湧き出る絶望…未だ彼女の安否は知れず…
むー、シリアス難しいな…。ご指摘感想してくれたら嬉しいです!
時は戻って緋牙side
(ご主人…、その喋ってる男は誰で…、え!?殴った?…なんで黒い笑顔で脅してるんですか?)
デスクワークに励みながらジェラシー剥き出しで見ていたが何か違うことに気付いた緋牙さん。
「ごちゃごちゃ言ってないでいいから行こうか?」
(ん?あーっ!なんでそいつを外に連れ出そうとしてるんですか!?俺というものがありながら浮気ですか!?)
どこをどう見たら首根っこをひっ掴んで引き摺る様を浮気と呼べるのか…。またもやジェラシー剥き出しで見ていると、
「犬持さぁ~ん!お昼どうでしょうかぁ?」
甘ったるい声で呼ぶ玉藻が邪魔に入ってきた。
(っ!!突然入ってくるな!あ…ご主人があんなに遠くに…。)
上目遣いで見上げて来るが気持ち悪くなるばかりだ。
(下手な蠱惑の術を使ってるからコイツ嫌いなんだよな…)
ぶっちゃけた話、…俺の出自(呪術)に関係するんだよ…。
『蠱毒』…、という呪術をご存知だろうか?
毒を持つ生き物を狭い壺の中にいっぱいに入れて何週間か放っておく。そうすると中に入っている毒を持つ生き物達がお互いを食い合いを始め、そうして最後に生き残った者を壺から出して殺す。後は呪ったり家の繁栄を願ったり使い方は様々なんだが…まあ、呪術を使った奴の行き着く先なんて結局の所哀れな物だが…。
作・読者の人はやっちゃ駄目だよ?生き物は大切にね!
俺も『犬の蠱』に当てはまる。どちらにしろ作り方は残酷なのは間違いない。言っておくが俺は犬じゃなくて狼だ…。まあ、詳しい事はご主人に聞かれない限り喋らない事にしている。
「ねぇー、駄目ですかぁ?」
(まだ、居たのか…。下手くそ過ぎて最低ランクの妖惑の術に成り下がってるから近寄りたくないな…)
「すみません…。俺なんかより先程から熱い眼差しで貴方を見ている人達が居ますのでそちらの方達とお昼を食べたらどうですか?」遠まわしにお前と食いたくないと言えば、
「え~。でも私はぁ、犬持さんとぉ食べたいんですぅよぉ!」
食い下がって来る。
(ちっ、後ろの奴を少し弄るか…。おい!クロ、シロ、シバ、ムク!)
((((此処に参上致しました!!))))
四匹の子犬が緋牙の周りを飛び交う。
玉藻や他の人間には見えないそれは緋牙が使役する犬神みたいなものである。ちなみに雅鬼も媒体を使えば呼び出せる。
(後ろの男共を使ってこの女をどっか連れていけ)
(御意に!)
(命令とあらば)
シバとムクが玉藻に魅了されている二人に取り憑く。
(うわっ…。なにこのばっちい女…。恨みとか嫉妬とか低級霊とかいっぱいしょい込んでて触りたくないぃ…。香水の匂いもキツいし…)
クロがごねる。
(クロッ!!命令なんだから仕方ないでしょ!!ほら、行こ!)
シロがたしなめるが、
(えー…。でも、このばっちい女と一緒にお昼ご飯食べたくないようぅ…。ご飯がまずくなりそうだもん…)
クロがまだブーブーとごねる。
(クロ、さっさと行け)
緋牙は明日香さんから学んだ黒いオーラを出して脅す。(実体験による学習)
ビクッ!
(は、はいぃ!!)
さすがに怯えたようでピューッと男共の方に逃げるように飛んで行き、その内の一人に取り憑く。
ついでに言っておくと、この女が使っている魅了の術の本質は洗脳だ。ちゃっちい『物語』が核になっており、俺や俺の使役している犬神が洗脳された奴をつつけばすぐ解ける程度だ。それくらいにチープな物語だからこそこいつらでも簡単に物語の登場人物を弄れる。
「犬持君がそう言ってるし無理強いは良くないよ!だから僕らと行かない?」
ムクに憑かれてる奴が言う。
「俺らが居るのに他の奴なんて見るなよ」
あんなに渋っといて演技派だな、クロ。
口説かれてる本人は、
「え?あ、はいぃ。みんながそう言うなら分かりましたぁ(なんで!?鬼田の後に、私が他の奴を口説いたら邪魔しないよう命令したのに…。もしかして本当にヤキモチをしてくれたの?なら、ちゃんと答えないと…)」
(よし、そのまま連れていけ)
((御意に))
(りょーかい~)
(クロ!!了解しました!)
「それじゃあ、どこ行こうか?」
「う~ん?じゃあ洋食店にぃ行きたいですぅ」
「分かったよ。じゃあ行こうか」
「はぁ~い!」
いかにも嬉しそうに媚びた仕草で了承する。
クロ達がそのまま三枝を連れて行く。
問題の奴が居なくなると静かになる。
(さてご主人は…、もういないか…。時間…余ったな…)
ご主人が居ないとつまらない。
「…仕事やるか。でも、終わりかけてるしなー…。どうしようか?」
そこまで考えてたら部長が声を掛けて来た。
(えっと確か名字は、狸竹だったような…)
そこまで思い出していると、申しわけなさそうに口を開く。
「犬持君。君、今日は帰ってくれないかな?」
「え、何でですか?俺、クビなんですか?」
突然の発言に戸惑う。仕事はちゃんとしていた筈なのだが…。
「いや!!違うんだよ!?…まあ、僕の独断だよ、独断。責任は僕が持つから今日だけは帰って貰えないかな~…、なんてね?」
焦って否定したのでホッとするが同時に疑問が湧く。
「はい、分かりました。…えっと、でも何するんですか?」
「ん?まあ、ちょっと放置し過ぎてヤバめになってる事があってね…、それの後始末なんだよ。いやー、大丈夫だと思ってたんだけどこのままじゃ危なくなりそうだからちょっと保険を掛けて置こうと思ってね」
にっこりと良い人そうに柔らかに笑うこの人の笑顔が薄ら寒いと思った俺は間違っていない筈だ。
(そう言えばご主人が苦手な人がこの人だったな…)
理由を聞けば『う~ん、同族嫌悪?』と言っていた。
なるほど…、こういう事か…。敵に回したくはないな。
「まあ、僕の他にも残る人は居るだろうしね…。僕もする事終わったら帰るし」
「そうですか…。分かりました!」
「ああ、僕が言う人以外は残るからね?鬼田君にも言っといたから先に帰ってるだろうけど、葛之葉君も帰るグループに入るんだけど今は居ないし連絡入れとくね?」
思い出したように言う。
「分かりました!それじゃ、先に帰りますね?」
ふと違和感を感じた。
(なんで雅鬼とご主人を会話にチョイスしたんだ?しかも教えるように…)
さて、緋牙の奇異の視線を背中で受け流す狸親父は『あー、めんどくさいな~』とか言いながら飄々としている。
そして2時に帰宅。
テレビゲームをしている雅鬼がいた。
「おっ、お帰りですか。旦那?」
「そうだな、ご主人は?」
「まだ帰ってませんよ?」
「おかしいな?部長が連絡するって言ってたのにな…」
「まあ、見忘れてるだけかも知れませんし待ちましょうよ?」
「…そうだな」
…何故かご主人が気になる。獣の直感という奴だろうか?でも少しは我慢しないとご主人に嫌われるかな?
それから二時間後、
「旦那~…。そわそわし過ぎですよ~?さっきからうっとうしいんであっち行ってて貰えません?ゲームに集中出来ないし」
「済まないな…。解った」
嫌な予感が何故か止まらない…。むしろ大きくなっている。
(子供の帰りを心配する親の気持ちに似ているのだろうか?)
それから二時間後、
「流石に遅いな…」
「確かにもう日が沈んでますしね…。電話掛けてみたらどうです?」
「そうか!その手があったな!」
電話という連絡手段を忘れていた緋牙さん。
電話の受話器を取り番号を打っていると予想外の事が起きた。
『緋牙様~!!非常事態です~!!SOSですよ!?』
「うわっ!!びっくりした!これ旦那の犬神ですか?」
慌ただしく他の三匹を背負い、くわえたクロがオロオロしながら帰ってきた。
「落ち着け、クロ!」
『うぅ~…、シロやムクやシバがボロボロです…。あの女チョーヤバいですよぉ…』
「だから、落ち着け!!」
『はい…すみません…』
少し怒鳴ればシュンとして落ち着きを取り戻す。
「何があったんだ?」
『緋牙様に命令された通りあの女をお昼ご飯に連れて行ってご飯を食べたまでは良かったんです…。問題はそこから先で…』
「どうしたんだ?」
『あの女…、ある計画をしてたんです…。最初はくだらねー戯言だと思ってたんですけど、あの女はマジでやる気なんです…』
「…計画?」
『…玉藻逆ハーレム計画です…』
「ぶっ!!!ギャッハハハハハ!!ヒー…、なんだよそれ、ぎ、逆ハーレム計画…。アッハハハハ!!」
雅鬼が笑い、腹を抱えて転げ回る。
『…最初はクロ達も自惚れを聞かされたと思ってたんです…だけど、あの女に取り憑いてる奴がそれくらい簡単に出来る奴だったんです…』
「なんだったんだ?」
『中国の贅沢残忍狐の怨念です…。確か名乗った名前が…姐己って言ってました…』
さっきまで笑っていた雅鬼がピタリと笑うのをやめる。
「それ…、マジか?」
「クロ、それは本当か?」
『うん…、他のみんながまとめて一蹴されて…。みんながクロだけ逃がそうとして壁になって…、そしたらあの残忍狐…、クロ達の魂を喰ってやるから感謝しろとか何様発言しやがって…、気付いたらみんな背負って逃げてて…』
ポロポロと涙を流し、震えながら言葉を紡ぐ。
「どうやって逃げたんだ?」
『逃げてたら狐の尻尾みたいなのが追っかけて来て…、捕まりそうになった時に助けてくれた人がいたんです!』
「妖狐から守るってすげーな…。そいつ…」
「誰だったんだ?」
『名前は聞いてないけど確か「おろろ!!どこかで感じたイケメソオーラ…。でも追われているのね、手負いのキューツィードッグ…。ならば私が助けまそー!!」とか言ってるのが聞こえて来て…、そしたらなんか髪っぽいのが守ってくれたんですよ!』
「…なんか、数日前に聞いたような…体験したようなテンションだな…」
「…確かにあれは今でも強烈に記憶に残ってるな…」
うんざり気分で聞いてる二人とは違いキラキラとした目で語るクロ。それはまるでヒーロー物に憧れる純真無垢な少年のようだった。
『そしたらですね?尻尾を絞め殺さんばかりに髪っぽいのが巻き付いて動きを封じましてね?そしたら尻尾がバタバタ暴れて残忍狐の声が聞こえて「覚えてらっしゃい!」とか言った後に尻尾が霧散して消え失せたんですよ!!』
「うん、解ったから次な?」
うんざりしながらさっさと話題を変えたい緋牙さん。
『あ、そしてクロが髪っぽいのにお礼言ったら『何を言っている…。弱きを助け、強きを挫く。私はこれをただ実行しただけ何だぜ?おチビちゃん?』って言ってくれて、もうクロは髪っぽいのを尊敬し』「だから次な?」
だんだん熱が入りつつあるので強制的に終わらせる。
『で、髪っぽいのから緋牙様にお手紙を貰ってるんですよ…。あ、手紙入れてる紙袋貰って良いですか?髪っぽいのから貰ったやつだから宝物にしたいんです!』
ひょいと中身だけ取り出して渡す。
「まあ、いいが…。え~なになに…。『ハロハロー!ワッタシーの名前は明日香ちょんのユージンです☆モチ偽名だよ?』」
この時点で破り捨てたい衝動に駆られた緋牙と雅鬼だが、『髪っぽいの』を尊敬しているクロの手前抑える。
『まあ、冗談抜きの話をしようか?このおチビさんを助けた時、どこかで明日香ちゃんの気配を感じたの。しかもおチビさんを襲った狐が作った術式陣地の中に明日香ちゃんは入ってる。私は今、手を離せない状態だから助けられないけどもしあなた達がこれを読んでる時に明日香ちゃんが居なかったら助けてあげてね…。ちなみに特定しやすいように術式の種類を言っとくね?狐が改竄した八卦陣の中に明日香ちゃんは居るから。しかも術式は今日発動すると思う。PS、この手紙が杞憂であることを願います。』
そこまで行き、緋牙と雅鬼の中にある仮説が出来た。
もし、明日香に部長の連絡が回っていないとしたら今、何処にいるか、
もし、姐己が憑いてる女があいつであるとしたら、
もし、部長が言ったグループ分けが何かに共通する事があるとしたら、
もし、明日香が部長の連絡が回っていなくて今、会社にまだ居たとしたら、
もし、術式陣地の場所が会社だとしたら、
「っ!旦那、早く電話を!!」
「解ってる!!」
ピ、ピ、ピ、トゥルルルル…、
(早く出て下さい…、ご主人!)
明日香side
会社に戻って来たはいいが人がまばらです。
(おかしいな?部長も帰ってるし…。とりあえず何だろ?このリスト?)
セーフって書かれてるのには私や緋牙、雅鬼や鴉木君、そしてほとんどの女性社員や中年男性や一部の子持ちの男性が書かれており、アウトにはほとんど玉藻ハーレム軍団の名前が書かれている。
とりあえず2、3人しか居ないオフィスで6時まで仕事をしていると、
ブー、ブー。
(あっ、マナーモードにしてたな!)
急いで電話に出る。
「はい、葛之葉です」
『ご主人!今何処ですか!?』
切羽詰まったように聞いてくる緋牙。
「あー!あんたなんで家に居んのよ!!」
『いいから何処に居るんですか!?』
いつになく焦ったように聞いてくるのでおかしいと思いながら現在の場所を言う。
「どこって…、会社だけど…」
『っ!…良いですか?そこから走って家まで帰ってきて下さい!』
「何でよ?あ…れ?」
『どうしたんですか!?』
「いや、なんか停電しちゃったみたい…。きっと隣のビルも…ってあれ?…隣…灯りが点いてる…」
窓ガラスから隣のビルを見てみると灯りが点いていた。
『早くそこから逃げて!!』
「解ったわよ…」
電話は繋げたままでバックを持って帰る準備をする。
「何でそこまで帰りを急かすのよ?」
『事情は後で話しま…』
そこまで聞いていて、不意に後ろから殺気を感じ振り返る。
ブンッ!!
後ろに誰かが立っていて何かを振り下ろしていた。
ガッ!!
カッ、カラララ…。
携帯電話が地面に落ち、滑る。
『ご主人!?ご主人大丈夫ですか!?ご主人!?ごしゅ』
プツ、ツー、ツー…。
小ネタ劇場【流された美由梨②】
み・ぐお~。
前回に引き続き流され続ける美由梨さん。
ぺ・ウオオオオ!
す・ドオリャアアアア!
バッチャーン!!
バチャチャチャチャ!
川に飛び込んで泳ぐ二人。
み・すや~。
ゴイン!石に頭をぶつけそのまま止まったようです。
す・捕まえた!
ぺ・よし引き上げるぞ!!
み・すやーすやー。
す・ぺ・どっこいせ!!
ヒューン、ドサッ!
す・ぺ・あ…、やりすぎた~。
す・コンクリの地面に叩きつけちゃった~!!
ぺ・どうしましょ!!
作・続く!?