静かに戦えんのか、お前らは?」


 忍者刀を背中の鞘に納め、息も乱さず義影は僕らを皮肉る。大してこちらは鍛えているとは言え、若干の息の乱れは否めない。


「……ふぅ。そういう義影こそ、随分派手に爆発させたりしたじゃん」


「そうそう! お前……いいのかよ、こんなファンタジー世界に火薬なんて持ち込んで。文明が進み過ぎて、世界中が大混乱に陥っちゃうだろ!? 異世界でそんな危険な技術をホイホイ再現するな! そう言うのはシナリオの後半に出すもんだろ!」


 勇が僕の言葉に反応して、大声で義影を攻め立てる。しかしその内容は、元の論旨とは大分ズレがある。

 矢面に立たされた義影は、主な射撃主の勇の懸念を鼻で笑う。


「手間暇かけて作る火薬と、魔力さえあれば使える魔法、どっちが有用だ?」


「……えーと、応用範囲では……」


「ついでに、キルディス王国では火のマナは使いたい放題だ。軍事関係者は火薬や銃の開発と改良に力を注ぐ前に、強力な火の魔法を研究する事に精を出すさ」


 ついにぐうの音も出なくなった勇は、力なく頭を垂れる。


「これだから魔法が強過ぎる世界はロマンが無いんだよ……」


「勇ってさ、結構オタク気質なところあるよね。今度からちょっと離れて歩いてくれる?」


 ルナティクスにすら嫌悪されて、勇は泣きそうになっていた。

 それは兎も角、始めて見た義影の戦いぶりに賞賛を送ろう。


「しかし、義影の戦いは典型的な忍者の戦いみたいだったね。手裏剣に、変わり身の術、微塵隠れの術、土遁の術に……あの声はどうやったの?」


「あれは声を伝える管を複数個所に伸ばしておいただけだ。一部だけ管を塞いで、ある一方や場所にだけ俺の声を届ける事も出来る」


 そんな管を、あの一瞬でどうやって仕掛けたのか、とか、土遁の術でどうやって蛮族大将の元まで進んだのか、そんな疑問が頭に浮かぶ。しかし……


「へえ、どうやって管を仕掛けたの?」


「馬鹿か? 忍者が手の内を易々と明かすわけないだろ?」


 やっぱり小馬鹿にしたような返答が帰ってくるだけなんだよね。

 半分以上予想していたことなので、いまさら怒ることも無く、一つ気になっていた事に思考を切り替える。


「で……これなんだけど、どう思う?」


 僕は地面に倒れ伏す蛮族大将の死体を指差しながら、仲間達に問う。そう、この蛮族大将だけは、煙になって消滅していないのだ。


「気になるな、出来るだけ精査しておきたい所だ。今の内にやれないか?」


「他の二人はともかく、僕はセンサー系が妨害されてるからなぁ……」


「一度持ち帰ってもいいんじゃない? こっちも幾つかサンプルは手に入れたから」


 ルナティクスがそう提案してくる。みんなが僕の判断を求めて見つめてくるので、少し悩んだが今回の偵察はここまでにしようと諦める。


「よし、じゃあこの蛮族の死体を回収して、街に戻ろう」


 そう言って僕は蛮族へと手を伸ばす。



 瞬間、森の奥から静寂が押し寄せてきた。



「ぐぅっ!?」「な、何…?」「くぅぅ…!!」



 僕以外の三名が突然苦しみ始め、地面に膝を付く。それと同時に、僕のヘルメット内にアラートが鳴り響き始めた。


『警告! 詳細不明の強力な電磁波を複数検出! スーツ機能への影響を避ける為に、電磁波の解析は中断!』


 僕が無事なのはスーツのお陰か! 急いで僕は皆を集めて抱え、森から脱出しようと愛機レッドプラズマを召喚しようとする。


「朱美さん! 『レッドプラズマ』を出して!!」


『ごめんなさい! 今、レッドプラズマを出したら、電磁波で私のプログラムにも影響が出ちゃう! 召喚自体も難しいわ!!』


 絶望的な報告が上がってくる。頭上からはボタボタと鳥が落下して来て、仲間達の顔色は急速に悪くなってくる。


 はっと思って振り向くと、蛮族大将の体がドロドロと溶け始めていた。


「証拠隠滅か…!」


『翔君、どうする!? このままだと、森の外に出る前に皆が……!』


 どうする? どうすればいい? この最悪のピンチを打開できる方法は、僕には無い。



 ………あ、じゃあ僕でなければいいんだ。



「この手があったーーー!」



 僕はヘルメットを脱ぐと、それを急いでルナティクスに被せた。



 ◆◆◆◆◆ ◆



「……それで、ワープ魔法とやらを使って命からがら逃げ延びて来た、という顛末か」


 昨日出発したばかりなのに、次の日の夜にはほうほうの体で逃げ帰ってきた僕らを前に、デルキウス王子は難しい顔をして押し黙っていた。


 場所は昨日と同じ倉庫の中、時間帯も同じ深夜。一つ違うのはサラと玄衛門さんも居る事だった。


「言い訳のしようもありません。今回の失敗の責任は、全て僕に……」


「ん? お前達、何か失敗したのか?」


「………え?」


 僕と王子様の呆けたような顔が、見事に一致した。


「あの、森の奥にあると思われる魔法装置の存在を見つける前に、敵の妨害により逃げ帰ったのは……」


「それは見つかるまでさせるから、今回戻った事は失敗には含まん。敵に警戒されたのは問題だが、その敵の存在を発見したのは、お前達の功績だ」


「……なるほど。確かに、想定より少し話が変わってきますな」


 義影がしたり顔で頷いている。一人だけ分かりやがって……お前、本当に隠し事が多いのな。

 王子はうむと頷いて、また悩ましく眉を寄せる。


「そうだ。当初の想定では魔法装置を止めるだけで、蛮族の脅威は無くなると考えていた。蛮族は古代の戦争機械の一部で、暴走した魔法装置の影響で無秩序に暴れているだけだ、とな」


 王子は厳しく引き締まった顔を上げる。


「だが、どうやら蛮族を操っている何者かが居るようだ。しかもそいつは、どうやら俺の子飼いの部下でも手を焼く存在らしい。遠征は今年中には終わらせねばならん。さて、課題が山積みだな」


 王子は溜息を吐いて顔を上げ、天井を睨みつけて思案する。その思考の手助けをしようと言うのか、義影が発言する。


「最も問題なのは、森を闊歩する蛮族どもです。あいつらに遭遇して戦闘になれば、『敵』に気取られる可能性が高い」


「となると、森歩きに長けた者がどうしても必要か…………ああ」


 王子は指を鳴らすと、始めて晴れやかな顔になって白い歯を見せた。




「うってつけの人物が居たな。喜べフィアル、秘密にしていた人物に会えるぞ」




 悪戯っ子のような王子様の表情に僕は首を捻り、サラは喜びに満ちた笑顔を浮かべたのだった。



 ◆◆◆◆◆ ◆◆



 コーツランの街の北、密林の奥深く。


 そこには石造りの遺跡が静かに佇んでいた。そのさらに奥、暗闇を越え、地下へ続く穴を越えた先に、大いなる光の池があった。


 池の中央には華のような台座があり、中央には光り輝く珠が浮かんでいる。


 その周囲の池の底からは絶え間なく蛮族達が浮かび上がって来ており、岸に泳ぎ着くと、先に着いた仲間の後ろに列を成し、遺跡の上層に向かって長い階段を秩序だって上っていく。



 それを高みから見下ろす何者かが居た。



 彼の四肢は人間に似ているが、そのシルエットは明らかに人間ではない。

 敢えて人が彼の事を口にするならば、きっとこう言うだろう。



 『怪人』と。



大変遅くなりました。生活環境が変わる事態になりまして、中々執筆できませんでした。次回は『アウトキャスト』をようやく書きます。

重ねて遅くなった事をお詫びし、お読み下さった事にお礼申し上げます。ありがとうございました。

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