表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/38

17話 おともだちのお泊り

「レティアが、お友達を連れてくるのは初めてじゃないのかい?」

 じぃーじが、優しい笑顔を浮かべながら問いかけた。その言葉にレティアは、満面の笑みで答える。

「うん。はじめてだねぇー♪ だって、みんな怖がっちゃってるんだもーんっ。」


 レティアはかつての友達とのことを思い返していた。遊びはするけれど、感情を感じ取る力のせいで、相手の怖がる心が伝わってきてしまう。その結果、レティア自身も壁を作り、心の距離が縮まらなかったのだ。


 でも、ルーシーは違った。表情はムスッとしていて口調が強くても、彼女から伝わってくる感情は恐れではなく、レティアへの好意だった。そのため、レティアも安心して甘えたり頼ったりすることができた。


「そうよね……レティーは、ハチャメチャ過ぎるものね……驚かされてばかりだったわね。あはは……。」

 ルーシーは少し照れながら笑い、これまでの出来事を思い返して苦笑いを浮かべる。


 その時、何かを思い出したようにルーシーは顔を上げ、持っていた獲物をじぃーじとばぁーばに差し出した。

「あ、あのぅ……これ、お土産です……良かったら食べてください。」

 緊張した表情でしどろもどろに話す彼女に、レティアはすかさず声を添えた。

「あ、それねー。ルーシーが頑張って獲ってくれたんだよぅ♪」


「……レティー、うるさいわよっ。」

 ルーシーは慌ててレティアを見つめ、恥ずかしそうに言う。


「だーって、ホントじゃーん♪」

 レティアがからかうように返すと、ルーシーは顔を赤くしながらそっぽを向いた。

「恥ずかしいじゃないのっ。ううぅぅ……。」


 その様子を微笑ましく見守っていたばぁーばが、柔らかな声で言った。

「さっそく調理をして、夕食に食べるかねぇ。じいさんも手伝っておくれ。ルシアスちゃんは好きな部屋を使っておくれ。」


 そう言うと、ばぁーばはじぃーじを連れて調理の準備のために外へ向かっていった。ルーシーの表情には、少しホッとしたような安堵と、どこか温かな気持ちが滲んでいるようだった。


「わたし、あんたと同じ部屋でいいわよ。」

 ルーシーは恥ずかしそうに顔を逸らしながら呟いた。その声には照れ隠しの強さが混じっていたが、どこか嬉しさと優しさも感じられる。

「レティーは寂しがりやっぽいし……一緒にいてあげてもいいわよっ。」


「うん。一緒に寝よー♪ わたしのお部屋、こっちー。」

 レティアは嬉しそうにルーシーの手を引っ張りながら部屋へ案内した。その無邪気な笑顔に、ルーシーは少し戸惑いながらもついていく。


「……わ、わたしも……人の家に誘われたの……初めてよ。誘ったこともないけどね……。」

 手を引かれながら、ルーシーは小さな声で呟いた。その言葉に、レティアは目を輝かせて答える。

「そーなんだぁ……いっしょだね! お互い初めてのお友達だったんだね♪」


「そういう事になるわね……。」

 ルーシーはレティアの顔をちらちらと見ながら、顔を赤く染めていた。


 レティアの部屋は、女の子らしい可愛らしい空間だった。壁には動物の絵が貼られ、手掘りの動物の置物が並んでいる。その温かみのある雰囲気に、ルーシーは少し安心した様子を見せた。


 二人はベッドに並んで座り、話を始める。

「あとで、野営の話してもいーい? きょかを取れば良いんでしょー?」

 レティアが楽しそうに尋ねると、ルーシーは面倒そうに答えた。

「まだ覚えていたの?」

 その言葉とは裏腹に、彼女の心にはワクワクした感情が伝わってきて、レティアはつい寄りかかってしまう。


「たのしみだねぇ〜♪」

 レティアは嬉しそうに声を弾ませた。


「ま、まあ……そうね。許可を取れるかしらね……? 女の子が二人だけの野営だし……普通は許可してくれないと思うけれど、まあ……レティーだし。」

 ルーシーは先ほどの出来事を思い出し、苦笑いを浮かべながら言った。


「むぅ。わたしだからって……なによぅ……。」

 レティアは頬をぷくーっと膨らませ、不満そうに言った。


「あんたねぇ……狼のこととか、魔法のこと忘れたのかしら? あれ、普通じゃないからっ。」

 ルーシーは改めて指摘すると、レティアは少し俯きながら暗い顔で答えた。

「だってぇ……できちゃうんだから、仕方ないじゃーん。便利だしぃ……。」


 その様子に、ルーシーは慌てたように声をかけた。

「あ、えっと……その……責めてるわけじゃないし、便利なら良いんじゃないの。わたしも……助かるわけだし。」


 その言葉に、レティアは少し顔を上げ、安心したような表情を浮かべた。二人の間には、少しずつ信頼と友情が深まっていく温かい空気が流れていた。


 ばぁーばとじぃーじが手際よく調理した鳥料理は、食卓に並べられた瞬間、全員の視線を集めた。焼き上がった鳥肉は、外はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がっており、湯気と共に食欲をそそる芳醇な香りが漂っていた。表面にはじぃーじ特製のハーブミックスがまぶされており、一口ごとに程よい塩味とハーブの香りが広がる。彩りとして添えられたばぁーば自慢の野菜も、丁寧に焼き目がつけられ、自然の甘みが引き立つよう工夫されている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ