アキバで拉致られババンバン♪ file-06
毎度毎度の書きかけですw
随時に更新してまいります♥
挿し絵は……www
Episode-file-06
ゴ、ゴゴゴゴゴッーーーンンンッ……!
期せずして、固く閉ざされたコクピット・ハッチ――。
金属製の分厚い装甲板は、人間の手では押し返せないだろう。
それきりに静まり返った半球状型のメカニカルな室内に、みずからの息遣いだけがやけにはっきりと意識される。
「ぬっ、ぬしっ…………!?」
ついさっきまでののほほんとした雰囲気が一転、異様な緊張感に包まれる戦闘ロボ?のコクピットだ。
今や完全に外界と隔離隔絶されてしまった密閉空間……!
そこで謎のおやじと対峙することになったオタクは、ひどい困惑顔で言葉に詰まるのだった。無理もない。
何しろここはよく分からないロボの操縦室で、よくわからないままにパイロットスーツを着させられたじぶんが、よくわからないままにこの操縦席に座らされて、挙げ句になんだかさっぱりわからないおじさんと、何故だかこうして向かい合っている……。
は??? である。
およそ筆舌に尽くしがたい状況だ。もはやどこをどう取っても、何人たりとも理解不能! 控えめに言っても詰みだろう。
とにかくしんどい。
とは言えここで降参しても事態は何ら変わらないのは明白。
抱え込んだ背もたれにしっかりと上体預けて、見上げる眼前の強敵と向き合うデブだ。
はじめひとりきりだったはずなのに、おじさんはどこからともなくいきなり出現した言わばちん入者だった。
少なくとも呼んだ覚えはない。
そう何しろ当の本人は、のっけから言動が粗野で横暴!
バリバリにマッチョのあからさまな体育会系気質で、このモブが一番苦手とする部類の人種であるのだから……。
強いて老害とまでは言わないまでも、こんなの間違っても味方じゃないだろうと猜疑心の塊みたいな目つきで、ずっと年上のおまけ高飛車なおっさんを見つめる。
じいっと……!
じぶんと同じパイロットスーツを身につけているあたりから、おそらくは自衛隊の人間なのだろうか?
「自衛官? うそでしょ、こんなのが! おまけになんか、ぬしとか言ってるし……?」
焦燥感と共にもやもやした感情がこの胸の内を占める。
相手の出方を見ていてもこれと目立った動きがないので、仕方もなくこちらから言葉を発していた。
「…………おっ、おじさん、だれ? なんでそこにいるの??」
ぶっちゃけわからないことだらけなのだが中でも一番の疑問点だ。警戒心をまるで隠しもしない険しい表情で聞いてやるに、偉そうに腕組みなんかして後部座席にでんと陣取ったその人物は、口元にニヒルな笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる。
実際に高くから見下ろされてはいるのだが、あからさまな上から目線にちょっとイラッとくるモブだった。
このじぶんと同じパイロットスーツを着込んでいるのがむしろ怪しい。でもどうやらビミョーに色違いみたいだな?と思ったあたりで、やっと角刈り頭のおっさんはこの口を開いた。
「なんでもナニも、はじめからここに居たと言ってるだろう? おまえが気づくのが遅かっただけだ。この寝ぼけ小僧が!」
「ね、ねぼけっ? いやいやいやいやいやっ! 寝ぼけてなんかないって!! ちゃんと見たもん、おれ!! はじめからいなかった! こんなふざけたおじさんどこにも!! 寝ぼけてたってわかるじゃんっ、こんな加齢臭がとってもキツそうなこきたない中年!!」
「まず世の中年みんなに謝れよ? 今どきはアウトな発言だろう、やっぱり寝ぼけていやがるな! おっし、じゃあツラ出せ、そのパンパンに肥えた肉まんヅラ往復で優しくビンタしてやるから、それで目が覚めるだろ? それこそパンパンってな!」
「優しくってなに? うそつけ、そっちのほうがアウトじゃん!? タチが悪いよっ!! おれ言っておくけど暴力に対する耐性ゼロだから、そんなことされたらもう一生、使い物にならなくなるよっ? とっくに黒歴史化してるけど身内のコネで入った上場企業だってそれで一発退場してるし、この体格の人間が無力化なんかしたら誰にも手に負えなくなるんだからねっっ!!!」
「やかましいっ、その腐った根性叩きなおすならなおさら力ずくしかねえだろうが! おまえ、世の中をなんだと思ってやがる? おまえを中心に回る世界じゃねえだろ、ちっとは我慢なり努力なりを覚えろ。せめてまだ若くて足腰がちゃんと立つうちに!」
「こんな得たいの知れない不審者なんかに言われたくないっ! まずじぶんがなんなのかはっきりさせてよっ!! おれはおれなり頑張ってるし、何より今はこんなワケわかんないことになってるし!! おれこの被害者ポジションは死んでも死守するよ!!!」
売り言葉に買い言葉だ。かなりしょうもない。
オタクとオヤジがやかましいラリーをひとしきりやってから、顔を上気させて荒い鼻息をつくモブに、見下ろすおやじはこのいかつい両肩をすくめさせる。ため息もついたか?
「…………ふうっ、まったく呆れたデブだな。死んだら死守もへったくれないだろうが? ま、ある意味、見上げたもんだが……おい、褒めちゃいないからな? ふん、それじゃ改めて教えてやるが、さっきも名乗ったとおりだぞ? ん、おれは見てのとおりで、ここの主だ。以上!」
断言!!!
それでただちにラリー再開かと思いきや、頭から湯気でも出しそうなでぶちんが何やらふと思いついたか?
その特徴的な太い眉をひそめて怪訝な顔つきするのだ。
これに正体不明の男ときたら、広い背中を背もたれに預けたままでアゴまで突き出す。完全な上から目線だ。おまけにまたもやしての、大きなため息……!
「ぜんっぜんわかんないじゃんっ!! そんなのなんにも名乗ってなんかないって! あ、じゃあじゃあ、ひょっとして、ぬしさんて名前なの? キラキラ名字? ならせめて大名とか将軍とか公家さんとか、ほかにいくらだって……」
「はあぁっ、たく! このデブ、ほんとうに寝ぼけてやがるのか? そんなわけがねーだろ。いいや、ならまずはてめえの名前から名乗ったらどうんなんだ? あいにくおれはまだ聞いてないぞ。初対面の相手に対する礼儀としてだ、減らず口のでぶちんくん?」
「礼儀っ? 不審者が言う?? おじさんみたいな社会不適合者の見本みたいなひとが言ったら一番ダメなヤツなんじゃない?」
「ぐだぐだうるせーぞ。そんなだから、そのでぶった身体にやすやすと一発入れられちまうんだろう! この世の中、どこでだって役立たずの大口叩きはサンドバッグにされるのがせいぜいだ。他に使い道がねーからな? おまえもそう思うだろう、その顔にそう書いてある! いやっ、どうでもいいか……!」
四角い角刈り頭をボリボリかいて目線を外すおじさんか。
どうやら図星だったらしいオタクくんは、その顔にはっきりと焦燥の影が浮かぶのだが、負けじと反発してただちにやり返す。
「な、なんだよっ、減らず口はそっちじゃん! あとそう言うおじさんだって、そのでかい態度でしっかり大口叩いてるからね? なんでそんな偉そうな口をきけるのか理由が聞きたいよっ、体育会系の人間、ほんっとにキライだっ!!」
「わかったわかった! あいにくとこの態度がでかいのは生まれつきだ。諦めろ。あとおまえの名前についてはもちろん知ってる、とっくの昔にな? ちゃんとこっちにも個人情報として上がってるし……そうだ」
それきりどこか遠くを見るような目つきになって、おまけどこともしれない虚空をじっと見据える不審者だ。これにつられて思わずみずからの背後を振り返るモブなのだが、周囲にはどこにもこれと言った変化はなかった。
何を見ているとも知れないおやじは、なおも虚空に焦点を合わせて何やら読み上げてくれる。
「ふん、そうだったな、オタクダ……小宅田、盛武だな? まあ名字はこの際、置いておいて、このモブってのはずいぶんとアレだな? 他人が見たらいじらないわけにいかねえだろ? ご立派な字面がまたなんとも、おい、親は嫌がらせで付けたのか?」
ちょっとモラハラめいた皮肉っぽい感想には、真顔で答えるモブだった。あいにくと親の顔は良く思い出せない。だから恨みもない。
「そんなわけないじゃん。でもオタクでモブだなんて、確かに皮肉だよね? でもおれ、嫌いじゃないし……! だっていかにもこのおれっぽいじゃん! これってヘンかな? 不審者のおじさんからしても? おれ、まだ納得してないからね??」
しごく落ち着いた口ぶりで言いながら、じっと冷めた眼差しで見上げてくる肥満のオタクに、精悍な面構えのいい歳のおじさんがへの字口してまた目を向けてくる。
「わかった、わかった! つうか、ここの説明はまるきり外で聞いてないのか? あいつめ……! というか、おまえも良くそんな間抜け面でのこのことここに乗り込んできたな? そんなにガッチリと身を固めて! よくもまあ、ここまでデブのパイロットははじめて見たぞ。正直、まったく似合ってない! 金をドブに捨ててるも同然だろ、どのツラさげて身につけたんだ? そんなサイズよくあったな?」
言い方がことごとくモラってるオヤジの文句をそれなり聞き流す耐性がついてきたらしい新人パイロットだ。
渋いツラで視線をよそに背ける。苦々しく言った。
「勝手に身体を採寸されて、おまけにさんざん強要されて、やむなくこうなったんだよ! 好きでやってるわけじゃないから、勘違いしないでね。それじゃついでに聞かせてもらうけど、おれどうなっちゃうの? ぬしって確かに聞いた覚えがあるけど、それだけじゃさっぱりじゃん。おじさん、ほんとに怪しい人間じゃないんだよね??」
「これからわかるだろ。習うより慣れろだ! おれの教育方針、主としての矜持ってヤツだな。わからんか。だが慣れるしかない、なんせ、やることはシンプルでとってもカンタンだからな? アレだ。まさかそのくらいは聞かされているんだろう?」
「アレ…………???」
キョトンとした顔で微妙な間が生じるのに、いよいよ呆れたさまで口をさらにへの字にするおっさん、通称でぬしは両手を万歳させる。
「やれやれ! こいつはまったくもって教育のしがいがありやがるな? 場合によっちゃ調教か? 何にしても若いんだからそう問題はなさそうだが、ちゃんと節度をもってきれいにやりきれよ? 万一に汚したら、じぶんできれいにすること。立つ鳥、後を濁さずだ! そこらへんをケアするグッズはもろもろちゃんと常備されているんだ。思ったのが無ければ申請すれば用意もしてくれる……税金でな!」
「……え、なに、言ってるの? さっきから?? おじさん???」
怪訝も怪訝の表情でひたすら見つめてくる丸顔に、四角い角刈りがニヒルに笑って促しくれる。
それじゃはじめるぞとばかりに……!
「いいから、気持ちを切り替えろ。それじゃ、まずは起動前の予備電源入れるぞ。コクピットシステム、スタンバイ、待機モード解除、各種ディスプレイ、オン! おい、下手に計器に触れるなよ? 遮断されていた外部との通信も開放、信号、アナログからデジタルに切り替え、外部接続切り離し……ようし、オラ、とっとと前向け、前! 回れ、右っ! 左か?」
「え、なに、なにっ、なにっっ!? ちょっと……わっ!!」
後部座席でふんぞり返るおやじの一方的な号令によって、それまで電源が落とされていた周囲の操作盤やディスプレイに次々と明かりが点されてゆく。それまでただの白い壁だったはずの壁面がぼんやりとした暗い色を灯すが、このロボの周りの景色を映しているのだとすぐにわかる。周囲は薄暗い格納庫だ。
「え、すごっ、マジでロボのコクピットみたいだ、じゃなくて、マジなんだ! こんなのアニメの世界じゃんっ……!!」
言えば360度ほぼ全ての視界をまんまリアルタイムで投影した全方位型モニターの迫力に圧倒されるオタクだ。前に向き直った姿勢でピキリと硬直してしまうが、そんなのお構いなしで背後のオヤジのがなりが耳朶を打つ。
室内にこもりはじめる低い起動音と共に言い放たれたそれに、だがはじめ、えっ?とこの耳を疑うモブだった。
「第一操縦席操縦者、ただちにスロットル・レバー用意! おい、ぼけっとしてるな、おまえのことだぞ? おら、さっさと用意しろ、操縦桿!!」
「へっ? ちんち……なに言ってるの? 操縦桿? そんなのどこにもないじゃない?」
身の回りをキョロキョロと見回してから、思わずまた背後を振り返って目を丸くするでぶちんに、これを見下ろすおやじは真顔でしれっと言ってのける。
「あるだろう、おまえのが? その股のあいだに? ちゃんと立派なのがぶら下がってるんだろう、そこに? いやだから、その真ん中のヤツ、その竿だ。みなまで言わせるんじゃねえ、しっかりとしごいて立たせておけよ、でないとまともに機動しないだろう、コイツが!」
「は? は?? は??? はあああああああっっっ!!?」
一瞬だけみずからの下半身に目をやって、そこから戦いた瞳を背後に向けるモブだった。相手はただただ真顔で見下ろして来る。何やら絶望に近いものがあったのは、きっと気のせいじゃないだろう。
おやじ、自称・ぬしは舌打ちまじりにぬかしてくれた。
「ちっ……こいつめ、ほんとに何も聞かされてないんだな? まったく、面倒にもほどがあるだろう。ここは幼稚園じゃねえんだぞ! いいから、おまえの主電源が入らなければコイツのコアが覚醒しないから、とっととやれ、ナニを、ここまで言われればわかるだろ? アレだよ、アレ! 男の子ならみんな大好きなアレだ、そら、ただしできたら利き手でないほうでやれよ? 利き手がふさがるといろいろ細かい操作がしずらいだろ、まだはじめの内は……」
「ま、待って! ほんとにわけがわからないんだけど、アレって、え、まさかアレ? アレのこと言ってるの?? え、違うよね? アレっ???」
「それだよ。いまおまえがその頭の中で思い描いているヤツ、その行為、ズバリそいつで間違いない。おまえぐらいの年齢なら毎日だってありえるだろ? それでいい。さっさと握ってちゃっちゃと気持ちよくスタンバイさせろ! そうとも、何を隠そう、それこそがコイツの操縦桿だっ!!」
「なっ、なな、な…………あれ、ナニ、これ?」
あらためてじぶんの下半身に目を落とすに、今さらになってそのパイロットスーツのおかしな部分に目がとまるパイロットだ。
ガッチリした見た目のわり、この腰回りの部分だけがやけに自由で拘束感がないなと思ったら、そこだけ造りがおかしな見てくれになっている。言えばスカートみたいにぐるりと布が張り巡らされて、目隠しの前掛けみたいなのがヒラヒラと垂れ下がっているのだが、その下の感覚がやけに自由ですっきりとしている。
それが逆に違和感だ。ここに入る前、尻のあたりがヘンに涼しく思ったのも今さらに思い返された。違和感として。
スカート?の裾の端っこ指先でつまんでみて、おそるおそるにぴらりとめくったその下を覗きこむモブの身動きがピタリと止まった。
ぎこちなく振り返るオタクは顔つきが困惑の極致だ。
「…………なに、コレ? スカートめくったら、モノがまんまあるんですけど? おれのナニが、タマもチンもことごとく丸見えなんですけど、え、なんで???」
「あん、何でもナニも、もとからそういう仕様だからだろ? 一刻一秒を争う状況下で、いざナニをしようって時にいちいちパンツなんてズリ下ろしてたら手間だから、搭乗者のイチモツは常に丸出しの状態なんだよ! だから外から見えないようにその前掛けがあるんだろうが、かろうじての目隠しで? スカートとか言うんじゃない」
ごたくはいいからさっさと握れと真顔の目つきで催促してくれるぬしのおじさんに、新米パイロットのでぶちん、モブはぎょっとした顔つきで口をパクパクさせる。理解がまるで追いつかなかった。
「一刻一秒を争う状況で、ナニ? ……えっ、あ、え、マジで、どういうことになってるの? いきなり握れって、ナニをしろとか、まったく意味がわからないんだけど?? おれって、ロボのパイロット、なんだよね???」
「だからだろう! いいか、こいつはいわゆるエロを原動力として稼働制御するオタクシステム実装型ロボットなんだ。世に言う自家発電、エコシステムの極みだな! つまりはおまえの発情、ないし欲情と妄想によるエロパワーでのみ動かすことができるんだよ。だから最低限、勃起せんことにゃ一歩たりとも動きやしない。逆に言ったら、パイロットは常にじぶんのイチモツを握り締めておかなきゃならないんだ! 萎えたら即、パワーダウンだからな!! ただちに起動停止でおまえさんの勃起待ちになる」
なに言ってんの?????
ひたすら絶句するモブに、高くから見下ろしてくるおじさんはまるで容赦ない。早口でまくし立ててくれた。
「いいから、さっさと得意のポジションに入って自慢のブツを起ち上げろ。いつもやってんだろ! ひと目を忍んでコソコソと? あ、シートベルトはしっかりと締めろよ。頑丈な四点式フルハーネスだ。ロボは意外と揺れるから、握りが安定しないとおちおちナニもできないだろ? そうでなくともパイロットはベルト必着! 結構手間がかかるから、握る前で良かったな?」
「ボッキとかナニとか、さっきから当たり前みたいにほんとなに言ってるの?? おれやらないよ、そんなこと? やるわけないじゃん! ひとまえでそんな破廉恥なこと!!」
やっと事態が飲み込めたとおぼしきオタクは、同時に激しく反駁もする。無理もない。目を覚ましてからこれまでまともな展開がひとつもないと憤慨しつつ、背後で教官よろしくふんぞり返るおやじに牙をむいた。
「だだだっ、だって、それって、それってば、お、オナ、ニー、でしょ? だだ、ダメに決まってんじゃん! そんなのっ!? ここってほんとに自衛隊!!?」
声を裏返らせる若者に、酸い甘いもかみ分けてそうな渋いツラした年長者がいささかの衒いもなしに応じる。ひどい話だ。
「おう。いわゆる自慰行為、またの名をマスターベーションとも言うな? 老いも若きも男子たる者みんな大好き、それすなわちオナニーだ! 別に恥じることないだろう、性欲なんて誰しもみんな持っているんだ。どこぞの医者に言わせりゃ、メンタルヘルスにも大きく関わる大事なひととしての営みだろ? ただの日常茶飯事だ。最近じゃセルフ・プレジャーだなんてキラキラした言葉も出始めたりな? 言ってることは変わりゃしないのによ!」
「はっきり言った! このおじさんはっきり言った!! 伏せ字もピーも使わずにまんまのどストレートをバンバン放ってきた!! まともじゃ考えられないよっ!! ぜったいに自衛官なんかじゃない!!!」
顔を真っ赤に赤らめてみずからの股間を自然と押さえてしまうモブだった。ひどい危機感にさいなまれる。なんかひととして大事なものを失うような、ひたすら絶望的な未来が待ち受けている、その入り口にみずからが立たされているような? きっとオタクとしての勘だろうか。ヤバい。
「この俺のことはどうでもいいだろう? ただはっきりしていることは、この場でおまえが気持ちよくならにゃ話がはじまらんてことだ。イチミリもな? 別にひとがよがってるところ見て楽しむような性癖はないから、好きなだけ盛大にやってくれて構わない。見やしねえ。そういう場所だし、そういう仕事なんだしな! これのパイロットたる者の宿命だ。ほれ、手が止まってるだろ、いいから、行為再開! ただしぬくのはまだだぞ? まだイクな!! あとベルトも締めろ」
「最初からやってない!!! やるわけないって! 頭おかしいだろっ、エロで動くロボだなんて聞いたことないって! そんなのありえないって!!」
絶対やらないと固く誓うモブなのだが、あいにくとそこでまたさらなる追い打ちが仕掛けられることとなる。おまけに外部からだ。
「んっ……!」
はじめに背後のおじさん、後部座席のぬしが何かしらに気づいたかの反応をした直後、コクピットの前面の大画面モニターに大きくふたつの顔が浮かび上がる。でっかく二つに区切った四角い表示窓枠に、忘れもしない、あのふたりのおとなたちが映し出されるのだった……!
「あっ! かか、監督官のおじさんと、監査官のおねーさん! よ、良かった、ちょっと、助けてよっ、偉いことになってる! おれ、すごいこと言われちゃってる!! このとにかくよくわかんないおじさんにっ!!!」
良く分からないのは結局のところみんなおんなじなのだが、かろうじてまだマシなほうのおじさんに泣きつく。またしてもあの無表情な真顔で登場したバストアップの中年自衛官とおぼしき監督官に必死に訴えてやるのに、だが相手はとかく澄ました表情で返してくるのだ。
「…………おじさん? はて、意味があまりよく分からないが。オタクダくん、そちらの状況はどうなっている? ロボ、ジュゲムのスタンバイまでは確認できたが、肝心のコアの起動が未確認だ。まだやってないのかね、その、済まない、面倒だからはっきりと言わせてくれ。きみの操縦桿の起ち上げ、つまるところでオナニーは?」
「わああああっ!? このおじさんまでなに言ってるの??? しかもこんな若いおねーさんの前で!!!」
慌てふためくモブなのだが、股間を押さえる手にグッと余計に力が入る。突然の異性の存在を意識したらちょっと反応しかけるのを慌てて押さえつけるだが、あいにくとモニターにドアップのメガネ女子はまるきりの無表情だ。相変わらずメガネが光っている。
挙げ句に表情ひとつ変えない監督官の村井が悪びれることも無くぬかした。
「事態は急を要する。とっととやりたまえ。国の未来がかかっているんだ。それともまだナニか不足があるのかね?」
ほんとに逃げ道がないとあんぐり口を開けて反応に窮するモブに、かわりに後ろのおじさんがほざいてよこした。
「ん、おまえ、ひょっとして座りよりも寝ながらじゃないとできないってタチか? ガキンチョが! なんならその座席取っ払えるから、床にまんまベタで寝るか? あいにく布団までは用意できないが?」
「うう、うっさいな! 余計な茶々入れないでよ!! 村井さんっ、おれこのおじさん嫌い!! どうにかしてよっ!!?」
半泣きで必死に助けを求めるものの、大きな画面でドアップの自称・監督官はやはり無表情だ。こちらを見つめる視線に何故かしら怪訝なものがあるのに、微妙な違和感を感じるモブであったか。
あれ? なに、このヘンな間は??
奇妙に思ってるそばから相手が不可解なことを言い出すのには、なおのこと怪しげに顔つきをひそめるパイロットである。
「済まない。こちらからはこの状況が確認できないのだが、そのロボの主には会えたのだね? 外部電源からの予備動力の稼働は確認できたから接触はしたものと推測はされるが……?」
「は? なに言ってるの? いるでしょう、そこに、後ろでこんなしっかりとふんぞり返ってるじゃん! いいトシこいたおじさんが!!」
ビッと後ろを指さしての訴えにも、モニターの中の監督官はやはり無表情だ。おじさんとおじさんの目線がちっとも合ってない。当のぬしはそしらぬ顔して耳の穴をほじくってる。監査官のおねーさんもまるで無反応でメガネを光らせたままだ。そのメガネどうなってんのと思いつつ、前方の監督官に改めて向き直るモブ。
「えっ、あの、みんなどうしたの、話が通じてないみたいだけど?」
股間のブツが萎縮するのを意識しながら聞き返すと、そこから返ってくるのは思いも寄らない言葉だった。呆然自失で乗り出していたパイロットスーツの肥満体がシートの背もたれにどっともたれる。
監督官は多少の困惑の色を浮かべながら努めて冷静に言うのだ。
「いや、あいにくとそれはきみにしか見えないのだ。ぬしは、じぶんが認めたパイロットの前にしかその姿を現さない……!」
「は…………???」
絶句するモブだ。こんなにはっきり見えているのに、一体なにを言っているんだとただひたすらに相手の顔を見つめてしまう。ふざけているのかと。
だがこれにその右手の表示窓で沈黙を守っていたメガネっ子の監査官、若いおねーさんがおもむろにこの口を開く。
それにもマジマジと目を見開いてしまうモブだった。
「申し訳ありません。こちらの監督官の言葉にもあったとおり、わたしにもあなたが言うおじさん、もとい、ぬしの姿は確認することができません。そちらの後部座席は無人の状態としかこの認識が……」
細い首をかすかに左右へ振って口ごもるのに、信じられない思いで額に大粒の汗を浮かべるデブチンのパイロットだ。
「え、なんで??」
ものすごく重たい沈黙がその場を支配する。
もはやナニどころではなくなった空気と状況に戦慄するモブは、おそるおそるに背後を振り返る。やはりふんぞり返るおじさん。
じぶんにはしっかりと見えている。
それなのに――。
「そ、それじゃあ、このおじさん、ぬしって…………!」
どこかあさっての方向を向いていたのがこちらに視線を向けて、ニンマリと意味深な笑みを浮かべるオヤジだった。
混迷を深めるロボのコクピット、オタクとオヤジの攻防戦はまだはじまったばかりだ……!
※随時に更新しまーす。みんな応援してね☆ by モブ♡
ユーチューブライブだとかで創作ライブ配信もやってます(^o^)
誰も見てくれないんですけど(T-T)




