卒業前の演し物は
艶やかに磨き上げられた床は、天井に吊り下げられた大きく豪華な吊り下げ照明の輝きを受け、燦然と煌めいている。
壁も白亜だが、豪華な装飾灯と美しい調度品や美術品が飾られ、とても学生の身分で足を踏み入れて良い場所には思えない程豪華だ。
だが、今宵は祝宴。
部屋の一角に陣取った楽団が、緩やかに音楽を奏でている。
小鳥たちの囀りのように、まだ卒業する前の子女達が思い思いに会話を楽しんでいた。
一部の生徒を除いて、会場全体に散らばっている。
出入口付近の壁には王宮の使用人達がずらりと並び、飲み物や軽食も準備されていた。
給仕する為の使用人は銀盆を手に、静かに会場内を歩き回り、紳士淑女に飲み物を供しては、空いた器を下げていく。
卒業の祝宴では二階席に彼らの親達が観覧する席も有るが、今日はまだ厚い帷幕に阻まれて向こう側は見渡せない。
今日は卒業前の予行演習としての祝宴だからだ。
音楽が一旦止んだ事で、生徒達も囀りを止める。
王族の入場を知らせる高らかな楽器の音が鳴り、中央にある大きな階段から一人の貴公子が下りてくる。
本来ならば、その手には同行する婚約者を連れている筈の第一王子、アルトゥール。
橙がかった明るい日差しの様な黄金の髪に、日に透ける若葉の様な煌めく緑の瞳。
均整のとれた身体は、騎士としての訓練も怠らない故のしなやかな強さを持っている。
そのまま階段下にある壇上に留まり、紳士淑女達の礼を受けて、片手を挙げた。
「今日は予行演習だ。皆気を楽にして楽しんでほしい。だが、この場を借りて話をしたい事がある」
彼がそう言えば、いつも侍っている側近達がある令嬢を連れて壇上に上がり、王子の背後に立った。
令嬢の名はベティーナ・バーナー男爵令嬢。
男爵令嬢には似つかわしくない高級な衣装に身を包み、どことはなく誇らしげに微笑んでいる。
手を引いているのは、騎士団長の息子であるカール・ヴァルツァー。
銀の髪を短く刈り込み、冷たい青の目をした青年で、ベティーナを同行し終えると、その手を離して王子のすぐ斜め後ろに、後ろ手を組んで立つ。
何時もの定位置だ。
同じく壇上に居るのは王子と共に生徒会役員を務めていた面々である。
公爵令息のクルト・ハーゲンドルフ。
侯爵令息のヨハン・アーメント。
伯爵令息のカスパル・ギュンマー。
子爵令息のマヌエル・アハッツ。
同じ壇上に商人の息子のダミアン・ヘーゼルという平民もいる。
彼はベティーナの幼馴染で、その縁で会計を任されていた。
一様に晴れやかな顔で胸を張っている面々だが、会場の反応は幾つかに分かれている。
同じように嬉しそうに輝く笑顔を向けている人々。
困惑したような顔で見守っている人々。
そして、どこか冷めた目で静かに佇む人々。
「エルネスティーネ・リリエンタール公爵令嬢、前へ」
「はい、殿下」
静々と進み出たエルネスティーネこそ、アルトゥール王子の婚約者である。
光を集めて束ねたような白金色の髪を編んで結いあげた、やや吊った眼は冷たい青灰色。
だが、衣装はアルトゥールの纏う黄金でも緑でもない、薄墨色である。
何らかの抗議の証か?と見る者もいれば、葬式に参列するのかしらと意地悪な笑みを浮かべる者もいた。
ある意味これから行われるだろう見世物は、確かにその様相を呈している。
アルトゥールは、静かに、だがよく通る低音で穏やかに話しかけた。
「君との婚約と将来についてこの場で話し合いたい」
「仰せのままに」
エルネスティーネは、王子の正面に立ったまま、優雅に淑女の礼を執る。
逆らう気はないようだ。
いきなり婚約破棄だ!と言い出さないのか、と残念そうな顔をする人々はそれでも期待に胸を膨らませていた。
背後に控えているベティーナも、抑えきれない笑みを応援している人々に時々向けている。
「君はこの学園に何をする為に入学したか聞かせて欲しい」
「将来の為に様々な階級の人々と交流を交わし、選別をする為にございます」
にっこりと、それはもうにっこりとエルネスティーネはあどけなく微笑んだ。
今までずっと顔に貼り付けていたのは、穏やかな淑女の笑み。
けれど、それは、全く違う類の笑顔だ。
ぎょっとしたのは、壇上にいる人間達である。
何故この場で、追い詰められていながら、そんな笑みを初めて見せたのか。
事の発端は入学式より前に遡る。
王子が来年度に学園に入学するという公布がされたその年の暮れ、ある劇が上演された。
真実の愛を題材に、身分の低い令嬢が王子に見初められるというものだ。
近年流行っていた小説を元に作られたそれは、大衆向けにも上演されて人気を博したのである。
そしてアルトゥール王子と、婚約者の公爵令嬢エルネスティーネが学園に入学した。
半年ほどは何事もなく過ぎて行ったが、段々と王子へと近づく令嬢が増えてきたのである。
物語に浮かされた様に奇行に走る彼女達を、窘める令嬢もまた多くいた。
幾つもの攻防や、王子を巡る醜い足の引っ張り合いに勝利したのが、ベティーナである。
彼女はまず周囲から篭絡していったのだ。
今王子に侍っている側近達が、その顔ぶれである。
時間をかけてゆっくりと。
でも確実に。
応援してくれる人々を味方につけ、決して隙は見せないように。
ベティーナの事で苦言を呈した側近は、アルトゥールや他の側近達に言いつければ距離を置かれた。
遠ざけられた彼らは、それ以降アルトゥールの傍には戻らず、ベティーナにも何も言わない。
失いたくない男性も居たが、篭絡する事が叶わないのだから仕方ないとベティーナも諦めたのである。
障害が減ったのを良い事に、2年目はもっと大胆にアルトゥールへと近づいた。
時折、エルネスティーネに嫌われているとか、睨まれている、などという告げ口も忘れずに。
その噂は段々と、周囲にも広がった。
さすがに公爵令嬢に対して堂々と文句を言える人間は限られていたが、ひそひそと笑ったり陰口を叩かれている様を見て、ベティーナはうまくいったと確信していたのだ。
欲を言えば孤立させたかったが、流石にそれは難しかった。
彼女の周囲には取り巻きが居て、味方に引き入れることが出来たのはごく一部に過ぎない。
それでも、エルネスティーネから何かを奪えたのは、ベティーナの心を優越で満たした。
けれど。
同時にアルトゥールの元を離れていく者達も増えていた。
特に人気が高かった、軍務卿の息子であるリントナー侯爵令息は惜しい、とベティーナも未だに思う。
藍色の髪に藍色の瞳の美丈夫で、鋭く切れ長の目に筋肉質な身体は、女性達の憧れの的なのだ。
しかも、次男であり剣に身を捧げるという口実で、婚約者はいない。
だからこそ、王妃になった後も彼に護られるという夢を見たかったのである。
身体に触れることを拒否され、侮蔑的な眼で見られ。
しまいにはベティーナを視界に入れた途端に方向転換するまでになってしまった。
とはいえ、見目麗しい男達は他にもいるし、さすがに他の男を振り向かせる事に協力を仰ぐのは難しい。
結局、悔しい思いを堪えてただ見送る事しか出来なかったのである。
そうやって着々と準備を進めた。
本当なら嫉妬したエルネスティーネがベティーナを責めたり、虐めてくれれば話は早かったのだが、彼女はずっと優雅に微笑むだけ。
アルトゥールと昼食を共にしても、その腕に抱きついていても、一顧だにしないのだ。
驚くほどに嫉妬しない。
「普通は政略結婚とはいえ、婚約者が浮気したら嫉妬するわよね?」
友人達とも話題にしたのだが。
返って来た答えは、まあまあ納得のいくものだった。
「悪役令嬢みたいに、断罪を恐れているのよ」
それなら、何をやっても言っても許される、という雰囲気がそこで出来上がった。
通りすがりに嫌味を言ってやったわ、と武勇伝のように語る友人にはにかみながらも礼を言い、持ち上げる。
だが、追い落とすための決定打がない。
アルトゥールに貴方のお嫁さんになりたいなぁなどと甘えて様子を窺ったが、彼は困ったように微笑んだ。
「瑕疵が無い婚約者を無下には出来ないよ」
じゃあ、瑕疵をつくればいいじゃない、とベティーナは決心した。
冤罪でも何でもいい。
目撃者となって、証言をしてくれる友人は沢山いるのだから。
「エルネスティーネ、君がここにいるベティーナ・バーナー嬢を虐めたという噂があるが、それに対しての弁明はあるかい?」
「ベティーナ・バーナー男爵令嬢とは直接挨拶を交わしたことはございませんし、個人的に知り合いでもないので何故その様な噂が立つのか分かりかねます」
言下に見知らぬ人と言われて、ベティーナはむっとした表情を浮かべた。
挨拶を交わさなくても、王子と居る時に何度も顔を合わせているのだから。
「そうか。そろそろ君の本当の姿を見せてくれないか?」
まるで本性は別にあると言っているようで、不謹慎にもベティーナは笑みを浮かべた。
だが、エルネスティーネは静かにはい、と淑女の礼を執る。
「それでは御前を失礼いたしまして、身支度を整えて参ります」
ん?身支度??
誰もが首を傾げるが、側近の令嬢達を伴って、エルネスティーネはそそくさと会場を後にした。
「まさか、逃げたのでは」
そう言ったのはクルトだ。
「どうしましょう。捕まえないと…!」
ベティーナも脅えた様にアルトゥールを見上げる。
大きな瞳に涙を滲ませるのも忘れない。
だが、それを否定したのはカールだ。
「公爵令嬢が逃げ出すなどあり得ない。高位貴族とあろう者がそんな醜態を晒す訳がないだろう」
一刀両断に叩き折る様な強さで言われて、クルトは眉を顰めた。
同じ高位貴族でありながら、逃げるという可能性を真っ先に投じたのは彼だったからだ。
「言い争いは良くないわ。そうね、きっと戻っていらっしゃるわよね!」
争いを収めて健気に微笑むベティーナを、クルトはほっとしたように見つめる。
今日の衣装はクルトが用意した物だ。
本来なら王子から贈られる筈なのだが、アルトゥールはその点では滅法堅かった。
国から支給される公費を私的に流用は出来ない、と断られて泣いているベティーナの為にクルトが用意したのだ。
そんな風に周囲の側近が持ち回りで贈ってきた。
でも今日を越えれば、きっと。
可愛らしく微笑むベティーナを見ていると、会場がざわりとどよめいた。
先程出て行ったエルネスティーネが戻って来たのだろうと顔を上げれば、まるで別人の様な令嬢が、そこにいた。
波打つ白金の横髪を緩く編んで留め、残りは背に流している。
吊り上がっていた筈の目は、やや垂れ気味で可愛らしい。
そう、悪役令嬢という肩書からは程遠いその姿に、クルトはぽかんと口を開けた。
着ていた衣装も薄墨色だったのに、今や金糸を縫い込んだ白くて薄地のふわふわした生地を重ねたもので。
歩くたびにふわりふわりと揺らめくさまは、幻想的ですらある。
「さあ、エスティ、続きを話そうか」
「ええ、殿下。お待たせをいたしまして」
愛称で呼びかけたアルトゥールに、エルネスティーネはやはり優しく笑み返す。
僅かに王子に身体を向けて一礼を、会場に僅かに身体を向けて一礼を。
そして元の位置に立ったエルネスティーネは衣装に合わせた白い扇で口元を覆ってから少し笑った。
「この姿では悪役令嬢とはいきませんものね」
「そうだね。では改めて聞く。君は誰かに嫌がらせを行った事は?」
くすりと笑みを浮かべて、再度アルトゥールは問いかけた。
にこりと穏やかな笑顔に戻ったエルネスティーネが、扇を身体の前で持ち、背筋を伸ばして答える。
「いいえ、寧ろ、嫌がらせを受けていたのはわたくしの方でございます」
ざわ、と再び会場が揺れた。
まさか、公爵令嬢が嫌がらせを受けるなんて、とひそひそと囁きが広がっていくが、心当たりのある者は顔色を無くしてガタガタと震え始める。
何も言われなかったから、大丈夫だと勝手に思い込んでいたのだ。
「誹謗中傷に暴言、中には直接危害を加えようとした者も。全て王宮から派兵された護衛騎士と護衛兵士によって阻まれておりますし、王宮侍女が全てを記録してございます」
危害、と聞いて、流石に壇上に並んだ側近達も蒼白になる。
お互いを見合わせるが、そんな大それたことを仕組んだことは無い。
ベティーナも、知らないわ…と呟いている。
彼らが稚拙にも企んだのは、冤罪だった。
しかも何の証拠もなく、証人といっても低位貴族や平民の生徒。
とても王宮から貸し与えられた侍女や護衛より信用に足るとは言えない。
「間違いないか」
直接危害をと聞いてから、やや怒りを孕んだ瞳になったアルトゥールが問いかける。
エルネスティーネは優雅に一礼した。
「はい、殿下。公爵家の侍女二名に、今後仕えてくれる予定の男爵令嬢三名も常に傍に居りまして、言動と人物の記録に違いがないか確認もしております。また、危害を加えようとした者達はすべて捕縛し、誰の差し金かも判明しております」
「君に怪我がなくて何よりだ。……さて、君達も何か私に伝えたい事があると言っていたようだが?」
アルトゥールは背後を振り返る。
蒼白になった側近と、可愛がられていた筈のベティーナ。
誰ともなく顔を見合わせて、クルトが絞り出すように言った。
「勘違いで、ございました……」
「あ、……そ、そうなの。行き違いと言うか……ねっ?」
ベティーナも追随するように頷き、他の令息も慌てて頷く。
だが、ふっと笑みの形に唇を象ったアルトゥールが逃げ道を塞いだ。
「確かに、あの程度の冤罪で私を惑わせられると思うのは勘違い、ではあるが。公爵令嬢に冤罪をかけようと画策したこと自体が見過ごせない悪事だ。違うか?」
アルトゥールの冷たい目で射抜かれて、令息達は何も返す言葉が無かった。
いつから、どこから間違えた?とそればかり。
「一人の令嬢に篭絡された上、主君を窘める事すら出来ないお前達を側に仕えさせる事は出来ない。暗愚な傀儡にしようと野心を持っていたのなら猶更だ」
意味深に酷薄な笑みを見せたアルトゥールを守るようにカールが間に入って背に庇う。
それは、明確に立ち位置がどちらかを示していた。
自棄になって危害を加えてくる可能性を考えての行動である。
「カール、君には負担をかけたな」
「いいえ。殿下と公女の御心労に比べれば」
護衛として勤めて来たカールは短く返答する。
ベティーナはそれを呆然と見ていた。
「壇上から降りろ。貴様達には訊くことがある。……逃げようなどとは思うなよ」
最後の言葉はクルトに向けて。
覇気のあるカールの声に、びくりと肩を弾ませた一同は静かに壇上を降りた。
いつの間にか二階席の帷幕が開けられ、そこには学生達の親……ほぼすべての貴族が揃っている。
完全に明暗が分けられたその席の配置を見て、全てが計画された事だと改めて知り、安堵するものと戦慄するものに生徒達もまた分けられた。
王族の傍にいるのは、婚約者であるエルネスティーネを世に送り出したリリエンタール公爵と軍神と言われるリントナー侯爵を始め、王子に苦言を呈して遠ざけられた筈の家門の当主である。
またリリエンタール公爵家の寄子であり、忠誠心を持ち続け支えた貴族家。
一番遠ざけられたのは、バーナー男爵を始めとして、積極的にリリエンタール公爵令嬢を貶めたり、面白おかしく囃し立てていた低位貴族達。
ベティーナに篭絡された息子達を持つ貴族達が蒼白な顔で、若しくは苦虫を嚙み潰したように並んでいる。
その両者の間には、成り行きを見守りつつ、どちらにも付かず距離を置いた貴族達が座していた。
彼らも彼らで、断罪されなかった事を喜ぶべきか、取り入る事が出来なかった事を悔しがるべきかと困惑した雰囲気が流れている。
パン、パンと殊更ゆっくりとした拍手を送った国王が立ち上がる。
「卒業の前に演し物を見て欲しいと言われた時は驚きもしたが、中々どうして興味深いものを見せて貰ったぞ」
「お褒めに与り恐縮でございます」
息子であるアルトゥールは、父に向けて紳士の礼を執る。
そして、婚約者であるエルネスティーネの元へと降り立ち、彼女の手を引いて、また壇上へと戻った。
「保護者の皆様方に置かれても、温かく見守って下さり感謝する。拙い演し物ではあるが、楽しんでいただけただろうか」
どの二階席にもきっちりと騎士達が付いており、逃げ出す事は適わない。
これから更なる罪が暴かれるのだが、それはもう大人達の領分である。
「ああ、そうだ。言い忘れていた事がもう一つある。此度の学園生活にて婚約者を蔑ろにしていた者達がいるのだが、調査の上で解消や破棄を望む家門からの申し出は、国王陛下によって承認されている。追って連絡があると思うので対応を願う」
その言葉に口を間抜けにも開けて自分の婚約者を見た者達がいる。
主に、側近を追われた男爵令嬢の取り巻きに成り下がっていた令息達だ。
ある者は婚約者に視線を外され、ある者は微笑まれ。
両親に視線を上げれば、冷たく見下ろされたり、憤怒の表情を向けられたりと各々家に戻ってからも一波乱ありそうな様子である。
「先ほどわたくしが殿下に申し上げました通り」
凛とした声でエルネスティーネは切り出して、傍らにいるアルトゥールを見上げて微笑んでから、会場に顔を向け直して続ける。
「貴方がたは我々と共に国を率いてゆく事になります。寄家寄子の信頼関係もさる事ながら、新たに優秀かつ公平な人物を側に寄せたいと考えておりましたの。噂に惑わされず、真実を見極め、己の身を弁える。貴族としての矜持と、王家への忠誠心があれば、不遇に扱われる事は無いでしょう。
わたくしと王子殿下は正しき者が罰されたり、悪辣なる人物が罪なき者を陥れることをよしといたしません。ご心配をおかけした皆様には改めて謝罪と感謝を申し上げます」
公爵令嬢と行動を共にしていた人々は、その言葉に臣下の礼を執る。
どちら付かずでいた人々もまた、それに倣った。
残された人々には断罪が……多かれ少なかれ待ち構えている事に呆然とし、ただただ推移を見守る事しか出来ずに立ち尽くしているのみ。
「では、改めて、祝宴を楽しんでくれ」
アルトゥールが清々しい笑顔を浮かべて、エルネスティーネの手を引いて壇上から降りた。
こんな事があって祝宴を楽しめるのはごく一部だろう。
祝宴の始まりには楽しもうとしていた人々ほど、奈落へと落とされたのだ。
何より、まだ数か月学園生活を残しているというのが恐ろしい。
転落した令嬢令息達に待ち受けるのは、婚約の解消か破棄か……。
それだけで果たして済むのか分からないのである。
結果、幾つもの家門が没落と爵位返上、領地接収を余儀なくされた。
罪が軽かった家門は降爵で済んだが、公爵令嬢の加害に至る策謀を行った家門は一族郎党処刑台の露となったのである。
婚約の解消や白紙化や破棄などを経ての、結び直しなども急いで行われた。
学園生活の最後、波乱に満ちたものになった者達もいたが、それも卒業の頃には落ち着き。
王子と王子妃自らが乗り出した選別の後、統治において波乱を招くことは一切無かったのである。
予行演習をすると言ったけど、断罪しないとは言ってない。
仕事の合間に書いてた短編をちょこちょこ上げる予定です。
何だか真実の愛についての話が多いのでシリーズ化するかもしれません。
長編の方もがんばります!
皆様のレシピのおかげで腹ペコひよこに戻りました。
ごはんが!美味しい!
でも白米高いですよね。最近鮭のホイル焼き(バター醤油)にはまってます。