第一回チキチキ乙成お前こんなん好きなんやろ選手権 前編
「第一回チキチキ! 乙成お前こんなん好きなんやろ選手権〜」
滝口さんの口上で、戦いの火蓋が切って落とされた。決戦の場所は駅前のファミレス。夕飯時とあって、学生や家族連れも多い。そんな中、俺とリンは横並びで座らされている。
「滝口さん、なんすかこれ?」
「質問は受け付けないよ〜司会進行はオレ、滝口が務めまーす。今日はゲストにも来て頂きました〜先ずはオレ達の希望の光、アックスボンバーのキレが冴えてる朝霧さん〜」
淡々と司会進行をこなす滝口さん。ここに来てずっと無表情で話す滝口さんは、ある種恐怖を感じた。
「滝口と顔を合わせるのは嫌だったけど、いい物が見れるって聞いてね。それで? 負けた方は切腹ってペナルティだったっけ?」
「そんな訳ないじゃないですか!! 戻って来れなくなる!!」
足を組んでビールを飲む朝霧さんに向かって盛大にツッコんでしまった。こちらも何故か真顔である。なんでこいつらこんなに淡々としてるの?
「えーそんなんつまんないじゃない。負けた方は三文字割腹くらいやんなさいよ」
「現代日本に、そんな武市みたいな奴いたら怖すぎますよ……」
「はーい次のゲスト〜お次はガールズバーの人気キャストまいにゃんとるりたぬきちゃんです〜二人は前田弟の同僚でもあります〜」
「よろ〜」
「ょзι<ぉ原頁レヽιます」(よろしくお願いします)
滝口さんお気に入りのガールズバーの女の子まいにゃんに、バチグロギャルのるりたぬきちゃん。この二人はファミレスの雰囲気が良く似合う。
「は? なんでこんな若い子がいるわけ? 聞いてないんだけど」
若い女の子の登場に、明らかに機嫌が悪くなる朝霧さん。大人の女の人って、若い女の子が嫌いみたいなイメージあるけど、本当にそうなんだ……
「ウケる。滝口、この人なんか睨んでくるんだけど」
「まレヽレニゃω失ネLナニ″ょ!」(まいにゃん失礼だよ!)
「はーいそこ、喧嘩しないでね〜。ちなみに、店外で会うとの事でまいにゃんには一万円渡しました〜これは後で前田から徴収しまーす」
まいにゃんはストローの包みをいじりながら、もう片方の手で一万円札をヒラヒラさせている。……てか、今俺から後で徴収するって言ってたよな? ふざけんなよ滝口。
「えー今回北見部長にも声をかけようか迷ったのですが、本日残業の打診があった際に、オレの親が危篤だと言って定時であがったので連れて来ませんでした〜まぁあのハゲはいてもいなくてもそんな面白くないので、協議の結果、今回の参加を見送る事にしました〜」
マジでどうでもいい情報を入れてくる滝口さん。てか北見部長ずっと出てきてないな……あいつこの物語に一番いらんキャラかも。
「最後に今回の勝負のご褒美、乙成あいりさんでーす。今回勝った方は、乙成とバレンタインにデート出来まーす。デートでどこまでを許してもらえるのかは、後々交渉してくださいね〜」
「よろしくお願いします」
乙成がペコリと頭を下げる。このどう見てもおかしな状況の中で、何故か乙成までも普通に受け入れている。むしろ案外ノリノリ?
「ルールは簡単です。乙成の関する物、事についてクイズを出すので、より多く正解を出した方が勝ちです。早押しクイズなので、手元のボタンを押してね〜」
見ると俺とリンの前に、おもちゃのボタンが置いてある。押すとピンポーンと音の鳴る、パーティグッズとして売られているやつだ。いつの間にこんなのまで用意したんだよ……
「えー早押しとかだるくない? ステゴロで決着つけようよ〜」
「弟くーん、それはそれでとっても魅力的ですが、ここはファミレスなので殴り合いはNGでーす。周りの迷惑も考えてくださいね~これだから近頃の若いもんはって言われちゃいますよ〜」
「てか殴り合いだったら俺に勝ち目ない……」
久しぶりの勝負という言葉に血が上っているのか、リンの目が一瞬あの頃の輝きを取り戻した所で、滝口さんが淡々とそれを制止した。てか、本当にずっと滝口さんはこのキャラでいくのか?
「前フリが長くなりましたが、いよいよスタートでーす! 先ずは第一問!」
デドン!
つ、ついに始まった……俺はボタンに手をかけた状態で、滝口さんの言葉に意識を集中させた。