夜間飛行
基地を出た「ホルスウィンド」は南下し太平洋上へと向かう。
「各機、問題は無いか?」
「こちら、ホルス1! 運航に問題ありません!」
ハの字型のウイングフォーメーションをとって飛行するホルスウィンド隊。
カダル隊長はその中心を飛行しながら通信を行う。隊員は順番に動作の正常を告げていった。
「……そうか、了解した。 あとは、石刀名! お前はどうだ!? 海戦用装備で重量は増えているが、駆動に問題はあるか?」
「ヒルダ中佐と、同様です。問題ありません」
「それなら、いい。お前とその機体は、我が部隊の主要アタッカーだからな。正常に動いてくれないと困る」
「神撫、問題ありません」
「相変わらず、自信満々だな。その意気は買うぞ」
「問題ありません」
「石刀名!?」
「問題ありません」
「こんなところで、冗談はよしてくれ。士気にかかわる」
「問題ありません。冗談言ったって士気は下がりませんってばよ!」
「どこから来てるんだ、その余裕と確信は……」
最高速度がマッハ4、おおそよ時速8896kmまでスピード出す事ができるオーラングゼーブが、太平洋上に辿り着くのはあっという間だ。陸の光などすぐに見えなくなり、あたり一面に海が広がる。そして若干速度を落とした頃、目的の1つ、戦艦「常盤山」が見えてきた
「へえ、あれが新造艦か」
石刀名中尉のメガネがキラリと光る。
実は、この前まで、戦艦の研究をしていたのだ。なので、改めて本物の戦艦を目にすると何だか感慨深かった。
「いきなり壊れるなんて、この国の技術もまだまだだよね~ヒルダ」
「こんな時に、名前で呼ばないでよ! それに、通信装置をこういう目的で使わない!」
「もー、堅いなぁ。まあ、MAMYがまだ来てなくて良かったじゃん?」
「そうね。常盤山は重武装だけど動けないんじゃ絶好の的になる。交戦してなかったのは確かに良かったと思うよ」
ホルスウィンド隊は、更に速度を落として戦艦に接近した。