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第10話 衝撃! 新たなるヒーロー?

 朝日が顔を出すまであと一刻も無いと思われる明け方、森の中では騒がしいパレードが行われていた。


 普通のパレードと違うのは、パレード参加者が少しずつ減少している事だろう。先頭を行く二人は声を張り上げ、静寂の森に絶叫という行進曲を奏でている。


「ぬおおおおおお!? わ、私のスケルトン軍団がもう半分もいないぞ!?」


 後ろを確認して白骨の顔面を青くしたのは死霊術師ハセウム。下半身は分離したままなので、ローブを翻し、二本の杖を使って竹馬のように歩幅を稼いでいる。


「も、もうダメじゃーー!! わしらはここで終わりなんじゃー……!」


 ガクリと膝から崩れ落ちたのは小汚い作業用エプロンをしたドワーフ、狂気のゴーレムマスター、デイボーだった。


 デイボーは荒い息を吐きながら恐怖と悔しさに涙を流す。そのすぐ後ろでは、デイボー作の木製ゴーレム二号が主を守るように佇んでいる。


 大地に突っ伏してむせび泣くデイボーに、隣を並走していた死霊術師ハセウムは足を止め、無理やりにデイボーを引き起こす。


「諦めるなデイボー! 約束したじゃないか、いつか私と二人で最高の悪の組織を立ち上げ……、私達を認めなかった世間を恐怖に陥れてやろうと!!」


「し、しかし……あのエルフの女騎士は強過ぎ……」



 ヒュン! カカカッ



 二人が会話している最中に天然の遮蔽物である木々の合間を縫って、数本の矢が木製ゴーレム二号の頭部に命中した。



「「ヒイイイイイイィィィ!?」」



 デイボーとハセウムは絹を引き裂くような声をあ上げ、抱き合いながら疾走を再開した。


 彼らの後方では、骨が吹き飛ばされ地に落ちる乾いた音が散発的に聞こえる。……恐ろしいのはそれが徐々に近付いているという事であるが。


「で、デイボー! 何か秘密道具的な物は無いのか!?」


「あったらとっとと使っとるわい!! そっちこそ何か便利な魔法は無いんかい!」


「わ、我が研究の結晶、『ゾンビゴースト』の召還ならできるが……」


「そいつは強いんか!?」


 必死で問い掛けるデイボーに対し、ハセウムは気まずそうに顔を背ける。


「いや……普通は出来ない、『ゾンビをゴースト化』できたってだけで強さは並のゴーストと変わらないんだ……」


「わしが言うのもなんだが、お前さん研究の方向性を間違っとるぞ!!」


 駆け続ける二人の後に続く音は、もう数える程しか残っていなかった。



 ヒュン! ガッ!



 またも風切り音が響き、木製ゴーレムの膝間接が打ち抜かれ、ゴーレムの膝が地に着く。


「ああっ!? 二号ーーー!!」


 デイボーは振り向いて手を伸ばし、ゴーレムもそれに応えて手を伸ばす。見つめ合う一人と一体の間には、まるで恋人同士が離れ離れになるのを惜しむ様な場面が展開された。


 しかし無情にも閃いた銀の軌跡が、ゴーレムの頭部を上り始めた朝日に向かって飛翔させる。その背後には爛々と光る目と長耳の影があった。


「のおおおおおお!? 二号ーーーー!?」


「追いつかれたーー!?」


 二人はお供との別れを惜しむ間も無く、逃走を再開せざるを得なかった。



 ◆◆◆



「………そうやって後少しのところまで追い詰めたんだが、奴らは崖から身を投げて逃走してしまった。崖の下に流れていた川の川下まで探索したが、結局見つけられなかった。同じ方法で二度逃げられるとは……私も大分腕が鈍ったな」


 授業後の休憩時間中、僕らフィアル、サラ、リーザ三人の目の前で溜息を吐きながらそう述懐するルリィ先生に、僕らは軽く引いていた。


「そんな事無いですよ先生! スケルトンの大群とゴーレムを傷一つ負わずに倒すなんて、並の騎士じゃ出来ないです!」


 あ、リーザだけは引いてなかった。むしろ押せ押せでルリィ先生を褒め称えている。キラキラと光る目は伝説の英雄を目の当たりにした子どもそのままだ。


 本来なら僕らもそうなるべきなのかも知れないが、普段おっとりした感じのルリィ先生がばったばったとスケルトンをなぎ倒し、一刀の元にゴーレムの頭部を切り飛ばす光景を想像するとどうしても違和感を感じる。



 ……と言うか、ヒーロースーツありでもルリィ先生に勝てないかも知れない。



 ルリィ先生は続きをせがむリーザに、もうこれ以上の話は無いよと苦笑を返していた。そして話を逸らす為か、別の話題を振ってきた。


「そう言えば、近々村にガーレンの知人が引っ越してくるそうだ。その人にはフィアル達と同年代のお子さんも居るそうだから、また友達が増えるぞ。よかったな」


 ガーレンさん……、ルリィ先生の知り合いの神官さんだったか。


「その人も神官さんですか?」


 サラがちょっと興味を引かれたのか聞いてくる。ルリィ先生は首肯を返してくれた。


「ああ、ガーレンと同じ武神『バセム』の司祭だ。なんでも村に教会を建設する計画が持ち上がっているらしくてな、その為の下準備をしに来るそうだ。教会建設後はそのまま在留するみたいだぞ」


 へー。性別はどっちだろうか。


「お子さんは男の子らしいぞ。残念だったな、フィアル」


 うわぉ、もろバレですか。してやったりといった笑顔が小憎らしいです先生。そしてサラとリーザの白眼視が怖いです。



 その日はそんな感じで過ぎていった。



 ◆◆◆



 そんなこんなで数日後、その司祭さん一家が引っ越して来ました。司祭さん達の仮住まいは僕の家近くにあった空き家らしく、ロイ父さんの命令でその掃除や引越し手伝いに僕も借り出された。


 ただ珍しい事に、サラは風邪を引いて寝込んでいて、リーザは家の手伝いで来れなかった為、僕一人だった事だ。


 僕は授業が出来なくて暇になったルリィ先生に連れられて、朝ご飯の後、ぽかぽかの陽気の下その司祭さんの家に向かった。


 空き家は畑のそばの平地に立てられた一階建ての平屋だけど、敷地面積は結構広めでキッチンやリビングなども完備されているちゃんとした家だ。


 僕らが到着した時には既に馬車が一台停まって、数人の村人が荷物を下ろしていた。ルリィ先生は忙しく動くその人たちに大きな声で挨拶をした。


「お早う御座います! 手伝いに来ました」


「ん? おおルリィさんじゃないですか。ロイさんは来てないんですか?」


「彼は農作業があるので、私が代わりに来ました。今日は生徒が二人とも諸事情で休んだので、授業も中止にしましたから」


「なるほど。おっ、ロイさんとこのフィアル君も来てくれたのか。ありがとな」


 まあ父上に命令されて来たんですけどね。……今頃ネージュを独占してご満悦なんじゃなかろうか、あの親父は。


 村人さんは僕らにちょっと待つよう言うと、家の中に入って行った。数分後、中から壮年の男性を伴って戻ってきた。


 壮年の男性はルリィさんの前に来ると頭を下げて自己紹介をしてきた。


「初めまして、私はジョセフ・タイマンです。ガーレンからお話は聞いています、ルリィさんですね?」


「ええそうです、ジョセフ司祭。今日は引越しの手伝いに来ました」


 ジョセフさんは穏やかな笑みで感謝の礼をルリィ先生に示すと、次に僕の方を見てきた。その目は何だか不思議そうだった。


「こちらの坊ちゃんは……?」


「私の友人、ロイ・ノースポールの息子さんで、フィアルと言います。引越しの手伝いと、お宅の息子さんに会わせて友達になってくれればと思い、連れて来ました」


 ルリィ先生の言葉に、ジョセフさんはパッと顔を明るくする。


「おお、そうでしたか! それはありがたい」


 そして僕の前に跪くと、目線を合わせて頼み込んできた。


「フィアル君、私の息子は少々気難しい処があるが、決して悪い子では無いのだ。もしよかったら、友達になってやってくれ」


 うーん、リーザみたいな子なんだろうか。リーザを交えて怪獣大決戦は勘弁して欲しいなぁ。しかしここまで頼られては嫌とは言えない。


「はい、仲良くできるよう、頑張ります」


「そうか……。息子は君に顔立ちが似ているから、きっと仲良くなれるよ」


 その言葉に安心したのか、表情を緩めるジョセフさん。彼は立ち上がると、家に向かって声を張り上げた。しかし顔立ちって……?


「レオン! ちょっと表に出て来なさい!」


 ほう、レオン君と言うのかその子は。果てさて、鬼が出るか、蛇が出るか……。


 しばし後、とことこと近づいて来る足音が聞こえ、僕と同じくらいの背格好をした少年が戸口に姿を現した。


「なんだい、父さん。今悪霊が居ないか探索中だから後にしてくれないか?」



 初っ端からわけの分からない事をのたまったのは、見事な黒髪・・の少年だった。



 ◆◆◆



 ここで一つ解説。転生した僕の体は、前世の僕がそのまま赤子になった状態でした。成長した現在、僕は現世の父さん母さんとは全然似ていません。


 そして、少なくともこの地域で黒髪は大変珍しいようです。皆金髪やら茶髪やら赤毛やらです。


 目の前のジョセフさんは茶髪であり、対するレオン君は遺伝的にありえない程黒々とした髪の毛をしている。いやお母さんが黒髪かも知れないけどさ。


 しかしもっと違和感を感じる、ある意味懐かしい特徴をレオン君は備えている。




 めっちゃ和顔やねん。




 ジョセフさんとか彫りが深い顔立ちをしているが、レオン君は大変平たい面相をしている。狐目みたいな釣り上がった目をして細面だ。まさしく醤油顔って感じかな。ちなみに僕は昔砂糖醤油顔って言われた。……童顔ってことだろうか。


 レオン君は訝しげな顔をこっちに向けていたが、僕に気付くとハッと顔色を変えた。


 彼も気付いたのだろう。自分とよく似ている顔立ちをした僕に。


 ジョセフさんに手招きされ、レオン君は僕達の傍に近寄ってきた。ジョセフさんはレオン君と僕を引き合わせると、それぞれ紹介してくれた。


「レオン、こちらの少年はフィアル・ノースポール君と言って、この村に住んでいらっしゃる。フィアル君。この子がレオンだ。二人ともどうか仲良くしてくれ」


 ジョセフさんは周りを見回すと、僕に拝むようなポーズを示す。


「フィアル君、すまないがこの子を連れて村を案内してあげてくれんかね? 引越しの手伝いはいいから」


 まあ願ったり叶ったりだね。僕もこのレオン君には聞きたいことが山ほどあるし。ジョセフさんは、レオン君の顔色を窺いながら確認を取る。


「レオンも……それでいいな?」


「分かったよ、父さん」


 すんなり同意したレオン君に、ジョセフさんはあからさまにほっとしていた。



 ◆◆◆



 引越しの手伝いから解放された僕とレオン君は、連れ立って、しかし無言で道を歩いていた。このまま無言でいるわけにはいかないが、さりとていつ人通りがあるかも分からない所で会話する気にもなれない。


「……うちの裏手に人がまず来ない雑木林があるんだ。そこでちょっとお話・・しないか?」


「……いいね。フィアル君と話たい事があるんだよ」


 妙に大人びた口調でレオン君は同意してくれた。


 僕はレオン君を連れて家に戻り、家人に気付かれないように林に向かった。家が見えなくなる程度に奥に進んだ僕らは、一定の距離を空けて対峙する。

 そのままどう会話を切り出していいものか悩んでいたら、向こうから話を持ちかけてきた。


「なあ、フィアル君は……、神様って信じるかい?」


 司祭さんの息子だから、普通の人だったら武神『バセム』の事と思うだろう。だが僕にはもう一つの心当たりがあった。


「……死の間際に、異世界に転生させてやるから力を貸せ、って言う神様なら見たことあるよ」


 僕をこっちの世界に連れて来た元凶、と言うのは失礼か。その原因について言及してみた。普通なら滑った冗談にしか聞こえない台詞だが、レオン君の反応は……? 


 レオン君はくくくっ……と含み笑いを洩らしながら俯く。


「なるほど、なるほど……。異世界に転生させる神様ね」


 そして顔を上げると、心底嬉しそうにこっちを見てくる。




「それなら僕も心当たりがある。……初めまして、こっちの世界では初めて会う元日本人さん。僕の本当の名前は『幽谷かすだに ゆう』。『幽・撃・隊ゴーストバスターズ』の一員だ」




幽・撃・隊ゴーストバスターズ』? もしかして、この人もヒーローの一人?


「えっと……、君も悪の組織とかと戦っていたヒーロー?」


 確認するように問うた僕の言葉に、ちょっと眉を寄せて考え込む勇君。いやレオン君? ややこしい。


「ヒーロー……? そう言う風に思っていたことは無いな。悪の組織と言えば……、まあそれらしいものとは戦っていたが、僕の敵は基本妖怪変化や悪霊達が多かったね」


 うん、所属組織の名前からして予想は付いていたけど、僕とはジャンルがかなり違うヒーローみたいだ。こっちが科学系ヒーローとしたら、あっちはオカルト系ヒーローか。


 勇君は微妙な表情で悩む僕を不思議そうに眺めていたが、気を取り直して僕の過去を聞いてくる。


「それで、フィアル君の本名と、過去の偉業は聞かせて貰えないのかな?」


「え。あ、うん……。ええと、悪の組織の首領マデゴーグ率いる怪人部隊や怪獣と戦ってました。『次元戦士・ディメンジョンマン』こと的場 翔です。どうぞよろしく」


 あ、さっきの僕と同じ微妙な表情をしてる。なんか外国で同郷の人間に会ったはいいが、仕事も生活環境もまるで違うせいで話し辛い感じ、って顔だ。


「そ、そうか……。………お、俺は大妖怪『九尾の狐』を倒したことあるもんね!! ほ、他にもたくさん妖怪や悪霊を封滅、調伏したし!!」


 違った、対抗意識で悩んでただけらしい。


「へ、へー……凄いですね……。僕は悪の組織を相打ちで壊滅させた位で……」


「何それドラマチック!? くっそー! 普通に妖怪結社『イマジン』を倒した俺の活躍が霞むじゃん!!」


「そっちの方がいいと思いますよ……」


 どうも勇君は僕の過去が羨ましいようで、しきりに悔しがっている。ちょっとむくれた様子でぶつぶつと何事か呟いていたが、気を取り直して更に身の上話を聞いてくる。


「そうだ、次元戦士とか言ってたけど、どんな事が出来るんだい?」


「まあ往年の戦隊物みたいに、ヒーロースーツに身を包んで戦うんだけど、変身した方がいい?」


「変身するのか!? やべっ、ちょっと見せて!」


 途端にワクワクした表情でこっちを見てくる勇君。年頃の男の子の顔になっているなー。まあ期待されるのは悪い気はしないので、こっそり演出設定をONにしてヒーロースーツを呼び出す。



 ピピピピピ……!



 電子音が鳴り響き、僕の右手甲に刻まれた文様が光りだす。最初は白く、次第に紅くなっていった光は僕の全身を包み、一瞬の閃光の後、僕の体は赤いヒーロースーツに包まれていた。



「『次元戦士・ディメンジョンマン』……、参上!!」



 ドオオオオンッ!!



 腕を高く掲げる決めポーズをとった瞬間、背景に爆発映像(CG)が表示され音声が流れる。


 勇君は口元を押さえ、緩む表情を必死に隠していた。


「やべぇ……昔ながらのヒーローって感じでカッケー……。赤って事はリーダー役だったのか!?」


 勇君は僕のヒーロースーツを指差してそう聞いてくるけど、どう答えたものかな……。


「えっと、僕はソロで活動してたので、仲間はいないんだ。それにグループだったら『次元戦士・ディメンジョンマン』じゃなくて、 『次元戦隊・ディメンジョンレンジャー』とかになると思う」


 僕の指摘に勇君はパンッと額を掌で打ち、盲点だったと悔やむ。


「そういやそうだよなー! いや俺はずっと仲間と活動してたから、つい翔さんもそうだとばかり」


「勘違いは誰にでもあるよ。それと、カケルでいいよ」


「そうか? じゃあ俺も勇でいいぜ」


 勇は照れくさそうに鼻の下を人差し指で擦り微笑む。僕もふと笑みを溢していた。ヘルメットで分からないだろうけど。


「そうだ、勇はどんな風に妖怪と戦っていたの?」


「お、そうだな。俺も見せないと不公平だな。翔ほど格好良くは無いけど、俺もある物を身に着けて戦うんだ」


 そうすると、勇は両手を組み合わせて複雑な印を次々と結んでいく。絡まり合うような印なのに流れるようなスピードだ。正味三秒の間に十個は結んだように見える。



「降臨……『阿修羅』モード!!」



 カッ!!



 一瞬光に包まれる勇。光が消えた直後には、勇の体を無数の長い布が覆っていた。


 ミイラを包む包帯が部分的に脱げかけた状態、と言えば近いだろうか。細長い布は勇の体の至る所を覆っている。所々変色して茶色になっているが、その布は不思議なオーラを放っており、まるで血液が循環するように複雑な紋様が布の上を走って蠢いている。


 グロテスクにも見えるが、不思議と不快感は無かった。むしろ頼もしさを感じる。……やばいちょっと厨二的な格好良さがある。


 顔の部分なんて片目だけ隠れておらず、髪はそのまま出ている。また布の端は宙にふわふわと浮いて、まるで天女の羽衣みたいだ。


 僕は知らず知らず唾を飲み込んでいた。


「か、カッコイイじゃないか……」


 ちょっと得意げに勇は胸を張る。


「そ、そうか? この布は古代の高僧が使用していた袈裟や服飾を、儀式によって鎧と成したものでね。対霊、対妖怪に対して最高の防御力を誇る一品なんだ。勿論防御だけじゃなく、霊力増幅効果、霊力探索効果、術法補助機能、筋力補助機能…等々多くの特殊効果も満載なんだぜ」


 長々と薀蓄うんちくを語る勇はとても誇らしそうだった。自分の装備を褒められるのは、誰だって嬉しいよね。


「そうだ、翔の霊格も測ってやるよ。ちょっと待ってな」


 勇は印を組むと僕をじっと見つめてきた。一つだけ見えてる目から仄かに紫色のオーラが立ち上る。なんか緊張するな。


「……基礎霊力五。霊格……一般人。まあ変身ヒーローの霊力は高い必要は無いからな」


 気を使ったような苦笑いはいらないよ! 別に悔しくないもんね!


「ついでに言うと、俺の霊力は五万だ。最盛期には五十万はあったんだけど、転生して子どもになったら一気に減ってね」


「自慢かコノヤロー」


 おっとつい声に出てしまった。でも勇は気にせず、むしろ気安い調子で声を掛けてくる。


「やっかむなよ翔。俺はそっちのスーツもカッコイイと思ってるんだからよ。そうだ、翔のスーツには、ビームとかレーザーとか光の弾を撃ち出すような武器とかないのか?」


「あるけど……見たいの? ここで撃つには目標がないよ」


 周りに木はいっぱいあるけど、さすがに的にして倒したりしたら、ルリィ先生あたりが不信感を抱くかも知れない。


 勇は詰まらなそうに唸っていたが、何か思いついたのか、明るい顔でこっちを見てくる。


「じゃあ、俺に向かって撃ってくれよ! 俺も同じような術が使えるから、それで相殺し合うってのはどうだ?」


 あ、ちょっとカッコイイかも。かめは〇波同士の打ち消し合いみたいな感じか。


「う~~ん……、じゃあなるべく出力小さめでやってみるか」


「ノリが良くていいじゃん! やろうぜやろうぜ!」


 早速勇は腰だめに両腕を構える。まさしくかめは〇波のポーズだな。


 ならば僕もそれに応えよう。僕も同じようなポーズを取って、左手の『次元念動ディメンジョン・テレキネシス』を弾体発射モードに切り替える。これで運動エネルギーの塊を放つ事が出来る。演出機能を使って光弾みたいにすれば、勇が望む光景が見られるだろう。


 正面に立つ勇の手には、いつの間にか青い光の球体が出現して、甲高い音を立てて鳴動している。……それ大丈夫なんだろうな?


「ゆ、勇? それ出力小さめなんだよな?」


「心配するなって。これ位なら死にはしないよ」


 怪我はするかも知れないって暗に言ってないか!? ……ちょっと心配になってきたからこっちも少し出力を上げておこう。



「準備いいかー!? 翔!」



「……OKだ。三つ数えて放つぞ」



 勇は頷いて了解する。では、覚悟を決めますか……!




「「三……二……一……ゼロ!」」


「『霊・轟・弾』!」


「『次元念動・発射ディメンジョン・テレキネシス・シュート』!」




 ドォン! ガォン!




 二つの異なる発射音が響き、赤く光る弾と青く光る弾が双方から同一線上に向けて発射される。


 二つの光弾はその勢いを衰えさす事無く衝突し……



 スカッ



「「えっ」」



 衝突せずに、互いにすり抜けて対面する両者へ向かう。



 ドゴォ! バチィ!



「「ぎゃああああああ!!?」」


 僕と勇は真正面から互いの光弾を受け止め、仲良く吹き飛んでそれぞれ後方の木に衝突した。



「おおぉおぉおおぉぉお……!」



「はああぁあぁぁあぁあ……!」



 後頭部を押さえ、何とも言えない呻き声を上げながら、僕らの対決は幕を下ろした。



 ◆◆◆



 その後、何とか回復した僕らは、気まずい雰囲気の中それぞれの変身を解除し村の案内に戻った。お互い恥ずかしさのあまりまともに相手の顔を見ることが出来ず、かなりたどたどしい説明になってしまったが。


 ジョセフさん家に戻った頃には引越しは終わっていた。ジョセフさんからはまたいつでも遊びにおいでと言われたが、今はまだ顔を合わせるのが恥ずかしいので、曖昧に答えておいた。



 でも勇は帰り際に「また来いよな」と言ってくれたから、絶対また会いに行くつもりだ。まだ話せてないことが沢山あるしね。


 神様の事とかもあるけど、何より貴重な前世を共有できる仲間だし、この絆は大事にしていきたい。




 今日の実験結果、科学エネルギーと霊的エネルギーは相殺しない。もっと早く知りたかったな……。




新たなる敵の次は新たなるヒーローを! というわけで、対霊ヒーローを登場させました。最初はウルト〇マンみたいなヒーローを考えていたのですが、ふと某地獄先生が頭に浮かんでこんなヒーローになりました。


捻ったキャラを出したはいいが、これは需要あるのだろうか……?

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