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その手は惑う…決意は記憶(思い出)と共に揺らぐ…

はい、次話の更新です!毎度遅れておりますが、どうか見捨てないで下さぁい!!


あ「なら、執筆スピード上げなさいよ」


はい、その通りでございます…。


あ・作・それではどうぞお楽しみ下さい!!

『なあ、葛之葉さん…じゃないや。明日香さん…これは他人行儀か?んん!葛之葉 明日香さん。もし良かったら俺と付き合って下さい』


ある秋張れの日の昼休み、オフィスで起こった事、少なからず想いを寄せていた同僚の男性が顔を赤らめながら私への告白を聞いた時、驚きと戸惑い、そして恥ずかしさと嬉しさが混ざったような気持ちだったのを覚えている。私もいきなりの事だったので恥ずかしさで顔が真っ赤になって発したはずの言葉が言葉にならなくて余計に恥ずかしくなったりと、「お前ら本当に25か!?」と言わせたくなる程甘酸っぱい告白風景だったのを覚えている。なにせ自分の中で大切な記憶として残っているのだから。

その告白から2日後に私は了承の返事をしてもどかしいまでのお付き合いを始めた。


手を恋人繋ぎするのに、1ヶ月。

携帯のアドレス交換するのに、2ヶ月。

名前で呼ぶのに3ヶ月。

デートに誘うために、彼の電話番号の最後の一つを押すのに勇気を振り絞って押すのに4ヶ月。

フレンチキスをするのに10ヶ月とほんっっっっとうにもどかしいまでのお付き合いだった。

それでも幸せだった。少なくとも私は――、

踏ん切りが付き、思い切って夜のお誘いをちらつかせた時には遅く、彼は後輩とデキていた。


私が動くのが遅すぎたのだろう。別に二人を責める気にはならなかった。私は受け身すぎたのだ。それに…彼らは私にとってとてもまぶしかった。あんな風にもどかしく笑う彼を最後に見たのはいつだっただろうか?遥人が別れを告げる3ヶ月前、この時すでにもう戻らない事は理解出来ていたしせめて二人の邪魔にならないように必死に私の中に残った恋心を消そうとした。

初めてデートに行った思い出も、バレンタインに本命チョコを渡した思い出も、二人でつまらない事で喧嘩してその後、お互いにばつが悪そうに和解した思い出も、全て消そうとした。二人には適わない。私では無理だった。後輩の方が私より遥人を幸せに出来る。私の出る幕はもう…何処にもないんだ。

人知れず泣いた事もある。

休日に塞ぎ込んだ事もある。

やけ酒を煽った事もある。キツい酒を飲んだ方が少しだけ楽になれた気がした。ただ、その時はお酒の味が解らなかった。幸い途中で度が過ぎていたのか吐いてからは止めて、アル中にはならなかったがそれでも葛藤はあった。


二人を責める気は無かったが、自分を責める事で理由を正当化して二人に憤りをぶつけないようにした。


すっぱり諦める、なんてただの虚勢だ。実際は未練たらたらでそれを自覚する度、自分に幻滅した。こんな嫌な大人なるはずじゃなかった。自分は彼にとって特別じゃなくなったんだ。嘘つき。失恋を知っている人達は『可哀想』、『もっといい人見つかるよ』、『ひどい男と女だな』と言っていたけど違う。本当は心の中ではもっとドロドロしてるんです。いつ会えるんでしょうね?そんな優しい人に。私にとっては大切な人だったんです。いいえ、私が勿体ぶった結果なんです。こんな思いもいつかは消える。時が癒してくれる。その頃には私も積極的に出会いを求めよう!…なんて考えていたのにどうして…。


どうして、こんな状況にあんたが居るの?


(なんで私は今、元彼に銃口を向けてるんだろう?)


プシューー。


スプリンクラーから撒かれている水が静かな空間に響いている。


「……なんで…、なんで、あんたがここに、こんな場所に居るのよっ!」

「………………」

遥人は虚ろな眼で私達をただ黙って見ていた。


「…黙ってないで答えて欲しいけど…、無駄そうよね…。今まで会ってきたのがアレだったし…」

はあ、と溜め息が思わず出る。


(黒也君はまだ後ろに居るから守りやすいけど、問題は脱出経路の確保ね…。私が遥人を取り押さえてる間に黒也君を逃がすにも非常階段がある扉は鍵が掛かってるから丸腰な黒也君じゃ開けられないし…。かといって私が鍵を開けるとしても、その間、黒也君の守りは一瞬がら空きになるし…。他の奴だったらナイフを足に投げて足止めしてその間に逃げるんだけど、よりによって遥人なんて…やりにくい…。しかも、なんでか知れないど今の遥人は隙がない…)


先程から軽いフェイントを幾度か試しているが、全てに気付きはしているが反応して来ない。


対して今の私の状態は頭から血を流しているわけで、体力は徐々に減っているという現状です。どっちにしても硬直状態が続けば私の方が先にぶっ倒れます。


壊れたように未だスプリンクラーから水が散布され、床に水溜まりが出来、服はびしょ濡れになる。


「…………決めた」

そんな独り言が雨音に混ざって聞こえ、遥人が動いた。


「ひっ!あんたなんでそんな物持って…!」

手を後ろに組んだかと思うと両手には一対の剣が握られていた。

「……中国刀だ。バラバラにするにはちょうど良いからな…」

抑揚の無い声と冷たいまでの光を映す刀が恐怖と威圧感を更に引き立てる。


「まずは人型の鴉から…」

よく解らない言葉を口走った遥人は黒也君に向かって走る。

「こっちには行かせない!!」

前に出て道を塞ぐ。


「……ただの銃で俺を止められると思ってるなら、随分と甘いな、女…!!」

遥人はそのまま突っ切ろうとするが、

「そんな事を言って貰えるなら嬉しいわねっ!!」

バンっ!

手に構えた銃を右手の刀に合わせて撃つ。

ガアンッ!!


腹に響くような発砲音と弾丸発射時の火炎ガス、そして発砲音に紛れて鋼を弾く音。

「っ!!?」

理解できないと言った表情だろうか。右手の中国刀が遥人の腕から弾かれて宙を舞い、刃が天井に刺さる。


さて、ここで一旦時間を拝借して皆さんにご説明。

私の持っている銃は高威力が売りなんです。ちなみに今撃ったのは【S&W M500】というマグナム銃で、一般市場で出回っている銃で世界最強の名を冠するモンスターガン。威力はマグナムの三倍。成人男性が正しい姿勢で撃ったとしても12発が限度という冗談抜きのパワーガンであり、誇張無しで【撃ち手】の健康を損なう危険性と威力を秘めた怪物銃。手の中で何かが爆発したとまで言われて骨の弱い人が撃ったなら複雑骨折しておかしくないのですが…、私なら片手で手袋を着用しないで40発撃ったとしてもなんともないと思いますね。多分。何故多分ですかって?一発500円もする弾をんなぱっぱかと撃ったらいくらになると思ってるんですか。40×500=2万にもなるんですよ?己の限界を試すために2万なんて大金払いませんよ?普通なら。とにかく、威力が高い分、コストも高すぎるという難点があります。まあ、M500の場合、威力よりも貫通力の方が高いんですけどね。説明はここまで。つまり言いたいのは【発射時の撃ち手の衝撃に見合ったダメージを被弾者に与えてくれる】と言うわけで、


強制的に右手の武器を離された遥人は大きく体勢を崩し、足をよろめかせて壁にもたれかかる寸前、

「ふっ!!」


ブオッ!!

左手の中国刀を黒也君に向けて投げた。ご丁寧に私の手の届かない範囲にまで持っていくためか、ブーメランのように大きく旋回させ、風を切るような音を唸らせながら回転が加わった刃は私を通り過ぎて後ろの黒也君の頭目掛けて飛んでいく。


「黒也君っ!!」


とっさに振り向くと後数秒もしない内に刃が彼の頭に刺さるであろう距離に入っていた。


「っ!!猿騙し(ましらだまし)!」

ダンッ!


黒也君が何か口走ったと同時に刃が彼の身体を貫通し、壁に突き刺ささった音がした。


「あ……っ!!そんな…、ん?え?あれ!?」

「っ!!?」


一瞬最悪の光景を想像して言い知れぬ恐怖を抱いたがよく見ると中国刀が貫いているのは黒也君ではない。

自分でも何故彼だと思ったのか分からない【それ】に深々と中国刀が刺さっていた。


だってそれは、

「コピー…機?」


スプリンクラーによる雨であまり見えていなかったがそれでもおおよそ人の形にすら見えないコピー機が黒也君に見えていたいたのだから不思議でならない。


「言ったはずですよ?僕は陰陽師ですって」

苦笑を含んだ声がすぐ隣で聞こえる。


「どうやって…」

「まあ少し小細工を」

振り向けばにこりと笑っている黒也君が私の右隣に佇んでいた。


「…未だ本性を隠す気か?化け鴉」

「…なんのことでしょうか?」

遥人は殺気立った顔で問い、黒也君は冷ややかな目で流す。


何故か遥人はまたよく分からない言葉を口走る。先程から黒也君を鴉という言葉で呼んでいるが意味が込められているのだろうか?名字の鴉木のことだろうか?


「…いや、すぐにでも化けの皮を剥がせばいいだけの話だ…。それに、まだ武器はある…!!」

遥人が両腕を左右に振ると手に一対の中国刀が握られていた。

「タネさえ分かればもうこちらには効かな…」

「視ること叶わんついよ。仇となる汝のを潰せ」


カンっ!!

黒也君が呟き終わったと同時に金属特有の甲高い音が遥人の方から響く。


「っ!!両方の刀の刃を潰されたか…。だが、まだある…」

水難相すいなんのそう)みずち

不意に私達の頭上に降り注いでいたスプリンクラーの雨が止み、

バキャッ!!

頭上から嫌な音が聞こえ、

中国刀の刺さってヒビが入った部分から天井が崩落して

ドババーーァッ!!

むき出しになったスプリンクラー用の水道パイプが遥人の方に向かって鉄砲水を放つ。


「ぐっ…!!」

いきなりの事に中国刀を盾にして防ぐ。


つるぎ、赤錆となり、脆く崩れゆく」


ボロッ。

中国刀が瞬く間に錆び、鉄砲水によって崩れる。

「ガアっ!?」

盾になっていた中国刀が崩れ、鉄砲水によって後方に吹き飛ばされる。


(黒也君…それ、陰陽師とかじゃなくてポルターガイストとか言霊の類じゃ…)

と思ったがあまりに凄いため口を挟めない。


「…次から次へと邪魔を…なら、こちらはお前が唱え終わる前に斬ればいい!!」

鉄砲水から弾き出された遥人は柄だけ残った刀を捨てて、4本の中国刀を取り出し、内、2本を黒也君に向けて投げる。


「硝石を巻き込み吹け。風見鶏かざみどり

バキャアッ!!

バリィンッ!!

ビュオオオオッ!!


窓が突然割れ、続いて体が持って行かれそうな程の突風が吹く。

当然、遥人の投げた中国刀は突風に煽られて速度を失い、そこら辺に落ちて床を滑っている。


「ぎゃっ!!」

だから、女らしくない悲鳴を挙げても致し方無いですよね!?

私は黒也君に抱き寄せられているため無事だが、


「っ!!硝子の破片を利用した弾幕か…!!」


窓ガラスの破片が織り交ぜられた突風は何故か私達に当たらず、遥人の方にだけ向かって飛び散る。


「はっ!!」

バリパリバキィベキガシャア!!!!


中国刀を振り回して飛び散ってきた窓ガラスの破片をさらに細かく砕いて威力を殺している。


空中を漂い、月明かりに照らされた硝子の破片は最早芸術の域に達していると思う。

ザラララッ!

遥人の周囲を囲むように床に破片が散らばっている。

歌風詩歌かふうしいか・字無し(あざななし)の旋風つむじかぜ


ザアッ!

床に散らばった破片が再び風に舞い上がり、遥人を閉じ込めるように渦巻き状になる。


「よし、今の内に逃げましょう!!」

「え!?…ああ、うん!!じゃあ、非常階段の方に行こっか!!」

あっけに取られていた私の意識は急に声を掛けてきた黒也君によって戻る。

遥人は気になるが多分大丈夫だと思う。


「じゃあ、ちょっとうるさいけど我慢して…」

私が黒也君の方を向いた時、背後に細かい硝子が混じった白い渦巻きに閉じ込められている遥人が刹那、彼に向かって中国刀を投げるのが見えた。

「ごめん!」

「は?うおっ!?」


素早く私の片足で黒也君に足払いを掛け、床に倒れさせる。


バンッ!

本日二発目の銃声に交じって鋼を弾く音が鳴る。薬莢やっきょうの転がる音と刀が地面に刺さる音が響く。弾数は残り三発になった。


「心臓目掛けて投げるってのがまた悪趣味ね。遥人…」


渦巻きがぶれ、霧散すると無表情の遥人がこちらに刃を向けていた。

「……そうだな。…じゃあいいだろう。条件を付けてやる」

「どんな条件かしら?無理難題ならお断りだけど」

「……お前にとってはさほど難しくはないさ…。条件は3つだ。1つ・その男が今から始める戦いに介入しない事。もちろんその男が介入しない限りこちらから攻撃はしない。2つ・武器の制限無し。最後の3つ・明日香、俺とサシで勝負しろ。…以上だ」

「デスマッチね…。分かった。受けるけど…理由を聞かせて…何故、私を選んだの?黒也君が強いから?」

それを聞いた遥人は僅かに微笑んだ。

「後腐れが無いように…だ。俺はお前を捨てた男だ。俺はお前に負い目があるしお前も俺に負い目がある。だからケリを着ける。それだけで選んだだけだ…」


意外な言葉が聞こえ、思わずため息を吐く。

「…普段からそれぐらい気が利いてたら私もそこまで悩まなかったんだけどね…」

「何分、不器用で気の効かない鈍感な男でしてね」

「黒也君…。さっきはごめんね?後、少し休んでてね。ここからは…」

遥人に向かってナイフを構え、銃口を向ける。

遥人も両手にある一対の中国刀を構える。

「「個人的な大人の事情ってやつでね?」」


あ、ハモった。

【小ネタ劇場・弟との会話。今は亡き妹の話その②】


明日香の自室にて、


ひ「えと、君のお名前は?」


?「私?私はねー…。あっ!危ない危ない…。知らない人に簡単にお名前教えちゃいけないってお姉ちゃんに言われてたんだ。でも、なんでおにーさんはお姉ちゃんの部屋に居るの?あぶない人なの?それともあんしんな人なの?」


無垢な瞳で緋牙の顔をを覗き込む。


ひ(ここはご主人の部屋だから十中八九親族だろうな…)

ひ「えっとね俺の名前はは緋牙!ご主人…いや、明日香お姉ちゃんのペットなんだ!」


?「おにーさん、お姉ちゃんのお名前知ってるんだ…。じゃあ私の名前言うね?私のお名前は、くずのは さき って言うんだ!あすかお姉ちゃんの妹!あと、私のおとーとのりっ君の本当の名前は、くずのは りくと って言うの!!年齢は22歳!!」


ひ「にじゅっ!?」

流石に驚く。目の前の幼女の本当の年齢が22だというのに姿と言動が全く違和感がない。


さ「えへへ~。驚いた?ごめんね?見える人には定番でやる挨拶代わりのネタだから♪さて、本当の姿になるね?」


少女が光に包まれ、光が消えると同時に成長した女性が緋牙の目の前に立つ。


さ「はい、これが本当の姿。私は葛之葉沙希。お姉ちゃんからさっちゃん。りっ君からは沙希ネェ。お好きに呼んで下さいね?」

セミロングの髪をたなびかせた美人が悪戯っぽく微笑んでいる。


ひ「うわあ…。ご主人が若返ったみたい…。しかも可愛げがプラスされてる…」


さ「ん~。りっ君といい、緋牙さんといい、何もお姉ちゃんを極悪人みたく言うな~…。まあ、仕方ないよね…。お姉ちゃん、っ君と喧嘩する時はあんまり手加減してないし…」

ポリポリと頬を人差し指で掻く。


ひ「えっと…ご主人とどのようなご関係で?」


さ「りっ君が生まれる前は姉妹。りっ君が生まれてから姉弟。お姉ちゃんが長女、私は次女でりっ君が末っ子」


ひ「なんで…幽体なんですか?」

※緋牙は明日香さんの姉弟関係をよく知っていません。


さ「そりゃあ私、死んでるもん。ウ~ラ~メ~シ~ヤ~…。なんちゃって?」

両手首を下に向けて、ベロを出す。


ひ「おちゃめな幽霊ですね…」


さ「あはは!お姉ちゃんから『さっちゃんは笑った顔が素敵!』って言われてたし…まあ、今でも言われるけどね。あーあ、なんでりっ君には私が見えるのにはお姉ちゃんには見えないのかな~?」


さらりと爆弾発言が出ました。

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