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第11話 水泳! 夏場の避暑活動 前編

 妖怪退治系ヒーロー幽谷かすだにゆうことレオン・タイマン君が村に来てから二日経ちました。


 季節は初夏を過ぎ、夏本番まで秒読み段階の暑い日々が続いています。でも今日も授業はあります。ああ夏休みが恋しい……。ヒーロー稼業で無いようなものだったけど。


 朝方、まだ授業が始まる前の事、朝ご飯を食べ終えた僕は台所から二階に上がるべく、階段のある玄関前のホールに移動していた。



 トントントン



 几帳面に三回、玄関の戸が叩かれた。サラやリーザが来るにはまだ早い時間帯だが、偶々早く来たのかな? と思いつつ、僕は玄関の戸を開けた。


「よう、おはようさん」


 にかっ、と白い歯を見せて笑いながら玄関に立っていたのは、先日恥ずかしい歴史を互いに刻んだ勇だった。


「あ、ああ…おはよう」


「なんだかける、元気が無いな。おっとフィアルだったっけ。横文字の名前って慣れないよなー」


 先日の黒歴史を記憶の底に封じ込めたのか、勇は陽気に話しかけてくる。


「ええと、遊びに来たの? 悪いけど今から授業なんで、昼過ぎに来てくれないかな?」


「ん? ルリィさんから聞いてないのか? 今日から俺もフィアル達と一緒に授業を受けるんだぜ」


 初耳……じゃないかも知れない。そんな事をルリィ先生が言っていたような気はするが、勇との出会い以降、僕をこの世界に連れてきた神様(?)のことが気になって上の空な時があったからなぁ……。


「あ~~……聞いたかも知れないけど、忘れてた」


「そうか? まあいいや。中に入れてくれ、外は暑過ぎる」


 そう言う勇の額には汗が二、三滴光っていた。僕は玄関を大きく開いて勇を迎え入れる。勇は中に入って玄関が閉まると、生き返ったとばかりに大きく息を吐いた。


「あ~……フィアルの家って涼しいな。うちと全然違うわ」


「ルリィ先生が、風の精霊に頼んで涼風を招き入れてるらしいよ。裏の雑木林も樹の精霊が協力して温度を下げてくれてるらしくて、そっちから涼しい風が吹いて来るんだ」


「うわっ、羨ましい。俺もそんな事出来るように成りたいな」


 勇の場合は、変身すると布を全身に纏わり付かせるから余計暑そうだしな~……とか漠然と考えながら、勇を二階に案内しようとした時、事件は起こった。



 ガチャッ 「……あれ? フィアル君のお友達……?」



 台所から現れたのは、我が家に滞在中の聖女……の遺骨、スーさんだった。






「悪霊退散! 怨敵調伏!!」



「やめろ馬鹿!!」






 どこから取り出したのか、複雑な文様と字が書かれた御札を手に持ち、スーさんに向かって印を結ぼうとした勇を僕は殴り倒した。


 全力で殴り倒したせいか、勇は盛大な音を立てて床に顔から着地した。直後、鼻血を出しながら勢い良く立ち上がり、迫ってくる。



「痛ってえぞ!? 何しやがんだフィアル! ガシャドクロなんか家に飼いやがって……、まさかとり憑かれてんのか!?」


「お前、スーさんに向かってガシャドクロとか、妖怪扱いしてんじゃねぇよ! 罰当たるぞこの野郎!?」


「け、喧嘩は止めてね……?」



 互いに掴み合い、大声を張り上げる僕らの間に、スーさんはやんわりと手を差し入れて引き離そうとする。

 勇はバッと音がしそうな程の勢いでスーさんから離れると、警戒心丸出しの眼でスーさんを睨む。


「おい、フィアル。何で家の中に動く骸骨が居るんだ。説明しろよ」


「スーさんは只の骸骨じゃない! 司祭様から聖女認定された有り難い骸骨様なんだぞ!!」


 僕はスーさんを守るように前に立ち、勇と対峙する。後ろでは、スーさんが照れ臭そうに、もじもじしている気配が伝わってくる。


 だが勇は眉を吊り上げ、不信感を顕にして構えを崩さない。


「そんな無茶苦茶な話があるもんか! 元聖者なら動く骸骨やってないで、安らかに永眠してるだろうがよ! 普通は!」


「それは事情があって……。あ、そうだ。レオン、相手の霊力とか測る事が出来たよな? 相手が善良か邪悪かの判別も出来ないか?」


 先日の出来事を思い出して僕は提案する。勇は何を言い出すんだ、と呆れ顔だったが、律儀に答えてくれた。


「一応出来るよ。相手の霊力と同時に、相手に掛かっている術の特性や、過去の行いからの縁を読み取って、大まかに相手の正邪の属性を分類できる」


「じゃあ、それをスーさんに使ってみろよ。そしたら納得出来るだろう?」


 頭に血が上っている状態では、こっちが何を言っても聞かないだろうからな。でも自分の術なら信用してくれるだろう。……一応攻撃の術を使ってこないか警戒はしておこう。


「……分かった、そいつの真の属性が邪悪だったとしても、吠え面かくなよ?」


 勇はそう言うと、また目にも留まらぬ速度で印を組み始めた。スーさんは話の流れを理解出来ていないのか、僕と勇の間で視線を往復させている。片手が不安そうに、でも僕を守るような力強さで僕の肩に置かれる。


 印を組み終わった勇は、親指と人差し指で輪っかを組むと、そこからスーさんを覗き込んだ。





「………っぎゃああああああああ!!?」





 数瞬後、勇は両目を押さえて悶絶しだす。


「だ、大丈夫!?」


 スーさんが慌てた声で勇に近づこうとするが、それは意外にも勇によって止められる。


 勇は片手で顔を覆いながら、もう片方の手を突き出してスーさんを押し留める。



「す、すいませんでした……。貴方の様な徳の高い方への乱暴な振る舞い……、大変申し訳ありません」


「え……? あ、はい……大丈夫です。気にしてませんから……」



 勇は深々と頭を下げてスーさんに謝罪する。スーさんは困惑しつつも、労わりの声を勇に向ける。それに勇は恥じ入るように顔を背けた。……何が見えたんだ、こいつ?


 僕はそっと勇に近づくと、気になったていた事を聞く。



「一体、スーさんはどう見えたんだ?」


「……後光が射して見えた……。サーチライト級の……。昔見た、高僧とか仙人以上の光量だった……」



 まだ眼が光の残像に支配されているのか、勇は眼をしょぼしょぼさせて、蚊の鳴くような声で返事をしてきた。



 徳の高さだけで、暴れる勇を一発で押さえ込むとは……。スーさん、恐るべし……。



 その後、スーさんに鼻血の治療をしてもらっていた勇は、スーさんを拝みに来る村の爺さん婆さん以上の敬意を以って、スーさんにお礼を言っていた。



 ◆◆◆



 勇の鼻血が止まったところで、僕は彼を二階の教室に使っている部屋に連れて行った。部屋には先にルリィ先生が居て、何やら大きめの袋に色々詰め込み整理している様だった。


 僕が声をかける前に、勇が挨拶をした。


「おはようございます、ルリィさん。レオン・タイマンです。本日から授業をよろしくお願いします」


 ルリィ先生は耳をピクッと動かすと、少し急いで袋の口を縛り、僕達の方を振り返った。


「ああ、おはようレオン君。今日からよろしく。……フィアルとは大分打ち解けたようだな、下から騒がしい声が聞こえたぞ?」


「あ、はい……。まあ……」


「は、はは……。そうですね……」


 ルリィ先生は可笑しそうに微笑みながら、僕と勇の間で指を往復させる。ばつの悪さを感じた僕と勇は、曖昧な笑みを顔に貼り付け、乾いた声で応えながらそれぞれ明後日の方向を向く。


 ルリィ先生はほんの少しだけ眉を寄せ、お説教ではなく、注意のレベルで僕らを嗜める。


「元気がいいのはいい事だが、スーさんに迷惑をかけないようにな。レオンはお父さんから何も聞いてなかったのか?」


 勇は両のコメカミを指で揉みながら、前日の記憶を思い出そうとしていた。


「ええと……フィアルの家に偉い人が居るから粗相の無いように、という様な事は聞いた記憶がありましたが、てっきりルリィ先生か家主のロイさんのことかと思っていました」


 うちの父ちゃんはそこまで偉くないよ。元騎士で、強力な魔獣を退治するのに貢献して、隣国の貴族の娘さんと親交がある位……、結構偉大かも知れん。


 僕が我が義父の事を内省していると、部屋のドアがノックされ、すぐに開かれた。


「おはようございまーーす!」


「おはようございます……」


 元気に挨拶してきたのはリーザ、儚げに挨拶してきたのはサラである。


 二人は部屋に入るなり、見知らぬ少年、勇に対して身構えた様子を見せる。


「誰よアンタ? ここら辺じゃ見ない奴ね」


「……フィアルの親戚の人?」


 リーザは逆立てた柳眉の一部をひん曲げ、威圧感を感じる顔で勇を上から下まで無遠慮に見る。サラは主に勇の顔立ちから僕との共通点を見つけ出したようで、首を捻っている。……鋭いね、サラ。


「二人とも怖がらなくていい。この子は先日引っ越してきた神官さんの息子さんで、レオン・タイマン君だ。今日から一緒に授業を受ける仲間になるから、仲良くしてやってくれ。勇、この二人はリーザとサラ。リーザは気は強いが優しい子だ、すぐに打ち解けるだろう。サラは繊細だから、君が優しくしてあげてくれ」


 ルリィさんは高まった緊張を解きほぐすように、すかさずお互いの紹介をしてくれた。


 勇は突如現れた二人にも臆せず、爽やかな笑顔で挨拶をする。


「初めまして! レオン・タイマンです、今後ともよろしく!」


 リーザはまだしばらく警戒していたが、張っていた気を緩めると、素っ気無い挨拶を返す。


「リーザ・ウルズ。ま、よろしく」


 対してサラは、不思議そうな顔で僕と勇の顔を見比べていたが、警戒心は元から薄かったのか、微笑みを浮かべて勇に挨拶する。


「サラレット・テイラーです。これからよろしくね、レオン君」


「え、あ、う……ああ、よろしく!」


 勇はサラの笑顔を見た瞬間頬を赤く染め、どぎまぎした様子で頭を下げた。態度の違いに、横でリーザが面白く無さそうな顔してるのが、若干怖い。

 しかし不機嫌な様子を内に収め、ルリィ先生の方に向かっていった。


「先生、今日は何をするんですか?」


「ん? 今日はな……」



 グイッ



 先生の話を耳に入れる前に、僕は何者かに引っ張られて机の陰に連行された。僕を拉致したのは、鼻息荒く僕の首に手を回す勇だった。


「おいおい、翔……じゃなくてフィアル。お前あんな美少女と知り合いだったのかよ! てか俺が来るまで女三人に囲まれて授業とか……ハーレム主人公かコノヤロー!?」


 息が荒いです、勇さん。僕はノンケなんで、そんな血走った眼で見られると、無意識に背負い投げしたくなるからちょっと離れて。


 そして、やっぱり盛大な勘違いしてるなこの男。


 僕は努めて冷静に、しかししっかりと彼の耳に聞こえるように、決定的事実を告げた。



「サラ イズ 男。OK?」


「……HAHA、ナイスジョーク!」



 エセ外国人みたいな変な英語で、僕らは互いに不都合な真実に向き合った。まあ勇は思いっきり逃避したみたいだが。


 僕は、つまらない冗談を聞いたと肩を竦める勇に、真顔で更に言い募る。


「いや本当だから。ガチで、マジで」


「…………really?」


 おお、発音が良くなった。


 長めの沈黙の後に一言発し、笑い顔のまま表情を固めた勇はギクシャクと動き辛そうに顔をサラに向ける。


 サラは、先ほど見せた不思議そうな顔を僕らに向け、「何を話しているんだろう?」と言わんばかりに、可愛らしく小首を曲げてこちらを見ていた。


 その仕草に胸を打たれたのか、勇は再度顔を赤らめる。そして一度俯くと、ばっと音がしそうな勢いで天井を仰ぎ見た。



「こ、こんな可愛い子が男のなんて……。神よ、貴方はどれだけ残酷なのだ!?」



 一部発音がおかしかったぞ、コラ。


「そこっ、うるさいぞ! 話を聞いていたか!?」


 打ち拉がられる勇に対して、ルリィ先生からお叱りの言葉が飛んできた。その横のリーザからは侮蔑の視線も飛んできている。……ちょっと、何で僕にもその視線を向けるのさ!?


 リーザは機嫌の悪そうな顔でそっぽを向くと、部屋の扉まで足早に向かう。あれ、授業は真面目に受けるリーザが出て行こうとするなんて、珍しいな?


「その様子だと、フィアルも聞いてなかったな。全く……」


 ルリィ先生がリーザを眼で追っていた僕を見て、呆れたような溜息を吐いた。ごめんなさい、親友を男の娘呼ばわりする友人に絡まれていまして。


 ルリィ先生は、腰に手を当てて上半身を曲げ、僕らのほぼ真上から僕らを見下ろす。怒り顔のルリィ先生に、僕と勇は怯えながら沙汰を待っていた。


 すると、ふっとルリィ先生の顔が和らぎ、穏やかな声で僕らに今日の授業内容を教えてくれた。




「喜ぶといい、今日は川で水練の授業だ」




 ◆◆◆



「ただ川で泳ぐだけの授業じゃないぞ。川に住む魚や生き物を観察し、同時に川の危険性についても教える、実体験型授業なのだ」


 そう言いながら、川に向かう道を先導するルリィ先生は、妙に浮き浮きしていた。その背中には何やら色々詰まった袋がぶらぶらと揺れている。


 僕らもルリィ先生の後ろを付いて行きながら、これからの水遊びに心躍らせていた。


「最近とっても暑かったし、川に行くなんて久しぶりだから、楽しみだね~」


 普段余り活動的でないサラも、思いっきり涼しさを味わえそうな状況に晴れやかな笑顔を見せ、軽くスキップもしていた。


「そうねー。フィアルの家はまだ涼しい方だけど、この暑さの中、単語覚えたり歴史を勉強するのはきついわ」


 リーザもサラに同意する。この二人の意見が一致し、かつ同じ様にこれからの事を楽しみに語り合う姿なんて、いつ以来だろうか。……下手すると、これが初めてかも知れない……。


 勇は物珍しそうに周りを見回しながら付いて来る。勇が迷子にならないよう、確認のために何度も振り返らないといけないから、そろそろ落ち着いて欲しい。


「レオン、また今度案内してあげるから、今は離れないように注意して」


「おう、悪い悪い」


 勇は離れていた距離を詰め、ルリィ先生達の集団最後尾に居た僕と並ぶ。


「長閑でいい所だな。俺が義父さん達に拾われたのはもっと都会だったし、日本でも住んでたのは街だったから、田舎自体が新鮮だな」


「そう言えば、勇も神様に頼まれて転生してきたんだったね。その、……どう言う状況で亡くなったか、聞いてもいい?」



「おう。妖怪結社『イマジン』を倒した翌日に、車に轢かれそうになっていた子どもを助けようとして、逆に車に撥ねられて死んじまった」



 恐る恐る聞いてみたら、勇はあっさり答えてくれた。てか、死ぬ間際までヒーローやってますな。勇は上を見ながらその時の記憶を次々披露する。


「んで、自分の魂が抜けるのが分かって、ああこれで俺も往生するんだなって思ってたら、いつの間にか、光の塊みたいな霊力スカウターが測定不能を示す奴が目の前に居て、俺に別の世界でまた戦わないかって言ってきたんだ」


 状況的には僕の時とほぼ一緒だな。


「仲間への未練とかあったけど、死んでしまったら如何し様も無いし。交渉しても生き返らせるのはNGだって言うから、仕方なく転生することにしたんだ」


 ああ、確かに生き返らせてって言う交渉はしてもよかったかも。しかし、結論として……


「まあ、未だにあの存在が何だったのか、皆目検討が付かないんだがな」


 ですよねー。ヒーロースーツのログを漁ったけど、映像記録も残っていなかったし。ただ高エネルギー反応の記録は見つかったから、何らかの存在があの場に居たとは思うんだけど。


 そんな事を考えていると、勇とは逆方向の僕の隣に、誰かの気配を感じた。


 顔を向けると、ちょっと悲しそうなサラと眼が合った。



「………仲、いいんだね。二人とも………」



 サラさん、何故浮気寸前の交流を他の人としている旦那を見つけた時の、寂しげな奥さんの目を僕に向けるんですか? いや見たこと無いけどさ、そんな眼。


「おう、俺とフィアルはもうマブダチだからな!」


 話を聞いていた勇は、僕の肩に腕を回し、陽気にサラに話しかける。空気を読んでよ霊感ヒーロー!




「そう………。………ればいいのに………」


「ヒィッ!?」




 俯いたサラが何か呟いた瞬間、勇はビクッと震えると僕から離れて距離を取った。


 その声に驚いた様にサラが顔を上げたが、その顔はいつもの穏やかな顔に、困惑を貼り付けた普通の表情だった。



「だ、大丈夫? レオン君」


「あ、う、うん! 大丈夫です、サラさん!!」



 心配そうに声をかけて来るサラに対し、勇は直立不動で何故か敬礼のポーズを取る。その顔面は青く、額には汗が光っていた。サラはその姿と行動に困惑の色を深めて、繰り返し勇の身を気遣う。


「本当に大丈夫? 僕何か変なことした?」


「いや! だ、大丈夫だよ~。……ちょっとフィアルの野郎が汗臭かったから離れただけさ!」


 言うに事欠いてそんな理由を挙げるか!? ……川で良く体を洗おう。


「そうなの? 暑いから、汗も出るよね~。……僕は気にしないよ、フィアル」


「あ、うん……ありがとう。サラ」


 そう言って寄って来るサラは、何となく嬉しそうだった。


「川が見えてきたわよ!」


「え、本当!?」


 リーザの声に誘われるように、サラは先に行ってしまった。サラが十分に離れたところで、勇は大きく息を吐き出して、冷や汗を拭った。


「何があったのさ? 急に飛び跳ねて」


 明らかに僕より多汗な状態になっている勇の具合は、余りよろしいものでは無さそうだった。勇は先を行くサラの背に視線を向け、戦慄の表情を浮かべて唾を飲み込む。


「一瞬だけだったが……、大妖怪クラスの呪いの気配を感じたんだ。いや、あれはどちらかと言うと強力な思念か? どっちにしろ、あのサラって子は翔に相当執着しているように感じたな」


 やめて。薄々感じては居たけど、他の人から言われた事は無かったから、敢えて意識しないようにしてたのに!


 勇と同じような汗が噴出した僕、その肩に勇はポンと手を置くと、生暖かい笑顔を向けてきた。



「……よかったな。美少女、と見紛う男の娘にあんなに好かれて。……腹にはジャンプ級の厚さがある雑誌を仕込んどけよ?」


「刺される前提で話を進めるな!! 大体今の状況的に、刺されるのお前だろうが!?」


「やっべ、ジャンプ雑貨屋に売ってるかな」


「どこにも売ってないよ!!」




 そんな馬鹿みたいな会話を交わしつつ、僕らは川へと続く道へ歩き出した。



 前方から漂ってくる涼やかな水の気配とは別に、妙な寒々しさを背中に感じながら。



今回、前フリが長くなってしまったので、前後編に分けました。


後編は、『アウトキャスト~』の方を二、三話上げてから投稿しようと考えています。


川でキャッキャウフフするフィアル達を書くのか……我ながらハードル上げすぎたかも……。

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