18話 部屋での楽しいひと時
テーブルにはさらに新鮮な野菜スープと、じぃーじが手作りしたふっくらとしたパンが並び、それぞれから湯気が立ち上っていた。その温かな食卓の光景は、一日の疲れを忘れさせるほど豊かで賑やかだった。
食事の時間が始まると、じぃーじが満面の笑みで声を上げた。
「よし、今日の料理は最高じゃぞ! さあ、みんなで遠慮なく食べるとしようかの。」
「うん! おいしそうだよぅー♪」
レティアが嬉しそうに手を合わせると、それにつられてルーシーも小さな声で一緒に「いただきます」と呟いた。
一口食べた瞬間、レティアの目が輝いた。
「わぁ……ばぁーば、じぃーじ! すっごく美味しいよぅ! ルーシーが獲った鳥がこんなに美味しくなるなんて感動だねぇ♪」
ばぁーばはその声に微笑みながら答えた。
「ふふ、レティーがこうしてお友達を連れてきてくれたから、頑張り甲斐があったよ。ルシアスちゃん、素敵な鳥をありがとうねぇ。」
「そ、そんな……わたしは、ただ狩りをしただけで……。」
ルーシーは少し顔を赤くして視線を逸らすが、その頬には笑みが浮かんでいた。
じぃーじがその様子を見て声を上げる。
「ルシアスさん、謙遜することはないんじゃぞ。この鳥のおかげで、こんなに美味しい夕食になったんだからのぅ。」
「……まあ、そう言われると少し嬉しいかも……。」
ルーシーは照れながらも、やや誇らしげな表情を見せた。その笑顔を見たレティアは、少し悪戯っぽく笑って肩を寄せた。
「ほらね、ルーシーってやっぱりすごいんだよぅ!」
「レティー、恥ずかしいでしょっ!」
ルーシーは少し慌てて返しながらも、笑顔がこぼれていた。
「えへへ。あ、明日ルーシーと野営をしてもいいっ? 冒険者のお勉強したーい♪」テーブルへ身を乗り出し、ばぁーばとじぃーじを交互に見つめて言った。
「裏の森なんだろ? まあ……良いんじゃないのかね。大して強い魔物も出ないと聞いているしね。」ばぁーばが言うと、じぃーじが「それも今後に必要な経験じゃからな。気をつけるんじゃぞ。ルシアスさん、面倒を見てやってくれな。」
「は、はい。逆に面倒を見られそうな気がしますけれども……」ルーシーが苦笑いを浮かべて返事をした。
「わぁーいっ♪ 野営たのしみだねぇ〜」目を輝かせながら楽しみそうに声を上げた。
そんな温かい会話が交わされる中、食卓には穏やかな空気が広がり、楽しそうな笑い声が響いていた。4人で囲む食事は、まるで特別な時間のように感じられ、心もお腹も満たされていく。
夕食を終えた後、レティアとルーシーはレティアの部屋に戻ると、クローゼットを開けた。そこから取り出されたのは、可愛らしいネグリジェのパジャマだった。一枚は薄ピンク色で、柔らかな生地に小さな花模様が散りばめられており、見るだけで心が和むようなデザイン。
もう一枚は薄青色で、爽やかな印象を与える半袖のデザイン。どちらもふんわりとしたシルエットで、着る人を優しく包み込むような雰囲気を持っていた。
「ルーシーは、青色のでいいかなぁ?」レティアが首を可愛く傾けながら、微笑みを浮かべて尋ねた。
その仕草に、ルーシーは一瞬言葉を失い、顔を少し赤らめながら「べ、別にどっちでもいいけど……まあ、青でも悪くないわね」とツンとした態度で答えた。
しかし、手渡された薄青色のネグリジェをそっと触れると、その柔らかさと可愛らしさに思わず口元がほころび、目を輝かせた。
「それ、似合うと思うよっ! ルーシー絶対かわいー♪」レティアが嬉しそうに声を弾ませると、ルーシーは照れくさそうに「そ、そんなこと言われてもね……こんな可愛いの初めて着るし、わたしには可愛すぎでしょ。」と視線を逸らしながらも、心の中では嬉しさが溢れているのを感じた。
革の防具や服を脱ぐと隠れていたルーシーの女の子らしい体つきがあらわれた。驚いたレティアがジッと見つめていた視線をルーシーが感じた。
「……そんなに見つめないでよね。恥ずかしいじゃないの!」部屋の隅っこで着替えをするルーシーが顔を赤くしながら着替えていた。
「えぇ……だって、うらやましーんだもんっ!」頰をぷくーと膨らませたレティアが言った。
「あんただって、そのうち大きくなるでしょ。レティーの方が可愛らしいし……」恥ずかしそうにルーシーがつぶやき顔を逸らした。
二人がパジャマに着替えると、部屋の雰囲気が一気に和やかになった。レティアは薄ピンク色のネグリジェを着て、まるで可愛いお姫様のように輝いていた。一方、ルーシーは薄青色のネグリジェを身にまとい、ツンとした態度の中にも普段の雰囲気とは違い、どこか柔らかさが感じられ女の子としての可愛らしい魅力のある姿に変わっていた。
「やっぱり、ルーシーの青色、すごく似合ってるねっ♪」レティアが目を輝かせながら言うと、ルーシーは「そ、そう? まあ、悪くないかも……」と少し照れながらも満足そうに微笑んだ。
二人はその後、パジャマ姿で楽しくおしゃべりをしながら、笑い声が絶えない夜を過ごした。部屋には、二人の幸せそうな空気が満ち溢れていた。
ベッドに嬉しそうな顔をした二人並んで座っている。レティアがふと思いついたように提案した。
「ねぇ、怖い話しよー! 楽しそうだよぅ♪」
ルーシーは提案に驚いたように顔をしかめる。
「えっ……怖い話なんて嫌よ! 夜寝られなくなるじゃないの。」
「えー! ルーシーお姉ちゃんって怖がりさんなのぉ……?」
レティアは悪戯っぽく笑いながら顔を覗き込む。その無邪気な様子に、ルーシーはため息をつきながらも少し笑みを浮かべる。
「……仕方ないわね。でも、本当に怖くない話よ! 聞いても知らないわよ!?」
ルーシーは口調を強めながらも、どこかワクワクした気持ちが伝わってきた。
部屋の灯りが薄暗く調整され、ほんのり揺れるランプの明かりだけが残される。ルーシーがゆっくり話し始めた。
「昔ね、この森で迷った冒険者がいたの。夜も更けて帰るのを諦めて野営をすることにしたの。そのとき……真っ暗な森の中で、その冒険者は誰かが彼を呼ぶ声を聞いたの……。」
「うわぁ、え? 続き続きぃー!」
レティアは目を輝かせて身を乗り出す。
「でも、誰もいないはずなのに、声はどんどん近づいてきて……。気づいたら、彼の肩に……冷たい手が置かれていたんだって。」
ルーシーは言葉を切り、じっとレティアを見つめる。その瞬間、小さな物音が窓の外で鳴り響いた。
「キャッ……! ちょ、ちょっと! 何の音なの!? レティー!!」
ルーシーは一瞬声を上げてレティアにしがみつく。その様子を見たレティアは、少し笑いながら答える。
「ふふ、たぶん小動物さんだよぅ♪ ルーシーってやっぱり怖がりさんだねー。」
「もう、いいわよ! 怖い話なんてするんじゃなかった!」
ルーシーは拗ねたように答えながらも、頬を少し赤く染めていた。
その後も二人は、軽く冗談を交えながら怖い話タイムを楽しむ。ルーシーの怖がりながらも一生懸命話す姿に、レティアはますます笑顔を浮かべていた。そして話が終わる頃には、二人の部屋にはすっかり穏やかな雰囲気が戻っていた。
夜も更け、部屋の明かりが控えめに灯る中、レティアとルーシーはベッドに並んで座り、穏やかな会話を続けていた。二人が笑い合う声が響く中、不意に窓の外で小さな物音が鳴り響く。
「……ねぇ、レティー。今、またなんか聞こえなかった?」
ルーシーが眉をひそめながら窓の方に目を向ける。先ほどの怖い話のこともあり、その声にはほんの少しの緊張が滲んでいた。