表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/48

屍の上で微笑む彼女…望んだのと全く違う過去…

遅筆な私です…。なーんで、割と難し目な戦闘描写を書きたくなるだろ…。


中途半端だし。


それではどうぞ!

過去、


当時19歳の明日香の過去を一言で表すと、『傍若無人』という言葉がぴったり当てはまるのだ。


だが、傍若無人の意味は自分勝手で我が儘な人を表すのだが、彼女の場合はそのまま、意味など考えずに傍若無人なのだ。傍らに人が無きがごとし。

当時彼女は不良やヤのつく職業の方による領地抗争に参加していた。

東陣営、西陣営、南陣営、北陣営と分かれ、どちらかの陣営が勝ち、統治するといった感じだ。


東陣営と西陣営は提携していて、実質上3陣営による戦いだった。

だが、実際参加していた陣営数は6陣営だった。

東西提携陣営、南陣営、北陣営、そして、飛び入り参加した彼女だった。

明日香の陣営は一名。つまり彼女だけだったのだ。


そして当時の彼女が何人も病院送りにしていた事を掴み、その危険性を知って止めるさせるべく龍剣のじっちゃんの陣営、つまりもうひとつの極道陣営が入り、この混乱に乗じて覇権を奪おうとレディース陣営が加わり、イレギュラー(不規則)入り乱れる権力争いになった。


結果的に言えば、この争いを制したのは明日香だった。が、彼女はこう言った。

「いらない」

彼らの、不良達や極道にとって、今まで築き上げた物を全否定したのだ。

いつの日か、彼らが望んだ夢も希望も全て、『いらない』という言葉で一蹴したのだ。

だが、彼女にはそれを言う資格があった。

彼女はたった一人、一人きりでこの戦いを制したのだ。規格外の化け物が暴れまくったのである。彼女に負けた彼らに言う資格は無かった。

彼女にとって権力は全くと言ってもいいほど、意味を為すモノでは無かった。

傍若無人な彼女に権力なんてちゃっちいモノに興味なんてさらさら無かったのだ。

この戦いによって多くの陣営が戦う意味を見いだせなくなり、また甚大な被害を受けた為、南北の陣営とレディースは解散、東西の陣営もまた数多くの人が抜けていった。

彼らにとって決定打になったのは彼女の参加理由にあり、【彼女はただ単に楽しそう、だから遊ぼう/ーーしかし、違う。彼女はただ、警さ、裏の権…揉み消…事……蔽を覆そ…、返し…殺さ…、会うた…。ホ…レス集…虐殺、初恋の人…を】と思って参加したのだ。

普通に考えて狂っている。

が、そんな狂人が戦いを制したのだから茶番もいいところ、ちゃんちゃらおかしいモノだ。


そして今、妖怪達が見ているのは彼女のそういった過去なのだ。


当時の彼女は正に、単純な理由かつ純粋な狂者であ(り復讐者だ)った。

映像から見るに倉庫のような場所だろうか。大きな鉄製の扉が閉まっている。

映像に映っている中でまだ立っている人が三人いる。だが全員恐怖で身体を動かせないようだ。

彼らは東陣営の大将と幹部。通常、彼らは大将1人と幹部4人の5人組なのだが、2人は先陣を切り、先陣を切ったが故に真っ先に倒された。


その二人は積まれた人の山の一番下の土台になっている。

明日香は痛めつけていた人を何の感慨もなく、片手で山に投げ捨てた。

投げられた方は最早されるがまま、人形のように捨てられた。


154対1


こんな圧倒的な戦力差でさえ彼女に歯が立たないのだから悲劇と言うより喜劇の方が下手したら似合うかもしれない。


明日香はというと、たわいもない独り言を言う。

恐怖に慄く彼らに問うように言う。


「赤枝の騎士っておとぎ話知ってる?ケルト神話のクーフーリンについての伝説なんだけど、敵軍のクイーン・メイヴが自分の国のアルスターに大群で侵攻してきたんだけどややあってクーフーリンしか戦える人が居なかったの。メイヴは『たった一人の戦士に何が出来る!』とか言いながら、ナメて楽勝とか思いながら侵攻してきたわけなんだけど、たった一人の戦士に追い払われたんだよね~。あんたらもメイヴと同じねー。随分嘗め腐った真似してくれるわねぇ…」


ペラペラと長ったらしい神話の解説をしたかと思えば何故か、さも残念な物を見るような表情で3人を見る。


「なんで全力死力を尽くさないのかな~?折角イイ感じに気分が乗ってたのに萎えちゃったじゃない。ちぇっ、つーまんないの…」


子供がさほどどうでもいい母親にすら怒られないような玩具を壊したような目で、心底落胆するような態度を取って空気を幾分か和ませようと当時の彼女なりに気を使ったのだが、逆にそれが彼らに恐怖を与えた。

さっきまで狂ったように笑いながら自分達の仲間をほふった人物が今はただ飽きて壊した玩具を見るような視線をこちらに寄越している。


「しみったれた出し物で誰が喜ぶっつーの?もっとこう、どデカイ出し物出さなきゃ、私は満足しないんだよ。高みの見物決め込んでる時点でしらけるわ」


「っ…!!」

彼らが話を遮ろうとしても何かが首を絞めているようにように声が出ない。

「文句なんて言わせないよ。言わせるもんか。さて、飽きちゃったし…、帰るか…。人間的につまらない奴とやりあっても楽しくなさそうだし…。そんな大将?さんをあんたらは敬ってんだもんね~。…だから全員大バカ野郎なんだよ…。馬鹿は幸せそうで良いわあー。あんたらみたいな当たり前の幸福を当たり前のように溝に捨てるやつってさー?無性にむしって千切って燃やしたくなる。お前らなんのためにこんなアホくさい喧嘩ごっこやってんの?しかも、残った奴ら全員生まれたての小鹿みたいに足がガクプルしてるし」

あーあ、ばかばかしいモンに引っかかっちゃったなー、と彼らを侮辱するような発言をしながら出て行こうと出口に向かう明日香。


しかしながらプライドの高い彼らの闘志に火をくべたようだ。


「待てよ…」

ぼそりと呟くような声が聞こえた。

「んんー?」

顔を彼らの方に寄越す。


「ナメてんのはオメェの方だろ…。いいぜ、その喧嘩…買ってやるよ…!」


最早彼らの目には恐れは無かった。ただ感情を荒げ、逆上している。

それを見て彼女は…、不敵に微笑んだ。

まるで、戦いを煽り、わざと挑発したかのように。


「うん、正解、それでいいんだよ。ただ怯えるだけじゃこの世界生きてけないだろうし、発破を掛けたのも無駄じゃ無かったわね」

不敵な笑みを深めつつ、まるで獲物を見るように妖しく微笑む。

「その闘志があるなら、…守るべき何かがあるなら、往生際悪く、足掻き、抗い続けなさい。一縷いちるの光を血眼になってでも探しなさい。……なんて、ちょっとばかし達観したふりしてポエムなんぞ言ってみたり。分かった風に言うなんて、やっぱ柄じゃないなぁ~」



ここで一旦、水鏡に写っている映像にノイズとぼかしが入った。


(…よーし、順調順調♪…くふふ~…バレてないね!んでもって、やっと回線繋がったー!でも、ちょっと遅かったかな?まあ、まだ放映時間に余裕があるからもう少し見せて時間を稼いで、その間にカット&編集して映像の完全遮断に移りますか!!報酬、ペティの奢りでふぐ鍋パーティーが私を待っとるでー!!)



「ん?映像に揺らぎが…」

黒也が何かに気づくが、

「動揺して妖力に揺らぎが出来たからだろう」

緋牙が答えてあっさりと疑問が消える。

故に、侵入した誰かに気づくことなく、作業の余地を許してしまった。


だが彼らもまた、落ち着いていた。


昔の彼女は確かに今とは違いすぎるが、当時の彼女なりに不器用で乱暴な方法ではあるが、相手の決意の程を案じて最悪の状態を体験させて、次に生かして貰いたいと思ってやった事なのだ。

まして人を預かる身なのだから、いつも最悪な状況を想定しなければならない。

最悪をどう好転に持ち運ぶかを教えたかったのだ。


それに昔の彼女は、今の彼女に受け継がれている。

どこを、と言われれば少々、答えにくいが確かに昔も今も良いところが彼女の中にある。

映像は彼らと明日香が対峙し、お互い啖呵を切っていた。


「東西連合陣営、東のヘッドをやってる錦火 夏紀にしきび なつきだ。全力で相手をしてやらあ!」


「右に同じく東西連合陣営、東四天王を名乗らせて貰っています。瑠義るぎ 藤治とうじです。よろしくお願いします!」


「左に同じく、東西連合陣営東四天王、萩谷はぎや あき、参る…!!」


「うん。やっぱり啖呵って言うのは聞いてて気持ちいいもんねぇ~。…さて、先程君らに言った不敬と無礼をびさせてもらいます。不躾ではありますがよろしければ私の相手をしてくださいませ。私の通り名は、ブラッディ・ハーベスター。このようなふざけた通り名ではありますが、私は全力をもって君らを迎え撃たせてもらいます。貴方たちの闘志と心と絆に敬服し、また感服致しましたので私は全力死力、出し惜しみ無しで貴方たちを倒しに行かせてもらいます。では、始めましょう。こほん、まあ性に合わないので砕けて言わせてもらいますね」

堅苦しく先ほどまでの挑発を謝り、戦いを始める彼女。

「さあて、いっちょ派手に行かせてもらうわぁ!!」


そこまで見ていた妖怪達は皆、同じ事を思った。

(((男らしい…)))

本人が聞いたら反応に困るような妖怪達の悲しい本音。



だが、彼らはこの後すぐに悩む事になる。

なぜなら、当時の彼女は……………、手加減が全然全くもって出来なかったから…。

何事にも全力投球…、とか聞こえは良いんだけど投げてるのがひびが入ったガラス玉をコンクリートの壁に力の限り投げつけるような感じである。もしくは水風船。

まあ、O型ってゲームみたいな軽い勝負事でも子供相手に手を抜かないって言うし、つまり。




映像side



シャッ!!


一瞬で彼らに迫ったかと思ったら彼らを前を過ぎていた。

ゴキリ…。

鈍い音と共に。


「はい、一人目達成。全力出すならやっぱこれ位しないと失礼でしょ?」


楽しそうに言うと人間離れな宙返りジャンプをして次の行動に移る。


バタンと萩谷と呼ばれた人物が苦しそうに理解が追いつかない表情をして倒れていた。

痛む箇所を見ると、左腕があり得ない方向に曲がり、腹部に鈍痛が走り、嘔吐感が込み上げていた。


明日香は宙返りをしながら二人目に迫っていた。


「ほら!うっかりしてるとさっきの子みたいにやられちゃうよっと!!」


瑠義と呼ばれた青年の両肩に両手を付き両手をバネのように曲げ、一気に伸ばして宙に飛び上がり、宙で体勢を変えると空中で回し蹴りを頭に入れる。

この所作約3秒程で行われており、よほど喧嘩慣れしてるか武術の熟練者でもない限り避けるなんて難しい事は出来ない。


「ガハッ…!!」

当たり処が悪かったのか気絶し、蹴り抜かれた方向に向かってなんの抵抗もなく、飛んでいく。


ほんの一瞬で二人を倒してしまった。

本当に手加減無しである。


「二人目終わりっと…」


蹴り出した足を戻し地面に着地する。



「さて、残るは大将なんだけど…、まあ、少しは手応え歯応え骨応えを見せて貰おうか!!」


虎爪の型を作り、不規則な移動方法でじりじりと追い詰める。

たまに攻撃が飛んでくるが、それをはじく辺りやはり大将と言われるほどはある。


「くっ…!!」


だが、相手は防戦一方しか取れないようだ。


「んー?これじゃ、削り殺しかー。しょうがないなー。じゃ、逆転のチャンスがある接近戦にでも洒落込もうじゃない!」

トリッキーな移動と攻撃を止め、一気に距離を詰める。

右手の爪が錦火の顔に迫るが、あっさりとそれを掴む。

「反撃、開始だ!」

ニヤリと笑う。

さて、腕を捕まれた明日香はというと、

「あらら…」


大して驚く事もなく、左手で右肩に手を掛ける。

「楽しんでるとこ悪いが一気に決めさせてもらうわ!」


動きを制限された明日香にパンチで打撃を与えようとしたその時、ゴキン。と、いやな音が明日香の右肩から聞こえた。


「なっ!!!?」


彼女はパンチを避けた。

ほぼ不可避な攻撃を避けていた。

現に錦火の拳は空を虚しく突いている。

なぜなら彼女は己の肩を外して身体を捻って拳を避けていた。

当然ながら彼女自身も痛いだろうがこれに身体を捻って避けたのだからその痛みは想像以上であるだろうしまだ殴られた方がましな気がする。


明日香は涼しい顔して外していない左腕でひじ打ちをかます。


作・肘打ちってエルボー、とも言うよね。


そして、


バチン!!急に水鏡の映像がショート(接続不可)し、映像が真っ暗になる。

「うおっ!これから良いところだったのになんだよ!!?」

雅鬼の本音は置いといて、


「黒也、お前…、回線を切ったか?」

真っ暗な水面を見ながら黒也に質問する緋牙。

「いや、むしろ私は映像の持続に力を使っていた…」


緋牙の質問に答えながらも黒也には思い当たる事があった。


(…もしや、先程のノイズとぼかしか!?だが、接続不可にするとは、並大抵の事ではないぞ!!!)


ザザザッ…。


再びノイズが水鏡から鳴ると女性の声らしき物が聞こえてくる。



『あー、あ-、テステス。聞こえてる-?』



「………」



「………」



「………」



突然の事に唖然とする妖怪達。



『ん?聞こえてる筈なんだけどなー?まあ、いいや。はぁ~い!アホ面晒してる皆様こんばんはー!!今日も元気でアロハなシャカサインで不思議空間にお・む・か・え。DJのすーたんでーす!!さぁそこの残念メンズに大事な話をするからよーく、聞きなさいな♪』

実にハイテンションなノリで喋る謎の声。


「お前は誰だ…!!」

正気に戻った緋牙が敵対心を剥き出しながら声の主に問う。


『私?んー…。今はこうとしか言えないな~、私はあすかちょんのゆーじんなの☆名前はそう…、謎の変態淑女(ショタ限定)風味の激辛スープのすーたんと!!』

ふざけてる。全力でふざけている。ものっそいウザイ喋り方である。


「なんで激辛スープが名前なんだよ…」

『んー?いやー、いわゆるP.N(ペンネーム)ってやつだよん』


くひゃひゃと笑い飛ばすが、彼女の言葉から聞き逃せないキーワードがあった。


「ご…主人の…、友人?」

帰って来た返答は彼の予想を裏切ったものだった。


『イエースイエース!!イエース!!ん?ん~…おうのっ♪あろろ!!!あすかちょんをご主人ですって!?ヤバい…、ネタ帳に書かな…、コホン。…じゃなくて、そうなのだー!!』


話題が幾分、脱線しかけたが、取り繕っている。


「なんか色々と濃いめなキャラだな…」

「同感だ…」


イラッとした表情の雅鬼の独り言にこめかみを押さえている黒也が相槌を打つ。


『そこ、色々とうるさい!まあ、今回はあすかちょんに頼まれて、映像規制を張らさせて貰ったわけ。あすかちょんがいきなり電話掛けてきて、妖術のたぐいで過去とか見れる奴あるーって聞いて来て、あるーって答えたら、見させないように規制してって言われて…。なかなか骨が折れる作業でした♪』


「ご主人にはバレてたか…」


『うむ、そこがあすかちょんクオリティなのだ。あ、後あすかちょんから伝言あるよ?』


「なんですか?」


カサッ…。

紙をめくる音がする。

『んとね。えーと、なになに…。伝言・緋牙、雅鬼。帰ったら覚悟しなさい。明日香より。だってさ』

超簡単に要約すると【ぶっ殺す】。


サアァァァ…、

緋牙は血の気が失せ、

ガタガタガタガタ、

雅鬼は震える。


『んじゃ、切るね!バイバーイ♪』

ブチっ!

無情にも通信はきられた。


「なんだ?なにをそんなに脅え……」

明らかにおかしいようすの2人を心配して声をかけるが、


ガガッ!

シンクロしたようにグリンと頭を黒也の方を向け、黒也の肩を掴む緋牙と雅鬼。


「「頼む!今晩泊めてくれ!!」」


緋牙と雅鬼が綺麗にハモった。


(帰ったら明日香に殺される!!)

(嫌だ…、嫌だ!もうあんな目に会いたくない!ご主人が、阿修羅あしゅらまたは仁王におうになってる!俺…、絶対ご主人に阿鼻叫喚の地獄に叩き落とされるぅぅ!!)


「尋常じゃない様子だが…、まあ、いいだろう。泊まってくといいよ」


二人には黒也が慈愛のお釈迦様のように見えたそうだ。

『あ、ごめんごめん。追記が有ったから繋ぎ直したけど、別段気にすることでもないよ。えー、PS・何処かに泊まろうとも、今話してるこの女から聞き出してお前らを探しに行くから。帰って来た方がまだ優しくするから。明日香より。じゃー、今度こそ、バイバーイ♪』


「「「…………」」」

三人共、冷や汗だらりです。

「すまないな…。やっぱり帰ってくれ」


清々しいまでの手のひら返しを見せた黒也君。

爽やかな笑顔でお帰り発言した黒也君。


理由?自分の正体がバレるのと、このままだと自分も加わっていることがバレて殺されかねないからです。

「おい!ご主人にお前の正体バラすぞ!!」

「上げといて落とすとか最悪ですね!?」


さて、彼らの会話はまだ続く。


【小ネタ劇場.本当の過去】

ーー「か…え…して、かえして、かえして、かえしてよ…。皆、私の所為で…、殺された。会いたいよ…かえしてよ」ーー


す「ありゃ、ちょっと漏れちゃったや~…。いやー。先に偽動画(デモムービー)にすり替えといて良かった良かった…。あー、ちっかれたー!」

油性ペンで書きなぐられた手鏡を机に置き、うーん、と背伸びをする長髪の女性。


す「うにゃにゃー。明日香ちょんもけったいなことをお願いするもんじゃなー。…まぁ、アレは見られて困るもんだろうし、仕方ないけどさー…」


インクに汚れていない手鏡からちらりと覗く、赤い夕焼け、夕焼けを写しながら微かに揺れる赤い水面、夕焼け空にぽっかりと空いた底が見えない奈落のような暗い穴、その空を仰ぎながら涙を流す燈色の瞳、赤に染まる白い毛皮、ゆっくりと大蛇のように揺れ動く、四つの尾。そして悲しむ声。

悲哀と後悔に満ちた緋色の残影。


す「だけどねー。明日香ちゃん…。アレが有ったから私は自分の本性を理解出来たし、がとちゃんは母親が死んだ理由を知れたし、ペッちゃんとみゆーは自分の将来を決めれた。四歌だってお祖父さんの仕事を胸張って継いだんだし、悪いことばっかだと思わないで欲しいなー…」


す「無理か…、明日香ちゃんはアレで産まれたのが何人も人殺してるし、結局挫折して諦めちゃったんだし、本人とっては迷惑な話か…」


す「だから楽しみなんだよね。他人様の黒歴史に茶々入れたがる…いや、明日香ちょんにご執心の輩の顔がどんなんなのか。たんのしみー!」


そう言って、くすくすと笑っている女性は準備していた金槌を取りだし、手鏡に軽く降り下ろして、鏡にヒビを入れた。それだけで鏡から漏れていた声は消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ