そんな彼女に惚れたのが…
前回から1ヶ月以上の投稿…。亀さんスピードですが…出来が良くない。スポーツとかと同じで文章も書かなきゃレベルが下がると痛感しましたね。どうぞお楽しみ下さい!
会社・表玄関にて。
焼き焦げた瓦礫がそこら辺に散乱していた。
その瓦礫の一つに大きな山を作っているのがあった。
少し瓦礫が崩れたかと思った次の瞬間、瓦礫が吹き飛び…いや、蹴飛ばしながら中から人が出てきた。
崩れた瓦礫からの風圧で舞った粉塵を煙たそうに払いながらせき込んでいる。
「げほげほっ…。だあぁぁっ!!あのど腐れ女ぁぁっ!!信じた俺らが馬鹿だったわぁぁぁーー!!!!」
服の袖で顔に付いた煤を拭いながら怒り心頭な赤髪翠眼の男が瓦礫を押しのけ、入り口へと歩いていく。
「雅鬼。大丈夫か?」
しばらく歩いていると輪郭がぼやけた靄のようなのが入り口前に留まり、雅鬼に向かって喋り掛けてきた。
「その声は旦那ですか…」
「あったりーっと!それじゃあ戻るか」
ボンと白い煙に一瞬だけ包まれ全身が隠れる。
煙が晴れると犬耳を生やし、紺色の甚平を着た男が立っていた。
「まあ俺は元から熱には強いし、幸いな事に爆発した時、急いで本来の姿に戻って身体を頑強にしたんであの元バリケードだった瓦礫に潰されずに済みましたよ…。擦り傷出来て痛ぇけど…」
うっすらと血が出た腕をさする。
「いっそのこと本性現して行けばいいじゃないか?その方が安全だし」
良いことを思い付いたように手をポンと叩いて提案する。
「…はあ。…旦那の元の姿は宙を浮遊するやたらでかい犬の生首ですよね?」
『こいつ分かってねえな』というような疲れた表情を浮かべ、伸びた髪を鬱陶しげにかきながら問う。
「まあ、そうだが?」
「そんなんで明日香の前に出たらどうなると思います?」
雅鬼の問いにしばし沈黙する。
「……………野暮なことを聞いて済まない」
結論は至ってシンプル。怖がられるから。
「理解して頂けて何よりです…。つーか、あの度肝の座ったアグレッシブ女の事だから多分、本来の姿で出会った瞬間『殺られる前に殺る!』とかを本気で実行に移すと思いますし…。ほら、俺は弱点バレてますから…」
「…ご主人、やたら戦闘能力高いからな…」
「…旦那、この前下着盗んだのが見つかってボコボコにされてましたもんね…」
「あれは…覆せない力の差を、次元の違いを見せつけられたよ…。身体の軸が揺さぶられて危なかった…ははは…」
悲哀が滲み出たような乾いた笑い声を上げる。
焼けた炭の爆ぜる音が逸れた話題を仕切り直すかのようにパチンと大きく鳴り響いた。
この心底どうでもいい会話の間に、明日香(と黒也)は遥人と痴話喧嘩をしていた。
「つか、埋まってた間、掘り出してくれても良かったんじゃ…」
「至極面倒だったからなぁ…。それよりご主人を助けに行くか!鴉がご主人のボディガードのポジションにいるなんてご主人直属の隷属忠犬的に我慢ならないし」
(この犬畜生…。後で明日香にチクってやる)
所変わって、屋上。
「ちっ。仕留め損ないましたか…。随分としぶといですね。串刺しにされて潰れちゃえば良かったのに…」
極悪な思考を隠しもしないで独り言を呟いた後、爪をガリガリと噛み、思案を巡らす。
(権謀術数・人海戦術が私の領分ですし…、私自身は白兵戦は苦手ですし…。とっておきの洗脳も解けちゃったし…。動かす駒が無くなったのが辛いですね…)
はあ、と溜め息を吐いて九つの尾を揺らす。
(仕方ない…、私が直接手を下しますか…。とりあえず、あいつらが固執する女を人質にしましょう。お気に入りは多分一緒にいた鴉が倒したんでしょうし。女の方は無力で男に護られてるはずでしょうから。…その分失敗したときのリスクが大きいから絶対に許しては貰えないでしょうけど)
「まあ、逃げ道なんて無くて結構。敵を増やして孤立するなんて慣れてますし…。まったく、たった数時間しか顕現出来ないなんてツイてませんね。…やっぱり、人の世は私には住みにくいですね…」
自嘲を含んだ言葉に思わずクスリと笑ってしまう。
「それにまだ、目的を達成していませんからね…」
ぽつりと零したそれに合わせるように鋭く目を細め、不規則に尾を揺らした。
所変わって4階。
の筈が、どこかの川辺にいます。
『あはははっ!!あ、鬼ごっこしよ!黒也君が鬼ね?ほら、追いかけっこスタート!』
花柄のワンピースを揺らし、素足をまま砂利を蹴って走る。両手にはサンダルを片っぽずつ持ち、明日香にしては珍しい屈託の無い笑顔を見せながら、後ろで追いかけてくる黒也から陽気に逃げている。
『きゃー!捕まる~!』
頬を心地良く撫でる清涼な風。優しげにそよぐ草花。澄んだ川の細流のせせらぎが日常で荒んだ心を癒す。柔らかな太陽の日差しはまどろみに誘っている。
そうここは、さ・ん・ず・の・か・わ(三途の川)☆
ランランラーン♪ランランラーン♪ランタリッタランランラ~♪(『フラン●ースの犬』のあの曲)
現実、
だくだく。どくどく。
顔を真っ赤にしながら気絶している彼女の頭から血がとめどなく溢れ出る。
「…ふ。うふふ…。待って、よ…。後もうちょっとで…逝く、から…」
「わあぁぁぁっ!!!絶対行くな!…なんであんな馬鹿なことをしたんだ私はあああっ!!」
とっくに致死量越えてそうな血を垂れ流している明日香を揺さぶりながら、テンパっている黒也。
『あははは。うふふふふ。…ってこんな美味しい話が私にあるわけねぇ!!こんな理想的な彼氏とこんなメルヘンなシチュエーションなんて私に出来るはずがないのに…!!こんな優しい嘘、信じられないんじゃボケエエエッ!!』
ふと気づき、悲しみの叫びを上げる27の独女であった。
そして目に映る世界がぶれていき、
「ハッ!」
パチリと目を覚ます。
「あ、良かった!気がつい…「ってなんで目が覚めるかなあ!!水差すなよ私!あのまま寝てたら確実チューまで行ってたのに!!kissだよ!?キスまで…ハッ…」
頭を抱えながらもんどりうっていたがポカンとしている視線に気づき、正気に戻って冷や汗をかく。
ギギギッ。と錆びたブリキ人形みたいに首を回しながら黒也の方を見る。
「あ…、僕は何も見てませんし聞いてませんよ?」
分かりやすい嘘である。目を合わせてくれないのがなによりの証拠だ。
「というか、き…キスなら僕と、し…した、じゃないですか…。覚えて無いんですか?」
一瞬、「なんか合ったっけ?」という顔をするも、すぐに思い出したのか顔色が赤くなり、
だりる~。
「「あ…」」
頭からの出血大サービス!
(またかよ!えっと、逆の事を考えよう。最近、血の気が引いたこと。血の気が引いたこと…引いた…)
回想~
一年前、ある日の正午、いつも通りに仕事をこなしていると携帯電話が鳴って、
『はい、もしもし。あ、いつも弟がお世話になっておりま……えっ!?弟があばらを折って救急搬送!?同学年の女子に殴られて!?その子も血を吐いて倒れたから一緒に救急搬送した!?びょびょびょ、病院名を教えて下さい!今すぐ行きますから!!』
それから数時間後、
『なに人様にストーカーまがいの迷惑掛けてんのよ!!こ・の・ド愚弟がああああっ!!一発殴らせろやああっ!!』
『落ち着いて下さい!!今手術が終わったばかりなんですよ!?先生手伝って下さい!!』
『離して下さいっ!!女の子に血を吐かせる馬鹿はいっぺん死ねばいいんですからっ!!!』
『本当に危ないですから止めて下さい!!』
それから2ヶ月後、
『もう本当に家の愚弟がお宅の娘さんに酷いことをしてしまい、もうどうすればいいか…』
『いえ、大丈夫ですよ?主人は陸斗君の事を気に入ってますから。だから泣かないで下さいな』
『もっ…ぼん、どうに…ひっく…ずびばぜん!!!』
『ああ…メイクが崩れて…、一回化粧直しに行きましょうか』
『ごめんな、ざいいいぃっ!おどじごろの女の、んぐ…子の未来を奪ってごめん、なさいぃぃ…。取り乱し、て、すみません…』
その三日後、
『姉ちゃん、俺ら晴れて恋人になったんだ!!』
『あ、えっと、不束者ですがこれからよろしくお願いします。明日香さん』
『あ、うん…、よ、よろしくね?』
紆余曲折の果てのハッピーエンド。
ただし、相手の親御さんに泣かれる姿を晒してしまったが。
回想終了~。
「…ああ、死ねないや。私だけ恋人が居ない状態で絶対死にたくないなあ。…さんざん人を振り回しおったあの、ドアホの愚弟に恋人作って吠え面かかしてやるまでは絶対死ねない!!つーか、しばく!殴る!むしる!蹴る!折る!そして泣かすっ!!」
血の気が引く所か怒りで血が上ったうえ、色んな意味で危ない状態になった。
そんな彼女を見て、
(これでまだ好きな辺り私は本当に終わっているんだろうな…。ははは…)
黒也は心の中で静かに泣いていた。
数分後。
「…さてと」
流れ出る血を軽く袖で拭いて立ち上がると先程の戦闘で使わなかった銃三丁とナイフ一本を回収した。
「んーと、うん。火薬は濡れてないし大丈夫…。黒也君!こっちに来てくれる?」
銃の弾薬を確認しながら非常階段に繋がる扉の前に移動する。
「あ、はい!来ましたけど何するんですか?」
「何って、最初に言ったじゃない」
銃口を鍵穴にかざす。
次の瞬間、2回破裂音が鳴り響き、鍵穴にはぽっかりと開いた風穴が出来ていた。
「外に出よっか?」
にへらっと笑い、銃を下ろす。
黒也があんぐりと口を開けている内に明日香はドアノブを回して開けた。
「2回撃っただけで上手くいくモンねー…。自分でもびっくり。まあ、何はともあれ、ご開帳ー!ってね?」
自分でも驚いているようだが、それ以上に驚いている黒也は思わず口が滑って尋ねていた。
「なんで…、八雷先輩に、銃を…撃たなかったんですか?」
思わぬ質問に目をぱちくりし、戸惑いながら答えていた。
「なんで…って言われても…。黒也君は…私に人を殺せって言うの?」
「いやそうじゃなくて、先輩の銃の腕前は先程拝見しましたけど、『殺さないでおく』ことも出来たはずなんじゃないんですか?」
至って真剣な黒也の目は明日香の瞳孔を捉えていた。その目には---、
「……ふぅ。ん~、普段は物凄くお利口さんな黒也君にしては愚問かな~?私にとっては残念賞モノの発言かな?」
戸惑いが消え、代わりに残念な目で黒也を見てため息を吐く。
「…まあ、確かに、今の状況的になりふり構ってられないけど…、でもね?どんな理由があれ、本人の了承を貰っていない他人が人様の人生を奪っちゃあいけないんだよ。銃で撃って後遺症とか残したくないしさ…。それに、人のエゴはね?罪の無い命を、それこそ交差点のど真ん中にいるありんこみたいに無意識に、簡単に踏み潰すんだから…」
手に持っている武器をぶらぶらと揺らし、袖で顔に垂れてくる血を拭いながらぽつりと零す。
黒也の目を捉えて喋っているはずなのに、どこか『遠く』を見ていた。
(今のは失言だったか…。それより、その目は今まで何を写して来たんだ?)
彼女の過去を垣間見た時、どこからともなく聞こえてきた声の主は誰だったのか。どこか聞き覚えがあったような気がしたのだが、
「私が銃を使うのは自己防衛の為だよ。それ以外でもそれ以上でもないよ。…ちょっと湿っぽくなっちゃったね?それじゃ、気を取り直して外に出よ…って熱っ!そんで煙たっ!うわっ!何この熱風!?どっかで爆発事故でも起きたのって…」
重くなった空気を仕切り直そうと外に向かって大きく扉を開けると轟々と唸る炎の音と同時に体感する熱い風とせき込むほどの黒煙と煤が辺りを覆っている。案外、火元が近いのかと煙の元を辿ってみて見ると、
「一階から炎でてる!?え?え!?何よこれ!?いくらなんでもこのは仕打ちは酷い…ていうか、積んだ…。私の人生積んだ…!!」
絶望に頭を抱え、自分の不幸を嘆くも、次の一言で黒也の悩みを更に加速させた。
「………はあぁぁ…。もうこの際、焼き肉になる事覚悟で突っ切ろうかな…?頭から水被れば多少持つだろうし…最悪黒也君だけ助かる可能性があるならやる価値は十分にあるし…」
破れかぶれを突っ切って漢になった。
「よし!黒也君!ちょっと待っててね?今、水を被って「お願いだから自重して下さい!」
(思い切り・行動力が良すぎて男に見えてきたなんて言えない!)
「大丈夫。心配しないで?あなただけは護ってみせる。…約束するわ」
(何この娘!?格好良すぎて泣きたくなる!)
「とにかく、あなたが進んでそんな目に合わなくたっていい!!」
「…なに言ってんの?勢いからしてビル全体に火が回るのは時間の問題なの!ビルの中には大勢の気絶してる男共が居る!第一前提からして誰か…、特に男共は確実に焼け死ぬ!この状況で無茶しなきゃ全員死ぬのよ!?」
黒也の制止を泣きそうな顔で怒鳴りつけた。
「っ!!」
その言葉で気づく。明日香は焦っていた。
一分一秒が急がれる今、一つ間違えれば死ぬのだからせめて自分だけでも逃そうと必死になって、必要以上に庇いながら傷ついていった。
その胸中では死にたくないと思いながらも、自分よりも未来がある他者の命を優先しようとした。
(お前は…、どうしてそこまで自分を手段として扱う事が出来る!?理解出来ない…。明日香、お前は人なのか?だとしたら、確実に狂ってる…。…ああそうか、だったら)
「分かりました…。水を、持ってきましょうか?」
顔を俯いて謝罪を述べる。
「あ…、怒鳴ったりしてごめんなさい…。うん、持ってきてくれるかな?」
幾分か表情を緩める。
「…そうですか。分かりました」
それでもなお、俯いて表情が見れない。
そして言葉とは裏腹に明日香に近づいて来る。
「黒也…君?なんで、こっちに来るの?」
ついには明日香の眼前に立つ。
未だに表情が伺えない黒也の顔を心配そうに見ようとすると、
ドッ。
「え…?」
重い音が自身の体から鳴り、鈍痛がサイレンを鳴らすように体中に広がる。痛みの原因を目で追うと黒也君の拳が私の鳩尾に突き出され、入っていた。
「な、んで…?」
目がチカチカする。視界が暗くなっていく。意識が朦朧とする。
「すみません…。私は…」
悲しそうな声が聞こえてきたが生憎な事にそこで意識が途切れた。
黒也side
「目が覚めたら怒るだろうな…。それか、嫌われるか?まあ、いいさ…。お前が生きていてくれさえいれば私は何度でもお前の人生を責任持ってかっさらうさ。…死んだらそれすら叶わないからな」
煤煙によって黒くなってしまった彼女の頬を親指で優しく拭い、自身の腕の中に抱きかかえる。
「さて、ここはいささか羽を広げるには悪条件過ぎるな。一番理想的なのは屋上なんだが…」
鉄で出来た非常階段から上を見上げる。
先刻感じた時よりも強い殺意が隠しきれず、溢れ出ている。
「脱出ついでに御礼参りと行くか。私の宝を勝手に荒らした罪はその身で償って貰おうか。女狐!!」
煤にまみれた鴉の顔は、怒りに満ちていた。
(これほどまで惚れ込む女も世界中探してもなかなか見つからないものだ。ようやく見つかった宝と呼べるほどの存在だ。なら、大事にするのが道理であり、誰かに見つからないよう、取られないように手元に置きたいのが当たり前だ。その宝物に私の汚い面を見せたくないのは…、ひどく傲慢な願いなんだろうな…。そんな彼女に惚れたのが私の運の尽きという奴で、恋という難しくて馬鹿らしい厄介なモノに踊らされているんだろうな…。だが、恋をするのも楽しいものだな…。これが愛というのに変わったらどうなるのだろうか?きっとそれはもっと面倒でもっと楽しいのだろう。…だから何があっても死ぬな。明日香。今しばらく眠っていてくれ。お前に私の汚い姿を見られたくはない…)
一歩ずつ屋上に続く階段を上りながら自分の後ろめたさを責めていた。
黒也side終わり
割と呑気な緋牙&雅鬼ペア!!そんなんでいいのか!?そんな漫才してると黒也に美味しいとこ持って行かれるぞ!?
ひ「呑気とか漫才とかって色々と酷い!!」
ま「うっせーよ!!こちとら爆発に巻き込まれたんだよ!!」
ギャグとシリアスの振れ幅が急すぎるぞ明日香&黒也ペア!!
あ「夢なんだから仕方ないじゃない!!」
く「いや、起きてても割と言動がはっちゃけてたな…」
もったいぶるな玉藻!!出番が無いな遥人!!
た「だって、ボスキャラ扱いなのでホイホイ動けないんですよ」
は「…ダメージがなかなか抜けなくて動けないんだ…。息するのに必死で…」
お前らどうなってる!?部長と黒兎!!
ぶ「うさぎ君をふん縛ってまーっす♪ブイ☆」
く「チェーンで縛られてまーっす☆ハイ、チーズ♪」
ぶ・く「わはははは!」
〆切どうなった漫画家よ!!
す「うう…、夏休みの宿題を一気にやってる気分ですぅ…」
「泣き言喋ってる暇が有るならさっさと原稿仕上げて下さい!!」
終わり。