17話 おともだちのお泊り
「レティアが、お友達を連れてくるのは初めてじゃないのかい?」
じぃーじが、優しい笑顔を浮かべながら問いかけた。その言葉にレティアは、満面の笑みで答える。
「うん。はじめてだねぇー♪ だって、みんな怖がっちゃってるんだもーんっ。」
レティアはかつての友達とのことを思い返していた。遊びはするけれど、感情を感じ取る力のせいで、相手の怖がる心が伝わってきてしまう。その結果、レティア自身も壁を作り、心の距離が縮まらなかったのだ。
でも、ルーシーは違った。表情はムスッとしていて口調が強くても、彼女から伝わってくる感情は恐れではなく、レティアへの好意だった。そのため、レティアも安心して甘えたり頼ったりすることができた。
「そうよね……レティーは、ハチャメチャ過ぎるものね……驚かされてばかりだったわね。あはは……。」
ルーシーは少し照れながら笑い、これまでの出来事を思い返して苦笑いを浮かべる。
その時、何かを思い出したようにルーシーは顔を上げ、持っていた獲物をじぃーじとばぁーばに差し出した。
「あ、あのぅ……これ、お土産です……良かったら食べてください。」
緊張した表情でしどろもどろに話す彼女に、レティアはすかさず声を添えた。
「あ、それねー。ルーシーが頑張って獲ってくれたんだよぅ♪」
「……レティー、うるさいわよっ。」
ルーシーは慌ててレティアを見つめ、恥ずかしそうに言う。
「だーって、ホントじゃーん♪」
レティアがからかうように返すと、ルーシーは顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「恥ずかしいじゃないのっ。ううぅぅ……。」
その様子を微笑ましく見守っていたばぁーばが、柔らかな声で言った。
「さっそく調理をして、夕食に食べるかねぇ。じいさんも手伝っておくれ。ルシアスちゃんは好きな部屋を使っておくれ。」
そう言うと、ばぁーばはじぃーじを連れて調理の準備のために外へ向かっていった。ルーシーの表情には、少しホッとしたような安堵と、どこか温かな気持ちが滲んでいるようだった。
「わたし、あんたと同じ部屋でいいわよ。」
ルーシーは恥ずかしそうに顔を逸らしながら呟いた。その声には照れ隠しの強さが混じっていたが、どこか嬉しさと優しさも感じられる。
「レティーは寂しがりやっぽいし……一緒にいてあげてもいいわよっ。」
「うん。一緒に寝よー♪ わたしのお部屋、こっちー。」
レティアは嬉しそうにルーシーの手を引っ張りながら部屋へ案内した。その無邪気な笑顔に、ルーシーは少し戸惑いながらもついていく。
「……わ、わたしも……人の家に誘われたの……初めてよ。誘ったこともないけどね……。」
手を引かれながら、ルーシーは小さな声で呟いた。その言葉に、レティアは目を輝かせて答える。
「そーなんだぁ……いっしょだね! お互い初めてのお友達だったんだね♪」
「そういう事になるわね……。」
ルーシーはレティアの顔をちらちらと見ながら、顔を赤く染めていた。
レティアの部屋は、女の子らしい可愛らしい空間だった。壁には動物の絵が貼られ、手掘りの動物の置物が並んでいる。その温かみのある雰囲気に、ルーシーは少し安心した様子を見せた。
二人はベッドに並んで座り、話を始める。
「あとで、野営の話してもいーい? きょかを取れば良いんでしょー?」
レティアが楽しそうに尋ねると、ルーシーは面倒そうに答えた。
「まだ覚えていたの?」
その言葉とは裏腹に、彼女の心にはワクワクした感情が伝わってきて、レティアはつい寄りかかってしまう。
「たのしみだねぇ〜♪」
レティアは嬉しそうに声を弾ませた。
「ま、まあ……そうね。許可を取れるかしらね……? 女の子が二人だけの野営だし……普通は許可してくれないと思うけれど、まあ……レティーだし。」
ルーシーは先ほどの出来事を思い出し、苦笑いを浮かべながら言った。
「むぅ。わたしだからって……なによぅ……。」
レティアは頬をぷくーっと膨らませ、不満そうに言った。
「あんたねぇ……狼のこととか、魔法のこと忘れたのかしら? あれ、普通じゃないからっ。」
ルーシーは改めて指摘すると、レティアは少し俯きながら暗い顔で答えた。
「だってぇ……できちゃうんだから、仕方ないじゃーん。便利だしぃ……。」
その様子に、ルーシーは慌てたように声をかけた。
「あ、えっと……その……責めてるわけじゃないし、便利なら良いんじゃないの。わたしも……助かるわけだし。」
その言葉に、レティアは少し顔を上げ、安心したような表情を浮かべた。二人の間には、少しずつ信頼と友情が深まっていく温かい空気が流れていた。
ばぁーばとじぃーじが手際よく調理した鳥料理は、食卓に並べられた瞬間、全員の視線を集めた。焼き上がった鳥肉は、外はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がっており、湯気と共に食欲をそそる芳醇な香りが漂っていた。表面にはじぃーじ特製のハーブミックスがまぶされており、一口ごとに程よい塩味とハーブの香りが広がる。彩りとして添えられたばぁーば自慢の野菜も、丁寧に焼き目がつけられ、自然の甘みが引き立つよう工夫されている。