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第2話 合流! ヒーローマシン1号『レッドプラズマ』

今回は解説回です。多分次回も解説回になるかも知れませんが…。

 さて、あの後長々と話し込まれたけど、エレナさんが気を遣って僕を元の部屋に戻しに来てくれた。

 …この人が僕のこの世界でのお母さんでいいんだよね? そして多分ロイさんがお父さん。じゃあルリィさんは何?


 色んな疑問は残ってるせいで目が覚めちゃってる。そうこうしている内にベッドに優しく降ろされて毛布も掛けてもらった。おお、ぬくいぬくい。…でも眠れないなぁ。


 すぐに部屋を出て行くかと思ったエレナさんはベビーベッドから動かずにじっと愛おしそうに僕を見ている。寝るまで見ていてくれるのかな?


 しばらくするとエレナさんは歌を歌い始めた。穏やかで心地よいフレーズ、子守唄だなこれは。ああ何だか安心するなぁ、さっきと違ってもう眠いやパトラッシュ…。


 僕はあっという間に眠りに落ちてしまった。遠い昔に無くした母さんの愛情に包まれて。



 ◆◆◆



 その後十ヶ月位の間、僕は赤ん坊として過ごした。いやーパラダイスだね赤子。好きなだけ寝れる生活が出来るなんてもう最高。


 ……まあ難点もあるけど。好きに動き回れないから、起きて一人で居る時間はどうしようも無く暇だ。まあ体が小さいせいか寝ても寝ても寝たり無いって感じの時は良かったけど、時間が経つとさすがに飽きてきた。


 それと、オムツの時間はめっちゃ恥ずかしい……。


 僕のあられもない姿がエレナさんやロイさんに赤裸々に晒される。凄まじい羞恥プレイだ、エレナさんの時はともかく、ロイさんにオムツを変えてもらう時は……なんつーか、こう、転生したのを後悔する。男性にオムツ変えて貰うのって恥ずかしいんじゃなくて空虚な気分になるのね……。



 この世界には哺乳瓶なんて無いのか、おっぱいは人肌に暖めた牛乳をスプーンで飲ませて貰ってる。エレナさんから直接おっぱいを貰わないのでこの点に関しては気分的に楽だ。


 実はロイさんとエレナさんの会話を聞いたんだけど、僕はこの家の前に捨てられてた赤ん坊だったらしい。二人は結婚してから中々子どもが出来なかったから、捨て子の僕に情が移って養子にしてくれたらしい。


 OH……、神様マイゴット……。橋の下スタートじゃないのはせめてもの温情ですかい? てか普通に生ませてよ! …じゃなくて産まれさせてよ!


 でもロイさんとエレナさんは僕と血が繋がってないとか関係無しに愛情を注いでくれる。ロイさんは僕をおんぶ紐を使っておんぶしながら外に連れ出してくれて、あの鳥は~だよとか、ほらリスが見ているよ、とか色々話しかけてくれる。返事はあぶあぶしか返せないけどね。

 エレナさんはしょっちゅう僕の様子を見に来てくれるし、起きてたら優しく頭撫でてくれたり、ニコニコ微笑みながら絵本を読んだりしてくれる。臨場感たっぷりに読んでくれるから意外と楽しい。眠くなったら必ず子守唄を歌ってくれるし。

 有難う、今世のお父さんとお母さん。早く大きくなって孝行します。


 それなりに自堕落な生活を過ごしていたが、ある程度動けるようになってからは色々と活動を広げることにした。


 まず両親がいないところでヒーロースーツの機能チェックを行う。あ、そうそう前目撃された変身時の光は天使様が降臨されたんじゃないかとか言う話に落ち着いてました。

 でもそうそう何度も天使様にご降臨頂くわけにもいかないので、変身時の発光をOFFにして置きました。


 右手の紋様を触る → 『設定』と頭の中で思う → 目の前にホログラフィックで設定項目が表示されるので『変身』のページを選ぶ → 『発光』をOFFにする 


 これで設定完了。まるでパソコンの設定みたいだ。

 他にも『効果音』とか『背景設定』とかの項がある。特に『背景設定』の『決めポーズ時爆発演出』はお気に入りだ。最初に使った時は効果音と同時起動させるの忘れてて無音の爆発映像と言うシュールな光景になってしまったが。


 ……ふと冷静になると、もしかしてこのスーツって異星人さんの映画撮影とかの小道具なんじゃないかと思ってしまう。明らかにいらないだろ、この機能。好きだけど。


 閑話休題。兎にも角にもばれない様に変身できるようになったのでヒーロースーツを着用する。ポーズは決めたけど。


 改めてヒーロースーツを着て気付いたけど、新品同様に戻ってるな。ピッチリスーツもマシンも自己修復機能があるからボロボロに壊れても時間さえあれば元に戻るんだけど、マデゴーグとの戦いでもう完全に使い物にならないような状態から新品同様に戻るなんて、どんだけ時間経ったんだろう。ログを漁ってみたら前回の着用から十ヶ月程度しか経ってない。その前は三日前になっている。この世界に来てからの体感時間とほぼ一致するので、この世界での一番最初の変身の時には既に直っていたという事になるな。神様が気を利かせて直してくれたのかも。


 考えても分からない事は置いておいて、機能に異常が無いかチェックしてみる。


 僕は左手を天井の梁に向けると、左手に意識を集中した。


(『次元念動ディメンジョン・テレキネシス』!!)


 僕がそう心の中で思った瞬間、左手から薄い光の帯が高速で伸び、天井の梁に届く。


(巻き上げろ!)


 次に僕がそう意識を集中すると、僕の体はまるでワイヤーに繋がれたまま巻き上げられるように上昇した。



 ゴンッ!



 うわっ! 速度が付きすぎた…、ヘルメットが無ければ即死だったぜ、いやそこまで大げさな勢いじゃなかったけど。

 この『次元念動』は本来遠くの物を引き寄せたり、思った通りに動かせる便利機能だ。コタツに入りながら遠くの蜜柑を引き寄せられる皆の夢の結晶だね。他にも今やったようにワイヤートリックよろしく移動も出来る。SF映画とかで、腕から飛び出すフック付きワイヤーで崖の壁面とかに打ち込んで落下を阻止するシーンを見かけるけど、そんな感じで使える。


 耳を澄ませても誰かが上がってくる音は聞こえ無い。……よし、続行だ。

 僕は少しずつ念動の具合を調整して、ゆっくり下に降りる。上手いことベビーベッドの縁に足をかけて、中に落ちない様に更に下、床まで降りる。


 床に足が着いところで念動力を解除する。さて、これからどうしよう?

 とりあえず本棚が気になったのでそっちへ向かって歩く。だが一歩目で前のめりに転んでしまった。


 ゴンッ!


 あ、頭が重い…! というよりバランスが物凄く取り辛い! 乳児と成長した体では頭身が違うから全然感覚が違う。これは歩くより這い這いの方がいいな。


 慣れない体を必死に動かして僕は本棚まで這って行く。それ、あんよは上手、あんよは上手! ……違うか。


 本棚の下まで到着した時には大分息が上がってて数分間動けなかった。とりあえず座る姿勢はきついので仰向けになって本棚の背表紙を見る。

 エレナさんの膝に抱えて貰いながら絵本を読んで貰った時に、文字がちゃんと読めるのは分かってたんで心配は無い。この世界は現代世界のアルファベットみたいな感じで独特の文字が存在する。数もそんなに変わらないので覚えるのは難しく無さそう。というか既に頭の中にインストールされてるんだけど。


 さて本棚を眺めると……、題名が読める本もあれば、読めない本もある事に気付いた。読めない本は装調が豪華でなんだか小難しそうな印象を受ける。最低限の単語だけ頭の中に入ってるのかな?


 そんな事を思いながら並んでいる本をつらつらと流し見していたら、『初めての魔法』と言うタイトルがあった。これは…! この世界は異世界だ、それはつまり現代世界に無い『魔法』もあるって事じゃないか? そしてこの本はその初心者用の解説書? ロイさんもエレナさんも魔法を使ってるようなところは見たこと無いから無いと思ってたけど、これは期待が高まってきた。

 ヒーローが魔法まで使うのって反則な気もするが、好奇心は抑えられない。前代未聞の魔法ヒーローもありだと自分を納得させて念動力を使って本を抜き取り、そっと床に降ろす。


『初めての魔法』はしっかりとしたハードカバーの本だったけど、随分使い込まれた様子で紙が変色してたり、所々削れたりしてボロボロな感じだ。それでも紙質がしっかりしてるのか読むのには問題無さそうだ。


 と言うわけで早速拝見……ページ捲るのにも結構力使うな。

 ふと思い返してスーツの設定をチェックする。……あ、『倍力機構パワーアシスト』がOFFになってる。


 倍力機構とはその名の通り、体の運動に関するエネルギーを補助してくれる機能だ。簡単に言うと貧弱なボディの僕でもスーツがあればほら簡単! 車だって持ち上げられちゃう! そんな機能だ。

 しかも自分が思ったとおりに力加減を調整してくれる。これでドアノブを軽く回そうとして引き千切っちゃう、なんて事も無い。

 これがあれば這い這いももっと楽だったのに。


 もー、設定が初期状態に戻ってるのか? 後で全部チェックし直そ。でも今はこの本を読むことを優先しよう。


 僕はスーツの倍力機構をONにして本のページを捲る。予想通りこれは魔法を使う為の教科書のようだ。基本的な事ばかり書いてあるようだけど……それでも読めない単語がいくつもあるので今一つ要領を得ない。


 分かる部分だけ要約すると、この世界には魔力が無限に湧き出るポイントが世界各地にいくつもある。これをマナという。湧き出る魔力はそのままでは何の意味も無いけど、ある一定の属性の方向へ変換する事で魔法として使える状態にするらしい。

 例としてエルフの国には自然現象を活性化させる魔法に使える『自然のマナ』があり、ドワーフの国には大地の力を操る『大地のマナ』があったりするそうだ。


 マナは特殊な儀式や装置でその方向性を決定できるので、マナが沢山あれば多くの魔法が使えるらしい。さらにこの装置から変換された魔力を受け取る『魔力回路』と呼ばれる物を魔術師は体に備えていて、それはそのマナ専用らしい。


 平たく言うと、A~Cのマナがある時、Aのマナから魔力を受け取る魔力回路Aは、それ以外のB、Cのマナから魔力を受け取れない、という感じらしい。ただ複数の系統の魔力回路を備える事は可能だそうだ。


 そしてそのマナがある限り基本的にその系統の魔法は打ち放題だ。ただ、何度も外部の魔力をその身に通して魔法を使うと体が壊れるそうだから、一応の限界はあるらしい。連射しすぎて銃身が熱で壊れるようなイメージだろう。


 一応体内にも魔力があって、それを個人で各属性に変換すれば別の魔法も使えるらしいけど、強力な魔法を使うには足りない事がほとんどだし、すぐ枯渇するし、使い過ぎると命にも関わるそうだ。回復速度が早めなのが救いらしいけど、総量の少なさが致命的らしい。


 意外に使い辛いなぁ。しかもこのマナの所有権を争って戦争になったりした、とも書いてあるし…。


 ここら辺で誰かが上がってくる音が聞こえたので慌てて本を戻してベッドに戻り、スーツを解除した。



 ◆◆◆



 更に五ヶ月の時が過ぎた。今ではすっかり二足歩行も上手くなった。猿から類人猿へ進化した気分だね。


 ロイ父ちゃんかエレナ母ちゃんに言えば家の裏手にある林までなら出歩いていいことになった。母ちゃんは心配してたけど、ロイ父ちゃんが「男は冒険してなんぼだ!」と主張して僕が外に出るのを応援してくれた。


 ロイ父ちゃんはもっと若い頃は国の騎士団に所属してて、国中を飛び回って魔物退治とかしてたらしい。ある時強力な魔物と戦って生死の淵を漂い、その時の怪我が元で騎士団を引退したらしい。それまでの功績もあってそこそこ広い土地と恩賞金を貰って今は農業暮らしだそうだ。エレナ母ちゃんは怪我した時の診療所にいたお手伝いさんをしてて、その時から恋人同士になったらしい。よくある話だ。


 さて、家の方の様子を見て、誰もこっちを見てないことを確認する。OK、……ついにこの時が来た。


 ヒーロースーツの機能確認とかは出来てたけど、実はヒーローマシンの確認が出来ていなかったんだ。まさか家の中に呼び出すわけにもいかないから、こうして外に出られるようになるまで待つ必要があったんだよなぁ。


 今日は一台だけ確認しよう、よく使う奴をね。マシンの呼び出し設定を弄って、演出関係の項目を全部OFFにする。空間に穴を開けて炎の轍を作りながら登場とかも出来るけど、そんな事したら目立ってしょうがないし、火事になる。自重、自重。


 そして呼び出しボタンを押す。十秒後、空間に小さく穴が開いた。


 僕が呼び出したのは、ヒーローマシン1号『レッドプラズマ』。形は真っ赤な大型バイクで各所に黒色で鋭角な模様が描かれている。最高速度はマッハ1を出せるらしいけどそこまで加速した事無い。他にもレーザーや小型ミサイル、機関銃なんかも内臓されている色々やりすぎな乗り物だ。


 異星人さん曰く、この世界の最新型戦車の性能をバイクで再現したらしいが、少なくとも戦車に鉄板を溶かすようなレーザー兵器はついてないと思う。


 このバイクには擬態能力もあって、公道とかを普通に走ってもポリスメンから怪しまれないような仕様になっている。ついでに透明化も可。自動操縦機能もついてて手放しロデオ運転も余裕と言う素敵仕様。

 前世でも公私共にお世話になりました。まだ学校に行ってた時期は遅刻しそうになった時にこっそり使ってたし。


 さあ、久しぶりに愛車『レッドプラズマ』とご対面だ……!!








 チリンチリンッ







 ……出てきたのは『三輪車』だった。


「あ、あるぅええ~~?」


 思わず舌足らずな声で疑問を漏らしちゃった。目の前にあるのはちょうど僕が乗れるサイズの真っ赤な三輪車だ。かつて一緒に悪の組織と戦った大型バイクの面影はそこに無い。しかし出現方法は一緒だからこれが『レッドプラズマ』なんだろうけど……どうしてこうなった?


 首を捻って『レッドプラズマ』を凝視する僕に、不意に前方から声が聞こえてくる。


「ヨウヤク呼ビ出シテクレタネ、カケル君。会イタカッタヨ」


「キャアアアアアア、シャベッタアアアアア!?」


『レッドプラズマ』から女性っぽい機械音声が発せられたので思わずベタな返しをしてしまった。『レッドプラズマ』は傷ついたようにハンドルに付いてる二つのライトを明滅させる。まるで涙目でウルウルしているようだ。


「ナ、ナンデ驚クノ? 前カラオ喋リシテタジャナイ」


「ごめん、ちょっと言ってみたかっただけ。久しぶり、『レッドプラズマ』。その姿ろ…どうしたの? 」


 あう、まだ舌が上手く回らない。『レッドプラズマ』はハンドルをくいっくいっ動かしていてまるでモジモジしているようだ。


「ヤーン、カケル君ノ小サイ格好モカワイイー! アノネ、スーツカラのデータヲ受信シテ、カケル君が赤チャンノ姿にナッテタノガ分カッタカラ、変形機構ヲ使ッテ大キサヲ合ワセタノ。ナンデソンナ事ニナッタノ?」


「ええと簡単に説明すると、生まれ変わらせて貰った、んだと思う…」


 僕は今までの経緯を軽く説明した。マデゴーグを倒したけれど死に掛け、そして不可思議な存在に生まれ変わってヒーローを続けてくれと言われた、という言ってる自分自身も信じられないような内容だ。

 僕の話を聞いた『レッドプラズマ』はライトを瞬かせて黙っている。突拍子も無い話を聞いて目をパチクリさせてる様に見える。しかし実際はデータ検索をしてただけの様だった。


「ウーン、該当データ無シ。カケル君ヲ生マレ変ワラセタ存在ニツイテハ見当ガツカナイネ。デモ良カッタヨ、カケル君ガ死ンジャワナクテ……。カケル君ガモシ死ンデタラ、私、私……」


 ライトの部分から光るものが流れ落ちた気がする。オイル漏れ? 『レッドプラズマ』はしばらく黙っていたが、ふとハンドルを左右に振ってライトを明るく照らしなおす。


「ゴメンネ、湿ッポクナッチャッテ。デモ、コレデマタ一緒ニ走レルネ!! サア、早速乗ッテ見テ?」


「そ、そうなんだ……。でもごめん、今日は確認の為に呼び出しただけだから、もう帰っていいよ」



『レッドプラズマ』のライトから光が消えた。



 僕ははっと自分の失言に気付いたが時既に遅し。『レッドプラズマ』のハンドルの根元から幾条もの光線が発せられ、空中に一人の女の子の姿を投影する。光が消え去ってもその女の子は消えない。これは『レッドプラズマ』の機能の一つ『立体映像投影装置』!?


 説明しよう、『立体映像投影装置』は『レッドプラズマ』内に組み込まれている支援AI(人工知能)、通称『朱美あけみ』さんの姿を現実世界に映し出す装置だ。投影と言っても空気中の元素を云々…、要するに実体とほぼ変わらない物を出現させるSF(少し不思議)科学の産物だ! ちなみにさっきまで喋っていたのも朱美さんです。


 目の前に映し出された朱美さんは以前の高校生くらいの姿ではなく、僕と同じくらいの幼児体型になっていた。

 足元まである長い黒髪とキリリとした眉目、顔立ちは幼くも大人びた雰囲気がある和風美人の顔だ。そう言えば僕の顔ってどんな感じなんだろう?


 などと考えて現実逃避したものの、僕を見る朱美さんの光を反射しない暗~い眼からは逃れられなかった。朱美さんは上目遣いに僕を見据えながら詰め寄ってくる。


「どうしてそんな酷い事言うの…? 私、すっごく待ってたんだよ? ヒーロースーツが先に呼び出されても、スーツだけ何度も何度も呼び出されても、そのくせ私は一年以上ほったらかしにされてても、ずっと待ってたんだよ!!? かける君とまた一緒に走る日を夢見て我慢してたのに、どうして乗ってくれないの!?」


 ひいいいいい!? やってもたー!! 一年離れてたから忘れてたけど、朱美さんて滅茶苦茶粘着系のキャラだった! 異星人さんもどうして朱美さんみたいなAI選んだんだろう…。

 僕が焦って二の句が告げられない内に朱美さんの妄想はエスカレートしていった。


「はっ!? さてはあの自転車ね!! あの中学時代に買った自転車が追いかけてきたんでしょう! ムキイイイイ、部品単位にまでばらして川底に埋めてやったのに執念深い奴!!」


「僕の自転車が無くなったのって朱美さんがやったの!?」


 驚愕の事実! ある朝起きたら僕の自転車が無くなったせいで学校に遅刻しそうになったから、『レッドプラズマ』を使って学校に行った事があったが、それは朱美さんの自作自演だった!


「翔君は私のモノ、私だけのドライバーだもん……。翔君のお尻が乗るサドルは、私のだけでいい…」


 くっくっくと笑いながら俯むく朱美さんは、凄く、凄惨だった。彼女は顔を上げ、うっとりした眼でこっちに近づいてくる。


「翔君、一緒に……走ろ?」




 ピッ




 僕は思わず『収納』ボタンを押してしまった。




 キュイイイイイン…


『レッドプラズマ』の背後に空間の穴が開き、朱美さんの本体である『レッドプラズマ』三輪車ver.が収納されていく。

 朱美さんは驚愕の表情を浮かべながらこっちに手を差し伸べてくる。



「翔君、どうして!? どうして直しちゃうの!? お願い、戻さないで!! 翔君ーーーー……!!?」



 そして『レッドプラズマ』が空間の穴に戻り、穴が消え去ると同時に朱美さんの姿も消えた。



 ……どうしよう、マシンが一台使えなくなったかも……。




 その後、スーツを通して朱美さんとメールのやり取りをしてなんとか機嫌は直して貰えたが、代わりに頻繁に送られてくる朱美さんのメールにちゃんと返信するよう厳命されてしまった。



 …トホホ、この小さい体でメール打つのって結構辛い…。



紹介文の所に書き忘れてましたが、一応ハーレム物っぽくする予定です。


そしてそのハーレム要員第一号、ヒーローバイク『レッドプラズマ』こと朱美さんです! 属性はヤンデレです!!

……石を投げないで!( >ω<)

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