あなたが先ほど脱退勧告された方、S級魔石の適性者ですがよろしいんですの?
「お前は戦闘力ねぇし、防御魔法しかできない、
ほんっと使えないよなあ!もういい、お前はこのパーティから出ていけ!」
「そ、そんな!」
とあるギルド内で、怒声が響く。
「職員の人ぉ、今日からこいつ、ウチのパーティから脱退するんで」
「よろしいんですか?双方合意がなければいけないんですが……」
ギルド職員の受付の男は、ニタニタしながらそう言った。
出ていくよう言われた僧侶の男は、うつむくことしか出来ない。
僧侶がしている胸元の魔石のブローチは、チラチラと銀の輝きを放つだけだった。
パーティのリーダーは、僧侶に手を置き、ドスが効いた声で言う。
「合意するよな?なぁ……?」
僧侶はただ、震えることしかできなかった。
すると、1人の淑女が飛び出してきた。
銀に近い水色の長い髪が、美しい女性だった。
「お待ちになって。
あなたが先ほど脱退勧告された方、S級魔石の適性者ですがよろしいんですの? 」
「はぁ?」
リーダーの男は、思わず呆れた声が出た。
「ご納得されているのならいいんですが……
よろしければあなた、私のパーティに入りませんか?」
「あ、あなたはライラ・ドルーペース様……!よろしいんですか?」
僧侶は反射的に顔をあげる。
「ええ。よろしいですわよね?」
ライラ・ドルーペース夫人。
"魔石姫''の異名で有名な女性だった。
「あの宝石姫が目をつけるとは、よほどすごい魔石なんだろうな」
「僧侶がしているブローチが?ただ銀色に光ってるだけだが……」
「魔石や宝石に詳しいクリスティル家の血をひいてるライラ様が言ってるんだ、よほどの物なんだろうよ」
ヒソヒソと周囲から声が上がるが、リーダーの男は信じなかった。
「……勝手にしてくれ。」
「この方の適正魔石の効能についても、お話されなくていいんですね?」
「ああ。知ったこっちゃない。」
「後でパーティに戻してくれと言われても、戻しませんからね?」
「ああ!」
リーダーは最後は、語気を荒らげていった。
ライラに連れられ、そのまま僧侶はパーティ脱退手続きをし、新たなパーティへ加入手続きをした。
そして3ヶ月。
「ドルーペース夫人!お願いいたします!僧侶を我がパーティに戻してください!!」
あのリーダーの男はライラの前で、床に頭をつけて懇願した。
「だから念をおしたのに。
後でパーティに戻してくれと言われても、戻しませんからね、と言いましたよね?」
「僧侶が居なくなった途端、パーティ全員のスキルが大幅に下がった上に、コンディションも悪くなったんです……!
前はすぐ治っていた傷も、治らない……!」
「テラヘルツ鉱石って知ってます?
"テラヘルツ波'と呼ばれる電磁波を放っているといわれているんですが……
この電磁波を浴びると、健康増進効果や美容効果があると言われています。
あの僧侶の方が持っていた魔石は、テラヘルツ鉱石のパワーアップ版テラヘルツ魔石。
放つ電磁波で、パーティ全体のスキル底上げや、コンディション向上、治癒能力の強化の能力がありますね。
テラヘルツ魔石は、持ち主を選ぶんです。
気に入った人間にしか、力を貸さない。
見た目も何の変哲もないから、専門家ではないと見つけられない。
私達パーティには幸運でした。
僧侶も前より待遇がいいと喜んですわ」
「知らなかったんです!どうかお慈悲を!
このままじゃ、パーティが成り立たない!」
「あら……ドルーペース領の採石場のお仕事、紹介しましょうか?」
「え?!あんな肉体労働……」
「ではお引き取りを」
そのままリーダーの男はドルーペース家の使用人に引きずられ、追い出された。
後日、僧侶が所属していた元パーティは、無茶なダンジョンに挑み、行方不明になったと聞いた。
ダンジョン前に入る彼らの体は、あちこち傷だらけで、病気持ちの者もいたという。
ライラは思わずつぶやいた。
「テラヘルツ鉱石は、生命の光線って言われるほどだからなぁ」




