暗室にて
「にひひ!」
暗がりの部屋、机に置いたアニメの美少年の人形を見て、ばらんと切られた灰色のミドルショートの髪で耳を隠したその女性はメガネを光らせ恍惚の表情を見せる。
J国K基地に所属、特殊部隊「日空神風<ホルスウィンド>」隊員でもある石刀名中尉は、今日も大好きなアニメのキャラクターに思いを馳せていた。彼女は戦闘機のパイロットは一流の腕を持っているのだが、戦いが無い時はただのオタク或いは腐女子的な奴なのである。そんな性格が災いし恋人など出来た事は一度も無かった。
ドンドン!
大きな音で部屋の扉を叩く者が現れた。
石刀名中尉はそれに気付いたが、音で誰か分かったので、暫く放置することにした。
ドンドン!
ドンドン!
音は続くが、彼女は尚も無視する。
「開けなさいよ! このバカメガネッ! 緊急指令よ! 緊急指令!」
遂に声がした。
内容も内容だったので、石刀名中尉はため息をつくと、遂に部屋のロックを外した。横開きの自動ドアはシャット言う音と共にスライドする。外の光が眩しかった。
部屋の外にいたのは、彼女の予想通りの人物だった。
長い黒髪を後ろで1つにまとめた気の強そうな美女。
同じ部隊のヒルダ=サイトー中佐である。