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その一週間…。ああ、例えるなら彼女はまるで…。

さあ、前回の更新日から10日経っているわけですが…。弁明の余地はありませんよね?はい…。すいません。


さて今回はちょっと前のお話。玉藻の話が中心かな?


それではお楽しみ下さい!

【ああ、彼女はまるで物語のヒロインじゃないか!!】


中国の妖狐、妲己の逸話を少しばかり話そうか…。


彼女は如何にして中国の皇帝、殷の紂王こと帝辛の関心を惹いたのだろうか?


妲己は自分の生まれ故郷から紂王へ献上された、いわゆる人身御供だ。


さて、お相手の帝辛の評価はというと、美貌を持ち、弁舌に優れ、頭の回転が速く、力は猛獣を素手で殺すほど強かった。それゆえの慢心の為か、臣下が馬鹿に見えて仕方なく、諫言を受けても得意の弁舌で煙に巻いてしまった。と表されるほどの完璧超人で天は二物を与えずと言う言葉は何処行ったな何様俺様皇帝様っつー今の恋愛小説にも出てきても十分レギュラーとしてやってける暴君でした。


対する妲己は、帝辛と対峙した時に他の妃とは違い媚びなかった為に帝辛の興味を引き、後宮では他の妃達に苛められるもののそのおかげで帝辛に正室として上げて貰い、そっからはもうあの手この手のナニ手まで、あらゆるテクニックで帝辛を籠絡し、寵愛をむさぼり帝辛を操り邪魔者である前皇妃を炮烙の刑に処して殺したり、皇妃の座を乗っ取り自分の欲望を満たすために民にあらゆる暴虐を尽くしたりと、えとせとら、etc.、挙げればキリがない無いほど色々やったわけです。


例。炮烙と言う残酷な刑罰をやめるように諫言した比干という臣下は、帝辛の怒りを買い、「聖人の心臓には七つの穴が開いているという。それを見てやる。」と言い、比干は哀れな事に心臓をえぐり出されて死んでしまった訳です。ちなみに補足すると妲己がそそのかしてやらせたものだった。もっと言えば炮烙の刑を見て妲己が笑っている所を見た比干さんが「先王の典法をおさめずに、婦人の言を用いていれば、禍のいたる日も近いでしょう(要約すると、「前の王様がやってた法律を勉強しないであの女の言う事ばっかやってたらこの先お国が終わる日近いって!!チョー速いって!!」)」と諫めた。すると、妲己は「聖人の心臓に七つの穴があるとわたしは聞いています」と答え、比干の心臓を取り出させて観賞した。…とりあえず、比干さんはもっともな事言ったはずなのに心臓抉り出されて殺されるっていう不憫な最後を遂げた。


その後、戦争で周の武王に攻められて殺され、妲己も後を追うように死んだ。


後世、夏桀殷紂かけついんちゅうという暴君の代名詞が出来た程である。(夏桀は桀王けつおうから)


初めはシンデレラストーリーのようだったのになにがどうしてこのような結末を迎えたのか…。いやはや人生は分からないものである。







さて、今回そんな悪女の装飾品を身に付けた彼女の一週間の話を断片的にお見せしましょう。



月曜日


朝、オフィスにて、


「ふんふ~ん♪らんらんらら~ん♪」

上機嫌で会社に入って来て鼻歌を歌いながらコピーを取っている玉藻が居る。


「あら、何か良いことでもあったの?三枝さん?」

こちらは忙しそうにしながら議事録の作成を終えた明日香さん。

「あ、解りますかぁ?実は日曜日に遥人さんとデートしたんですよぉ!」

普通、元カノに言うべき事ではないが彼女は傷付ける為に言ったのだろう。


「あら!良かったじゃない!あの朴念仁を惚れさせた甲斐があるじゃない!」

だが目論見は外れ、あっさりと褒めている。


「え?ああ、はい!!とっても楽しかったですぅ…」

戸惑いながら自慢する。


「頑張りなよー?私みたいにならないようにがっつり幸せを掴んでおきなさい!」


書類の山を捌きながら祝いの言葉を贈る明日香を見て玉藻さんはえもいわれぬ恐怖を抱いたそうな。


まあ、彼氏を寝取った相手に元カレの自慢をしたのだ。普通なら怒ってもいい筈で、決して誉めて欲しかった訳ではない。


彼女はただ…、


「あ…、コピー終わったみたいなんでファイリングしときますねぇ?(なんで…、どうして…どうして私を…)」


笑顔を浮かべ、祝福の言葉を贈る明日香の眼前から逃れるように持ち場に戻る。


(玉藻…、あんたは私になんて言って欲しいの?【その言葉】を言わせて自分の罪として受け入れるつもりなの?それとも、免罪符を欲しているの?それとも…、ただ(男共)アクセサリーを見せびらかしたいの…?もう一度、私がなんであんな態度を取ったのか考えなさい…)

去っていく玉藻の背中を見ながら明日香は書類を捌き続ける。


「なあ、雅鬼…。ご主人が憂いを含んだ目で三枝を見てるんだが…」

「んー?どれどれ?あー…、ってあれ?なんかに似てるな?………(長考)あっ!?メーテ●の眼差し!!」

「ああ、そう言えば似てるよな。あの目つきは…。とりあえず、お茶淹れたけど飲むか?」

「お、鴉の旦那ですか?ありがたく貰いますよ」

「なあ…、●ーテルってなんなんだ?後、お茶貰うぞ」


こちらは研修内容を覚えながら実践している緋牙・雅鬼、そして和菓子を食べようとお茶を淹れた黒也の三人。


緋牙に聞かれ、雅鬼はその表情を見て銀河を走る鉄道に出て来るほぼお色気担当のロシア帽を被った金髪の女の人が頭に浮かんだそうな。


そしてこの三人が一緒に居るところを他の女性社員に大いにウケたそうな。(主に目の保養、腐女子関係等)


その夜、玉藻は…


(此処、どこだろう…)


見渡す限り、真っ白な霧に包まれた世界に彼女は居た。


(玉藻、俺と付き合ってくれ!!)

(玉藻、好きだ!)

(玉藻…、愛してる)

次々と真っ白な世界に声が響き、霧に溶けていく。


(私は…、違う…、違う違う違う!私はただ男を侍らしたいだけ!なのになんで…あんなことして心が苦しいの!?)


(幸せを掴んでおきなよー?)


(いっそのこと嫌われた方が良かったのに!!だからあんな風にワザと傷付けるように振る舞ったのに!なんで…なんで…。…あれ?…なんで私、あの時、犬持君や鬼田君、鴉木君に断られて怒ってたんだろう?私はただ…、あれ?なんであの後の夜、他の人達と一夜を過ごしたんだろう?おかしい…私がしたかった事じゃ…。分からない…)


【ねえ?お嬢さん?】

女性の甘く、誘うような声が虚空に響く。


(誰…、誰なの!?)


【私?私はあなたの悩みを解消しようとした愛の神よ?あなたの悩みが余りにも可哀想だから私が特別に来たの。あなたは私の声が聞こえる特別な人みたいねぇ?】


(え?なによ…!!私に何の用が有るのよ?)


【だからあなたに教えてあげるわ…。全てをまぁるく治める方法を…。だから『あなた』の全てを私に寄越して頂戴。大丈夫、私が大団円で終わらせてあげるから…ね?】


(嘘よ…、あなたは嘘つきよ…。私はただ…)


【男の人達があなたの思いのままなのよ?そうでしょう?あなたはあの日、あの三人を欲しいと思った。嘘じゃないわ。あなたは自分自身を騙してるの。虚飾に彩られたハーレムを求める自分…自分の意のままにならないなら即座にいらなくなるわがままな子供のような自分…、よく作り上げたじゃない。先輩の彼氏が欲しくて欲しくて、寝取って…。それが逆に自責になって元の性格なら罪悪感でヘンになりそうだからこの人格を作り出したんじゃない】


(違うっ!!!!違う…私はただ…、モテたいだけなの!)


【でしょうねえ?だから、『あなた』は要らない。私が求めているのは『あなた』が自己防衛の為に作り出した『仮初めの貴女』なのよ。だから『あなた』は邪魔になるの】


(なにをいって…。え?きゃっ!?)


玉藻の立っている地面が黒く染まり、足がぬかるみに嵌る。


そして黒く染まった地面から何かが伸びて玉藻を引きずり込もうとしている。

それは、


(嘘…、これ…『私』…?)


黒い水溜まりの中から自分と同じ顔をした何かが顔を覗かせながら這い出てくる。それとは逆に玉藻は水溜まりの中に沈んでいく。


【貴女はあなた…、折り合いが着かなくて壊れそうなら私がなんとかしてあげる。…だから私に頂戴?あなたの身体と精神を…。】


普通なら足掻くのだろうが彼女は…、


(ああ…、そうね。その方が楽かもしれない。もう疲れた。他人が羨ましくて羨ましくて…、他人が育ててきた大切なのを奪って罪悪感に苛まれるのは疲れた…。このまま沈んだ方が楽に…なれそうだし)


彼女は【自分】で考えることを辞めた。

彼女は他人に任せる事がどんなに楽か知っている。そして自分の足で歩むことの辛さも知っているし、歩みを止めた末路も知っている。人は、他人の欲のために、他人に奪われるために何かを大切に作ったり育てたりすることは無いし、誰しも嫌に決まっている。


ただ、【隣の芝生は青く見える】


他人の幸せが酷く羨ましく見える事がある。

彼女はそれを抑えきれなかった。報われない想いを抱くには彼女は余りに稚拙過ぎた。


そして【奪った】。だけど本来叶うと思っていなかっただけに本当に叶った時、嬉しさも感じた。だが、それよりも叶わない恋路を想っていた時よりも、そこに自分が幸せを奪ったという自責の念と良心の呵責が残り、心を徐々に蝕んでいった。


だから【作った】。自己暗示のように冷静に、客観的に、なんの負い目も持たない第三者でありたいと願ったが故に作り出した。表向きの【三枝 玉藻】


だからこの【自分】は【表向きの自分】の邪魔になる。


それを今、囁いて、叶えてくれるのだから断る気など彼女の中には無い。甘美な誘いに魅了され、【彼女】は自ら歩むことを止めた。

そして【彼女】は沈み、【表向きの彼女】はそこに立ち、どこからともなくクスクスと笑う声が静かに響いていた。


【その世界は胡蝶の夢。夢現とも分からぬ曖昧な世界。】


ただ、そこには【彼女】が沈み、【彼女】が本物になって、【誰か】が甘美な衰廃を囁き、笑っていた。【ああ、彼女はまるで地獄で喘ぐ哀れな罪人のようだ!】


火曜日、


「ねえ。ファイリング、手伝おうか?」

「え?ああ、ありがとうございますぅ。優しいですねぇ?」

「や!そんなこと、ないよ!?」

「ふふ、もし良かったら今夜、空いてます?」

「え!!うん!空いてる空いてる!空き過ぎて暇なんだよ!!!」「じゃあ、8時に………」

ほのかに甘い空気を漂わせながらどこか肉食系になっていた。




「おー…、初々しいねぇ。人間ってのは色恋沙汰の時に出てる空気っつーか雰囲気なんてものは変わりないもんだなー」

「雅鬼…、発言が老人臭いぞ…。」

「そりゃ、年齢的に三桁も行きゃあこれくらいにはなりますよ…。まあ、男の方はまだ良いとして…」

「女の方は、なんというか…男が好きというよりは男に恋慕を寄せられてそれに酔っている感じがするな…」

「あー…、男に好かれてる自分が好きっていうお姫様型自己陶酔ってやつか?黒也」

「まあ、当たっているが…明らかにおかしいな?今の会話から分かるんだが、自分中心で振る舞っている筈なのにあそこまでトントン拍子なのが気持ち悪い。禄に練習もしてない大根役者の芝居を見てるようだ」

「実際あそこまで上手く運ぶ事はまずありませんよ?色恋沙汰ならちっせえ時から見慣れてましたし…。まあ、俺らが惚れてる相手が相手だしなぁ…」


「「あぁ~…」」


三名の一致点、それはやたら男らしい女(明日香)に惚れているということ。バカみたいな戦闘力を誇り、処女をこじらせかけていて、音ゲー狂者で、酒癖悪くて、昔、何かやらかしていて、本当に危ない時は見捨てないで自らの危険すら顧みない漢っぷりを見せて、たまに女性なんだと気付かされたりする事まで含めて好きになってしまったこと。


(あ・ほぼ絶望的にラブに繋がる要素が何一つとして挙げられて無いんだけど!?【漢っぷりってなによ!?たまに女性ってなによ!?漢じゃないし常に女性ですが!?ちくしょー!!】)


そんな本人が聞いたらこんな風にキレそうな事を三名は言い合っていた。



そして、明日香はというと



(あんた…、誰?まるで別人…というか本人じゃない…!!)


うっすらと玉藻の様子に気付いていた。驚きと悲しみが彼女の心を巣食っていた。ただ、表情には出さずに静かに見ていた。


【ああ、例えるなら彼女はまるで、純愛物語のヒロインのように、酷く滑稽だ!!】

【小ネタ劇場・弟との会話。今は亡き妹の話その①】

明日香の家のリビングにて


あ・陸斗ー。今週の土曜日空いてるー。

電話越しに喋っている。


り・空いてる空いてる。部活にもフミにも言っておいてあるし、いつでもOK。てか行けなかったら沙希ネェ寂しがるだろ?


あ・そっか、ならいいや。あんた末っ子だけど私ら本来なら三姉弟だったんだもんね…。あんたは沙希を見てないし会ってないけど懐いてるよね。私だって、1年とちょっとしか遊んであげれなかったしねー…。…ちょっと湿っぽくなっちゃったわね。んじゃ、通話切るよ?


り・あいよ。じゃ、土曜日の朝、姉ちゃん家行くから。バイバーイ。


あ・ん、バイバイ。

携帯を耳から離す。


それと同時に興味深そうに明日香に近づく雅鬼。


ま・明日香?今の電話の相手は誰だ?男…、だよな?彼氏か?


彼氏が出来たと思い、焦りながら尋ねる。


あ・ああ、弟よ。土曜日実家に帰るからそれの打ち合わせ。後、彼氏はまだ出来てません。


ま・…そっか。ならいい。俺も付いてっていい…


あ・駄目。言っとくけど妹の命日だから行くの。


ま・あ…、わりぃ…。妹…、居たんだな…。

触れてはいけないところに突っ込んでしまったとたじろいでいる。


あ・1年と数ヶ月…。それが私の妹で弟の姉に当たる沙希の生きた年月としつき…。


ま・………。


あ・初めて雪を見て喜んでた顔も、つたない言葉で「ねぇね」って呼んでくれた事も…、物凄く嬉しかった。だから死んだ時、酷く泣いた。【なんであんなに小さかったのに私より早く死んじゃうなんて…。どうして神様はさっちゃんを助けてくれなかったの?】ってこんな残酷な事を両親に聞いたりしたな…。


ま・…なんで、死んだんだ?


あ・破傷風…。まだあんなに小さくて可愛い盛りだったのに、全身が痙攣して、呼吸困難になって死んだの…。病院に連れて行った時には遅くて、苦しんで死んだ…。何度、変わってやれたらどんなに良いかって、病院に急ぐ車の中でちっちゃいもみじみたいな手を握りながら思ってた…。


悲しそうな、寂しそうな顔をしながら話す。



そして、明日香の自室


ひ・…えっと、君はだれなんだ?ご主人に似てるけど…。


?・【お兄ちゃんはだあれ?あたしはお姉ちゃんに会いに来たんだ♪りっくんは元気にしてたしお姉ちゃんはどうしてるかなって】


緋牙は8歳位の一人の少女を見つけていた。

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