第1話:最後の馬券、最初の血統スキル
――2025年、東京競馬場。
「……最後の一枚、これで決める」
財布の中には、千円札が一枚だけ。
水島 蓮、42歳。独身。趣味は競馬。人生は……まあまあ詰んでる。
仕事は中堅のIT企業で平凡なSE。年収は550万、貯金は50万ちょっと。投資はうまくいかず、競馬の収支もプラマイゼロ程度。それでも馬を見る目だけは自信があった。
「これが当たれば……今月もなんとかなる」
笑いながら買った馬連一点。選んだのは、追い込み一閃の差し馬と、前残り狙いの先行馬。
展開読み、調教、血統、すべてを踏まえた、蓮なりの“理詰めの一点”。
彼にとって競馬は、賭けではなく、愛とロマンの塊だった。
レースが始まる。観客の声が高鳴る。モニターに目を凝らす――
その時だった。
「おい……あれ、見たか?」
「やべっ、急げ、誰か来るぞ」
蓮は、コース裏の立ち入り禁止区域で、異様な光景を目撃してしまう。
数人の男たちが、何やら注射器のようなものを馬に打ち込んでいたのだ。
「……おい、なにしてんだよ、それ」
咄嗟に声を出してしまったのは、正義感なのか、それとも好奇心か。
しかし、次の瞬間――男の一人と目が合った。
「見られたぞ、やれッ!」
「は、は?」
逃げようとした時にはもう遅かった。
後ろから何かで殴られ、視界が暗転していく――。
30話あたりから内容濃くし始めました。
小説不慣れですが暖かく見守ってください。
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