反撃開始!…パイプ椅子は本来、座る為にあります
テストから復帰!!
しばらく此方は書いていなかったので生ぬるくなっているかも知れませんが、お楽しみ下さい!
さて、ビルの中にいる明日香一行はというと、
2階行きの上り階段にて、
ガツンッ!ゴツンッ!ドガッ!ゴガッ!ベシッ!ブオッ!バシィッ!
「だっ!!」
「ま゛っ!!」
「も゛ぉぉぉ…」
パイプ椅子でリビングデッド状態の男性社員達をボコボコに殴って進んでいる。
「どいたどいたー!!邪魔する奴、全員フルボッコにするから今の内に白旗上げろー!!そして速やかに気絶してろー!!」
巧みなパイプ椅子捌きで倒していく。
角で上手いこと殴って気絶させているためかパイプ椅子自体はそんなにベコベコに凹まず、折れ曲がらずにいる。
「黒也君!下から来てない!?」
「いいえ!誰も来ていません!それよりも怪我を負っているのにそんなに暴れては駄目です!(それ以上はヒロインとして色々と危ない!)」
「大丈夫よ!こう見えて遠心力を利用して殴ってるだけで大して体に負担掛けてないから!」
爽やかな笑顔で返す。
(いや、違うんだ!そうじゃない!そんな『漢』を見せられたら立場が逆転するんだ!)
明日香・ヒーロー
黒也・ヒロイン
てな具合に変わってしまう事は余り黒也にとって好ましくは無いうえに心なしか明日香の顔はイキイキとし始め、そんな彼女を見て、若干ときめく自分がいることに悲しみを覚える黒也だった。
「う゛ああぁ…!!」
階段の踊場でリビングデッド状態の一人が飛びかかって来るが、
「邪魔すんなぁぁ!」
スパァン!ガンっ!
折りたたんでるパイプ椅子の座る部分でひっぱたき、次いで背もたれの部分を脳天に落とす。
「がっ!ぐ…あ゛ああぁ!!」
呻き声を上げながら反撃しようとするが、
「足も忘れんな!!」
ガスっ!!
男として大事な部分を蹴られる。
「ア゛ーーーッ!!!」
一際大きい叫び声を上げ、地面に突っ伏す。…蹴られた部分を両手で押さえながら…。
「鬱陶しいわぁ!お前ら樹液に群がる昆虫かぁぁ!!」
1階では黒也が祓い、2階では明日香がフロアに閉じ込め、先程通った時に見た2階の扉はギィコ!ギィコ!という嫌な音を上げ始めたとはいえ、強い力で扉を中から体当たりしたせいか、かんぬきが変形してしまってまだ破られてはいない。
さて、なのに何故こんなに居るかと言えば、3階にうろついていた奴らが下の物音に気付き、降りてきたわけです。
明日香が先程1階で倒したアレも3階から来ました。
「明日香先輩!あの、僕も一応陰陽師ですし退治出来ますよ?」
流石にヒロイン的に危ないと思った黒也が申し出るが、
ドガッ!!ガスッ!!
「うがあっ!!」
「え?なんて言ったの?」
叫び声にかき消されて聞こえて無いみたいです。
「いえ…。あ…!(私はどうしたら…。ああ、あれは流石に見えてないか…。肝心の【管狐】を潰さないとあまり意味がないな…。まさか見せ場はこれか?…しょうがない…)」
黒也の目には倒れたリビングデッド状態の男性社員の体からふわふわと上る靄が見えている。
『ケケッ♪依り代を倒しても、操ってる俺らは倒せねぇのに馬鹿だ馬鹿だ♪』
『後ろの倒れてる奴らに憑いて不意打ちってのもいいよな?』
『女の後ろに居る男は腑抜けみたいだしあいつ人質に捕ってみる?』
ピクッ。
『あ、いいなそれ。俺、あの女けっこうタイプだしあいつらに憑いて犯そうかな?』
イッラァァ。
密かに明日香の貞操が狙われていたが…、聞かせてはいけない人がそこに居ました。
【ほう…。そうかそうか…。お前らは私の獲物に手を出す気か…。大した度胸だなぁ?】
『『『『え?』』』』
下世話な話で盛り上がってた狐共は不意なドスの効いた声に恐怖心を植え付けられる。
ガタガタガタ…。
『あ、あいつ今…俺らに思考送ってこなかったか?』
『まさかな…。いや、俺らの方を見てる!!』
『なに、言ってんだよ?気のせいだろ、大体あんなナヨナヨした奴…』
ジュッ!サラサラ…。
刹那、管狐の一匹が燃えたと思ったら灰になって消えていた。
【気のせいだと思うな…。お前らは天狗がプライドが高いことを知らないのか?まあ、私は周りの天狗からはプライド意識が低いと言われたが…、だが…獲物に関しては別だ。鴉の物を取ろうとした罪は重いぞ?代価はお前らの消滅で勘弁してやる】
その時、明日香は見ていなかったが黒也は凄みのある顔で管狐を見ていた。
『う、あ…。逃げろ…逃げろ逃げろ逃げろーー!!!』
『うわあああ!!!』
一斉に上の階に逃げていくが、
バチィ!!バチンッ!!
管狐が上に逃げて数秒も経たない内に電撃音が階段に鳴り響く。
「っ!!?(何が起こったんだ!?)」
「えっ!?何!?漏電してるの!?」
流石に気付いた明日香は驚きながらも3階の踊場に到達していた。
『ギャアアア!!』
『嘘だろ…、これ…。そんな…結界だなんて…外に、外に逃げろ!!』
4階の入り口辺りで何かに弾き出される。壁をすり抜け外に出るも、
『吸われる…。妖力が…、存在が吸われるッ!!そんな…妲己様!!まさか吸精の術を掛けたのですか!?嫌だ!!消えたくない消えたくない消えたく…』
ここで言葉が途切れるが彼の末路は言わずとも容易く分かる。
(4階に何が…だが、何故外に吸精の術が…)
「嘘でしょ…。黒也君!!早く上に行くよ!」明日香が異変に気付く。
ギギッ…。ギィ゛ィ゛ィ゛、バキャッ!!ガラン!!
金属が大きくねじ曲がる音が響き、地面倒れ、鈍い金属音を立てる。
「グルルル…。ガアアアアアッ!!!」
2階の扉が開き、中に居たリビングデッド状態の社員達がうなり声を上げながら階段を上る。
「あ~~もうっ!!たくっ…、出血覚悟で切り開くか…。黒也君ちょっと下がってくれる?」
目線は迫ってくる社員達に向けながら階段を降りる。
「え?あ、はい…。何をするつもりですか?」
「一点突破。例えるならラグビーのタックルかな?」
「へ?……なんで、パイプ椅子を両手で持って構えてるんですか?」
ちょうど楯とかを構えてるような感じだが、黒也は嫌な予感しかしなかった。主にヒロインとして駄目な方向に…。
「だから、タックルをするんだよ?」
困り顔で微笑んでいるが何をするか分からなくて怖い。
そして3階に繋がる踊場でパイプ椅子を構え、降りてきている社員達を見据える。
「じゃあ、行くね?まあ、正直自分でも引くと思うけど…、可愛い後輩見捨てる位なら初めから先輩呼びさせてないってねっ!!」
地面を蹴りだし、階段を駆け上がる。
そして、パイプ椅子を構えたまま突っ込んだ。
「オラアアアッ!!」
「ノガアッ!!」
ドンドンと社員達を蹴散らしながら(事故レベルの突進)進んで道を切り開いていく。
しかも、お気づきだろうか?
足場の悪い階段を踏ん張り、かつ上りながら突進、男性社員達の体重が明日香の体に掛かっている訳で、普通なら耐えきれずにこけてしまうが、彼女はその重さに耐え、走って進んでいる。
正直言って、化け物である。
そして、走りきって明日香は只今、4階入り口に到着しています。それに続いた黒也も少し遅れながらも到着。
「はあ…、はあ…、ご…、めん…。ちょっと頭痛い…」
体力をかなり使ったためか、足元がふらふらでよたついておぼつかないでいる。
ベコベコに折れ曲がり使い物にならなくなったパイプ椅子がそれを物語る。
「…っ!明日香先輩!血が…」
数刻前、明日香が殴られた部分から多量の血がポタポタと地面に落ちている。
「……ごめん、ちょっとやりすぎ…たわ…」
ドサッ。
血色の悪い顔で謝ると地面に倒れ込む。
「先輩!?しっかりして下さい先輩!目を開けろ!明日香!!」
駆け寄って明日香を
抱える。
「大…丈夫。いちお…、聞こえ…てるから。早く、オフィスの非常扉まで、行って…」
顔を上げて喋るが、最早危ない。
「わかった!わかったから動くな!」
そして黒也が中に入ろうとすると、
バチバチィ゛!!
「ガアッ!?なっ…結界!?くそっ!」
5階へ繋がる階段は昔、建設している時、設計上問題があったため4階の中にあると入社当時に明日香から聞かされた。
つまり、黒也、背水の陣に陥る。
4階から見える風景は、赤々と染まった煙と陽炎で見えづらい。
そして、4階オフィスに床に転がっている杭を模したひびだらけの水晶のストラップ。
それはチベットの密教法具の一つとされる【金剛杭】というもの。
パキィィン!
完全に砕け散った。
さあ、事態は急転を始めた。優勢と劣勢は逆転出来るか?
案ずるな、それが君らが選んだ道だ。君らは彼女に導かれる。生き長らえる道を。