いきなり実戦ダダンダン!③
挿し絵もお話も書きかけの最新話です(^o^)
なんかごめんなさいw
Episode‐file‐10
事態は切迫していた――。
あっちのおじさん大ピンチ!
外部の状況をくっきりと映し出す半球状の全景投影型モニターに、大小さまざま色とりどりの警告表示が映し出される。周囲で警告音もさまざま鳴っていたが、やがてそれらが収まると静寂も待たずにこっちのおやじが野太い声を張り上げる!
一段高い後部操縦席から意気も高らかに機動指揮を発する気合いの入った教官どのだ。
「ようし、ジュゲム、これよりちゃっちゃと攻撃機動に入るぞ! コイツの記念すべき正式稼働、この一発目だ! 用意はいいなっ? 正面モニター、あのおやじの悲惨なさまを見てのとおりで猶予はもうないっ、いいか、一撃で仕留めるぞ!」
「あっ、は、はいっ? なにっ?? あっ、あっあん!」
これに一段低い床面にある第一操縦席で応じる肥満のパイロットは、あいにくとこの反応がイマイチ……! それもそのはずで、今にも暴走しそうなみずからの股間を押さえるのに手一杯なのらしい。どうにも収まらない胸の高鳴りを荒い呼吸で意識しながら、今にもキモチイイ世界にぶっ飛びそうな心身をふうっ!ふうっ!!となだめすかす。かなりの難易度だ。もはや機体の制御どころではない。はみ出し気味の舌をどうにか引っ込めてこの視線を後ろのおじさん、ぬしへと焦点を定めるモブだった。
「ふへ、へ? へへっ、わかんないよ、おれ? あっ、あ、あ! ふうっ、こんなに硬くなっちゃって、もう大変だよ……! ふふっふ、ふう、はあっ、あれ? ああ、ダメだダメだ! ちゃんとやんなきゃ! と、とにかくビンビンに立たせたから、これでいいんだよね! おじさっ……ぬしさん?」
「……やっと正気に戻ったか? 勢いあまって抜いたりしてないからいいものの、加減はちゃんとやれよ。慎重にな。万一に抜いちまっても、もう一発食らわせればすぐさま復帰できるんだが、なにせこいつは精神的肉体的負荷がでかいし、次の日がまるで使い物にならねえからな? ターゲットをこちらで定めるから、おまえは気を張ってせっせとそこでシコれ! 精力の限り!!」
ゴゴゴッ……!と低い稼働音がして、この大型ロボ自体がゆっくりと身じろぎ、どうやらこの右腕を前へと突き出したようだ。握った巨大な拳の先には例の謎の血みどろのぐちゃぐちゃと、これに全身をまとわりつかれた中年の警察官が苦しげにもだえる。
「いいか、コイツの機体各部にはオナニー・スマッシャーをぶっぱなす噴射口ないし発射口があるんだが、この腕にあるもので目前の対象物に威嚇射撃する。まあもろに当てちまうんだが、実弾じゃないからそう危険はない……はずだ!」
「はず?? ほんとに大丈夫? こんな街中なのに地味にオナニーってはっきり言っちゃってるよね? もういいんだ。それでどうするの? ん、このちんちん、じゃなくて操縦桿を倒せば発射できたりする? でどうするの? わっ、硬い、本物の操縦桿みたいだ! 股から棍棒が生えてるみたいだよっ、ゴリっゴリの! あ、わ、わ、ほんとに昇天しちゃうっ……!!」
「コラッ! 許可無く勝手にイクんじゃない! あと余計な私語は慎め、そっちのおねーちゃんに全部聞かれてるぞ? やればわかる! そら、目前の標的に向けてただちに発射、ヤツらにおまえのまっちろいのをぶっかけてやれ!」
「なんかヤらしい! アレじゃないんだから、ふう、じゃあ、いくよっ、スマッシャー! んんっ、あ、出た! ブワッってたくさん! おれのじゃないよ? でもそっか、よく言う顔射って、つまりはこういう気分なのかな? あはっ、はじめてひとに向けてやったよ!」
かくも緊迫した状況で天然発言を炸裂させるオタクのでぶちんだが、しかめ面のおじさん自衛官に食い気味にダメだしされる。
「だから風俗じゃないと言ってるだろう! ばかちんが。操縦室はやり部屋じゃないんだ。それにまだここからだぞ? ここからはあの中年のおまわりとの共同作業だ! 意識はなくともこの本能に働きかけてエロのパワーをお見舞いしてやる。このジュゲムを通してあのおやじとおまえの感覚神経を同期同調させるぞ!」
「なに言ってるんだかさっぱりわかんない!」
「やればわかる! 何事も習うより慣れろだ! たった今のスマッシャーによってあの警官のおっさんの性欲も極限まで増大してるから、あの状態からでもきっかけひとつで昇天させられる! かなり混乱しているみたいだが、あと一押しだ!」
手元を股間に当ててハッハッと顔を真っ赤に上気させながらも、怪訝な目つきを背後にくれる主務操縦士だ。そんな元気でとんちきな若者のさまを前にして、真顔のおじさんは勢いが止まらない。おまけ何やら理解しがたいことをでかい声でぶっちゃけてくれた。この世の中、声がでかいヤツが勝つのだとばかりにだ。
「いいな、エロの爆発的なエネルギーを身体の中から暴発させて、それこそヤツ自身が爆弾と化してこれに取り憑くあの厄介なクリーチャを粉みじんに粉砕だ!! これぞまさしくオナニー爆弾! ま、ある種の自爆っちゃあ、自爆なんだが? どんなに悪意や恨みが深かろうと、おっさんの性欲に勝る情念はこの世に存在しない!!!」
「おっさんの? だからなに言ってるんだかわかんないって! ふうううっ……ん! で、おれはどうすればいいのさ?」
股間で暴れるみずからの分身をいよいよもてあましながら、困惑混乱するばかりのモブに、後ろのおじさんは当たり前みたいな涼しい顔で言ってくれる。やっぱり理解不能だった。
「だからシコればいいんだよ。何度も言わせるな? だがまずその前に、パニクってるあのおまわりに勧告を出す。共同戦線張るための事前準備だ! ただしこの俺が言っても相手には聞こえないから、おまえが代わりに言ってやれ! マイクオン! ゆくぞっ、あのポリに向けてがなってシコれ!! さあっ……」
「え、え、え、え? 何を? あの状態で言葉なんて通じる?」
「いいからっ! これからこの俺の言うことをあいつに向けてまんま繰り返せっ、いくぞっ? ……おいっ、そこのおまわり!」
「え、おまわりって、言い方なんかアレじゃない? もうちょっと……!」
「おまえだおまえっ!! 良く聞け、これからただちに救出活動に入るから、こちらの言う通りにおまえもただちに従えっ! 反論は一切、受け付けない! いいなっ、これは国からのまっとうにして合法な正式命令だっ!! 公務員に拒否権はなし!!!」
「えっ? あ、あの、あの、あのっ……そこのおまわりさーん! えっと、すぐ助けに入るんで、こちらのいうコトにすぐにしたがってくださーい! おねがいしまーす!!」
スピーカーで拡声拡散する以上、後ろからの言葉のまんまだといろいろとアレな感じがしたので、じぶんなり穏便にかみ砕いてはみたのだが、ただちに頭から罵声を浴びせられる。一呼吸入れてさらにデカい声でがなり散らすおやじに、ほとほと困惑しながら前のめりでモニターに向かうでぶちんパイロット。
「デブすけっ、もっと声を張れ! おまえの行動にひとひとりの人命がかかっているんだぞ! いいか、ここからが重要だ! ゆくぞっ、はあっ、そこの死にかけの警官っ、ただちに――」
「もうっ、そっ、そこの大ピンチのおまわりさんっ! ただちにっ……!!」
「オナニーをせよ!! 即刻! おおらっ、死力を尽くして全力で自慰行為にはげめっ!!!」
「オナニーをせよっ!!? 全力でじいっ、こ、う、え、ええええええええええええええっ!? いきなりなに言ってんの!?」
「ばかちん! 繰り返せと言っただろう! 中途半端な声かけじゃヤツの中枢神経まで届かないからしっかりとこの感覚がつながらないっ!」
「いや、だって!?」
ひたすら当惑するオタクに顔つき険しくこれを見下ろすぬしは真顔で言い放つ。もっともらしげにしたセリフは、だが良く聞けば意味がわからないことだらけだ。さらにのけぞる前衛操縦士。
「ええいっ、ならこっちで補佐、補足するからおまえはもうじぶんのナニにだけはげめ! ただしあの中年のおまわりが付いてこれるよう、ゆっくりとていねいにやさしくやってやれよ? ガキの勢いに任せた発情行為じゃヤツが付いてこられまい! 自衛官たるもの、おのれにも他者にも愛を持って接し尽くすべし! それこそがこの俺たちがなせる自慰のあるべき真の姿だっ!!」
「自衛官関係ないじゃんっ! おまけに警官にナニをやれだなんてさっぱり意味がわからないよっ! こんな真っ昼間の公道で、やれるわけないじゃないっ? ふうっ、ふうぅ、まあ、おれはかろうじてこうしてやれてるけど、ここ個室だから! 相手はまじめなにっぽんのおまわりさんなんだからね? やるわけが……あれ、なんかヘンだよ? あのおじさん、まさか……!」
「ククッ、ぶちまいたスマッシャーが猛威を振るっているな? 警官だろうが坊主だろうがお構いなしに! 内側からの刺激に、鼓膜を通した外部からの刺激にも反応して無意識にでもスイッチが入っている。そうこれぞ本能! もう誰にも止められまいだ!!」
「本能って……あ、あのおじさん、股間のチャックを開いてる? 出した、今? 内部からぽろんと、アレを? わ、いちいち拡大とかしなくていいから! 別に見たくないし! わ、握ってる! 思いっきりに! しかも……」
目の前の大画面モニターの中の異常事態が、ここに来てまたさらにとてつもないことになっている……!? これにはたまらずギョッと瞳を戦かせて、うげっと腰が引けるモブだった。かなり気色の悪い光景で、おまけに不可解な現象がそこでは、はっきりと見て取れるのだ。後ろでおなじくこれを見るおじさんが得意げに言ってくれる。
「フッ、どうだ、おまえの動きをピッタリとトレースしているだろう? まさしくシンクロしてるんだよ! おまえの感覚、快感がすなわちあのおまわりが今感じている快感だ。リアルタイムにな? ならそのままフィニッシュ、あいつを射精にまで誘導しろ! ただしおまえはまだイクなよ? 余力はまだ残しておけ」
「えっ、あふ、あふぅ、あふうっ……! しゃ、射精って、こんなんでどうにかできるの? ふうっ、だいぶいいカンジになっちゃってるんだけど、なかなか寸止めってできないもんだよ? ああ、あっちも気持ちいいみたい! 身体中がビクビクなってる!?」
離れた場所でこれを見聞きしているだろうふたりの自衛官たちには、てんで理解不能なバカげた会話が繰り広げられる。もはや誰にも止められない。おじさんの監督官あたりに言わせるのなら、完全に詰みである。
「ケータイや無線機みたいな電波を介した無線越しなら、どうにか俺が直接に言葉責めで墜としてやれるんだが、この状態じゃそうはいくまい。おまえが連れていってやるしかないんだ、気持ちの良い天国へ! あと一息で決めろ!」
「んんんっ、そんなこと言ってもおれ、他人のオナニーなんてコントロールできないよ、あれ、コントロールしているの?」
「ちゃんと同期同調しているだろう。もはやおまえのちんちんはあのおやじのちんちんと一心同体だ! やさしくイカせてやれ」
「気持ちわるいな……やさしくって……ん! じゃ、じゃあ、ごめんなさい、そろそろイカせてもらいます、おまわりさん! だからおじさんも心置きなくイッてください!! それじゃあ、それっ、ん、まだダメ? それ、そうれ、そらそらそらぁっ!!! あふう、こっちがイッちゃうよっ……!」
「イッたな! 白目をむいてるが悔いのないいい顔してやがる。大往生だ。モブ、わかるな? あれは生き恥じゃない、まさに正々堂々、やりきった漢の悔いなき真の生き様だ……!」
「もうっ、白いのめちゃくちゃぶちまけたじゃん! あのおじさんてば!! 警官なのに? 本当に報道のカメラは入ってないの? だとしてもせめてモザイクはかけてくれてるよね? おれ、悪いことしちゃったんじゃないのかなー……!」
ちょっとビミョーな顔つきになるところに、手元の小型画面からしばらくぶりに外部からの通信による音声が入る。一難去ってまた一難。想像を絶する状況はまだ終わりでは無かった。目の前にふたつ並んだディスプレイのこの左手に映る中年の自衛官、監督官の村井がいつも通りの真顔でこの口を開く。
『おめでとう! 第三種災害の発生因子を無事に駆逐完了、これをこちらでも確認した。見事な操縦技術だよ、感服した。さすがは選ばれしオタクだ。ただしこれで終わりではないので、引き続き気を引き締めて任務を完遂されたし。巨額の税金を無駄にしないためにも……!』
わけがわからないままに褒められても、まるで実感が持てないオタクのでぶちんだ。気まずげに視線をみずからの股間に落とす。
「ううん、操縦技術って……! おれなんにもしてないよ? ただここでアレをしてただけで……?」
「大したオナニーテクニックてことだろ? 男としては悪いことじゃない! 素直に受け取っておけ。事実、おまえはそいつであのおまわりの命を救ったんだ。それで十分だろう?」
「そうかな? あ、そうだあのおまわりさん……! ああ、あそこに倒れちゃってるけど、大丈夫なのかな? あれ、あとなんかひとがひとり、増えてない? 見慣れないスーツ姿の、おじさん、かな? やっぱり倒れているけど、あんなひといたっけ??」
股間から目の前の外部状況ディスプレイに視線を上げて、そこで目をぱちくりさせてモニターに見入るモブだ。瀕死状態の警官の他に、そこにはまたひとり見知らぬおじさんぽい人影が映っていた。忽然とだ。地味なスーツ姿のサラリーマンぽかったが、これまでどこにもそんな姿はなかったはずだろう。すると後ろでぬしのおじさんが驚きもせずにむしろ当たり前みたいな調子で答えた。
「ああ、そいつはあの変態新種生物の根源、宿主(しゅくしゅ)だったヤツだろう。警官のおやじが見事に果てて、取り憑いていた悪い憎念が根こそぎ爆ぜたから、もとのひとのかたちを取り戻したんだ……! あれならもう災害を巻き起こすこともないだろう」
「へ? そうなの? よくわからないけど、とにかくいいんだね? ほんとに? それじゃこれからどうするの、あのひとたち、あのままほったからしにはできないよね?」
あまり腑に落ちないさまで振り返る新人パイロットだが、これにはむしろ前の小型画面から返事が返る。監督官が神妙な顔つきで言うのだった。
『いや、そのあたりについてはパイロットのきみが案ずることではない。心配は無用だ。ちゃんとそれ用のスタッフたち、後始末専門の処理班が待機しているので、そちらに任せてもらって構うまい。きみはきみのなすべきことに専念してもらえれば。任務はまだ継続中だ……!』
「処理班? つまりは救護要員みたいなこと? どこかに救急車が待機してたり? でもここって、今は誰も入って来れないんでしょう?」
疑問ばかりを口にするオタクに、背後のベテラン自衛官は冷めた眼差しでこれを見つめながら任務の続行を促す。
「おまえが気に病む必要はない。いいから操縦桿だけイジってろ! まだ終わっちゃいないんだぞ?」
「え、まだ終わりじゃないの? でも……」
はたと首を傾げるモブに、今度は手前の右側の小型ディスプレイの中の若いおねーさん、監査官の神楽が真顔で注意喚起をしてくれる。相変わらずメガネが光っているキレっキレのおねえさんだ……!
『小宅田准尉! また新たな第三種災害の災害主が出現した模様です。予測ではこれらが最低でもあと三体は潜んでいるものと思われます……! どうか警戒を怠りなく。わたしは応援しています』
「ナニを??」
またビミョーな顔つきになるモブだったが、背後のおじさん、ぬしからも皮肉混じりの注意をされてしまう。
「ナニだろ? まだイケるな? 悪いが本番はこれからだ! どれ、場所を変えるぞ。ついでにこいつの操作も覚えていけ。まずは基本的な歩行機動からだな?」
「え、まだやるの? おれそんな持つかなぁ……?」
「ファイト一発! またさっきのを食らわせてやろうか? ほれ、いいからさっさと移動するぞ、倒れてるおまわりたちを迂回しながら、大通りを前進! 踏むんじゃないぞ? せっかく助けたのに?」
「踏むわけないじゃん! どこに行くの? まださっきのみたいな気持ち悪いのが出てきたりする? おれあんなの見るのもうイヤだから、うまいことモザイク処理とかかけられない?」
苦い表情で訴える小心者のオタクに、性格至ってがさつなおじさんは無関心なさまで突き放す。もはや問答無用で任務続行だ。
「そんなもんは目の前のヤツらに言え! 俺が知ったことか。まずはゆっくりと前進! どら、股間の操縦桿を正位置で用意、これをゆっくとり前に倒せ! そら、やってみろよ?」
「正位置ってなに? ああん、もう、ちんちんいじるのが当たり前みたいになっちゃってるよ! ならここもちゃんとモザイクかけてよね? えっと、しごかないでただ倒せばいいんだよね? ボッキはちゃんとさせた状態でぇ……」
「当たり前だろう! そいつが萎えたらそれではいおしまいなんだ。歩くどころかその場で行動不能だぞ? ゆっくりと、はじめは慎重にな」
「わ、わかった……! じゃあ、こんなカンジかな?」
みずからの股間のイチモツと正面のモニターに映る景色を見比べながら、左手のスナップを軽く利かせてこれを前へと倒す新人パイロットだ。すごい絵面だった。およそ自衛隊にあるまじきありさまだ。なのに真顔でいられるオタクのメンタル!
後ろの教官の言うとおりに従うと、ガシンガシンと音を立てて、このコクピットが揺れるのがただちに体感できる。その微妙な縦揺れにちょっと感じてしまうモブは、ヘンな声を出しかけて慌てて口をふさぐ。前ではすぐ手元にある小型画面の中でふたりの自衛官たちが真顔でこちらを注視しているのだ。
今さらながらちょっと目線のやり場に困る、お年頃の青年である。ともあれ、確かにみずからのちんちんの倒し方でこのロボを操作、動かすことができた。ならばその倒し方によってこのスピードや方向を制御できるのかと思って、微妙な力の加減を試してみるでぶちんだ。
救出したおまわりさんたちが見えなくなったところで機体を一時停止。その場で前後左右にスティックをさばいてこの感覚を確かめる。このあたりが実にオタクだったろう。そうして驚くべきことに、軍の機密兵器の巨大ロボがその実、ラジコンさながらのお手軽な操作感覚でシロートにもしっかりと動かせていた。ある意味、驚異的、かつ、異常だ。思ったままに操縦席を揺らす小刻みな縦揺れに、ひたすら感心して表情を明るくさせるにわかパイロットである。
「わあっ、ほんとだ! ちょっと揺れるのがアレだけど、ちゃんとこのおれのちんちんの動かすとおりに動いてるよ、このロボ! ジュゲムだったっけ?」
「そうだ。今のうちに慣れておけよ? おまえは操縦のセンスがあるようだから、すぐにこれを掴めるんだろう。前に倒せば前進、後ろに倒せば後進、横はどちらも左右に平行移動する。まんまだな? もう分かっているようだが、倒し方の程度でスピードを調整することも可能だ。わかりやすいだろう?」
「そうだね! でもそれじゃあ、機体の方向を変える場合はどうすればいいの? 常に正面を向いたままだよね、これ?」
果たしてオタクの血がそうさせるのか、俄然集中して正面のモニターに向き合うモブ。これに後ろからおじさんの適格な指示が出される。傍目にはほぼ訓練機の教習みたいなありさまだろうか。
「その場合は単純にこの目線、おまえの頭を任意の方向に向ければ良い。ちんちん、操縦桿を通して感覚神経がロボと同期、一体化しているから基本はおまえの動きをまんまトレースしてくれる。ちなみに両足をバタつかせることでジャンプしたり、駆けったりもできるはずだ。これは相当に慣れてからだな?」
「あっ、ほんとだ! おれが向いてる方向がちゃんとモニターの正面に納まってくれるよ! 意外と簡単だね? 移動する以外の動作はどうすればいいの? 腕とか脚とか?」
かなり飲み込みがいい生徒のはきはきした質問に、背後の教官席のぬしもまんざらでもなさげな顔つきで応じる。意気が合ってきたのを実感しているものやら、口元がややニヤついてたりしたか?
「まあ、基本はひとりでもできるもんだが、複雑な動作はこちらで受け持ってやるさ。今の内はな? 体重掛けたガチのパンチだのキックだのは、とろいオタクのでぶちんには荷が重いだろう!」
「これって、そんな格闘戦しなくちゃならない状況になりうるの? おれちょっと納得いかないんだけど……ん、あれ?」
ふたたびコクピット内に甲高い警告音が鳴り響き、周囲のディスプレイ上に赤いマークがいくつも浮かび上がる。こちらから見て近くにあるものと遠くにあるものとで大きさがまちまちなターゲットサインは、中でも三つくらいがごく近くにあることを示していた。これを感覚的に捉えて状況をそれと把握するモブだ。
「えっ、やだな! また来るの? あんな気持ちわるいのが……やっぱり!!」
言ってるそばからだ。大通りの左右からぞろぞろと姿を現しはじめるゾンビもどきに、げんなりして顔つきをゆがめる主務操縦士だった。背後のおじさんが声を荒げる。
「わざわざあっちから出てきてくれたんだからありがたいだろう! 潜伏されたまんまなら、むしろこっちから出て行かなきゃならないんだ。白兵戦だな? おまえできるのか?」
「白兵戦だなんてっ、シロウトのオタクに言わないでよ! 絶対にムリだから! ……その時は、このちんちんいじってなくていいんだよね?」
「その時になればわかる……! 今は目の前の敵に専念しろよ、ここからが総仕上げだ。ヤツら団体さんでおでまだぞ!」
「うわっ、まだ慣れてないのに、大勢を相手になんてムリだよ! てか、踏んづけちゃったりしたらダメなの?」
「ひとを殺すことに躊躇がないのなら、それもありかもな?」
「ひとって……! ひとなの?」
「見たまんまだ。来るぞ!」
「もうっ……!!」
真っ昼間の人気無い秋葉原で、オタクとおじさんの戦いはクライマックスを迎えようとしていた……!!
※次回に続く…!
以下、随時に更新! 応援してね☆ by モブ♥
なかなか見てもらえないのでライブで頑張っているのですが、これが遅筆の原因なのではとのウワサもなくはないような今日この頃…
しゃあないですね(^_^;)




