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第1話 転生! 『次元戦士・ディメンジョンマン』

 僕が覚醒した時、そこは今までに感じた事の無い空気、見たことの無い場所にいた。木目の天井なんて初めてかも。体も変な感じがする………わお、驚きの乳児サイズ!! 他の家具の大きさから考えても明らか!!


 どうしてこうなった…? 確か僕は悪の組織の首領、マデゴーグを倒して死んだ筈。それが何でこんな状況に?


 いやそこまで不快感は無いんですよ。寝ている場所には割りとフカフカの敷布団がしいていあるし、体に掛かっている毛布も結構上質。前世では悪の組織と戦うため、徹夜に次ぐ徹夜で偶に寝てもソファーとか床の上だったし。


 ……ん、前世? あ、何か思い出してきたかも……



 ◆◆◆



「うおおおおお! これで終わりだマデゴーグ!!」


 僕は崩れた資材に挟まれていた左腕を引き千切り、そのままマデゴーグに体当たりをする。僕の決死の突撃により、既に半死半生だったマデゴーグは容易く吹き飛ばされ、その先にあった悪の秘密基地の中枢、対消滅エネルギー炉に落ちていく。


「ば、馬鹿なーー!! こ、これで終わるのか! おのれ、『ディメンジョンマン』!! 我が野望を、我が望みを絶ちおって! 許さぬ、許さぬぞーー……!!?」


 僕は光の塊に取り込まれ消滅していく悪の首領の姿を床に倒れこんだまま見送った。不死身と言われるその肉体も、膨大なエネルギーに巻き込まれれば復活もできまい。マデゴーグが死ねば、怪人や怪獣の製造は出来なくなる。これで悪の組織も終わりだ。


 …でも僕の命も同様にここでお終いみたいだ。全身、特に元々左腕があった所からひどく出血している。ヒーロースーツも深刻な破損状態になっていて、生命維持装置も働いていない。これはお陀仏決定だな、殺生したから仏は無理かもしれないけど。


 ああでも、マデゴーグとそいつの作った怪人共に殺された家族の仇を討ててよかった…。マデゴーグを追って外宇宙から来て、心半ばに倒れて俺にヒーロースーツやマシンを託した異星人さん(名前知らない)の無念も晴らせた…。


 復讐だけの人生だったけど、それでも俺は満足だ……。父さん、母さん、妹、そして名も知らぬ異星人さん、今そっちに行きます……。




「惜しいな……」




 ん…? 何か聞こえた…?


「その意思と力、ここで潰えさせるには実に惜しい…」


 僕が霞む目を開いて正面のエネルギー炉を見る。マデゴーグが巻き込まれたせいか、エネルギー炉は暴走状態になったのか、接続されている機械やパイプから火花や炎が噴出している。そして輝きを増すエネルギー炉内部の光の球体に、人影の様なものが移っている。その人影は返事を返さない僕を見ながら喋っているようだった。


「それに哀れだ。復讐のみを人生の糧としてその生涯を終えるなど…、余りにも虚しい…」


 いえこれでも結構満足いく人生だったんで、そろそろ寝ていいですか?


「どうだ、少年よ。取引をせぬか? 私はお前に新しい人生を与えよう。幼い頃に奪われた幸福な家庭を用意する。その代わり、お前自身の新しき家族と、そして世界を守る為に戦ってくれ」


 確かにヒーロー業もライフワークになってたから別に苦では無いんですけど…。怪人による幼稚園バスの乗っ取り救出から巨大怪獣の電波塔破壊阻止までやってきたんでそれなりに経験豊富だけど、……正直そろそろお休みが欲しいです。


「心配いらぬ、お前は赤子に転生する。そしてある程度成長するまでは戦う事は無い。それは保障しよう」


 転生かー……確かにあんまり青春を謳歌した覚えも無し、彼女も居なかったしってああ失血の影響で考えがまとまらない…。


「如何にする?」


 いやそんな急かさないで、もうちょっとゆっくり考えさせてゆっくりしていってね。いやゆっくりしてると死んじゃう。ゆっくりしていってね、がゆっくり死ねになっちゃう。


 ああもういいや、YESだコノヤロー。俺の新しい人生持ってけ泥棒ー!


「お前の人生はお前だけのもの。お前が自身の正義によって世を救うと我は信じる。さあ行くぞ…、新しき世界へ…」




 そしてその人影は俺に手を差し伸べ………





 ◆◆◆



 ……今に至る、と。


 うーん、本当に転生したっぽいな。半分以上死に際に見た夢か、悪魔との取引かと考えていたんだけど。さて僕はどんな家庭に生まれたんだろう。


 ほとんど見えないけど、どうも今居る部屋は木造みたいだな。本棚? 机? ベッドらしきものも見えるな。察するに誰かの私室か。でも何か違和感を感じるな、そう全体的に古臭いんだ。しかも日本的じゃない。


 おっとそう言えば前世の記憶はどれ位残ってるんだろう。今の体に元の記憶はインストールされてるんだろうか?


 僕の前世の名前は的場 翔(まとば かける)。十七歳日本男子、血液型AB型、六月十八日生まれ、戌年、…星座は何だっけ? データ漏れかな。いやあんまり意識した事無いから思い出せないだけか。


 十二歳の時に悪の組織『アルタイル』に家族を殺されて一人ぼっちに。親戚も居なくて施設に入所。施設に馴染めず不良に成りかけていた十四の時に偶々悪の組織の首領マデゴーグを追ってきた異星人の死に際に遭遇。ヒーロースーツとヒーローマシンの各種を受け継ぐ。『悪を憎む君の心に私の力の全てを託す。どうか私に代わりマデゴーグを倒してくれ』と無茶振りをされるも受け継いだスーツと各種マシンの力で怪人、怪獣達を倒すことができた。

 そして三年の歳月をかけて敵の首領マデゴーグの秘密基地の居場所を見つけ出し、再生怪人達と死闘の末マデゴーグの元に辿り着く。そこから休む暇無しでマデゴーグと戦ったんだから正直アホだよな、僕。完璧脳筋だ。


 そして基地の中枢までマデゴーグを追い詰めるけど、マデゴーグのビームで天井が崩壊して降って来た資材に左腕を挟まれる。……ここまで思い出せればいいか。


 うん、記憶はほぼ全て残ってるようだな。惜しむらくは中学時代から勉強を殆どせずに怪人との戦いばっかりやってたせいで学力がほぼ小学校止まりな点だけど。まあもう一回小学校からやるから関係無いか。高校時代の勉強をしっかりやっておけば受験とか楽なんだろうけどなー。


 そんな事を考えたら眠くなってきた。寝ちゃおうかな……あ、そうだ。最後に確認しとかなきゃいけないことがあった。


 ヒーロースーツが使えるか? についてだ。


 異星人さん曰く、ヒーロースーツとマシンは次元の彼方まで所有者を追いかけてくれる頼もしい奴らだ、って言ってた。


 だから僕は『次元の戦士・ディメンジョンマン』と名乗ってたんだよね。今一語感が悪いけど。


 僕は短い手足を懸命に振ってポーズを取る。別に必要無いけどいつもやってたから、これやらないと落ち着かないんだよね。


「あぶぶ、あっ!! (『開け、次元の門オープン・ディメンジョン!!』)」


 うわ、変な声が出た。合言葉キーコード言えてないから発動しないかな?



 ……五秒位経ったけど何も起こらない。やっぱり駄目か……



 キィィィィィィィィンッ!!



 え、この音ってまさか…!?



 キュウウウウウン、ビカッ!!



「あうーーー!?(おわーーー!?)」



 次の瞬間、光に包まれた僕の乳児ボディは、真っ赤なヒーロースーツに包まれていた。…キーコード言えてなくても言ったと自分が認識したら発動するのかなぁ?


 そんな事を思いながらスーツの具合をチェックしてたら、部屋の外からバタバタと音が聞こえて来た。



 マズイ。放置しといた赤ん坊が知らない内に真っ赤なスーツに包まれていたら里子に出されるか最悪橋の下コースかも知れん。やばいやばいやばい、急いで解除しなきゃ…!?



「あうっ! (『閉じろ、次元の門クローズ・ディメンジョン!』)」


 解除コードを呟くと、スーツは掻き消えた。その代わり、右腕の甲に螺旋を描く渦の様な紋様が刻まれる。あ、新しい体になったからかな、ヒーロースーツの登録者証明の模様コードが刻まれ直したのか。



 ……いやまずくね? 放置していた赤ん坊の手にいつの間にか見たこと無い紋様が刻まれていたら施設送りか最悪ダンボールをベビーベッドに『拾ってください』のプラカードを掲げなきゃいけなくなるかも知れん。やばいやばいやばい、とりあえず左手で隠しとこう。



 間一髪で誰かが入ってくる前に隠せた。入ってきた誰かは部屋の中を警戒していた様子だったが、すぐにこっちにすっ飛んできた。


「大丈夫、坊や!?」



 ……ん? 今何か変な感じがした。日本語じゃない言語を聞いた筈なのに言ってる事は分かるっていう。「This is a pen.」の意味がすぐに分かるような感じ? 違うかな。


 て、そうじゃなくて、日本語じゃない? ここ日本じゃないの? 古臭いから田舎の家に生まれたと思ったけど、ここってもしかして別の国?


 顔を上げると、彫りが深くて長い茶色の髪を後ろでまとめた割と美人の女性がこっちを心配そうに見ていた。年はは二十代半ばかな? うん、明らかに日本人ではない。しかも着ているのは洋服みたいだけど昔の人、中世? の人が着ていそうな服だ。時代も違うんかい。


 彼女は僕に異常が無いと気付くとほっとした様子で僕の頭を優しく撫でてきた。…う、こんな経験久しぶりだからちょっと嬉しい、涙が出ちゃいそう。


 すると、僕が右手の甲を左手でずっと押さえてるのが気になったのか、これまた優しく左手をどけようとしてくる。



 いやっ! やめてっ! 居ないから、ここには何も居ないからヤメテッーー!! 



 踏ん張っては見たものの、スーツ無しの赤子の力で耐えられる筈も無く、容易く僕の左手は外されてしまった。グッバイ安らかな赤ん坊生活…。


 女の人は最初右手の紋様を訝しげに眺めていたが、不意に驚いた表情を見せると慌てて僕を抱え小走りで部屋から出て行く。ああこれは橋の下かなぁと僕が諦めの境地でぐんにゃりしている。彼女は階段を下りて一階に向かっているようだ、さっきの部屋二階だったのね。階段から降りた先はすぐ玄関だった。見た感じ西洋式みたいだけど、ところどころ変に感じる場所もあるなあ。単なるガラス球に見えるのに中から光を放つ照明器具とか。電源コードとか見えないんだけど何あれ。


 僕を抱えたまま女の人は玄関に向かうけど、その前に玄関が外から開いた。出てきたのは三十過ぎくらいのがっしりした体格の男性だった。やっぱり西洋風の顔立ち。だけどこの人は金髪だった。

 彼は焦りながらも落ち着いた様子で女の人に話しかけた。


「エレナ、何があったんだい。二階から凄まじい光が出てたんだが」


 変身時の光ですな。あれで怪人の目を眩ませている内に変身完了するのがミソです。その後目が眩んだままの怪人を一方的にボコッてもよし。


「光? それは知らないわ。私は坊やの叫び声を聞いて様子を見に行っただけだもの。それよりロイ、見てこの子の右手!」


 エレナさんは僕の右腕をロイさんに向ける。うぅ、恥ずかしいからあんまり凝視しないで…。


 ロイさんはしばらく頭を捻っていたが、突然「おおっ!!?」と声を上げる。何事?


「これは…、お告げにあった聖なる印じゃないか!! 螺旋を描く渦、全てを災厄を収束させ唯一の平和をもたらす象徴!! ああ神のお告げそのままだ!!」


 お告げ? もしかして僕を転生させたあの人影って神様だったんかな。言語ソフトもインストールしといてくれるなんて親切な神様だな。


 しかもこの事態を想定していたのか、事前にこの人達に連絡してたっぽい。受け入れ準備万端ですか、是非旅行会社とかに努めて欲しい。きっと快適な旅が出来るだろう。

 ロイさんが言ってる内容も転生の報酬として提示された世界を救う云々の件の事だろう。ついでに僕に釘を挿す為に連絡してたんじゃないか、もしかして。


 とりあえず、橋の下コースは無さそうだと僕が安心して脱力した時、ロイさんの後ろから別の女性の声が聞こえて来た。


「どうした、ロイ。家の中は大丈夫だったのか? 魔物が入り込んだりしてないか?」


「ああ、ルリィ。それは確認していないが、恐らく大丈夫だ。何せこの子が居るところに魔物が来るとは思えないしな!」


 魔物? わっといずざっと? 似たような単語の聞き違いかと思ったけど、そもそも日本語じゃないし、頭の翻訳機能がいかれたんじゃなければ、モンスターの事を言ってるのか? ……居るの、魔物モンスター!?


 後ろのルリィさんは話が見えないのか、少し苛立たしげな様子だ。ロイさんはそれが分かったのか、体を横にずらして、僕が見える位置にルリィさんを促す。


 ルリィさんは僕の右手を見て、驚きに目を見開く。


「こ、これは……、以前からロイとエレナが言っていた紋様そのままじゃないか!?」


 ルリィさんも納得のご様子。……でも俺は一つ納得できない事がある。





 どうしてルリィさんのみみはそんなに長い・・の?





 ルリィさんは黄金色した髪を豊かに伸ばし、スレンダーな体格の上に丈夫そうな革の鎧を見に付けて、腰に細剣を挿していた。そして美しいその顔の両脇から見える耳は、人には有り得ない程長く、尖っていた。俗に言う『エルフ』に見えました。



 異国? 異時代? そんなもんじゃ無かった。





 転生先が『異世界』だなんて聞いてないよおおおおおおお!?









 そして異世界でもちゃんと付いて来たヒーロースーツありがとおおおおおおお!!







 こうして僕は転生先の異世界でヒーローをやる事になった。なりそうだった。……やらなきゃ駄目?



ふと思いついて創作意欲を抑えられず一気に書いてしまいました。後悔はしていません。別の投稿作品の読者様方には土下座します。本編書かずにこんなの書いちゃいました。orz


別の投稿作品も同時執筆しているので、相当に執筆は遅くなりますし、特に反響が無ければこのまま永遠に進まないかも知れません。

自分で書くより他の作者さんが書いたこの作品を読みたいです。でも多分書く。

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