表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/60

第17話:名もなき牝馬の未勝利戦。そして、因子の継承

1976年(昭和51年)5月9日(日)。

東京競馬場の空は、どこまでも澄みわたっていた。


【現在のクエスト】

● JRA馬主資格を5年以内に取得せよ(残り:4年11ヶ月と2日)

● 所持金:221,850円(前日比+145,000円)

● 今週の馬券使用:0円(観戦のみ)


(勝負の翌日は、静かに“確認”に徹する)


蓮は馬券を握ることなく、スタンドの上段から第5レースを見下ろしていた。


図鑑に表示された――ある一頭の牝馬。

今日、その馬が未勝利戦に出走する。


【マイネフェリシア】

牝3歳・未勝利戦出走予定

父:オンワードヒル 母父:パーソロン

【因子:スタミナ◎/気性難△】

【評価:カゲツスワローとの因子連鎖候補】

【備考:将来配合候補・黄金配合片翼/要勝利・要繁殖入り】


この馬が今日勝てば――未来の“系統確立”に繋がるもう一つの軸が立ち上がる。

だが、それを左右するのは“今”この未勝利戦のみ。


(俺は、何もできない。ただ見届けるだけだ)



パドックに現れたマイネフェリシアは、

前走と違い、落ち着きのある歩様で周回していた。


(体は引き締まってる。目にも力がある。……今日は、やれる)


騎手は若手。だが――


**「ある人物に師事していたことで知られる騎手」**だった。


(昨日の勝ち馬の鞍上といい……偶然にしては多すぎる)


蓮は気づいていた。

少しずつ、“見えない線”が世界の中に浮かび上がりつつあることに。



東京第5R・芝1800m


スタートは五分。マイネフェリシアは内枠を生かして、4番手でレースを進める。


前が作るハイペースにも冷静に対応し、3コーナーからジワジワ進出。


そして――4コーナーから直線へ。


先行馬がばてる中、鞭一発。

フェリシアの脚は、鮮やかに弾けた。


1着:マイネフェリシア(牝3)

タイム:1:47.9(良)/差し切り勝ち



「……やった」


蓮は、スタンドの手すりにそっと手をかけ、目を細める。


それは歓喜ではない。ただ、

「この血が、まだ繋がる可能性を残せた」ことへの、安堵だった。


【血統チート図鑑 更新】

・マイネフェリシア:未勝利勝ち → 繁殖候補昇格

・“黄金配合片翼”因子保存

・将来的配合ルートに追加:カゲツスワロー連鎖


(今は、まだ何もできない。けど……少しずつ、繋がっていく)



レース後、立ち去ろうとした蓮の前に、柏木が現れた。


「……お前、今日は馬券握ってねぇな」


「はい。……今日は、ただ見てただけです」


「その馬、“何か”あるのか?」


「将来、繋がると思ってるんです。

 だから、負けて消えてほしくなかった。……それだけです」


柏木は短く煙を吐いた。


「お前さ、本当に不思議なヤツだよな。馬券師じゃねぇ。調教師でもねぇ。

 ……けど、“馬の未来”を考えて動いてる。そんな奴、滅多にいねぇぞ」


「まだ俺じゃ、何もできないです。

 でも、できるようになる時のために――準備しておきたいんです」


柏木は少しだけ目を細めた。


「……今はまだ“見てる”だけ、ってやつか。

 でもな坊主、そういう目を持つ奴は、強ぇぞ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ