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アキバで拉致られババンバン♪ file-06

毎度毎度の書きかけですw

随時に更新してまいります♥

挿し絵は……www

 Episode-file-06



 ()()()()()()ッーーー()()()ッ……!


 ()せずして、固く閉ざされたコクピット・ハッチ――。

 金属製の分厚い装甲板は、人間(ひと)の手では押し返せないだろう。

 それきりに静まり返った半球状(ドーム)型のメカニカルな室内に、みずからの息遣(いきづか)いだけがやけにはっきりと意識される。


()っ、()()っ…………!?」


 ついさっきまでの()()()()とした雰囲気が一転、異様な緊張感に包まれる戦闘ロボ?のコクピットだ。

 今や完全に外界と隔離隔絶されてしまった密閉空間……!

 そこで謎のおやじと対峙(たいじ)することになったオタクは、ひどい困惑顔で言葉に詰まるのだった。無理もない。

 何しろここはよく分からないロボの操縦室で、よくわからないままにパイロットスーツを着させられたじぶんが、よくわからないままにこの操縦席に座らされて、()()になんだかさっぱりわからないおじさんと、何故(なぜ)だかこうして向かい合っている……。 


 ()()()() である。


 およそ筆舌(ひつぜつ)()くしがたい状況だ。もはやどこをどう取っても、何人(なんぴと)たりとも理解不能! 控えめに言っても()()だろう。

 とにかくしんどい。

 とは言えここで降参(まいった)しても事態は何ら変わらないのは明白。

 抱え込んだ背もたれにしっかりと上体(じょうたい)預けて、見上げる眼前の強敵(おやじ)と向き合うデブだ。

 はじめひとりきりだったはずなのに、おじさんはどこからともなくいきなり出現した言わば()()()()だった。

 少なくとも呼んだ覚えはない。

 そう何しろ当の本人は、のっけから言動が粗野で横暴!

 バリバリにマッチョのあからさまな体育会系気質で、このモブが一番苦手とする部類の人種であるのだから……。

 ()いて()()とまでは言わないまでも、こんなの間違っても味方じゃないだろうと猜疑心(さいぎしん)(かたまり)みたいな目つきで、ずっと年上のおまけ高飛車(たかびしゃ)なおっさんを見つめる。


 ()()()()……!


 じぶんと同じパイロットスーツを身につけているあたりから、おそらくは自衛隊の人間なのだろうか?


()()()? うそでしょ、こんなのが! おまけになんか、()()とか言ってるし……?」


 焦燥感と共にもやもやした感情がこの胸の内を占める。

 相手の出方を見ていてもこれと目立った動きがないので、仕方もなくこちらから言葉を発していた。

挿絵(By みてみん)

「…………()っ、()()()()()()? ()()()()()()()()()??」


 ぶっちゃけわからないことだらけなのだが中でも()()()()()()だ。警戒心をまるで隠しもしない険しい表情で聞いてやるに、(えら)そうに腕組みなんかして後部座席にでんと陣取ったその人物は、口元にニヒルな笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる。

 実際に高くから見下ろされてはいるのだが、あからさまな上から目線にちょっとイラッとくるモブだった。

 このじぶんと同じパイロットスーツを着込んでいるのがむしろ怪しい。でもどうやら()()()()()()()()みたいだな?と思ったあたりで、やっと角刈り頭のおっさんはこの口を開いた。


「なんでもナニも、()()()()()()()()()()と言ってるだろう? おまえが気づくのが遅かっただけだ。この()()()()()が!」


()()()()っ? いやいやいやいやいやっ! ()ぼけてなんかないって!! ちゃんと見たもん、おれ!! はじめからいなかった! こんなふざけたおじさんどこにも!! 寝ぼけてたってわかるじゃんっ、こんな加齢臭がとってもキツそうなこきたない中年!!」


「まず世の中年みんなに謝れよ? 今どきは()()()な発言だろう、やっぱり寝ぼけていやがるな! おっし、じゃあツラ出せ、そのパンパンに()えた()()()()()往復で優しくビンタしてやるから、それで目が覚めるだろ? それこそ()()()()ってな!」


()()()ってなに? うそつけ、そっちのほうがアウトじゃん!? タチが悪いよっ!! おれ言っておくけど暴力に対する()()()()だから、そんなことされたらもう一生、使い物にならなくなるよっ? とっくに黒歴史化してるけど身内のコネで入った上場企業(かいしゃ)だってそれで()()退()()してるし、この体格の人間が無力化(ひきこもり)なんかしたら誰にも手に負えなくなるんだからねっっ!!!」


「やかましいっ、その(くさ)った根性(たた)きなおすならなおさら()()()しかねえだろうが! おまえ、世の中をなんだと思ってやがる? おまえを中心に回る世界じゃねえだろ、ちっとは我慢なり努力なりを覚えろ。せめてまだ若くて足腰がちゃんと立つうちに!」


「こんな()たいの知れない不審者(おじさん)なんかに言われたくないっ! まずじぶんがなんなのかはっきりさせてよっ!! おれはおれなり頑張ってるし、何より今はこんなワケわかんないことになってるし!! おれこの()()()()()()()()は死んでも()()するよ!!!」


 売り言葉に買い言葉だ。かなりしょうもない。

 オタクとオヤジがやかましいラリーをひとしきりやってから、顔を上気させて荒い鼻息をつくモブに、見下ろすおやじはこのいかつい両肩をすくめさせる。()()()もついたか?


「…………ふうっ、まったく(あき)れたデブだな。死んだら死守もへったくれないだろうが? ま、ある意味、見上げたもんだが……おい、()めちゃいないからな? ふん、それじゃ改めて教えてやるが、さっきも名乗ったとおりだぞ? ん、おれは見てのとおりで、ここの(ぬし)だ。()()!」


 ()()()()()


 それでただちにラリー再開かと思いきや、頭から湯気でも出しそうなでぶちんが何やらふと思いついたか?

 その特徴的な太い眉をひそめて怪訝(けげん)な顔つきするのだ。

 これに正体不明の男ときたら、広い背中を背もたれに預けたままでアゴまで突き出す。完全な上から目線だ。おまけにまたもやしての、大きなため息……!


「ぜんっぜんわかんないじゃんっ!! そんなのなんにも名乗ってなんかないって! あ、じゃあじゃあ、ひょっとして、()()()()て名前なの? ()()()()()()? ならせめて()()とか()()とか()()()()とか、ほかにいくらだって……」


「はあぁっ、たく! このデブ、ほんとうに寝ぼけてやがるのか? そんなわけがねーだろ。いいや、ならまずはてめえの名前から名乗ったらどうんなんだ? あいにくおれはまだ聞いてないぞ。初対面の相手に対する礼儀としてだ、減らず口のでぶちんくん?」


()()っ? 不審者が言う?? おじさんみたいな()()()()()()()()()みたいなひとが言ったら一番ダメなヤツなんじゃない?」


「ぐだぐだうるせーぞ。そんなだから、そのでぶった身体にやすやすと()()入れられちまうんだろう! この世の中、どこでだって役立たずの大口叩きはサンドバッグにされるのがせいぜいだ。他に使い道がねーからな? おまえもそう思うだろう、その顔にそう書いてある! いやっ、どうでもいいか……!」 


 四角い角刈り頭を()()()()かいて目線を外すおじさんか。

 どうやら()()だったらしいオタクくんは、その顔にはっきりと焦燥の影が浮かぶのだが、負けじと反発してただちにやり返す。


「な、なんだよっ、減らず口はそっちじゃん! あとそう言うおじさんだって、そのでかい態度でしっかり大口叩いてるからね? なんでそんな偉そうな口をきけるのか理由が聞きたいよっ、体育会系の人間、ほんっとにキライだっ!!」


「わかったわかった! あいにくとこの態度がでかいのは生まれつきだ。(あきら)めろ。あとおまえの名前についてはもちろん知ってる、()()()()()()()? ちゃんとこっちにも個人情報(データ)として上がってるし……そうだ」


 それきりどこか遠くを見るような目つきになって、おまけどこともしれない()()をじっと見据(みす)える不審者だ。これにつられて思わずみずからの背後を振り返るモブなのだが、周囲にはどこにもこれと言った変化はなかった。

 何を見ているとも知れないおやじは、なおも虚空に焦点を合わせて何やら読み上げてくれる。


「ふん、そうだったな、()()()()……()()()()()だな? まあ名字はこの際、置いておいて、この()()ってのはずいぶんとアレだな? 他人が見たらいじらないわけにいかねえだろ? ご立派な字面がまたなんとも、おい、親は嫌がらせで付けたのか?」


 ちょっとモラハラめいた皮肉っぽい感想には、真顔で答えるモブだった。あいにくと親の顔は良く思い出せない。だから恨みもない。


「そんなわけないじゃん。でも()()()()()だなんて、確かに皮肉だよね? でもおれ、嫌いじゃないし……! だっていかにもこのおれっぽいじゃん! これってヘンかな? 不審者のおじさんからしても? おれ、まだ納得してないからね??」


 しごく落ち着いた口ぶりで言いながら、じっと冷めた眼差しで見上げてくる肥満のオタクに、精悍(せいかん)面構(つらがま)えのいい(トシ)のおじさんがへの字口してまた目を向けてくる。


「わかった、わかった! つうか、ここの説明はまるきり外で聞いてないのか? あいつめ……! というか、おまえも良くそんな間抜け面で()()()()とここに乗り込んできたな? そんなにガッチリと身を固めて! よくもまあ、ここまでデブのパイロットははじめて見たぞ。正直、まったく似合ってない! 金をドブに捨ててるも同然だろ、どのツラさげて身につけたんだ? そんなサイズよくあったな?」


 言い方がことごとくモラってるオヤジの文句をそれなり聞き流す耐性がついてきたらしい新人パイロットだ。

 渋いツラで視線をよそに背ける。苦々しく言った。


「勝手に身体を()()されて、おまけにさんざん()()されて、やむなくこうなったんだよ! 好きでやってるわけじゃないから、勘違(かんちが)いしないでね。それじゃついでに聞かせてもらうけど、おれどうなっちゃうの? ()()って確かに聞いた覚えがあるけど、それだけじゃさっぱりじゃん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()??」


「これからわかるだろ。習うより慣れろだ! おれの()()()()(ぬし)としての矜持(きょうじ)ってヤツだな。わからんか。だが慣れるしかない、なんせ、やることはシンプルでとってもカンタンだからな? ()()だ。まさかそのくらいは聞かされているんだろう?」


()()…………???」


 キョトンとした顔で微妙な()が生じるのに、いよいよ呆れたさまで口をさらにへの字にするおっさん、通称で()()は両手を万歳させる。


「やれやれ! こいつはまったくもって教育のしがいがありやがるな? 場合によっちゃ調()()か? 何にしても若いんだからそう問題はなさそうだが、ちゃんと()()をもってきれいにやりきれよ? 万一に()()()()、じぶんできれいにすること。()()()()()()()()()! そこらへんをケアするグッズはもろもろちゃんと常備されているんだ。思ったのが無ければ申請すれば用意もしてくれる……()()でな!」


「……え、なに、言ってるの? さっきから?? おじさん???」


 怪訝(けげん)も怪訝の表情でひたすら見つめてくる丸顔に、四角い角刈りがニヒルに笑って促しくれる。

 それじゃはじめるぞとばかりに……!


「いいから、気持ちを切り替えろ。それじゃ、まずは起動前の()()()()入れるぞ。コクピットシステム、スタンバイ、待機モード解除、各種ディスプレイ、オン! おい、下手に計器に触れるなよ? 遮断(しゃだん)されていた外部との通信も開放、信号、アナログからデジタルに切り替え、外部接続切り離し……ようし、オラ、とっとと前向け、前! 回れ、右っ! 左か?」


「え、なに、なにっ、なにっっ!? ちょっと……わっ!!」 


 後部座席でふんぞり返るおやじの一方的な号令によって、それまで電源が落とされていた周囲の操作盤やディスプレイに次々と明かりが(とも)されてゆく。それまでただの白い壁だったはずの壁面がぼんやりとした暗い色を(とも)すが、このロボの周りの景色を映しているのだとすぐにわかる。周囲は薄暗い格納庫だ。


「え、すごっ、マジでロボのコクピットみたいだ、じゃなくて、マジなんだ! こんなのアニメの世界じゃんっ……!!」


 言えば360度ほぼ全ての視界をまんまリアルタイムで投影した()()()()()()()()の迫力に圧倒されるオタクだ。前に向き直った姿勢で()()()と硬直してしまうが、そんなのお構いなしで背後のオヤジの()()()耳朶(じだ)を打つ。

 室内にこもりはじめる低い起動音と共に言い放たれたそれに、だがはじめ、えっ?とこの耳を疑うモブだった。


第一操縦席操縦者(メイン・パイロット)、ただちに()()()()()()()()用意! おい、ぼけっとしてるな、おまえのことだぞ? おら、さっさと用意しろ、操縦桿(ちんちん)!!」


「へっ? ()()()……なに言ってるの? ()()()? そんなのどこにもないじゃない?」


 身の回りをキョロキョロと見回してから、思わずまた背後を振り返って目を丸くするでぶちんに、これを見下ろすおやじは真顔でしれっと言ってのける。


()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()? ちゃんと立派なのがぶら下がってるんだろう、そこに? いやだから、その真ん中のヤツ、()()竿()()。みなまで言わせるんじゃねえ、しっかりとしごいて立たせておけよ、でないとまともに機動しないだろう、コイツが!」


()? ()?? ()??? ()()()()()()()()っっっ!!?」


 一瞬だけみずからの下半身に目をやって、そこから(おのの)いた瞳を背後に向けるモブだった。相手はただただ真顔で見下ろして来る。何やら絶望に近いものがあったのは、きっと気のせいじゃないだろう。

 おやじ、()()()()は舌打ちまじりにぬかしてくれた。


「ちっ……こいつめ、ほんとに何も聞かされてないんだな? まったく、面倒にもほどがあるだろう。ここは幼稚園じゃねえんだぞ! いいから、おまえの()()()が入らなければ()()()()()()が覚醒しないから、とっととやれ、()()を、ここまで言われればわかるだろ? ()()だよ、()()! 男の子ならみんな大好きな()()だ、そら、ただしできたら()()()でないほうでやれよ? 利き手がふさがるといろいろ細かい操作がしずらいだろ、まだはじめの内は……」


「ま、待って! ほんとにわけがわからないんだけど、()()って、え、まさか()()? ()()()()()()()()()()?? え、違うよね? ()()っ???」


()()()()。いまおまえがその頭の中で思い描いているヤツ、()()()()、ズバリそいつで間違いない。おまえぐらいの年齢なら毎日だってありえるだろ? それでいい。さっさと握ってちゃっちゃと気持ちよくスタンバイさせろ! そうとも、何を隠そう、それこそがコイツの()()()だっ!!」


「なっ、なな、な…………あれ、()()()()?」


 あらためてじぶんの下半身に目を落とすに、今さらになってそのパイロットスーツの()()()()()()に目がとまるパイロットだ。

 ガッチリした見た目のわり、この腰回りの部分だけがやけに自由で拘束感がないなと思ったら、そこだけ造りがおかしな見てくれになっている。言えば()()()()みたいにぐるりと布が張り巡らされて、目隠しの()()()みたいなのがヒラヒラと垂れ下がっているのだが、その下の感覚がやけに自由ですっきりとしている。

 それが逆に違和感だ。ここに入る前、尻のあたりがヘンに涼しく思ったのも今さらに思い返された。違和感として。

 スカート?の(すそ)(はし)っこ指先でつまんでみて、おそるおそるにぴらりとめくったその下を覗きこむモブの身動きがピタリと止まった。

 ぎこちなく振り返るオタクは顔つきが困惑の極致だ。

挿絵(By みてみん)

「…………なに、()()? スカートめくったら、()()()()()()あるんですけど? おれのナニが、()()()()もことごとく()()()なんですけど、え、なんで???」


「あん、何でもナニも、もとからそういう()()だからだろ? 一刻一秒を争う状況下で、いざ()()をしようって時にいちいちパンツなんてズリ下ろしてたら手間だから、搭乗者(パイロット)()()()()()()()()()()()()()なんだよ! だから外から見えないようにその前掛け(ガード)があるんだろうが、かろうじての()()()で? スカートとか言うんじゃない」


 ごたくはいいから()()()()()()と真顔の目つきで催促してくれるぬしのおじさんに、新米パイロットのでぶちん、モブはぎょっとした顔つきで口をパクパクさせる。理解がまるで追いつかなかった。


()()()()()()()()()()()()? ……えっ、あ、え、マジで、どういうことになってるの? いきなり握れって、ナニをしろとか、まったく意味がわからないんだけど?? おれって、()()()()()()()()、なんだよね???」


()()()()()()! いいか、こいつはいわゆる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。世に言う()()()()()()()()()()()()()だな! つまりはおまえの発情、ないし欲情と妄想による()()()()()でのみ動かすことができるんだよ。だから最低限、勃起(ボッキ)せんことにゃ一歩たりとも動きやしない。逆に言ったら、パイロットは常にじぶんのイチモツを握り締めておかなきゃならないんだ! ()えたら即、()()()()()()だからな!! ただちに起動停止でおまえさんの()()()()になる」


 ()()()()()()()()()()()()


 ひたすら絶句するモブに、高くから見下ろしてくるおじさんはまるで容赦ない。早口でまくし立ててくれた。


「いいから、さっさと得意のポジションに入って自慢のブツを()()げろ。いつもやってんだろ! ひと目を(しの)んでコソコソと? あ、シートベルトはしっかりと()めろよ。頑丈な四点式フルハーネスだ。ロボは意外と()れるから、握りが安定しないとおちおちナニもできないだろ? そうでなくともパイロットはベルト必着! 結構手間がかかるから、握る前で良かったな?」


()()()とか()()とか、さっきから当たり前みたいにほんとなに言ってるの?? おれやらないよ、そんなこと? やるわけないじゃん! ひとまえでそんな破廉恥(ハレンチ)なこと!!」


 やっと事態が飲み込めたとおぼしきオタクは、同時に激しく反駁(はんばく)もする。無理もない。目を覚ましてからこれまでまともな展開がひとつもないと憤慨(ふんがい)しつつ、背後で教官よろしくふんぞり返るおやじに(キバ)をむいた。


「だだだっ、だって、それって、それってば、()()()()()、でしょ? だだ、ダメに決まってんじゃん! そんなのっ!? ここってほんとに自衛隊!!?」


 声を裏返らせる若者に、酸い甘いもかみ分けてそうな渋いツラした年長者がいささかの(てら)いもなしに応じる。ひどい話だ。


「おう。いわゆる()()()()、またの名を()()()()()()()()()とも言うな? 老いも若きも男子たる者みんな大好き、それすなわち()()()()だ! 別に恥じることないだろう、性欲なんて誰しもみんな持っているんだ。どこぞの医者に言わせりゃ、メンタルヘルスにも大きく関わる大事な()()()()()()()()だろ? ただの日常茶飯事だ。最近じゃ()()()()()()()()だなんてキラキラした言葉も出始めたりな? 言ってることは変わりゃしないのによ!」


「はっきり言った! このおじさんはっきり言った!! ()()()()()も使わずにまんまのどストレートをバンバン放ってきた!! まともじゃ考えられないよっ!! ぜったいに自衛官なんかじゃない!!!」


 顔を真っ赤に赤らめてみずからの股間を自然と押さえてしまうモブだった。ひどい危機感にさいなまれる。なんかひととして大事なものを失うような、ひたすら絶望的な未来が待ち受けている、その入り口にみずからが立たされているような? きっとオタクとしての(カン)だろうか。ヤバい。


「この俺のことはどうでもいいだろう? ただはっきりしていることは、この場でおまえが気持ちよくならにゃ話がはじまらんてことだ。()()()()もな? 別にひとがよがってるところ見て楽しむような性癖(フェチ)はないから、好きなだけ盛大にやってくれて構わない。見やしねえ。そういう場所だし、そういう仕事なんだしな! これのパイロットたる者の宿命だ。ほれ、手が止まってるだろ、いいから、()()()()! ただしぬくのはまだだぞ? まだイクな!! あとベルトも締めろ」


「最初からやってない!!! やるわけないって! 頭おかしいだろっ、()()()()()()()だなんて聞いたことないって! そんなのありえないって!!」


 絶対やらないと固く(ちか)うモブなのだが、あいにくとそこでまたさらなる追い打ちが仕掛けられることとなる。おまけに外部(そと)からだ。


「んっ……!」


 はじめに背後のおじさん、後部座席の()()が何かしらに気づいたかの反応をした直後、コクピットの前面の大画面モニターに()()()()()()()()が浮かび上がる。でっかく二つに区切った四角い表示窓枠(ウィンドウ)に、忘れもしない、()()()()()()()()()()()が映し出されるのだった……!


「あっ! かか、()()()()()()()()と、()()()()()()()()()! よ、良かった、ちょっと、助けてよっ、偉いことになってる! おれ、すごいこと言われちゃってる!! このとにかくよくわかんないおじさんにっ!!!」


 良く分からないのは結局のところみんなおんなじなのだが、かろうじてまだマシなほうのおじさんに泣きつく。またしてもあの無表情な真顔で登場したバストアップの中年自衛官とおぼしき監督官に必死に訴えてやるのに、だが相手はとかく澄ました表情で返してくるのだ。


「…………()()()()? はて、意味があまりよく分からないが。オタクダくん、そちらの状況はどうなっている? ロボ、ジュゲムのスタンバイまでは確認できたが、肝心の()()の起動が未確認だ。まだやってないのかね、その、済まない、面倒だからはっきりと言わせてくれ。きみの操縦桿(ちんちん)()()げ、つまるところで()()()()は?」


「わああああっ!? このおじさんまでなに言ってるの??? しかもこんな若いおねーさんの前で!!!」


 慌てふためくモブなのだが、股間を押さえる手にグッと余計に力が入る。突然の異性の存在を意識したらちょっと反応しかけるのを慌てて押さえつけるだが、あいにくとモニターにドアップのメガネ女子はまるきりの無表情だ。相変わらずメガネが光っている。

 挙げ句に表情ひとつ変えない監督官の村井が悪びれることも無くぬかした。


()()()()()()()()。とっととやりたまえ。国の未来がかかっているんだ。それともまだナニか不足があるのかね?」


 ほんとに逃げ道がないとあんぐり口を開けて反応に(きゅう)するモブに、かわりに後ろのおじさんがほざいてよこした。


「ん、おまえ、ひょっとして座りよりも寝ながらじゃないとできないってタチか? ガキンチョが! なんならその座席(シート)()(ぱら)えるから、床にまんまベタで寝るか? あいにく布団までは用意できないが?」


「うう、うっさいな! 余計な茶々(ちゃちゃ)入れないでよ!! 村井さんっ、おれこのおじさん嫌い!! どうにかしてよっ!!?」


 半泣きで必死に助けを求めるものの、大きな画面でドアップの自称・監督官はやはり無表情だ。こちらを見つめる視線に何故かしら怪訝なものがあるのに、微妙な違和感を感じるモブであったか。


 あれ? なに、このヘンな()は??


 奇妙に思ってるそばから相手が不可解なことを言い出すのには、なおのこと怪しげに顔つきをひそめるパイロットである。


「済まない。こちらからはこの状況が確認できないのだが、その()()()()には会えたのだね? 外部電源からの予備動力の稼働は確認できたから接触はしたものと推測はされるが……?」


「は? なに言ってるの? いるでしょう、そこに、後ろでこんなしっかりとふんぞり返ってるじゃん! いいトシこいたおじさんが!!」


 ビッと後ろを指さしての訴えにも、モニターの中の監督官はやはり無表情だ。おじさんとおじさんの目線がちっとも合ってない。当のぬしはそしらぬ顔して耳の穴をほじくってる。監査官のおねーさんもまるで無反応でメガネを光らせたままだ。そのメガネどうなってんのと思いつつ、前方の監督官に改めて向き直るモブ。


「えっ、あの、みんなどうしたの、話が通じてないみたいだけど?」


 股間のブツが萎縮するのを意識しながら聞き返すと、そこから返ってくるのは思いも寄らない言葉だった。呆然自失で乗り出していたパイロットスーツの肥満体がシートの背もたれにどっともたれる。

 監督官は多少の困惑の色を浮かべながら努めて冷静に言うのだ。


「いや、あいにくとそれはきみにしか見えないのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()……!」


「は…………???」


 絶句するモブだ。こんなにはっきり見えているのに、一体なにを言っているんだとただひたすらに相手の顔を見つめてしまう。ふざけているのかと。

 だがこれにその右手の表示窓で沈黙を守っていたメガネっ子の監査官、若いおねーさんがおもむろにこの口を開く。

 それにもマジマジと目を見開いてしまうモブだった。


「申し訳ありません。こちらの監督官の言葉にもあったとおり、わたしにもあなたが言う()()()()、もとい、()()の姿は確認することができません。そちらの後部座席(リア・シート)は無人の状態としかこの認識が……」


 細い首をかすかに左右へ振って口ごもるのに、信じられない思いで額に大粒の汗を浮かべるデブチンのパイロットだ。


「え、なんで??」


 ものすごく重たい沈黙がその場を支配する。

 もはやナニどころではなくなった空気と状況に戦慄するモブは、おそるおそるに背後を振り返る。やはりふんぞり返るおじさん。

 じぶんにはしっかりと見えている。

 それなのに――。


「そ、それじゃあ、このおじさん、()()って…………!」


 どこかあさっての方向を向いていたのがこちらに視線を向けて、ニンマリと意味深な笑みを浮かべるオヤジだった。

 混迷を深めるロボのコクピット、オタクとオヤジの攻防戦はまだはじまったばかりだ……!


    ※随時に更新しまーす。みんな応援してね☆ by モブ♡


ユーチューブライブだとかで創作ライブ配信もやってます(^o^)

誰も見てくれないんですけど(T-T)

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