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プロローグ 俺と義姉義妹

昔投稿していた作品を作り直しました(^^)


 4月17日。


 今日は弟の颯太が18歳の誕生日だ。これまでの日本では、男性は18歳、女性は16歳で結婚できた。


 しかし、2022年4月1日からは女性の婚姻開始年齢が引き上げられ、女性も18歳になるまで結婚できなくなった。この変更により、男女ともに結婚可能な年齢が18歳からに統一された。


 また、同日に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、颯太も成人男性の仲間入りを果たした。ただし、弟はまだ高校三年生になったばかりだ。


 俺の名前は柴田駿。どこにでもいる20歳の大学生だ。今日は誕生日と成人祝いで、みんなでパーティをする。リビングルームにあるテーブルに、颯太を中心に、俺たち柴田家が囲む。


 うちの家族はお祝い事が大好きだ。本来であれば、おじいちゃんやおばあちゃんも来る予定だったのだが、急な用事ができてしまい、来れなくなったらしい。


 すると、お母さんが颯太に向けて歓声をあげる。


「そうちゃん、お誕生日&成人本当におめでとう!

成人して大人の仲間入りだね。急なことで戸惑うかもしれないけど、あと一年の高校生活を楽しんでね。ママはパパの次にそうちゃんを応援してるよ」


「いや、そこは一番に応援してやれよ!」


 と、思わずツッコミを入れてしまった。すると、親父が手を振ってチアダンスをしながら言葉を発する。


「もう! まみちゃんったらぁ! まこくんもまみちゃんの事を応援しているぞぉ! がんばれ! まみちゃん! フレー! フレー! マーマ!」


「もう! パパったらぁ! 子どもたちの前で恥ずかしいわぁ!」


 この夫婦はいつもこんな感じ。周りの事が見えないほどに自分たちの世界に入り込む。


 茶色がかった髪を角刈りにし、四角いメガネをかけた中年男性が、俺の父親のまことだ。

 彼はトラック運転手をしており、日焼けの跡が目立っている。運転の疲れが溜まっていることはわかるが、家族の前ではそんな姿を見せたことがない。


 お母さんのことが好きなのは構わないが、いつもこのような光景を見せられると、息子の俺からしたらもううんざりだ。


 黒髪でくびれたロングヘアの女性が、お母さんの真実まみだ。スーパーのフレックスとして働いている。よく『駿のお母さんはしっかりしてる』とか言われるのだが、実際はそう見えるだけで、実はかなり抜けている。


 続いて、父親が真面目なトーンで颯太に話しかけた。


「颯太よ。今日からお前は成人となり、立派な大人になった。この意味が分かるか?」


 その言葉に、颯太は人差し指を額に当て、謎のポーズを取りながら口を開いた。


「あぁ、ボス。分かっている。俺が成人したことで、敵組織『アンノウン・クリエイターズ』の攻撃が激化するだろう。ボスが言いたいのは、大切な家族を守れってことだよな?」


「ふっ。よくわかってるじゃないか。さすがは、俺の息子……いや、『ジャッジメントマスター』だ」


「なんも分からねーよ! しかもなんで、お前が成人したら、敵組織の攻撃が激しくなるんだよ! お前が成人するまで、手加減してくれてたのか!? 敵組織のやつら優しいなぁ! おいっ!」


 颯太は重度の厨二病だ。爽やかなストレートショートの黒髪。全身真っ黒なコートに、胸ポケットからシルバーチェーンが垂れ下がり、コートから僅かに見える光り輝く銀色のドクロが彼の厨二病を加速させる。


 家では、悪に正義の制裁を与える『ジャッジメントマスター』を。外では光を砕く皇帝、『暗黒皇帝ダークネスカイザー』と名乗っている。

 悪に制裁を加えるジャッジメントマスターという割には、家の中でも基本的に全身真っ黒なのはちょっと変わっているがな。


 すると兄貴は笑いながら口を開いた。


「いいじゃないか。今日の主役は颯太だ。駿もたまには乗ってやれよ」


「恥ずかしいからやだね!」


「駿の中にいる覇王の人格が目覚めるかもしれないぞ」


「目覚めてたまるかっ!」


 そして、お酒を片手にヘラヘラしているのが26歳の兄、雄大だ。ガタイがいいので土木関係の仕事をしていると言われることがあるが、こう見えて実はIT系の大企業の正社員だ。

 白髪でデコだしのショートヘア。普段はコンタクトを使用していて、仕事をする時にはメガネをかけている。趣味はPCゲームと愛猫の『リゲル』のお世話だ。


 リゲルは茶トラの日本猫。とても人懐っこく可愛いんだけど、俺は猫アレルギーであまり可愛がれない。リゲルの名付け親は颯太で、クリスマスの日に、河川敷の橋の下で、捨てられていたリゲルを見つけたらしい。颯太の足をスリスリしてきたのが可愛かったから、拾ってきたみたい。星の名前のリゲルからきているらしい。


 柴田家の家族構成は、親父の誠、お母さんの真実、男三人兄弟の長男・雄大、次男・俺、三男・颯太、そしてペットのリゲルで、5人と1匹の家族だ。


 ボケの数が多すぎて大変だが、そこら辺の目を瞑ればごく普通の家庭だと思う。裏を返せば、明るい家族と言えるだろう。


「そろそろ時間だな。颯太、行くぞ」と兄貴が言った。


「ん? これから出掛けるのか?」と俺が聞くと、兄貴は「ちょっとな」とだけ言い残し、颯太と一緒に出かけていった。


 1時間ほど経つと、駐車場に一台の車が停まる音が聞こえた。兄貴が出かけた後には車のエンジン音は聞こえなかった。よく聞くと、エンジン音も違う気がする。一体、誰の車だろう?


「ただいまー」


 戻ってきた兄貴と颯太の後ろには、見知らぬ2人の女性が立っていた。誰だろうと見ていると、兄貴と颯太は口を揃えて衝撃の発言をした。


「俺、この人と結婚するから」

「僕、この人と結婚するから」


「えぇっ!?」


 と、俺の驚きの声が家中に響いた。って、俺だけ!? なんでみんなそんなに冷静でいられるんだ!? 


 すると、話を聞いたお母さんが椅子から立ち上がり、その女性たちの近くに歩み寄りながら、満面の笑みで言った。


「まぁ! なんて可愛い子たちなのかしら! ようこそ柴田家へ! 私はそうちゃんたちのママでーす!」


 そして、親父も加わって言う。


「父の誠です。家族からは、まこくんって呼ばれてまーす! 優花ちゃんたちもそう呼んでねーん!」


 鼻の下を伸ばす親父が、優花さんたちに飛びつこうとするのを、俺は台襟を掴んで阻止した。そして、こちらに引き寄せて言った。


「呼んでねーよ。それはお母さんだけだろ」


「まあ、パパったらぁ。浮気なのぉ? パパのご飯を抜いちゃおうかしらっ!」


「そ、そんなぁぁ」


 リビングに笑い声が響き渡る。やがて静まり返り、兄貴と一人の女の子を除いた人たちは、椅子やソファーに腰を掛ける。ふぅ、と一息つくと兄貴が言葉を発する。


「俺たちはお互いのことを把握してるし、自己紹介は終わってるから、駿。自己紹介を頼むよ」


 俺は兄貴の指示通りに軽い自己紹介をする。


「次男の駿です。うるさい家族だけど、よろしくお願いします」


 本当はもっと伝えるべき言葉があることは、頭では理解している。しかし、突然の出来事でそのような言葉は俺の口から出てこなかった。



「じゃあ、私が次に自己紹介させてもらいますねぇ」

俺の自己紹介の後、颯太の隣に座っていたお姉さんが小さく手を上げながらそう言った。


「本日より新しく家族になります。優花と申します。仕事はスーパーセントで調香師をしています。急なことで驚かれているかと思いますが、皆さんに家族と認めてもらえるように頑張ります。よろしくお願いしますね」


「え! あのスーパーセントの調香師をやってるの!? すごいわねぇ。今度オリジナルの香水、作ってもらおうかしらっ!」


「ただの平社員ですよぉ。私なんかで良ければお作りしますよぉ」


「まぁ! 楽しみだわぁっ!」


 颯太のお嫁さんになる優花さんは25歳で、語尾を伸ばしてふわふわした喋り方をしている。


スーパーセントは、香水や化粧品メーカーを展開する大手の企業だ。


 服装はとてもオシャレで、クリーム色のボリューム袖に、薔薇のプリントフレアスカートのファッション。ナチュラルメイクで大人のお姉さんを醸し出す。そして、微かな香水の香りが、空気をたどりリビング内を優しく包み込む。


 丸みのある綺麗な茶色の瞳。ウェーブ巻きのセミロングで金髪に近い茶髪で、胸以外は全体的に落ち着いた雰囲気を持つ女性だ。

 身長は、俺が172センチだから、だいたい160センチくらいかな? 理想のお姉さんって感じだ。おまけに一流企業の社員さんで、スペックが高すぎる。


「俺の結婚相手は陽菜ちゃんだ。ちょっと訳ありでな。少し照れ屋なところもあるけど、根はいい子だから、みんな仲良くしてくれると嬉しい」


 陽菜ちゃんと呼ばれた女の子は、兄貴の左肩を盾にして、ヒョコっと顔を覗かせ、細々とした声で言った。


「ひ、陽菜です……。よ、よろしくお願いします……」


 自己紹介が終わると、兄貴は身をかわすと、陽菜ちゃんの全体像が明らかになった。


「ピャアッ!?」


 陽菜ちゃんは恥ずかしさのあまり、そんな可愛い声を出した。


 その姿は青髪のツインテールで、青色のヒラヒラフリルのブラウスを着ており、首元には蝶結びのボリュームのある青色のリボンタイを締めている。また、空色のフリルスカートを穿き、サファイアを連想させるような透き通った瞳を持つ。とても可愛らしい女の子だった。


 手には、手提げ袋などを持っており、透明な袋からは、颯太と同じ高校の制服が見えた。

 若いとは思っていたが、まさか高校生だとは思ってもみなかった。訳ありらしいから何かあるんだろうけど、気になってしまう。


「家族が増えてこんな幸せな事はないわぁ! お料理追加しなきゃ! 今日は盛大に祝うわよぉ!」


「まこくんは真実ちゃんがいてくれるだけで幸せだよーーん!」


「あら、まこくんったらぁ! 私もまこくんがいてくれて幸せよぉーーー!」


 二人の圧に、陽菜ちゃんは兄貴の影に隠れた。

 それを見た俺は二人を引き剥がしながらーー


「夫婦漫才は向こうでやれよ! 困ってるだろ」


 兄貴は陽菜ちゃんの頭を子猫を撫でるかのように優しく触りながら話す。


「はっはっは。そうだな、陽菜ちゃんはこういうの苦手だろうな。まあ、少しずつ慣れていけばいいさ」


「でも、その制服。颯太と同じ高校だろ? 大丈夫なのか? 高校在籍中に結婚して」


「駿が心配するのも分かるが、陽菜ちゃんも色々と事情を抱えてるからな。もちろん、高校を卒業してからと考えてはいたさ。でもその時に丁度、颯太も結婚したいって言ってたから丁度いいかなって」


 兄貴の真っ直ぐな眼差しを見て、俺は安心した。


「そっか。事情があるなら仕方ないし、詳しくは聞かない。ちゃんと陽菜ちゃんのご家族の許可があるならいいんだ」


「その辺はきちんとしてるさ。相談もせず、すまないな」


「お、おぉ……」


 すると突然、パシン! っと肩を叩かれた。振り向くとお母さんが満足した顔をして口を開く。


「もう! 駿ちゃんったらぁ! そんな細かいこと気にしてちゃあダーメ! 二人が良いならそれでいいじゃない!」


 その言葉に親父が続く。


「そうだぞぉ駿。細かい男は嫌われるぞ!」


「細かい、粗いの問題じゃねぇよ! 俺はちゃんとしているんだったらいいんだよ。急な出来事だったからビックリしているだけだ」


 俺は内心焦っている。親父たちは何も知らなかったみたいだけど、当たり前のように受け入れられるものなのか? うちの家族はみんな変わり者だから仕方ないのか。ーーそう割り切るしかなさそうだ。


 颯太も兄貴も、優花さんも陽菜ちゃんも幸せになってくれたらいいんだ。別に結婚を反対しているわけではない。ちゃんと手続きや挨拶を済ませて、相手の両親が納得した上ならいい。

 それに、成人したとはいえ、まだ高校生である颯太に、責任能力があるとは思えない。陽菜ちゃんのご両親は心配にならないのだろうか。優花さんは成人しているだろうから、大丈夫だろうけども。


 一年に一回のいつもの光景になるはずだった颯太の誕生日に、こんなことになるなんて思いもしなかった。嬉しさと心配の気持ちが交わっている。心の整理ができなくて、素直におめでとうという言葉が出てこなかったけど……。


 その日の夕方、兄貴たちは役所に婚姻届を提出した。書類が受理されたことにより、柴田家に2人の家族が増え、俺に可愛い奥手で年下の義姉と、美人で優しそうな年上の義妹ができた。

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