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決別の闘い…全てを清算するために…

さあ、本編クライマックスまで後わずか、やっとこさここまでたどり着きました!それでは、どうぞお楽しみ下さい!

思えば私は遥人と【二人】できちんとした別れ話をしていない。


私自身が臆病で聞けなかったのもあるが、遥人自身も私を捨てた事に後ろめたい感情があるのだろう。


なんにせよ別れの言葉が聞けたのは後輩の玉藻が遥人と恋人になった事を私の元に一緒に報告に来た時のみだ。それも10分にも満たない会話の中のほんの少し混ぜられていただけ。

それ自体に問題は無い。

問題なのはお互いに言いたい事がちゃんと言えず、なあなあではっきりしないまま別れてしまい、心残りというか後味が悪くなり(まあ、寝取られた時点で後味悪いとかの次元じゃないけどね…)、以来お互いの間に微妙な間というか空気が流れて居心地がなんとなく悪かった。会話がぎくしゃくしたり、目が合わしづらい。というか一緒にいるだけで精神的にドッと疲れた。

何故けじめを着けなかったのか自分でも大変悔やまれる。


だから、これはある意味良い機会なのだろう。この最悪の環境は…。感情を吐露出来ることは…。


「で、少し聞きたいけど良い?」

「なんだ?」

目の前の遥人に訪ねると無表情と抑揚の無い声で聞き返してくる。

「別れ話でも肴にしながらやらない?なあなあで終わって気分悪いのはあんたも一緒なんじゃないの?」

「……何を言い出すと思えば…、まあ、確かにアレで終わったんじゃ俺も据わりが悪くてな…。そういうとこ、いっつもお前に助けて貰ってたよな…」


ふっと少しだけ、表情を柔らかくし、懐かしむような目をしていた。そしておもむろにズボンのポケットから10円硬貨を取り出すと親指に乗せ、はじいた。


金属特有の甲高く、それでいて弱々しい澄んだ音を出しながら宙をくるくると回りながら上へと舞う。

それをぼんやりとした目で一瞬見た後、明日香の方を見る。


「そうね…。それで私がいつも苦労したわ…」

どこか疲れたような、それでいてどこか嬉しそうな表情をしていた。彼女は下の水溜まりに落ちて行く10円硬貨を一瞬見た後、近くのデスクにあったペン立ての中に入っていた会社の備品である安物ボールペンや安物インキペンを片手で目一杯掴む。そして対峙する遥人を見る。


その間、黒也は壁にもたれながら黙って見ていた。

自分の出る幕は無い、と感じたのだろう。

彼らの間に入ったとして自分は彼女の過去を知らない。ぽっと出の自分が生意気に口を出した所で何も変わりはしない、むしろ自分が対等に会話しようとする事さえ大変馬鹿げた驕りであることも容易に想像出来た。

自分一人だけが事の成り行きを見守ることに若干の疎外感はあるがもうすぐ始まるであろう【事】に割って入ったとしてもそれはただの蛮勇でしかないし、これは元恋人だった二人の問題なのだ。傷を負った女性と刀を持った男性、圧倒的な体力差があるし不安もないと言えば嘘になるが、相手はあの明日香だ。彼女はこれまで自分を気にし、自身の注意を割きながら黒也を守っていた事が何よりの証明だ。

黒也も一般男性よりかはそれなりに力も体力もあるが、彼女のそれは自身より上なのを知っている。それは自身が傷を負い、彼女と出会ったあの日から治療の為に2カ月もの間、彼女と過ごしてきて十分に理解している。


10円硬貨が水溜まりにポチャンと音を立てた事を皮切りに両者が動いた。


遥人は明日香に向かって走りながら後ろに手を回し、一対の中国刀を取り出す。


一方明日香は掴んでいたボールペンを全部投げつけた。

「で、なんでまた浮気したのよ!この考え無しのすっとこどっこい!」

「ふっ!こっちは付き合って2年だぞ!長い間待たされた俺の気持ちになれよ!」


それを右の中国刀ではたき落とすが、一瞬ボールペンに気が逸れてしまい、ガッ!という音に気づいて注意を戻すと、いつの間にか明日香がデスクからキャスター付きの椅子を引っ張り出して、それを遥人に向かって蹴飛ばしていた。

「サイッテー!あんたは結局女だったら誰でも盛れるから問題ないっての!?」

「っ!誰がそこまで言った!?誰がっ!?大体俺がそれとなく誘っても、お前がまだ駄目だ、まだ駄目だ。とか言って待ちに待ったけど長すぎるんだよ!!後、話が飛躍し過ぎだ!」

ガンッ!

ガーッと音を鳴らしながら遥人に向かった椅子は蹴飛ばされて宙を舞った。

「現に後輩の女と夜の営みでにゃんにゃん言わしてんでしょうが!?つか、こっちは3ヶ月前から浮気してんの気づいてたから!!」

「だったら気付いた時に言えよ!!」

スカートの中からカッターの詰め替え刃を取り出し、フタを開けると遥人の頭上に向けて一気にばらまく。

「言えるかっ!!第一、準備出来て夜のお誘いした頃にはデキてたんでしょうが!?私は二股する男にゃ股なぞ開かんし、処女捧げる気にもならないわよ!」

「なんだそれ!?こっちも童貞だったら良いって事か!?男を嘗めんなよ!!」

降り注いでくる刃の雨を中国刀で防いでいると、目の前の明日香が何かを顔面に向けて投げつけてくる。

「そっちこそ飛躍し過ぎ!!大体そんな事言ってたらきりないしますます結婚が遠のいてる!!」

「27にもなったんならそろそろ結婚とか将来考えて動けよ!!このっ…!?」

飛んできたそれを左手の中国刀で切った瞬間、


バシャッ!!

中身の液体が遥人に掛かった。

(黒インク!!)

明日香が投げたのはマジッ○イン○の補充液だった。辛うじて右手の刀で咄嗟に防いだがそれが自身の視界を遮った。

「くっ…!」

苦し紛れに左手の中国刀をブーメランのように前に投げると、

ビィィィィッ!!

布地が裂ける音が鳴り響いた。

その時黒也が目にしたのは、

普段ロングスカートの類ばかり履いている明日香の素肌を晒したふくらはぎ、短くなったスカートが少し動くとちらりと覗く緑の生地。そう、中国刀がロングスカートを破いたのだ。

(まさかのロングガードル【裾にある淡緑色で統一された花柄ラッセルレースの刺繍がポイントです☆】…だと…!)

祝・明日香のパンチラ(正確には補正下着)!初めての目撃者・黒也!


「っ!邪魔くさいっ!!」

少し動揺するも、破けたスカートのポケットに手を突っ込んで、先程のナイフを取り出す。

そしてスカートの切れ目に刃を当てると円を描くように一気に、

ビリィィィィッ!!

切り裂いた。


「明日香っ!前を見ろ!」

黒也の声に弾かれてふと前を見ると遥人が目の前に迫っていた。

「ちっ!鴉が余計なことをっ!!だが、遅い!」

インクによって黒く染まった刃を振りかぶる。


「あら、こっちにはナイフがあるのっ!忘れないでよねっ!」


ブンッ!


距離を置くため後ろに飛び退きながらナイフを投げつける。

次いで、手に切り終えたスカートの切れ端を持ち、中に縫いつけてあったクレイジーキルト状態の多数あるポケットの中身をばら撒く。


「くっ!なっ!?」


飛んで来たナイフを一旦は避けるも、それに避ける為に立ち止まった為、ばら撒かれた文房具に反応しきれず、床に落ちたペンや文具ケースが邪魔な障害物になり、一時的に行動を制限された。


切り取った布切れを水溜まりの上に落とすと布切れがじわりと水を吸い込んだ。

バチャンっ!


ローヒールのパンプスが水溜まりに着地し、ひざ丈位まで水しぶきがあがった。


荒い息を吐きながら、遥人を見据える。


「はあはあ…。27…、にもなって…、こんな…はあ、ハッスル、するなんて…、人生どう…転ぶか、分かったもんじゃないわね~…。ふう…あー…、しんどい…」

「で、話は戻すけど遥人…。どうして、彼女の私じゃなくてあの子、玉藻を選んだの?別にもう浮気なんてどうでも…良くはないけどあんまり気にしてないよ。でもはっきりさせて。遥人、あんたがなんで私に別れを切り出したのか…それと玉藻のどこに惚れたかを…」

鬱陶しそうに額に流れる汗や水や血を手の甲で拭いながら聞く。

それは言いたくても言えなかった言葉。遥人にそれを聞けば確かにけじめは着くだろう。

だが、聞けば後戻りは出来ない。


2年の月日を重ね、お互いに不器用な好きという感情ではぐくんできた二人の愛。

あまりにも不確定なうえに不安定で絶対という言葉がどうしても欲しいのにそれは行き過ぎた傲慢な願いだった。

確かに二人は愛し合ったはずなのに今はただ、苦しくて辛い。

お互いの不器用さが生んだズレは直ることなく、心を傷つけ合う結果になった。女は臆病な自分が選んだ選択に、男は心変わりから来る罪悪感に苛まれながら目も合わせられず、口を閉ざし、一緒に過ごすことを拒んだ。

だが、目の前にいる彼女は決めた。悲しみと怯えを含みながらもその眼差しは確固たる意思があり、真実を受け止めるつもりだった。


「……そう、だな…。お前はいつも強いよな…。時たま、先を見据えたような、達観した人生観で、相手を気遣って内面を見透かすところが逆に怖かったんだ。付き合って2年も経つのに未だ俺たちはプラトニックな関係だったよな…。別にそれに嫌気は差してはなかったけど物足りなさを感じていたのは事実だったんだ…。本当は別に好きな男が居るんじゃないか?…なんて疑ったりしたよ」


「…………」


苦しげに目を伏せる遥人を静かに見ている。


「そんな時、入社してきたばかりのあの子が気になりだしたんだ…。お前は付き合ってる筈なのにどうにも仕事で私情を持ち込まないし、俺は言葉が足りないところがあるだろ?特にここ最近、お互いにあまり会う時間が無くなってきて本当に明日香が俺に気持ちがあるのか分からなくて、不安だった時に俺を頼ってくれたあの子に惹かれていったんだ…。ま、浮気&尻軽男の言い分なんてあんま聞いても気分が悪いだけだろ?」

遥人は自分を罰するように嘲る。


「……まあ、私も薄々気付いてたわよ…。私の決心が着いた頃にはあんたの内心は冷えてた事に…ね」


「…俺もどこか甘えがあったんだろうな…。お前があっさりと認めてくれて…、あっさりと捨ててくれる事を…。きれいさっぱり、それこそ、何の後腐れもなく見限って欲しかったんだ…。2年も付き合っていた恋人に一方的に別れを告げた最低な男をゴミのようにお前の嫌悪の言葉で終わらせて欲しかった…」

「なのに…、お前は傷付いた顔をして…!ほんの少し喋っただけで、逃げるように去っていく姿を見て…!!自分が何をしてるのか解らなくなったんだ…。激しく後悔した!責められた方がまだ良かった…!」


「はあ…。随分と人任せで後ろ向きでひねくれた自己評価で私の性格無視した考えね。あと、それは甘えじゃなくて私をなめてるだけでしょう?【他人】を巻き込んで自分を罰しようとしないで。悲劇の主人公になりたかったら私じゃない、他の誰かに頼めばいいじゃない。あんたは私の嫌悪感を免罪符にして縋りつきたいだけじゃない」

遥人の苦悩を冷淡な言葉であっさりと切り捨てた。


「じゃあ、もういっこ質問。玉藻は…、あんたのくだらない悩みを解消するためだけの存在だった訳?」

鋭く、凶悪な目つきになっている。

「それこそ違う…。ちゃんと彼女の事が好きなんだ。だからこそお前と別れる決心が着いたんだ…」

「…遥人なりに誠実に向き合ったつもり、なのかな…。よし、理由はそれでいいわ。私は好きと言う感情に理論理屈はいらないと思ってるしね…。あんたが玉藻を私みたいに捨てるかな?って分かったら、まずブチギレてるし…。ま、問答もここまでにしといて…、最後の痴話喧嘩を終わらせとこっか?」


そう尋ねると、了承したのか目を伏せながらこくりと頷き、中国刀を構えた。


一瞬、目を閉じればまぶたに焼き付いたような愛した男の笑った顔、怒った顔、泣きそうな顔、喜怒哀楽の表情が浮かび、それにくっついてきたように思い出すお互いの会話、笑い声、口喧嘩…、ああ、なんだ、自分は彼以上に未練たらたらじゃないか。惨めでみっともない、早く踏ん切りを着けて未だに感傷に浸りっぱなしな自分を叱咤したい。私だってこれ以上、古傷をえぐるような真似をしたくない。だけど、2年付き合ってながらたった数日で忘れられるほど浅いつき合いでもなかった。でも、彼らの寄り添う姿を見て、似合いすぎてて、私はいらないと気づいてしまったからこそ、この恋に身を引くと決めた。それだけは貫き通したい。


床に散乱した文房具を蹴散らしながら迫ってくる遥人を前に、私は水溜まりに落とした【それ】を彼の顔に向かって飛ぶように蹴り上げた。


バチャッ!

「ばっ!!?」

水しぶきをあげながら濡れた元スカートだった布切れが水面から蹴り出され、遥人の顔に張り付く。


その隙に懐に入り、


「せーのッ!!」

鳩尾に肘の尖った部分でエルボー・アタックを入れた。

「ガハッ!?」

両手に握っていた一対の中国刀が地面に落ちたが、いちいち気にしていられない。


「悪いけどっ!体力的にも限界だから一気に片を付けさせてもらうわ!」

「グウッ!!」

次いで、肘を伸ばして肋骨に裏拳を入れると、苦痛の声を上げ、顔を歪めた。

殴った感触で肋骨が折れたのが分かった。だが、手を止めればこちらが危ない。命は取らない程度のさじ加減でやらなければならないが、【その程度の加減】であればわりかし簡単である。

人体急所を狙って攻撃すれば大概ダメージがでかい上に大きな痛みが持続するので、制圧するにはそこを狙えばいい。


放った裏拳を引っ込め、もう一度遥人の鳩尾に向かって、掌底を突き出す。


「ぐうううっ!!!」

「痴話喧嘩のシメにスリーコンボってねえ!!床で寝てろ!」


二度も鳩尾に強い打撃を入れられたなら立っていられない筈だ。しかも、肋骨を折っているので激痛で気絶していてもおかしくない。


実際、遥人は地面に膝を着いて、殴られた所を苦しそうに抑えながら痛みに必死に耐え、脂汗をかき、不規則な息遣いを吐いていた。

「はあ…、はっ…ふ…ぅ、っぐん…はあはあ…」


相当ダメージが抜けないのか濡れた地面に縫いつけられたかのように一歩も動けないでいる。


一方、私も無理に飛んだり跳ねたりした所為で、もう目の前が霞み始めていた。

頭もクラクラして、歩けばよたついて倒れてしまいそうな位、気持ち悪い。


だけど、まだ私にはやることがある。


おぼつかない足取りで目の前にいる遥人の方へ行き、伝える。

「最後に一つだけ言いたい事があるから言うわ…。【好きだった。愛してたわ】」

未だにダメージが抜けていない遥人が声に反応して顔を上げ、明日香の過去形の愛の告白を聞いている。


「だけど、私も色々とムカついてるし、あんたがそれ相応の罰を欲しいなら…くれてやるわ…」


パンッ!


乾いた音が響いた。

左手で遥人の右頬を軽く平手打ちした。


「これで全部チャラにする…。異論は絶対に聞かないから。…後で拾いに来るからそこでしばらく頭を冷やしてなさい…」


「それじゃあ、さようなら」


決別の言葉を言い残し、黒也の元に歩いていく。


最後、誰にも聞こえないように、

「幸せになってね…。私の愛した人…。こんな終り方で本当に…、ごめんなさい」


新しい恋をした遥人に祝福の言葉を贈ったと共に己の未練を捨てた。



「黒也君、ごめん。待たせちゃったね?」


疲れた笑顔を浮かべながら黒也に声を掛けるが、


「あ…ああ、その…お疲れ様…、でした…?」

顔を逸らしながら、返事をする。

心なしか焦っており、顔が赤い。

「ん?ん~…、ああ!別に良いよ?見られても減るもんじゃないし」

不思議に思い、自分の体を見ると、散切りで酷い有り様になったスカートから薄緑のガードルが常時見えていたのに気づき、スカートの裾を持ちながらひらひらと揺らす。


「い、いやっ!あのっ!そういう問題じゃないので!!」

赤い顔で慌てふためきながら顔を逸らし続けている。


「え?プッ、アハハッ!そんな慌てるほどでもないと思うんだけどなぁ?ほら、今頭から血を流してるから、この格好軽くホラーだし。それにゴリラみたいな馬鹿力で元カレボコってたから幻滅ものだったでしょ?アッハハッ♪笑ってくれていいのよ!?」

どこか様子がおかしい。


「…ハッ、ハハハ…。…もしかして、やけくそになってません?(自虐ネタを混ぜて含んでたしな…。そして何より目が本気だ!!)」

明日香のやっつけなハイテンションさに赤かった顔が平素の色に戻り、顔を合わせられるほど冷静になった。


「アッハハハハッ!…もう、捨て鉢ならなきゃ恥ずかしくて顔すら合わせたくないのよ!!今し方、引きずってた恋を終わらせて吹っ切ったし!?恥じらいなんぞ次の恋見つけるまで捨てるし!?だから大丈夫!!だから笑って!?いっそ滑稽なものを鼻で笑ってお茶を濁してよ!?ねえ!?彼女持ちリア充の某黒い鼠さんみたくアッハハッノハーッてさあ!?」

もはや羞恥のメーターが振り切って、壊れていらっしゃる明日香を目の前に黒也は痛々しさを感じていた。


(流石にうるさくなってきたな…。新しい恋を見つける、か…。ふむ、ちょうど元彼がいるし、良い機会だな)


「どうせ私はどうやってもコケティッシュさが足りませんよ!!どうせプラトニック・ラブで満足したいです…よ…?」

自棄がヒートアップし始めた時、急に黒也に顎を掴まれ、顔を近づけられる。


「………は?」

呆気に取られて間抜けな言葉が出てきた。

「僕はあなたに幻滅なんてしてませんよ?それに…、そんなに新しい恋を見つけたいなら僕がそのポジションを奪いますよ?勿論本気でね」


息が顔に掛かる位近くで言われ、顔がもっと近づいて、


チュッ。


「どうです?恥じらいは戻りましたか?」

真剣な表情なのに照れているのか顔が赤い。


---元カレの前で新人にキスをされた。

なんか皮肉だなぁ、と明日香は頭の中でアホな事を考えていた。


そして、唇が離れてから数秒ほど明日香の時が止まり(事態を受け入れられず硬直。その間、呆然とした間抜け面だったそうな)、その直後、全身が急激に沸騰したかのように赤くなった。


そして、

(あ、やばい…。頭に血が登って…、気持ち悪い…)


キュー…、バタンっ!!

倒れた。

「えっ!!!?明日香先輩!?ちょっ!!?うわあああ!?また血が出てきた!しっかりしてください!!!!」

「あうあうぅぅぅ……目が回って気持ち悪いぃ~…」

明日香・黒也ペア。

なんとかピンチを乗り切るも、黒也の不用意な行動で明日香が貧血状態になり、戦線離脱する。

【小ネタ劇場・弟との会話。今は亡き妹の話その③】


引き続き明日香の自室にて、


ひ「は?え?弟さん…、【視える】んですか」


いきなりの爆弾発言に困惑を隠せないでいる。


さ「うん♪りっ君は赤ちゃんの時から幽霊とか見えたり声とか聞こえたりしてたんだって。私がそれに気づいたときはりっ君が3歳の時で、私のそばに近寄って話しかけてきたの。私の写真飾った仏壇を指差して『なんでネェはいつもおうちにいるのにあんなことされてるの?どうしていつもばんごはんのとき、テーブルにネェのごはんはないの?』って聞かれた時はびっくりしたなー…」


しみじみと思い返している。


ひ「でも、霊とか視えるって大変なんじゃないですか?視えるって気づかれたら救いを求めてる奴には縋りつかれると思いますが…。俺は、ご主人に見つけてもらえて救われましたからなんとも言えないですが…」


さ「ああ、大丈夫大丈夫。悪質なのは私が守りを張ってたから弾いてたし!それに私の方からりっ君に対処法とか教えといたからバッチリだよ!」


ひ「俺、犬神なんですが…」


さ「うん、元が魂だけの存在だからなんとなく分かるよ?」


ひ「まだ弟さんには会ってないんですが…会ったら正体バレるとか、ありませんよね?」


さ「あ~…、あるかもね~?まあ、べつに大丈夫だとおもうよ?りっ君そんな野暮なこと気にしないと思うよ?私とお姉ちゃんで慣れてるから」


ひ「根拠がないのにひどく納得した自分がいる…しかも安心した…」


さ「まあ、お姉ちゃんの凶暴さが8割減って明るい感じだと御理解いただければ良いです」


ひ「身内からも凶暴とか言われてるって…」


さ「ああ~…。お姉ちゃんのイメージが悪く…。じゃあ一つだけお姉ちゃんの秘密教えてあげるね?」


ひ「マジですかっ!?」


さ「急に食いつきが…、まあ、いいや。実はお姉ちゃんが………してる時は本当は照れてるんだよ?」


ひ「わあ!!本当ですかっ!?ありがとうございます!!」


嬉しさでブンブンと尻尾をちぎれんばかりに振り回しながら満面の笑顔を浮かべている。


さ「うん。試してみてね?お姉ちゃん、実は分かりにくいツンデレだから言い当てたら可愛い反応すると思うよ♪」


続く♪

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