第18話:未来の種を、この手で掴め。知られざる良血馬の反逆
1976年(昭和51年)5月15日(土)
東京競馬場は、今日も多くのファンで賑わっていた。
【現在のクエスト】
● JRA馬主資格を5年以内に取得せよ(残り:4年11ヶ月と0日)
● 所持金:221,850円(生活費等差引後)
● 今週の馬券予算:60,000円
蓮はいつものように出馬表を広げながら、図鑑の一ページをじっと見つめていた。
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【ヤマトシュネル】
牡3歳・未勝利
父:トピオ(欧州系) 母父:ソロナウェー
【因子:スピード◎/パワー〇/精神△】
【将来構想:黄金配合候補・種牡馬ルート“起点”】
【現在評価:脚部不安から大幅人気下落中】
(……間違いない。こいつが“未来の起点”になり得る)
父トピオは欧州血統の異端児。スピードと底力を併せ持つが、
日本では繁殖実績が乏しく、後継候補が少ない。
その血を受け継ぎながらも、ヤマトシュネルはデビュー2戦とも凡走。
脚部不安と調教不安が重なり、すでに“見限られた存在”として扱われていた。
(でも、図鑑は言ってる――“今走が鍵”だと)
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東京第4R・芝1600m(未勝利)
馬場状態は良。風も弱く、絶好の差し馬日和。
蓮は、覚悟を決めて馬券を打ち込んだ。
● 単勝 10,000円 (ヤマトシュネル)
● 馬連 30,000円(ヤマトシュネル → 相手4頭 各7,500円)
● ワイド 20,000円(ヤマトシュネル → 相手3頭 各6,666円)
総投資:60,000円
残資金:161,850円
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パドックで見たヤマトシュネルは――決して良く見えなかった。
毛ヅヤはやや鈍く、歩様にも若干の不安がある。
だが、その目には、妙な“気迫”が宿っていた。
(今日は、走る)
根拠のない自信。だが、図鑑が示した“精神:好転兆候”という言葉が、
蓮の背を強く押していた。
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スタートはまずまず。ヤマトシュネルは後方3番手。
だが向こう正面、徐々にポジションを押し上げていく。
3コーナー、やや外に膨れるも、折り合いは悪くない。
そして――直線。
前を行く馬群の外から、グンと脚を伸ばす!
実況も驚きを含んで叫ぶ。
「外から来た! ヤマトシュネル! 完全に見限られていた馬が一気に伸びる!」
蓮は拳を握った。
「……行け!」
残り200m――一気に並び、交わし、突き放す!
1着:ヤマトシュネル(牡3)
タイム:1:35.1(良)/3馬身差圧勝
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単勝:13.1倍 × 10,000円 = 131,000円
馬連(3-9):28.5倍 × 7,500円 = 213,750円
ワイド(3-7):7.4倍 × 6,666円 ≒ 49,328円
ワイド(3-5):8.1倍 × 6,666円 ≒ 54,000円
ワイド(3-11):12.5倍 × 6,666円 ≒ 83,325円
【合計回収】:531,403円
【所持金】:693,253円(差引+471,403円)
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レース後、図鑑が更新される。
【ヤマトシュネル:評価更新】
■未勝利戦勝利→将来の種牡馬候補として“保存”
■トピオ系配合軸として“確定因子化”
■特定牝系と交差することで“スピード×爆発力配合”候補入り
(……繋いだ)
震える手で図鑑を閉じながら、蓮は静かに息を吐いた。
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その日の帰り道、柏木から一通の手紙が届いていた。
中には、手書きの一文と、馬の血統表のコピー。
「“種”は見つけたか?」
短い一文だった。
蓮はにやりと笑い、ペンを取った。
「はい。“掴みました”」
ご都合主義? 当たり前でしょうよ