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一致団結!

 断固拒否するつもり……乙成は確かにそう言った。その言葉は俺を安心させるに充分過ぎるものではあったが、アカツキさんが決定事項とか言ってなかった?


「俺はてっきりアカツキさんがハイチに連れて帰る手筈を整えちゃったとばかり思ってたんだけど……」


「確かにそんな様な事は言ってました! でも私にだって生活があるんです。十年ぶりに姿を現して、そんな急にハイチに行かないかって言われても、すんなり受け入れるわけないじゃないですか!」


 うん。それはマジでそうだわ。急に姿を現したと思ったら浮浪者みたいになってて、おまけにハイチの新しい家族のもとへと連れて行くだなんて……俺があの人の息子だったとしても拒否するね! 全く、なんてむちゃくちゃなおっさんなんだ。


「それで断わったんだ?」


「はい。でも今回の父は一歩も引く様子がなくて……私が母達の結婚式だってあるから行きたくないって言ったら、じゃあ結婚式の日に迎えに行く、その時に改めて話そうって言って去って行きました……」


「結婚式……」


 美作さんと麗香さんの結婚式は三週間後だ。それまで考える期間を与えるって事か……?


「前田さん、私行きたくないです……」


 泣きそうな顔で俺の手を掴んだ乙成。不安で押し潰されそうになっているその小さな手をとって、俺は真っ直ぐ乙成の目を見た。


「約束する。絶対にハイチになんて行かせはしない! 式の当日は俺の側から離れるなよ? 何処からアカツキさんが来るか分からないんだから!」


「前田さん……はい!」


 猶予はあと三週間……それまでに乙成を守る手筈を整えないと。


「でも当日俺だけじゃ不安だな。美作さんは主役だから動けないかもしれないし……」


 美作さんさえ動ければ、アカツキさんを止めるのは容易いとは思う。美作さんはイカれた人間ではあるけど、乙成を思う気持ちは本物だ。あの人が自由に動ければ、協力しあって乙成を守れるのに……。


「あ。それなら!」


「え?」



 ******


「マジか。乙成ってゾンビだったの?!」


「そんな漫画みたいな話ってあるのね〜」


 ここは都内のカフェ。乙成にいいアイデアがあると言われてついて来てみたら、そこにいたのは滝口朝霧カップルだった。滝口さんはランチセットのミートソースパスタを、口にいっぱいソースを付けながら美味そうに頬張っている。朝霧さんはと言えば、意識高そうなサラダに……その飲んでるやつ、酒か? 日曜の昼だぞ? ほとんど病気だな。


「乙成、これってどういう……」


 ちょっと分からなくて乙成に耳打ちした。だって、アカツキさんがやってくるのは、美作さんと麗香さんの結婚式だろ? この二人絶対関係ないじゃん。


「実は朝霧さん達も母達の結婚式に招待してたんです!」


「なんで?!」


 滝口さんは前に二人に会った事あったっけ? それでも軽く挨拶した程度だ。俺はまぁ、呼ばれるのは分かる。娘の彼氏だからな! でもこの人達はマジで他人だろ?


「母がお世話になっている人を呼んでもいいって言ってくれたので! リンちゃんと四月一日(わたぬき)さんも招待したのですが、お二人は都合が合わずで……」


「まぁ私達はいつだって空いてるからね。乙成ちゃんのお母さんに会えるの楽しみー!」


「私も朝霧さんに母達を紹介出来るの楽しみです! 母と朝霧さん、結構気が合うんじゃないかって前から思ってたんですよー!」


 女子二人がキャッキャしている。さっきまでの深刻な様子は何処へやら。全く女子ってやつは! 緊張感の欠片もないんだから!


「ほれで? をれたちはなにふぉしたらいいの? (それで? オレ達は何をしたらいいの?)」


 ムグムグしながら滝口さんが尋ねる。ちゃんと食べ終わってから話せよ、汚いな。


「滝口さん達には、前田さんと一緒に私を守っていただきたくて! きっと、当日父は式場にズカズカとやって来る事でしょう。母に余計な心配もかけたくないですし、あの人が来たら、みんなで止めてもらいたいんです!」


「元妻の式を邪魔しに来るなんて、とんだ下郎ね! 乙成ちゃん、まかせて! 私達が、絶対にいいお式にしてあげるからね!」


「なんかよくわかんねぇけど、おっさんを入れない様にしたらいいんだな! 分かった!」


 何か勘違いしている気がしないでもないが、とりあえず二人は協力してくれる様だ。あと、滝口さんってこんなアホだったっけ? もう少しマシだと思ってたんだけど。


「皆さんありがとうございます……! 式まであと三週間。ここからはみっちり当日のリハーサルをしましょう!!」


 

「「おう!/ええ!」」


 


 


 


 

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