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ちょっと前の話…鴉を拾いましたその①

???side


3ヶ月と少し前、


人里離れた山の中、そこは地元では天狗がいると言われた山での会話と出来事である。



「さて、この前に話した答えを聞かせて欲しいんだ」

「私はあまり気が進まない…。というか仕事が増えるから嫌なんだが…」



天狗が祀られている神社の境内、黒いスーツの少年と御神木と言っても差し支えない大木の枝に腰掛けている山伏の格好をした青年が話している。


「ふーん。そか、理由はそれだけ?」


「いや、まだあるよ。私はどちらかというと人間に友好的な方だ。まあ、人間を殺し尽くすなんて馬鹿げたことだと思うが…」


「ありゃ?おかしいな?お前は山に入って来た人間を追い払ってると聞いたからきたんだけど…」


「ああ、この山は整備している道以外危険なんだよ。私はその注意をしてるんだ。供え物も貰ってるからな」


「なんだ、見当違いだったな…」


スーツ姿の少年がつまらなさそうに言う。


「そんなに集めたいなら私らの中で鬼々ききざんと呼ばれる山の山頂付近の洞穴を調べるといいよ。あそこには陰陽道の祖、安倍晴明の流派の人間が封じた物の怪がうじゃうじゃいる。後は恐山おそれざんの秘密とされてる場所に人天の大天狗にして霊界の犯罪者、鷹夜たかやが幽閉されている。あいつは神通力こそ並だが刃を持たせれば最高位の頑健さを誇る鬼すら一回で斬り倒すぞ。最も昔、一人の鬼に喧嘩を売って腕を一本亡くしたがな」


山伏姿の青年がひけらかすように言う。


「そんな事を教えていいのか?鳥天にして鴉天狗をお前は名乗っているが、実際の扱いは大天狗と同等のお前がそんな同胞にとって危ない助言をするだなんて有り難いが敵ながら心配になるねー?何を考えている?」


にへらにへらとした顔からは内面を窺うことが出来ないだろうが…、確実に警戒されたであろう。


「あれは私が人の道徳を知っていて、なおかつ人間に友好的だったから猿田彦様が与えて下さったんだよ。まあ、なんだ。断っておいて手ぶらで帰してやるのもあれだしな。慰謝だとでも思っておけ」


「猿田彦ノ神がか…。まあいいや…、お前、それを教えてなんの特がある…。人間に友好的なわりには何故教えた?」


スーツを着た少年が訝しむ。確かに相手にプラスになる話をわざわざ言ったのだろう。


「ふむ…、まあ、そろそろあいつに娑婆(シャバ)の空気を吸わせてやりたかったからな?それに鷹夜ならふたつ返事でお前のやりたがってることに了承すると思うのでな。それに…、そろそろごみ溜めの掃除の次期も考えてただけだよ」

山伏姿の青年がおどけたように言う。


「ふうん。なんか見返りでも欲しいの?」

「何も要らん。さっさと帰れ」

「…世話になったな。じゃあな」

スーツを着た少年が背を向け帰ってゆく。


ガサッ


青年が腰掛けている木が揺れる。(さて、私の役目は終わりかな?でも、最後のあがき位はいいだろ?くだんの爺…)


ガサッ!


上部の枝から青年が飛び降りてきた。


「なんで判ってて逃げないのか不思議にゃけど、悪くおもうにゃよ?」


降って来た青年はニヤニヤとチェシャ猫ように笑いながら山伏の青年に襲い掛かる。


ザクッ!!


青年の爪が鎌のように変形し、山伏姿の青年の背中を引っ掻く。


「……つっ!!」


(まあ、ここらへんで逃げとくか…)


背中から血が出ているが山伏姿の青年は落ち着いていた。

「ついでに神通力も封じさせてもらうにゃ」


シュルリ


山伏姿の青年の首に青の紐が結ばれる。



「これはっ!!」


「分かるかにゃ。お前の予想通り魔妖封じの紐にゃ」


魔妖封じの紐、


西洋で言えば魔力、

東洋で言えば妖力に該当し、神通力すら封じるなかなかに強い魔除け道具である。

流石に焦るが逃げ道はある。


つまりは本来の姿になればいいのだ。


バサッ


「にゃ!しまったにゃ!」


大木から一羽の鴉が飛んでいく。


(件の爺…、あんたの予言は外れた事は無いらしいが私はどうなるんだろうな?まあ、人間の…、しかも女が黒兎と戦うなんてねぇ?)


(爺はテンプレ展開じゃない【そう言えばてんぷれってなんだ?】と言っていたが…、だが女が重火器をぶっ放しながら黒兎とその組織壊滅するなんて爺あんたの予言間違ってるんじゃ?まあ、爺は予言伝えたらぽっくり死にやがったし…。さて、死に場所はここにするか…)



そこはとあるビルの屋上、そこの地べたで羽を休める。



一つ賭けをしてみるか…、もし人が来たら羽をばたつかせて拾ってくれるかどうか…。

そんな事を考えているとドアの向こうから歌が近づいてくる。「~~♪~~~~♪ん~、カ●タレラをパーフェクト&全部coolでクリアしたー!次はあの曲辺りパーフェクトを狙ってみるかー」


さて、扉の向こうで鼻歌を歌うこの女性に任せていいものか?




これが明日香と黒也が出逢う前の事。

???side終わり



明日香side


「たとえば深い茂みの中~」っと、ルンルン気分でクリアしたカンタ●ラを鼻歌を鳴らしながら屋上のドアを開けると鴉が翼をばたつかせていた。


ガチャン、ドアを閉める。

鴉かあー…、昔追い払った鴉が仲間を連れて来て逃げまどいながら帰ったもんだなあ。


いやいや、どうしましょうか?


選択肢A、ほっといて明日死んだら亡骸を清掃業者のおばちゃんに片づけて貰う。 はい、人として色々アウトー!


せんた…、

【ぴー、ぴー】

【また肩乗りたいの?甘えん坊だなあヒィ子ー。あ、こら髪つつかないでよ~】


【ねぇ、ヒィ子…鳴いてよ!嫌!嫌嫌!神さまお願いだからヒィ子を助けて!】

緑の羽は真っ赤になり、首が千切れかけていた小さな頃に飼っていた鳥を手のひらに抱きながら私は泣いていた。


【ヒック…、ヒック…、ごめんなさい…ごめんなさい!】


過去の出来事が頭をよぎる。


「………」ギリッ、


食いしばって歯が鳴る。


「せっかくいい気分だったのに嫌な事思い出した…」

髪を掻きあげながらドアを開ける。

先ほどの鴉が鳴くのを止めて、ただ静かに死を待っていた。

「ほら!死にたくなかったら諦めんな!アホガラス!!」


会社用のロングスカートの中から消毒液と包帯を出す。


何故ロングスカートの中からと思うが今は省略する。

「おら!じっとしてな!」


まずはポケットのハンカチで血を軽く拭いてやる。


ハンカチの色は白だが命の瀬戸際なのだ。


次に消毒液を掛けてハンカチで拭く。

次に綺麗な化粧用のコットンを傷口にあてがい包帯で縛る。

何気なく首を見ると綺麗な紐が首を絞めている。


「ああ、鳴きたくてもあんまり鳴けない訳だ。待ってな、今ほどくから」


紐を解いてポケットに入れる。


さて? 黒いおめめからキラキラとした視線を感じるが気のせいだろう。

てか、もうちょっと乙女っぽく振る舞おうかしら?


それはそうと鴉だがカバンに入れた。 いや…、ビニール袋に入れようかと考えたが止めました。


だって皆さん想像してみて下さいよ、


半透明のビニール袋に入った鴉、生半可に血が付いてる、 たまに鴉が鳴く、そしてそれをぶら下げながら歩いてくるOL…、恐怖以外の何者でもない。


カバンに入っている日用品や携帯やPS●やPS●のソフトをビニール袋に入れてスカートの中に入れた。


さて、そろそろスカートの中の秘密を教えましょう。 …なんかそこだけ聞くとアブナい人だが健全だよ?


言い忘れてたが、ちなみに今、会社の階段を降りてます。勿論手にはカバンを持っています。


まあ状況を判ってもらえたならいい。


私のスカートですが簡単に言えば外側は目立ってないが内側はクレイジーキルト状態だ。

あるいはランボ●の服みたいになっている。 服をバッて開くとやたら弾薬とか仕込んでたやつ。こちらは下ですが。


スカートの中はポケットだらけでちょっと捲れば色々出てきます。勿論邪魔にならないように設計してます。要するに制服改造ですよ。


入っているのはなんてことはない裁縫道具やらちょっとしたドライバーセット、催涙スプレーや携帯の臨時バッテリー、発煙筒や乾パン、最低限の化粧品や生理用品等の日用品しか入っていない。

バレたら減給かな~…。



さて、ミッション開始だ。


ミッションワン、

会社を早帰りせよ。※保護対象の出血が酷い為タイムリミット付き。


(アメリカンな女風ネイティブ発音を想像してね)



「あのっ…部長。すいません。午後から体調が優れないため今日は早退します…」

部署に入って早々にこう告げてUターンする。


(よし!あっさりクリ……、)ガシッ!!!ギギギギギッ……。

油の切れたブリキ人形のように首を回す。


「何寝ぼけたこと言ってるのかなー?ケビョウハユルサナイヨー?」

(アッーーとぉ!!)


にっこりと笑っているが後半棒読みだ。

何より目が笑ってないしオーラが黒いというか雰囲気が危険と言うか…。


ニコッ!

とりあえず笑ってみた。ほら、笑顔があれば言葉の壁なんてなんのそのって誰かが言ってた!…ような気がする。

ニコリと部長も笑い返してくれた。これはオッケーサインか!?

「そうかな?さっきやたら上機嫌で『もうサイッコー!今なら喜んで残業引き受けれるー♪』とかほざいてたのを聞いたんだけどな?これって僕の聞き間違いかなー?」

そうですね。エヌジーサインですね。笑顔そのままで痛いとこ突いてきやがる。


「何をいってるんですか。そのようなこと口走った覚えはございません」

こちらも笑顔を崩さずにぬけぬけと言い返す。もちろん嘘です。ランチタイムに少しゲームやってパーフェクト評価出て勝利の余韻に浮かれて言いました。

「へー?そう?なら僕の勘違いだったね。で、本題だけど、その肩に掛けてる鞄、僕の見間違いじゃないなら動いてない?」

ギクッ!

うっかり反応してしまった。苦しいけどしらを切り通すしか…!

「え?そうですか?中にマナーモードにした携帯を入れているのでたぶんそれだと思いますよ?部長最近聞き間違いとか見間違いとか勘違いし過ぎじゃないんですか~?」

「んー、そうかなー?あ、そうそう携帯と言えばこの間会った鑑印刷の坂巻さんの連絡先教えてくれないかな?葛之葉君、確か彼女と親しかったでしょ?」

(こんの男…、鞄から携帯を出させようとっ…!)

というか私の携帯は今スカートの中にあるのに。

「部長、坂巻さんから名刺貰ってませんでしたっけ?」

「ああ、名刺入れを探したんだけど見当たら無くってね?」

くっ、どうあっても鞄の中身を確認するつもりか。

「もう、見落としたんじゃないですか。もう一度ご確認をしてみては?」

「うん後で確認するよ。先方に伺いたいことがあるから君に聞いた方が速いでしょ?」

「ご用件を言っていただけたら私が伺いますよ?」

「いや、聞いた上で先方と案を練り上げたいから一々、【体調が優れない】君を(わずら)わせたくないしね?」

あはははは、私が言った言葉を強調しやがった。笑顔が思わずひくついたわ。


「あっ、そうだった携帯ならポケットの中にあったんで今出し…」

ごそごそ…、


(鴉今動くなー!!)

嫌な汗がぶわっと出たような感覚に陥る。大丈夫、部長は携帯に用があるだけで決して鞄に興味なんて持っているはずが…

「で、明らかに鞄、動いたよね?ソレハナニカナー?」

はい、無駄でした!

「これはその…えーっと…」

明日香は混乱状態だ!


ハッ!閃いた!


「これはっ!これはさっきトイレで使ってて電源を切り忘れたオトナのオモチャです!」


「……………」

お願いします。皆黙らないで。静寂が痛々しいです。

「ほっ、ほら昨今の床の間事情をムーディに彩りを添えるためにピーでチョメチョメな物にもカラバリやデザインを取り入れる為に私は「シャラップ!カイシャニナニモッテキテルノ!!」はいすみません!!」

というかなーにが閃いただ!私のバカー!


後部長もカタカナやめて!!

「アーッ!」


(今鳴くなー!!)


「で、今の音はなにかな?」

部長、やっと標準語に戻りましたね。


「こ…これは、お、お腹が?すいた音です!ええ、うん!そうですとも!」

苦しい…、端から見たら哀れなほど苦しい言い訳だ。

「病院に検査しにいってこい。さて、いい加減、カバンの中見せてくれるかな?」


最終通告だ。


嫌な汗ダラダラ出てくるよ。


「はい…」


部長にだけ見えるように開ける。


勿論中にいるのは鴉だが……、


「なにしてんの…?あんた…」


取り出し忘れた和菓子食ってた。


しかも3つある内の一番高級な丹波大納言と白ザラメの饅頭を食ってる。友達にあげようと持ってきたのに…。


本当…なにしてんの?


ん?よく見たら上生菓子のういろう・備中白餡製の奴がもう食われてる!!


一つ(2個入り)700円の紅白饅頭には手をつけてねぇ…。



こいつグルメだ!!!……しかも器用に袋を綺麗に破いて取り出してるよ。


「隠してたのはこれか…」


鴉を見て部長が言う。


「はあ…。いいよ、早退を認めます。早く動物病院に連れて行ってあげなさい。出来上がってる書類とデータは僕が渡しとくから」

「…ありがとうございます…」

何故か他の社員達は何も言わない。なんでだろ?


お姉様方やお局様から何か言われるかなー?と多少覚悟してたんだが…。


お姉様方・お局様は後に言う。


「会社の危機を救った人にそんな事出来ない…。そして社内敵に回したくない人ランキング第一位に君臨してるから…」

昔日、会社の倒産の危機から救い出し、社長の横暴を暴き社長のイスから引きずりおろし、社内ストーカー人質立てこもり事件で犯人の銃弾に怯えず犯人を説得、無血開城を果たし、挙げ句その教育を施したのが社内敵に回したくないランキング前王者の部長なのだ。 部長の他社での二つ名は『傀儡かいらいの人形遣い』と言われる程だとか。余談ではあるが本人はこの呼び名は本気で嫌がってる上に明日香に「ぶふっ、ふひゃひゃひゃひゃ!!傀儡の人形遣いってダッサいあだ名ですね!!よ!人形遣い部長!」と弄られたため呼ぶと思いっきり不機嫌になる。


つまり明日香は王者に鍛えられた猛者なのだ。


ちなみに部長は只今ランキング2位だ。

そんな相手を敵に回せば結果は火を見るより明らかなので口出ししない。


しかも仕事も出来るため文句もいちゃもんもつけれない。

とにかく敵に回さなきゃいい子というポジションなのだ。


さてそんな事は露知らずな明日香は退社30分で動物病院にいた。


次に続く!



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