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アーケードゲームに興ずるゾンビ

「ねね! 次はゲーセン行こうよ! ゲーセン!」


 次の予定を特に決めていなかった俺達は、リンが行きたいと言い出した事もあって、カフェを後にしてゲーセンに向かう事にした。俺のニ歩先を、腕を組んで歩く二人。改めてこの変な組み合わせと不思議な巡り合わせを面白おかしく思っていた。


 改めて見ると凄い身長差だ。身長は俺とさほど変わらない筈のリンだが、今は厚底ブーツを履いているせいでやたらデカく見える。隣にいる乙成が小さいもんだから余計にだ。道行く人も一度は二人を見ているし、やっぱり目立つんだなぁ。


 まぁ俺も、ハロウィンでもないのにゾンビの女の子と、性別不明のデカい人を見かけたら一回は見ちゃうもんな……偏見とかじゃなくて。リンも女の子の恰好はしてるけど、よく見たらちゃんと男だからな。華奢な男って感じ。これが一部の人達の性癖に刺さりまくるんだろうけど。


 そんな事を考えている内にゲーセンに着いた。池袋には何箇所かゲーセンがある様だが、ここもそこそこの規模のゲーセンだ。入り口には大量のクレーンゲームが並んでおり、若者達が夢中になって景品を取ろうと頑張っている。


「まろ様あるかな? リンちゃんは何やりたいの?」


 クレーンゲームの景品の中に蟹麿がないかを確認しながら歩く乙成の横で、リンは目当てのゲームがあるのか、足早でクレーンゲームコーナーを横切ってズンズン進んで行く。


「これ! これがやりたいの!」


 リンが指さした先にあったのは、こういったゲーセンでよく見る、ホラーシューティングゲーム。迫りくるゾンビを倒して進むタイプの物だ。


「リンちゃんってゾンビとか化け物倒す系のゲーム好きだね!」


「だってなんかスカッとすんじゃん! やろやろ!」


 そう言って、リンと乙成は機械に備え付けてある銃を手に取った。


「前田さんはやらないんですか?」


「俺は見てるよ、これ二人プレイ用だし」


 小銭を入れると、おどろおどろしい音楽と共に、ゲームがスタートした。


「キャー!! リンちゃんこのゾンビリアル過ぎるよ!! 怖い!」


「あいりん、ちゃんとリロードしないと! やられちゃうって!」


 二人は大興奮でゲームをプレイしている。ゾンビがゲームの中のゾンビを見て、リアル過ぎるという光景なんて、多分生きてて二度とないだろう。


「うわぁ……ぐちゃぐちゃになってる……やっぱゾンビって気持ち悪いね、リンちゃん……」


 ちょっと前まで自分も顔半分がグッチャグチャになっていた事なんて、すっかり忘れているようだ。


「あいりんも今ゾンビじゃん!」


「で、でもこんなに目玉飛び出たりしてないもん!」

 

 カチカチと音を立てながら軽快に画面の中のゾンビを撃ち倒していく二人。リンは配信をやってるだけあって、やっぱり上手いもんだな。乙成は……まぁまぁな感じだな。


「あ! やりましたよ前田さん! 今ヘッドショット出ました!!!」


「お! すげ」


 ゾンビがゾンビをヘッドショットした。ヘッドショットされた方のゾンビは中ボスくらいのゾンビだった様で、頭が綺麗に吹っ飛んで床に倒れた。そしてヘッドショットした方のゾンビは、ヘッドショットされた方のゾンビを指さしながら嬉しそうに俺に笑いかけてくる。なんていい休日なんだ。


 ******


「楽しかったね! もうちょっとやりたかったけどキッズ達が代わって欲しそうだったからね~」


 一台しかないゾンビゲームは池袋のキッズに人気だった様で、リン達がキャーキャー言いながらやっていたら、いつの間にか物欲しそうな目でこちらを見てくるキッズ達に囲まれてしまった。丁度キリのいいタイミングだった事もあって、俺達はキッズにゾンビの討伐を託して切り上げる事にした。


 広い店内をあてもなくブラブラしていると、ある一台のクレーンゲームの前で乙成が急に立ち止まった。


「あわ……わわわ」


「え?」


 店内の音がうるさいので乙成が何を言っているのかよく分からなかったが、目の前のクレーンゲームの景品を見て、何があったのかすぐに分かった。


 クレーンゲームの中の景品は言わずもがな天網恢恢乙女綺譚のキャラのデカいクッションだった。米俵みたいな円筒状のデフォルメされたキャラ達が寝っ転がったような体勢で積み上げられている。同じキャラを繋げて消すシンプルなアプリゲームのデザインにちょっと似ている。

 当然この中にも蟹麿はいた。しかも割と取りやすそうな位置だ。


「ほ、欲しい……」


「えっまさか乙成これやるの? 結構重そうだし厳しくない?」


「でもまろ様がいるんですよ?! こんな見世物みたいにされて! それにほら、あんな取って欲しそうな顔で見てます!」


 ちょっとよく分からないが、今の乙成には蟹麿がここから救い出してくれと懇願している様に見えているのだろう。乙成は財布からありったけの百円玉を取り出すと、いつになく真剣な面持ちでゲームを開始した。


「待っててください、まろ様! 私が救い出してみせます!」



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