海の大ミイラ
MAMYの部隊を一騎当千の活躍でせん滅した石刀名中尉は、急ぎヒルダ達の救援に向かう。
夜の海を音速で暫く遡ると、石刀名中尉の目の前に何かが見えてきた。
それは戦闘機らしき光と、それに照らされる海から突き出した巨大な何かだった。おそらくこれが、例の敵だろう。今まで見たMAMYの生物兵器達とは包帯の様なものが巻かれている事は共通しているが、形状は大きく違う。何本かの足のような触手の様なものを振りまわす様は、まるで大きなタコのようだった。石刀名中尉は、それを眺めながら徐々に機体の速度を落とす。
「ふーん、私が予想してたのと似てるなぁ」
「つぼみ!! 向こうは何とかなったの?」ヒルダ中佐が石刀名中尉に気付いて通信を入れる。
「まあね、私の手にかかればあのくらい大したことないよ。まあ、武装は殆ど弾切れ状態だけどね。それよりこのタコみたいな奴、レーダーに映らないね」
「そうなの……だから見逃したのよね。連中、まさかステルス機能なんて使ってくるとは予想もしなかったわ!」
「やっぱり、予想ってのはなるべく最悪最悪に事態を考えておかなきゃダメなのかもね。ま、とりあえず何とかして倒そうよ」
「簡単に言うわね。言っとくけど、この未確認生物兵器はT基地やB基地の部隊を壊滅させてるのよ? その上、私達も苦戦してる。こいつ……装甲が尋常じゃ無く硬いのよ。エアリアル・トーピードでもほとんど傷も付かなかった!」
「へぇ、そりゃまずいなぁ。攻撃が効かないんじゃあ、いくらエースの私でも止められないよ」
「どうしよう……このままじゃこいつ、戦艦に辿り着いちゃう」
ヒルダは、戸惑いの表情を浮かべていた。
しかし、石刀名中尉の方は相変わらず深刻さのかけらもなかった。
「いいんじゃない? 辿り着かせて」
「ちょっ!? 何言ってるのよ? それじゃあ今回の任務が!」
「だってさぁ、あの新型戦艦、動け無くてもスゴイ武器持ってるじゃん? この前調べたから知ってるんだよ」
「そっか! あんたにしては名案ね! 確かに<常盤山>の主力武器ならこいつの装甲を貫けるかも。やってみる価値はありそうだわ!」
「えへへ~さっすが私。諸葛孔明並みの智謀ですな」
「それは言いすぎ。じゃあ、発案者さん……今からその事を戦艦に伝えてきて。私は、隊長にこの作戦の事を話しておくから」
「えー!? パシりなんてやだよ~」
「いいから、行く! 四の五の言ってたら犠牲が出るわ!」
「ちぇー、人づかい荒いなぁ……ブツブツ」
石刀名中尉は下にいる巨大な怪物と戦うことなく、戦艦の方に向けて真っ直ぐに飛んだ。
ブリッジから空を眺めるチュウジョウ中将にその迫りくる光が見えるのに時間はかからなかった。
再度戦艦に<神撫>を着地させ、石刀名中尉は中将の元へ赴く。




