太平洋大返し
謎の巨大生態兵器の出現により、ホルスウィンドの戦力は分散する事に。
石刀名中尉は、少ない手勢で敵部隊と戦う事になってしまった。
経過する事10数分。
「……串に刺さってだんごっ、だんごっ」
ドオン
「6つ並んでだんごっ、だんごっ」
ドオン
「タレを塗られてだんごっ、だんごっ」
ドオン
「だんご六姉妹っ! ちゃんちゃん!」
ドドーン
最後の一発は、一列に並んだ敵をメーザーカノンで6機連続貫通撃破と言う超高等技術だった。石刀名中尉は口にした通り、まさに一騎当千の活躍を見せていた。スーパーエースパイロットと言うのは彼女が勝手に言っているわけではないのが、この状況を見ると分かる。
「これで、おおよそ片付けたね! しかし、これだけ少数だと武器の残弾が持たないな~実弾系はほとんど無くなっちゃったよ。エアピくらいは残しておこうと思ったのに……ちぇっ」
最後のM3も撃墜し敵の部隊は遂に沈黙した。
一段落し、石刀名中尉はササラギとべックに同時通信をとる。
「お疲れー」
「はい、流石は石刀名中尉です」
「どうでいべック! 私の見事な操縦、的確な射撃テクは」
「あいかわらずですね。圧倒的です」
「もっと褒めて褒めて~」
「中尉、褒めたいのは山々ですが、まだ未確認生物の方が……」
「ああ、そうだった」
石刀名中尉はヒルダ達の事を思い出した。
他の基地の隊員達がここに救援にこられなかった、その上ホルスウィンドが対応に追われる相手。ただ者ではないのは間違いない。しかし、石刀名中尉はそんな敵に臆したりはしなかった。寧ろ好奇心がわく程であった。
「あの2人がいるから大丈夫だとは思うけど、やっぱり私の力は必要だよね! じゃあ、引き返しますか! 助さん、格さん!」
「あの、水戸黄門みたいに言わないでくださいよ~」
ササラギの弱気突っ込みを聞き流し、石刀名中尉は一気にその場を飛び去った。
夜の海に移る満月はあれだけの戦闘で殆ど傷のない機体を見放すことなく照らす。
「人生楽ありゃ苦もあるさ~! さーて、どんな奴が待ってるのかねぇ? やっぱり大きなイカみたいなやつかなぁ? それとももうちょっと意外性のあるカタチしてるのか……楽しみ楽しみ!」
彼女の大きなぐるぐるメガネはいつにもましてキラリと光った。




