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新社員が来た!…仕事のおもりは私ですね…

萌要素追加しました~!!

朝、自室のカーテンの隙間から柔らかな朝日が差し込み、起きる時間が来たことを告げる。


朝、布団の温もりを惜しみ、仕事に行くのを億劫に思いつつ眠たいまぶたを開く。


朝、布団から目を覚ますと……、私の横で抱きついて全裸で寝てる緋牙青ね…もう馬鹿とか呼び捨てでいいか…。馬鹿の姿がありました…。

私はどこの悪役セレブだよ。バスローブ姿になって片手にワイングラスをくゆらせて、もう片方の手にタバコ持って、布団をベッドにすれば完璧ですよ。ええ。…性別が逆ならね。


頭痛い…。寝ぼけがどこかにふっ飛び、代わりに頭を抱えたくなる衝動に駆られる。頭の中ではぐるぐると色んな情報が飛び交っていき、この状況へと至った経緯を必死に思いだそうとしている。

隣の馬鹿の頭には犬耳が生えており、そしてふさふさの尻尾が布団からはみ出していました。…なんか、あざといね。猫耳だったら速攻叩き出すけど。

嫌いとかじゃなくて苦手の部類です。軽い猫アレルギーで猫触ると痒くなるんです。と、そんなどうでもいい自分語りよりも、どうしても気になり試しに指で恐る恐る耳を触ってみると本物でした。

しかも触るとぴくぴくと耳が揺れるんです。実にあざとい。が人の耳もあるから四つ耳があるんですよ。こう書くと少し怖いものがありますね。


「んっ……すう…」

どうしよう、どうしようと考えていると触られてこそばいのか身じろぎをして嫌がる。


すりすり…。

んでもって自然な動作で私の胴に頬を押し付けてすりすりしてくる。こんな明らかに起きてるようなあざてえ甘えっぷりに私は思わず…、

(きもちわる…)

思わず悲鳴が出そうになったけど耐えろ私!おっとー?本音出ちゃった?しまったなー。でも正直にキモい。昨日今日で知り合った男と同衾(どうきん)とか嫌じゃないですか?

つか、肉食系って合わないわ。私のタイプじゃねえー。ベロチューした後、裸で寝るとか…その、ねぇ?(笑)変態さんじゃあないですか。


「んぎゅ~…」

そんでもって変な声出しながら擦り付くな!

にへにへと幸せそうな顔をしてらっしゃる所悪いが

何度も追求するけどあんたついこの間死にそうになってたんだよね?なんで素性もわからない小娘…私、流石に小娘って歳じゃないか…。それはおいといて、だらしない顔してなんでこんなに私になついてんの?あれか?こいつなりの処世術なのか?好感度あげて待遇良くして貰うつもりなのか?

だとしたら昨日のことも含めてまとめて落第点だがなっ!!!私に色仕掛けは効かねぇよ。もし私に仕掛けたいなら、真剣勝負以外お断りだ!なに、私には最終奥義・結婚情報誌+処女+両親に挨拶しに行かない?のトリプルグラビティ (でも使ったことないんですけどね…)がある!


だから尻尾をふりふりして喜んでも駄目だから!変態だから。残念だから。てか、この状況…、まさか(いた)してしまったのか私!


(事後か?事後なのか!?いや、待て。寝間着はちゃんと着てるし布団に血なんて付いてない。身体には一応ダルさがあるが健康な倦怠感だ。股には何の違和感もない。なによりそれっぽい証拠はない……。つまり真実は一つ!…まーだ処女か…。ふっ…。私よ…、何故目から塩水が出てるの?変態に抱かれたかったの?私の本心よ…。いや、未だに元彼に抱かれる事なく寝取られた事による涙が今更出たのね…)

アスカカワイソウナコナノ。ダレカイヤシテ?なんてね。あー、自分で嫌になる。さて、準備しなきゃ…。

スゥ…ハァ…ハァ

「………」

やたら顔をパジャマにくっ付けて深呼吸してると思ったら匂い嗅いでるよな?こいつ?やっぱり変態だな!確定的に変態だよな!?とりあえず笑顔を張り付けて普段あんまり使わない声色で、

「緋牙君起きて?起きないといたずらしちゃうぞ(はぁと)」

はい、朝の第一声目のこのあんまぁぁぁぁぁい台詞に含ませた本音はこうだ。

『今すぐ起きなきゃつま先から下ろし金でゆっくりと頭まですりおろすぞ?それとも下半身の息子を握り潰して引きちぎってやろうか!!!あぁあん!!!?』

こんな感じです。や、実際にはしませんよ。それに近いことはする気ですが。


それを聞いた馬鹿の反応はというと、嗅ぐのをやめて目を閉じて静かに明日香の『起きなきゃいたずら』発言に胸踊らしていた。


まあ、残念なおっとメーン♪…その無防備な腹をグッと押したくなるわ。さぞかしいい声が出そうですね?ちっ、起きない所を見ると本音まで聞こえなかったか……、まあ不意打ちされてたし。頭良いのか悪いのか分からんなこいつ。


あいつは…、うん、リビングの方からテレビの音が微かに聴こえるから起きてるな。

「おい、雅鬼青年!下ろし金持って来い!!」

「いやいやいや!?なんでだよ!!」

本日第二声は怒鳴り声で下ろし金を要求するとリビングからすっ飛んで来た雅鬼に止められた。そして部屋の様子を見て凍りつく。

「あー…その、なんだ…。事後か?」

「してねぇよ?すっぽんぽんで寝られたのよ」

「なんだ、たかが裸で寝た程度だし許してやったら?明日香」

【なんだ、たかが、じゃねえんだよ? あ゛あん?】という意味合いを込めた目を向けると顔をそらされる。

ガバッ!

「雅鬼てめぇ、ご主人を名前呼びしてんじゃねえ!!……あっ!寝たふりっ…」

いきなり目を見開いて飛び起きてきてびっくりする。しかも、んなことでかよ。私の見てる前でいそいそと寝直そうとする姿はもはやアホすぎて悲しくなる…。

とりあえず、

ガシッ!

「はうっ!」

バカの頭を片手で掴み、起きて布団から出る。もちろんバカも引きずり出す。いつまで人の布団で寝てんのよ。つーか人の布団にすっぽんぽんで寝んなよ気持ち悪い。

万力の如く絞める。勿論爪も立ててます。なんかギチギチと音が鳴ってるけど裸で同衾した罰だ。

「痛い!痛いっ!ご主人痛いです~!」


掴んでいる手を外そうともがくが、

「あら、起きないとぉ、いたずらしちゃうってぇ…言ったでしょうがこの変態ぃぃぃ!!」

ギリリッとさらに力を加える。

「ギャー!!!爪がっ!爪が肉にぃ!イタイイタイ!イダダダダ~!も、もっとかわいいいたずら期待してぁぁイダアァ!!」

「平日の朝っぱらからどんな超展開望んでんだてめえ!!」

ぐいんぐいんと掴んでいる頭を大きく回すと呻きなんだか悲鳴なんだかよく分からない声が出る。

「フギャァァァ!!できることならじゅうはちきグエエエエ…!」

「だ・ま・れぇぇっ!」

「容赦ねぇな…明日香」

「ん?ああ、そういや私の呼び方決めたんだ?」

ピタリと首を回すのを止め (だが爪は外さない)すっ飛んできた雅鬼青年の方を向く。

「ああ、これから世話になる訳だしいつまでもお姐さん呼ばわりもあれだしさ」




「……今、お姉さんの姉が姐になってなかった?」

スッとつり目が細められ、剣呑な雰囲気に変わり、

びくりと雅鬼の体が震える。(こちとら年齢には敏感なんでねぇ?27って微妙な歳なんですよ?少しでもババア呼ばわりしたやつは再教育を施しますよ?)という無言の圧力がひしひしと感じられた。


「いや!違う!お『姉』さんだ!」

即座に弁解しますが…、おかしいですねえ?冷や汗だらだら流しながら目が泳いでますよ?

「ほんとごめんなさい!だからそんな無言で冷たい微笑みで俺を見ないで!怖い!」


「ご主人!こいつ嘘吐いてますよ!」

あ、外し忘れてた。流石に可哀想だな。

パッ

とりあえず緋牙を絞めてた手を離すと床にへたりこんで、「うう~…、爪が食い込んで痛い…」とか言ってめそめそと泣きながら爪が食い込んでいた箇所をさすっていた。なんでだろうか?さっきは可哀想と思っていたはずなのに既にこいつが可哀想に見えない。

「雅鬼青年。いいのよ?別に、『姐さん』呼ばわりしても。ただし昨日のこいつの有り様…見たでしょう?」

声は優しく、ニコニコと微笑みながら緋牙を指差して言う。

「はい…」

若干ひくついた笑顔を返す雅鬼青年は思う。

お前は本当に昨日俺から逃げ回っていた女だったのかと。力では勝っている筈なのに、今は逆らえばすぐさま鉄拳をお見舞いされそうな雰囲気なのだ。逃げれるはず、避けられるはず、当たったとしても痛くも痒くもないはず、受け止めれば良いはず、はずなのに、

「あんな風にはなりたくないよね?」

「…はい」

何故だろう?何故おとなしく従ってしまうのだろう。どっと冷や汗をかいたような気がする。女がそんな事を言っても可愛いもんだと普段なら思うはずなのに、


「以後、なめた真似したら…ね?匿ってもらって早々に叩き出されたくはねぇだろ?」

最後は笑みと声色を解いて真顔でドスを効かせて言われ、


「はい!」

反射的に返事をしてしまった。本能が悟っているのだ。それをやってしまったら最後、どんなに足掻いても昨日の緋牙の様に散々な目に遭うのがありありと浮かぶのだ。


「うん。分かってくれたらいいんだ」

(っと…、今何時だろ?)

枕元に置いた目覚まし時計を見てみると6時半を指していた。


(後もうちょい寝れたのに…。まあいいや、今日はさっさと仕事場に行くか)


30分後、


歯磨きやメイクを済ましてお茶漬けをサラサラっと食べて昨日なんで緋牙が布団に忍び込んだか聞き出して家を出た。一緒に寝たいという可愛いらしい理由なのだがイラッとした。良い年した男がなに甘ったれた事言ってんだか。私より女子力たけーじゃねえか。そんな二人はなんか大事な用事があるそうでお昼から外に出るんだとか。

あまり話には出てなかったが緋牙の犬耳、尻尾は何故出ていたかと言うとちょっと力を使ったからだと言うことでした。メイク中に鏡を見た時、昨日雅鬼青年に傷付けられた所に貼った絆創膏が剥がれていて傷が治っていたのできっとその為に使ってくれたんだと解釈。

そのときはあまり気にしなかったが通勤中、ホームで電車を待っていた時にふと、

(どうしてだろう。なーんかあいつ、胡散臭いのよね~…?)

そんな疑問は電車がもうすぐ来るとアナウンスする声とメロディーに掻き消された。



昨夜ーー


えっと、確か、ご主人から内緒で寿命を10年ほど頂いてからの後の記憶がない。

※風呂場でのベ○チューのこと。


で、目がさめたらずぶ濡れのバスタオルで簀巻きにされていた。

ジタバタ!ジタバタ!


とりあえず動いてみるが、うん駄目だ。

バタンバタン!


思いっきり暴れてみるが、やはり無理。どうやって巻かれたんだ俺? というか濡れているからか縛りが固っ!ご主人って縛り上手だな。こうなったら無理矢理破くか…。

ギッチギッチ!

駄目だ無理だなんだこれ?破こうとしたらどんどんきつく絞まってくる。このまま続けたらうっ血するだろうし最悪骨が折れる。


足掻くのを止めて二分ほど経った時、ふわりと先ほどどこかで嗅いだ良い香りが俺の鼻を掠めた。


「はっ!この匂いはご主人の!」


思い出した瞬間体を電気が流れたような感覚に陥り、横を見るとご主人の今日付けてたブラジャーが(かご)の中にあった。篭の網目から見える模様は泣いた時に透けて見えていたのではっきりと覚えている。


どうあがいても簀巻き状態なのでゴロゴロと転がって移動することにした。


ピタッ、すーはー…、


篭越しにブラジャーの匂いを嗅いでいる。

(うん、さっきの寿命の味といいこの匂いといい実に俺好みでますます食べたくなったなー。まあ今は我慢としよう。食べたら俺が危なくなるし何も今、食べずとも良いだろう。そうーー今は)


その顔はまさしく化け物と呼ばれるに相応しい顔つきと風格であった。ただ、全裸で簀巻きになっているのとかご越しにブラの匂いを嗅いでいるというのを除いての話ではあるが。


(うーん。やっぱり、こんなんじゃ満足しないなー?というか腹減るなあ…。駄目だ…食べたくなってきた。そういえばあの鬼、ご主人の血を吸ってたな…。まだ傷は塞がって無いだろうし俺もご主人の所に行って血を貰うとしよう。ついでにこれ解いてもらいに行こう。よし、決めたら即実行だ!)


ゴロゴロ~、ガッ!

身長がでかくて洗面所でつっかえてる。

ゴロ…、ガン!ガン!


一旦戻って体勢を立て直すもやはりつっかえる。


「うぐぐっ…」


(しょうがない…。体勢を変えて移動するか)


体をよじって洗面所から脱出してくる。

「ふう…、はあ…はあ、よいしょ」

ヨジヨジ…、

「尺取り虫がいる…」


廊下にて、不意にそんな声を掛けられた。

声のする方へ顔を向けると鬼が悲しい顔でこちらを見ていた。


「雅鬼、助けろ。これほどいてくれ」

「俺、旦那の事をわりと尊敬してたんですけどなんか見てたら悲しいやら虚しいやら…」

顔を覆い始め、何かを堪えている。

「?」


「すみません、俺は寝ます。そして今見たのを夢にするんです…。おやすみなさい」


遠くを見る目で言うが要するに関わりたくないという訳か。

「あ、おい!これを解いてくれよ!」


「あーあー聞こえない聞こえない…。つか手助けしたら俺もそんな目に会うかもしれないんでやですよ。もっと言えば人化解いて子犬にでも生首にでも戻ったら良いじゃないですか…。それじゃ」


ガラッ…ピシャ…


ご主人とは違う部屋に戻っていく。

シンとした静寂が廊下に戻る。

「ちっ、使えない…」


(俺だって使いたいけど、久しぶりに実体のある人体なんて作って慣れて無いからいまいち要領が掴めないんだよ!)


思わず悪態をついて、廊下を進むことを再開する。

そうして約十分掛けてようやく廊下をクリアした。


リビングにて、


(やっとここまでこれた…。さて何か刃物あればこの布を切れるんだが…)

が、予想外の事が起きた。ガラリと襖を開ける音が後ろの廊下から聞こえ、次に足音が聞こえてくる。

(なんだ…。あの鬼、ああ言いつつも結局助けてくれるんじゃないか。よし、これでなんとか…)

「うーん、水…」

そんな生易しい思考は声の主によって否定され、最悪の状況に陥っているのだと告げられ、思わず尺取り虫の体勢で固まる。

(何故今になって起きるんですか!?ご主人! )

ペタリペタリと近づいていた足音がふと止まり、ポツリと困惑に満ちた一言を呟いた。

「ん…、あれ?なんとなく床…湿ってる?」

(しまったあああああ!!今の俺濡れてたああぁ!!)

そしてこの状況でようやく自分の失態に気付き固まっていた体を精一杯動かす。


「…気のせいかな?なんかリビングから物音が…」

心なしか足音が力強くなって更に近づいてくる。

ああ、下手に体も動かせやしない。

(やばいやばいやばいやばい!! さっきの二の舞になる!!)

思い出すのは手刀や正拳から繰り出された鍛え上げた男でも中々出せるものではない攻撃力で一方的にボッコボコにされた恐怖や、風呂場での卒倒するほどの痛み。死という概念がほど遠くなった自分でさえちょっと近く感じてしまった程である。しかもその前に鬼を相手にしてだ。もっと言うならまだあの人は俺をボコってなおまだ余力を残していた。つまり、今見つかったら…。恐怖で震えるという感覚を初めて知った。


(体の震えが止まらない…。どうしよう…、もう足音からして戸越しに居る!)


その時、ハラリと体を拘束していたタオルが時間が経って乾いたのかほどけて簀巻き状態からの解放された。

(天の助けだ!俺一応妖怪名で神ってついてるけど実際は邪神もどきの悪霊なんだけど今だけはこの悪霊を救ってくれた神がもしいたら土下座して感謝する!)

しかし、視界には僅かに引かれて開く戸が見えており隠れる場所を探す時間などはない。




ガラリと小さな音を立てて戸を開けるも明日香の目の前にはいつもとなんら変わりないリビングが目に入ってくる。ソファーやテレビ、テーブル下を目で確認していくもやはり何もいない。

「なんか生き物の気配がする…」


明日香にとっては何気ないその一言は、隠れている緋牙にヒヤリと体に冷たいものを走らせた。


最後にキッチンの方へと向かい、先程同様に見回して確認するもやはり誰もいない。

「やっぱり気のせいか。一気に人が増えたから知らない内に気を張ってたのかな?」

諦めたようにそう呟いた後、棚からコップを、冷蔵庫からお茶が入ったボトルを取り出してコップに注いでいく。


注ぎ終わったコップをゴクリゴクリと飲んで、ようやく気配の主が【そこ】に居ることに気づくが、

「ふう、生き返る~。さて、もっかい寝るか」

そう、気を利かして知らないふりをして見逃すことにした。どうせ水飲んだ後ほどきに行こうと思ってたし手間が省けてラッキーと思っておこう。


そしてそのまま何食わぬ顔を心掛けて廊下へと出て、ご丁寧に引き戸を閉めておく。

(別にもう良いんだけどねー。私も手をあげちゃった訳だし…。まあ、あんまりにも暴力振るっちゃったしこれくらいはお詫びだよね)


そのまま廊下に歩いていき、ふと思い出してリビングにいる彼に聞こえるように、でも怪しまれないように声に出す。

「ああ、そうだ。五目ごはんまだ炊飯器に残ってたな。どうしよ…」


さて、食べてくれるかな?と思いつつも、これ以上夜更かしするつもりもないのだ。後はお好きにどうぞ。そう考えながら自分の部屋に入って布団に潜り込んだ。さて、心配事が減ったからか二度目の眠りはそう遅くはなかった。



再びリビングに静寂が戻っていくのを確認して天井に張り付いていた男は幾分余裕を取り戻していた。



(よし、なんとか凌いだ)


大事な所はタオルで隠れてはいるもののほぼマッパである。


(はあ、天井張り付く為に力使ったから少し人化が解けてるな…。というか流石に裸だと冷えてきたな)


「よっと」

音を立てずにカーペットに着地した後、ため息を吐く。


「流石に腹が減った…」

思い返せば今日の朝から何も食べていない。ご主人にとっては一日分の飯をくれたのかもしれないがまったくもって足しになってはおらず、くうくうと鳴いたお腹を擦った。


最難関リビングをクリア



さあ、極楽へ行こう!


っと、その前にふすまに耳を立て中で寝てるかの確認をする。


「スウ…スウ…」



よし!突入だ!

ふすまを開けて見るとご主人は布団をかぶり寝ていた。


ご主人の布団の中に入る。



ご主人の匂いがいっぱいするし暖かいし何より隣にご主人がいる。


「幸せだな…」


ポツリとつぶやく。

そうだ、キスしよう!


チュッ…


「う…ん…」


嬉しいけどあんまり反応がなくて楽しくないな。


抱きしめて見る。


キュ…、


「あったかい…」


横で寝ているご主人に向かって言う。


「なあ、ご主人…。俺はあなたの事が大好きです…。あなたの為ならこの身を盾にして守りますし、この牙はあなたの為だけに奮います…。だから、嘘だなんて言わないで…。俺の一生を背負う事を嘘だなんて言わないで下さい…」


それは決意に似た思慕であり、忠誠に似た依存であり、そして嘘偽りのない弱音である。




最後に一言つぶやく。


「いつか俺のモノにするんで覚悟しといて下さい、明日香」


そう呟いて眠りについた。



緋牙side終わり。




再び明日香side


ズズッ…


「いや~、お茶が美味しいね~。あ、わらび餅食べる?」


「はいぃ、先輩いただきますぅ」


はい、私は朝早くに出社して今業務前のお茶を例のぶりっこ後輩としてます。


「ねぇ…、先輩ぃ、怒らないんですかぁ?」


「なにが?」


わらび餅をもっちもっち頬張りながら相槌をうつ。


「先輩の彼氏を寝取っちゃったことですよぉ」


「あー、それはねー…まあ、実際言うと「みんな~、来週から新社員が3人来るぞ~!」


部長…、今、結構大事な話してたんですけどね~…。


「あー…、また機会があれば話すわ。聞きに行きましょっか?」

「はぁーい」


とりあえず部長の話を聞くか。


「一人は今挨拶に来てもらっているが、後の二人は諸事情により今日は来れないそうだ」

「この時期に新人とかどうしたんですか?インターンシップならまだ分かるんですけど?」

「なーんか上の人がえらく無理してまで入れたみたいでねえ。僕もまだ今んとこ良く分かってないんだよねぇ?」

部長が腕を組んで頭を捻る。そりゃそうだ。転勤ならまだ分かるが来るのは新人だ。しかも三人も。今の季節は秋で、上が無理してまでこの部署に寄越したのだから何かしら訳アリと思うのも無理はない。


「またどっかのお偉いさん方の身内、とかじゃないんですかー?新人教育頑張ってくださいねー」

「あっははは。葛之葉さん?君に任せたいんだけどなー?」

「はあ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ?私、今は三枝さんを担当してるんですけど!?」

「三枝さんは八雷君が担当したいっていうことでやってもらおうと思ってね?」

(おいおい、今なら口から砂糖吐けそうだね。職場でイチャイチャする気ですかね~?)

何故か捨てられた感がしてやりきれないというか少しばかり苦い気持ちになる。三枝さんが心底羨ましくなって、遥人に恨み言を言いたくなって、不意にこんな自分が嫌になって不満を飲み込んだ。大丈夫、顔には出ていないはずだ。

「そうですか。で、三枝さんが担当から外れた代わりにその新人さんに仕事を教えれば良いんですね?」

「うん。そーだよ。3人に基本的な事を教えてあげてね?基礎が出来たら希望の部署に行かせて専門的な事を学ばせるから」

「私一人で3人も面倒見なきゃいけないんですか…」

「だーかーらー、本当に基本的な事で良いんだよ。それくらいなら見れるでしょ?長くても一週間くらいで大体理解するだろうし、僕も手が空いたら随時サポートに回るよ。それで文句はないだろ?」

「分かりましたよ」

人物紹介そのに


雅鬼


年齢・えっと、正しかったら372、だった筈だな。

誕生日・ああ、これは覚えてる。7月7日だ。七夕だな。


好物・最近は焼き肉だな。大体は肉とか酒とか。肉なら鶏とか豚、酒なら何でもござれ、だな後、意外って言われるけど飴とか。のど飴、黒糖、べっこう、プロポリス、特にハッカ。ロリポップとかも食べるけど好みの味が無いからなー。自分で好みがジジくさいってのは分かってる。


嫌いなもの・血の繋がった親兄弟。俺としては絶縁したつもりだけど向こうがちょくちょく会いに来るのが心底うぜぇ。つか本当はぶっ殺してぇ。例外は今は死んだ次男の兄貴。ついでだけど俺は四男な。


趣味・日曜大工だりゲームだり。小物作ったりゆっくり過ごすのが楽しいんだ。


最後に一言


「明日香、これからよろしくな。なんならお礼として夜の情事も優しくしてやるぞ?……なんてな。こんなん本人に言ったら絶対冷たい目で見られるだろうしな~…」

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