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咲き誇る大輪の華は…枯れない花の美しさは仮初め…

はい、お久しぶりです。ケータイが壊れてしまい、長いこと空いてしまいました。修理に出していたのが帰ってきましたのでこれからはペースアップしたいと思います。それでは…どうぞお楽しみ下さい。

『酒の池、肉の林、美しき裸体はひどく情欲をそそり、甘美で毒々しいまでの熱を含んだ媚香となる。重ね合わせた肌は衰廃へと誘うような体温を伴い、乱れた様は退廃的にして背徳的。熱はまだ灯る。我が居る限り、操るモノが有る限り、満たされぬ欲望が有る限り…。我は千年狐狸精せんねんこりせい、我が尾は九つ。変幻自在の姿を持つ。故に我は騙す。我が欲望を満たすモノを見つけるまで…。【桃源郷への願望を叶えた庭・酒池肉林】よ。我を悦楽の世界に導け』


ビルの屋上に歌うように言葉を唱えている女性が居る。

彼女が歌い終わると同時に彼女の佇んでいる床から酒気を漂わせた水がどこからともなくじわりと地面を濡らしながら湧いてくる。


「さて、後は火を放つだけ…。その前に…外の二人が中の二人と合流されると私の負けが確定しますから…。建物の出入り口を塞いでおきますか…」


パチンと指を弾くと床を濡らしていた水が一気に溢れ出す。溢れ出た水は屋上から漏れ出し、そのまま引力に従い滝のように下に流れ落ちてビル全体を一気に濡らした。それは例えるならよく燃えるように…一気に燃え広がるようにガソリンを撒いたようなもの。建物の頂上に静かに待つ彼女は歪んだ笑みを浮かべていた。

玉藻side終わり




緋牙・雅鬼side


「うう…。酷い目に遭った…」


「…俺はもっと酷い二次災害に遭いましたけどね…」


青い顔をした緋牙と心なしか表情がげっそりとした雅鬼がビルのエントランスに繋がる出入り口の前に立っている。


「さて…、ちゃっちいバリケードで入り口を固めてるつもりなんだろうが…旦那、どうします?入り口と中の物が滅茶苦茶になってよければぶち破りますけど」


肩をぐりぐりと回しながら聞いてくる。


「ご主人の安否が分からない今、一刻も惜しいからな…、構わない、壊せ」


さほど悩まずに命令する。


「合点承知ってな!旦那は後ろに下がってください。破片とか飛び散ると思うんで」


「分かった。それじゃあやってくれ」


緋牙は雅鬼の後ろに下がり、雅鬼は色々な物がうずたかく詰まれた山の前に立ち、ガラス張りのドアに右手の拳を当て深く息を吸う。


「そんじゃまっ!一発デカいのかますかあっ!!」


随分大振りな拳の振り方でガラスを割ろうとするが、


ゴツッ!!!

「~~~ッ!!!?」


割れるどころか、鈍い音を立てて失敗した。


「余裕綽々な宣言しときながらいざ失敗すると滑稽さといたたまれなさがなんともいえないよな…。…大丈夫か、雅鬼?」


赤くなった手を抑えながら涙目で悶絶している雅鬼を覗き込む。


「んだよっ!!!?このガラスっ!?」

「あー…、術が掛かってたんだろうな?済まな…かったな?」

怒鳴る雅鬼に苦笑いで謝っていた緋牙だが何かに気づいてスンスンと鼻を動かし、ビルの上を見上げ驚愕する。


「っ!?雅鬼っ!!」

「ん?って、のおおっ!?」

雅鬼が着ている服を掴んで後方に急いで退避する。

その瞬間、


ザバアアアッ!!


酒気を漂わせた大量の水がビルの壁を伝って滝のように降り注いで来た。


「っ!?これは、酒か?」

「祝い酒にしては随分と手荒いな!?女狐っ!!」


緋牙が上空を睨み付けるとくすくすと笑い声が上から響いて屋上からふよふよと頼りない動きを見せる一つの火の玉が降りてきて先程、大量の酒が落ちて出来た水溜まりの上を浮遊している。

『行かせませんよ?あなた達が中の二人と合流されたらこちらが叶わないのでここの建物の扉と扉を閉めて耐久性を強化したので鬼の拳一発で砕ける程柔やわな作りじゃないんです』


浮遊する火の玉からスピーカーのように声が聞こえてくる。


『ふふふ…。さて、一つ賭け事でもしません?』

「なにがしたい…」

緋牙は今にも射殺せんばかりの鋭い目で火の玉を睨む。


「旦那。そいつに構わないで行きましょうぜ。どうせ本体は上に居るんですから」

『あら、残念…。まあ、別に良いですけど…、通信用の火もいらなくなりますねぇ?ああ!良いこと思いつきました!使える物は使わないとですしねぇ…。ちょうど中の二人を蒸し焼きにしようと建物全体に油代わりにお酒を撒いたのは良いんですけど…、肝心の火を点け忘れてたんですよ。この火もいらなくなりますし…通信を切るついでに火を点けちゃいましょうか?』

「!!!?やめろっ!!」

「チッ…!!腐れ外道が随分と嘗めたまねしやがる!!」


あまりにもわかりやすく言われた奸計に二人は戦慄する。ヂヂッ…と、か細く揺らめく火が全てを握っているのだと様々と見せ付けられ、この場に嫌でも居るしかないのだ。これは妖狐にとっては時間稼ぎという賭けだ。奥の手の傀儡が中の二人を殺すまでの時間が欲しいのだ。だから、彼女は話術で時間を伸ばす。もう一方の緋牙達も先刻の黒也の活躍によって情報がある程度入ってきている為、時間が惜しいのだ。だからこそ問答する時間がもどかしい。ビル全体に撒かれた酒を【乾かすすべ】を緋牙は持っている。が、それを妖狐に気取られないようにしなければならない。雅鬼も【ある条件】が揃えば炎を操れるのだがそれには妖狐の心情が分からなければ大惨事に変わる。それ故に妖狐の心情を探ろうとする。


『さて、黙っていらっしゃるということは私の質問を聞いて頂けると取って構いませんね?』

「…ちっ…喋ってくれ…」

雅鬼は舌打ちをしながら頭の長く伸びた赤髪をガシガシとかきあげる。


『ふう…、それでは聞くとしましょうか。あなた達はもしいつまでも永遠に枯れない花があったとしたらどう思います?』

何故そのような事を問うのだろうか。花の話とはこの状況、この場の話題としてはおかしいのだが。

「はあ?枯れない花、ねぇ。んー…、古典的だけど永遠の愛とか誓いながらプロポーズ、とか青くさいロマンチストくらいならするんじゃねえの?」

ぎくっ!

雅鬼の回答に緋牙がびくりと体を揺らした。冷や汗をかきながら目を泳がしている。


『…………他には?』

気付いているが聞かないのが優しさ、と思ったのか一旦沈黙した後、緋牙にはノータッチで更に聞く。

「(なんで今、間が空いたんだ)?…まあ俺としては…、無いな。永遠に生き続けるなんざ考えただけでも胸くそ悪りぃ」

「……………」

『…何故?』

黙って聞き続ける緋牙とその言葉に興味を示した妖狐。

「あんたはどうか知らねえが俺と旦那は自滅か殺されでもしねえ限りどうやっても死なねえんだよ。いつまでも、時代が変わろうが世の中が変わろうが【愛した人間】が死のうがずっと生き続ける…ずっとな…。つまりこれが俺の回答だ。ついでにあんたの言った【花】の意味がうっすらと理解できた」

ニヤリと含み笑いを浮かべる。

「なんでしょうか?」

「【人間】、だろ?お前の言ってる【花】は。ついでにあんたが言いたいのは人間の不老不死、だろ」

「……!よく、分かりましたね?正解です。どうして分かったんでしょうかね?」

「俺も昔はそんな事を思ったんだよ。妓楼ぎろう育ちをなめんなよ。俺はそん時、自分の寿命の長さを呪ったがお前は何が理由だ?」


『私は…、人間の【儚さ】に惹かれたんですよ。私達より短い命で少し戯れただけ容易く命が散る…。なのに私達よりずっと美しく…逞しい。それでもすぐに枯れる。私達にとっての、ほんの一刹那で人は変わり、老いる。それ故に私は人に憧れたんです。【ああ、私もあのような醜くも美しい花のようなイキモノになりたかった】…とね』

おおよそ通信用の火の向こうではシニカルな態度を取っているのだろう。淡々と喋っている。

「なるほど…。だから人に成り代わる為に魂を奪ってそこに自分を据えた訳か…」

『あら?少し勘違いをしてますよ?今の私は所謂いわゆる残留思念という奴ですよ。本体と魂はとっくの昔に亡くなりましたからね。簡単に言えば身体と魂はこの女の物だけど私という思念のインクがこの女の魂を染めた訳です。あくまで花は私を着飾る為にありますからね』

「ふ~ん…。ま、人間側にとっちゃあ、あんたのそれは悪趣味かも知んねえがそれを言っちゃあ、人間だって似たような事してんだし…、なんも言えねえよな。俺が言えるのは…まあ、随分と業突張りなこった」

『ふふ…。女が欲張りで何が悪いんですか?女の欲望は蒐集癖みたいな物ですからね?』

「なる程。…で、俺は質問には答えた。時間が惜しいからさっさとそこをどけ」

つっけんどんな態度で終わらせようとする。

『………ふぅ、いいでしょう。まがいなりにも回答は得られましたのでこの火は消しましょう。後、窓や扉も開くようにしましたからどうぞお入り下さい。私は最上階で待っています。それでは』

一瞬、沈黙が落ち、ため息が吐かれたと思うと嫌みを少し言った程度であっさりと火を消し、術を解いた。気味が悪いどころか何か裏があるのかと疑りたくなる。


「気味悪りぃ…」

嫌そうな顔をした雅鬼が口からぼそりと呟いた。


「悪いな。作業に手間取ってな」

先程から黙っていた緋牙が急に口を開いた。

「いや、旦那はビルに掛かってた酒乾かしてたんですから無理は言えませんよ」

「正確には【枯渇】、なんだけどな…。まあ、無駄になったがそれはどうでもいい。扉を開けてくれ」


先程まで濡れていた地面は乾ききっており、水溜まりなど最初から無かったかのようだ。


「さって、今度こそぶち破りますか!」今度は遠慮無しに殴りに掛かった。

扉を殴る直前、

「なんか中から焦げ臭い匂いがするんだが」


と緋牙が呟いた頃には遅く、


ドガアアアンッ!!!!


雅鬼の拳が扉をぶち破った瞬間、【中から】大きな爆発が起きた。


緋牙・雅鬼side終わり。


玉藻side


屋上でさも面白げにけたけたと馬鹿笑いを上げる女の姿があった。


「あっははははははははははははっ!!!!馬鹿っ!!超大馬鹿だっ!!超お間抜けだわっはははははは!!けっ…傑作だわ…。は~…お、お腹痛い…!!あ~…腹筋に来るっ!!真っ正面から扉破るなんて正気!?」

彼女がビルに酒を撒いたのはあくまで偽の仕掛け。そもそもあんなに目立つ仕掛けで勝ったつもりでいる妖狐ではない。彼女の本命は火災現場で起きる爆発現象の一種であるバックドラフトを起こす事だったのだ。


【バックドラフト】

密閉された空間で火災が生じ、不完全燃焼によって火の勢いが衰えて可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に窓やドアを開くなどの行動をすると熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進み爆発を引き起こす。たちまち火の海となる。

(作・Wikipediaよりほぼ丸ごと引用。ちょっと改変してるよ?作者がほにゃほにゃ喚くよりかは、とても分かりやすいウィキさんの説明の方が良いと思って…。ウィキさんと言っても人名のウィ○さんじゃないよ?)


実はスプリンクラーが作動していた時、一階では妖狐が火災を起こしていたからだ。


「我ながらなかなか素晴らしい策略だと思うわ。さて、後は中の二人が死ぬのを待つだけ…。観戦しましょうか…」


コロコロと鈴のように笑いながらやることはえげつないどころか外道の領域である。綺麗な容姿とは裏腹にニタニタと下品な笑みを浮かべていた。

【小ネタ劇場・初登場?副業が女王様な四歌さん】


※18禁ネタが飛び交います。忠告はしましたからね!?


夜中の11時、

ピリリリリッ!

携帯電話が鳴っている。


あ「はい、葛之葉です」


し「あ、明日香ぁ~…。副業を辞めたいよ~」泣き言


あ「だったら辞めれば?」即答


し「うう、酷い…」


あ「このご時世そんな贅沢な悩み事聞いてもイラつくだけだから」


し「ごもっともです…」


あ「あんたの副業って女王様でしょ?」


し「SMクラブの女王様ってお客様の性癖だけに意外とお客来ないの!!勤めてから1ヶ月は修行(ムチの扱い方・縄の縛り方・道具の使い方)するうえにお給料出ないし!」


あ「あんたはリピーター多いじゃん。リピーターというよりも顧客って言った方がしっくり来るけど」


し「その顧客が段々とディープな責めを求めてくんのよ!!ウチはSMクラブと言ってもソフトだし、本番無しの雰囲気だけ味わうような所なのに!!」


あ「なに、若社長?モデル?ヤンキー上がりの鳶職とびしょく?大学生?」


し「全員…」

沈痛な空気が漂う。


あ「…内容…は?」


し「若社長はア○○バルーン…。モデルは縄で縛って野外露○調○…。ヤンキー上がりは縛ったうえに口にギャグボール付けて尿道○○○…。大学生は裸に油性マーカーで卑猥な言葉を書いて日常を過ごして貰う…」


あ「お前マジの悩みじゃねえか!?掲載してんのどこか分かってんの!?」


し「明日香が聞いたんじゃない!!だから本気で悩んでるじゃない!!」


あ「…辞めたら?」


し「…全員に冗談めかして言ったら興信所使ってでも探し出すって言ってた。洗いざらい探し出して押しかけるって言われた…」


あ「…全員優良物件なうえイケメンじゃない。…諦めたら?」


し「最後本音出てるよ…。嫌よ!!私の好みはメガ○ンのスプ○キーさんなのに!!」


あ「女○転生ネタ持ってくるんじゃありません!」


ガタン!電話越しに物音が鳴った。


し「ひっ!」


?「女王様…?今の「私の好みは」の部分について話し合いましょう?なあ、みんな?」


し「なんであんた達居るの…」


?「全員女王様を指名していて四人以上被ってしまって…それならいっそ、全員女王様に責めて貰おうと思って…」

あ「あ~…、仕事中だったんだ…。とりあえず、頑張って?」

し「いや、ちょっ、切らないで!!嫌あああっ!!」

ブチ!ツー…ツー…。

終わり。

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