表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/60

第7話:消えゆく未来馬たちと、血統の選定

アオノクラウンが未勝利を勝ち上がった翌日。

蓮は小さな下宿の机に向かっていた。


ちゃぶ台の上には、新聞、出馬表、血統表、そしてノート。

横には、いつも通り《血統チート図鑑》が起動されている。


けれど、昨日までとは違う。

図鑑に表示される“馬の未来”に、いくつものグレーアウトされた表示が増えていた。


■ナスノブレイブ

【非アクティブ】1980年 菊花賞出走 → データ未確定

【警告】現在時点で消失する可能性:中


■ミスエメラルド

【非アクティブ】未出走のまま繁殖入り → データ不安定


「……マジかよ……」


ページをめくるたびに、未来の名もなき馬たちの“運命の消失”が増えていく。

彼らはまだ走ってもいない。

それどころか、まだこの世に生まれてすらいない馬すら含まれていた。


けれど図鑑は確かに示している――未来は変わり始めていると。


「俺が、ここにいるから……だよな」


一度的中した馬券。

あの時、誰かが本来得るはずだった賞金。

アオノクラウンが勝ち上がったことすら、本来とは違う“歴史”になっている。


“ほんの少しの介入”が、馬の未来を確実に変えていた。



蓮は図鑑を閉じ、しばらく天井を見つめた。


(もし俺のせいで、ディープインパクトが生まれなくなったら……

 もし俺の行動で、ノーザンダンサーの血が断たれたら……)


未来を知っているからこそ怖い。

自分の選択が、競馬の歴史を塗り替えてしまう可能性がある。


けれど――


(……逆も、ある)


アオノクラウンのような、“本来は消えていたはずの才能”を掘り起こすこともできる。

蓮には、それができる。


「なら――選ぶしかない。何を残して、何を救うか」


図鑑に映る無数の名前。

そこには、史実の馬だけじゃなく、条件戦でひっそりと消えていった“可能性のある馬たち”も含まれていた。


そして、その中でひとつ――蓮の目が止まる。



【注目登録】

■カゲツスワロー(牝馬)

父:サウンドトラック × 母父:ヒンドスタン

血統評価:因子濃度高

特記事項:繁殖適性◎/気性安定


【成長後】繁殖牝馬 → 黄金配合4本持ち

【特性】牝系強化ルート:分岐起点馬


「……これだ」


それは、競走馬として目立った戦績を残さないまま、繁殖に上がった馬。

けれど《血統チート図鑑》は、その馬を“血の起点”として評価していた。


黄金配合。因子継承。牝系強化。

どれも、後々の配合戦略において欠かせない要素だった。


「いつか自分で持つべき“系統”を、今から決める――」


地図を描くように、ノートに血統図を引いていく。


カゲツスワローから枝分かれする4世代先には、**“初の自家生産三冠候補”**のデータすらグレー表示で浮かび上がる。


(これも……今、俺が拾わなければ、消える)


今まで馬を見るのは“馬券のため”だった。

でも、今は違う。


これは――未来を選ぶ行為だった。



その夜。

蓮はノートの端に、こう書き込んでいた。


「アオノクラウンは、まだ手に入らない。

でも、カゲツスワローの仔なら、自分で育てられる可能性がある。

ここから俺の“血”を始める」


最初の分岐を選んだ瞬間だった。


競馬ってロマンの血統スポーツよね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ