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ラスボスの気配


「それにしてもさぁ、なんか兄貴達ってここまで来るのに色々あったよね?」


 リンの家に来てしばらく。出前をとって軽い食事を済ませた後、ソファに座ってゆったりしている所でリンが口を開いた。


「確かに……」


「最初は俺というライバルの出現でしょー? その後はバレンタインデーチョコ紛失事件でしょー? えっと……その後は……美作さんと既成事実を……」


「おい、美作さんとは結局何も起きなかったぞ?!」


「でもホテルの前までは行ったんでしょー? もうちょっとだったのにねー? そのまま卒業しちゃえばよかったのに!」


「それだけは絶対に嫌だし余計なお世話だ」


 まったく……他人事だと思っておちょくりやがって……! あの日の出来事は未だに夢に見るんだぞ?


「まぁ冗談はさておき、今度は好感度上げかぁーって思ってさ! 中々落ち着かない二人だなぁって思って」


 確かにそうだ。付き合いたてのカップルって、こんなにごちゃごちゃしないよな? 今までなんとなく乗り越えて来たけど、そろそろ落ち着きたいものである。


「これであいりんの許嫁とか出て来ちゃったりしてさー! 漫画ならそんな展開になるよね!」


「フラグみたいな事を言うな!」


「冗談だって! 怒んないでよ!」


「まったく……ただでさえ仕事でバタバタしてるってのに……」


「仕事忙しいの?」


 普段忙しいとは無縁の俺の口から、バタバタしているなんて話を聞いて驚いた様子のリン。それもそうだろう、俺の職場は普段本当に暇だ。いい仕事だと思う反面、本当に大丈夫なのか不安になる。転職とか考えた方がいいかな……?


「秋に結構大きなイベントがあるんだ。芸能人とかも呼ぶ様なイベントだからみんな気合い入りまくっちゃって……朝霧さんなんて、前日から会場に前乗りして段取りを確認しておかなきゃとか言ってた」


「あはは! 美晴さんらしい! あの人って結構仕事人間だもんねー。ねね、そのイベントってどんな人来るの?! 俺も芸能関係のコネとか作っておきたいんだよねー! 関係者とかで入れたりしない?!」


「一応チケット制で関係者枠で取れるかも……とは言ってたかな? 朝霧さんがその辺り詳しいから明日聞いてみるよ。芸能人って言っても、インフルエンサーが多かったぞ? あとはそうだな……声優の水瀬カイトさんが出るって乙成がはしゃいでたかな」


「水瀬カイトって……蟹麿の中の人?!」


 それまでキラキラ目を輝かせながら話を聞いていたリンだったが、水瀬カイトという名前が出た瞬間に驚いて身を乗り出してきた。


「え、うん……そうだけど」


「そんなのヤバいじゃん!!! 兄貴大ピンチだよ?!」


 明らかに焦った様子のリン。これはもしかして、以前の俺と同じ事を考えてる?


「大ピンチって……いいか? 俺も前に乙成に聞いて怒られたんだが、乙成の水瀬カイトに対する感情は、恋愛の()()とは全くの別物なんだそうだ。心からの感謝と、健康に留意して頑張って欲しいという気持ちしかないと言っていたぞ」


「何呑気な事言ってんの! それは会った事がないから言える話! あの人超絶イケメンだよ?! 実際に会ったら、あまりのカッコ良さにどうにかなっちゃうって!!」


 どうにかって……


「どうにかなるって、乙成はそんな発情期の犬猫じゃないぞっ!」


「分かってないなぁ〜兄貴は! 女の子はそんな気分になりにくいとか思ってるタイプ? そんな事ないって! イケメン、しかも憧れの人が目の前にいたら、我を忘れちゃうかもしれないじゃん!」


 そんな……リンの言葉に、なんで今までその心配をして来なかったのかと後悔した。言われてみれば確かに、水瀬カイトは非の打ち所がないイケメンである。おまけに性格も良いらしい。俺はその部分については信じていないが、乙成が言うには、所作一つとっても丁寧で物腰の柔らかい好青年だそうで、あれは日々そうやって過ごしていないと出せないものなのだと言っていた。


「お、乙成が我を忘れちゃったらどうしよう……」


「大丈夫だよ兄貴! 俺も一緒に行って、あいりんがおかしくならない様に見張っててあげるから! ね、だからチケットとって来てね?」


「わ、分かった……! 絶対チケットとるから! 頼むぞリン、お前だけが頼りなんだ!」


「まっかせて☆」


 なんか、上手い事リンの口車に乗せられた気がしないでもないが、リンがいるだけで少しは安心だ。



 水瀬カイト……こいつは言わば物語のラスボスである。俺はなんとしても乙成の好感度を上げて、このラスボスの魔の手(魅了)から乙成を救う(発情を抑える)必要があるのだ!!!



 ……あれ? それで結局、好感度の上げ方についてリンからちゃんと聞いたんだっけ?

 

 

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