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魔法少女の夜  作者: 蜂
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第4話 幻覚

残酷な描写を含むストーリーになっています。苦手な方はブラウザバックをおすすめします。


ねえ、禁忌って知ってるかい。

この世には様々な可能性と希望が満ち溢れている。


でも、やってはいけない禁断の方法。人々はそれを禁忌と呼んで非常に恐れたんだ。


だって、禁忌に触れてしまったら無事では済まない。

何を代償にされるのか分かったもんじゃないからね。


それでも、いかなる代償があっても、希望を望むというのなら。




キセキを起こしてあげるよ。










――――


第4話「幻覚」


――――


チクタク、チクタクと時計の針の音がうるさい。

雨がしとしと降る中、目の前にいる少女は血の通っていない、人形のような表情で口を開いた。


━━━━なに、不満なのかしら?


「え、は?不満っていうか……それより、お前の存在が何なのか解明されていないぞ!まずは名を名乗れ!」


俺が少女に向かって指をさしてそう言うと、とても面倒くさそうにため息をついた後に少女は答える。


━━━━はあ……、私の名前は……ロベリア。ロベリーって呼んでちょうだい。


「ろ、ろべりー?」


━━━━はぁい、ロベリーよ。


「…………」


日本語で話すし、顔立ちも日本人なのに「ロベリア」って。ニックネームか何かなのか?


俺は不信感を抱きながらも、咳払いをして話を戻した。


「こほん、えっと…ロベリー……ちゃんはどうして俺のところへ?あと、望みって何のことなんだ?」


━━━━一度に多くの質問をしないで貰えるかしら。頭が痛くなってきちゃう。


「あー……、悪い」


━━━━まず、ひとつ。


虫の悪い顔をする俺を遮るように、ロベリアは人差し指を高く掲げる。


━━━━私は君に呼ばれてきたの。ただそれだけ。


「……いや、呼んでないけど」


俺がそう言うと、ロベリアはキッとこちらを睨みつけて口を閉ざすよう目で訴えかけてきた。


……何なんだこの子は…。妙に圧を感じるな。


━━━━君は実際に呼んでいないかもしれない。でも、時空と次元を超えて、私をここに呼び寄せたの。それは奇跡であり、君の本能でもあるのよ。


……なるほど、ますます訳が分からなくなってきたぞ。


俺は意味がわからない、という顔をしていたのか少女からまた鋭く睨まれてしまった。


そんなに怒らなくたっていいだろうに…。こんな現実的じゃないことが起こっているんだ。誰だって混乱するに決まっている。


━━━━こほん、話を進めてもよろしいかしら?


「え、ぁあ、どうぞ……」


どうも、と一言おいてロベリアは続きを話し出した。


━━━━もうすぐこの世界は終焉を迎えるのよ。


「………はあ?」


━━━━だから、世界が滅びちゃうの。世界を救うためにはキセキが必要なのよ。私はそのキセキの可能性に呼び寄せられて、ここへ現れたの。


……………。

世界の終焉?キセキの可能性?どういうことなんだ。


俺は頭を抱え、ロベリアの方を見る。

彼女は堂々とした態度でこちらを見返し、小さく首を傾けた。


━━━━ここまでは理解したかしら?


「……正直、しっちゃかめっちゃかだ。」


━━━━でしょうね。困った顔をしているわ。


「…………まあ、とにかく。何が目的なのかを言ってくれよ。キセキは何のために必要なんだ?」


話の節を咀嚼し、上手く頭の中でまとめようとするが混乱するばかり。なので、結果論から行こうという戦法をとった。何が最終的な目的なのかを知れば、一気に理解へ持って行けるはずだ。


俺は足を組み直し、ロベリアの様子をうかがう。

ロベリアは小さく息を吐き、落ち着いた表情で静かに言った。


━━━━私の目的は世界を救うこと。世界を終焉に導く、神の創りし天使を倒すためよ。


「……天使?」


━━━━そう、天使って言っても、人間の考えるような可愛くて綺麗なものじゃないわ。気味が悪くて、ゾワッとするような恐ろしいバケモノ。


天使だって?

俺はさらに混乱する。


それに、さっき神と言っていた。

この少女……ロベリアは何者なのだろうか。もしかしたら彼女は、神に背く存在なのかもしれない。


俺は生唾をごくりと呑み込み、ロベリアに話を続けるよう促す。ロベリアは頷くと、今度は重く口を開いた。


━━━━……こんなこと言っても信じて貰えないかもしれないけど……私は未来からやって来たのよ。


「未来……?ってことは、ロベリーは未来人なのか?」


━━━━まあ、そういうことになるわね。私はこの先の未来……終焉に飲まれた世界から召喚された魂なの。……つまり……。


「………つまり?」


何かを躊躇うような表情をした後、ロベリアは一呼吸おいて言葉を続ける。


━━━━私は……もう、死んでいるの。


「………え、」


もう死んでいる…?俺は一瞬、思考が停止した。

だが、すぐにハッと意識を戻してロベリアの顔を見る。


寂しそうに微笑む彼女の表情は生命を感じたが、小さい体や真っ白な肌は現実味のない、無機質な感じがした。


「………そ、うか。じゃあ、ロベリーは未来を変えるために……終焉を止めるためにここに来たんだな?」


━━━━そういうこと。


「でも、なぜ俺なんだ?俺は別に望みなんて……」


と言いかけて、心の奥にある微かな夢を思い出す。


実の母親が死なずに生きていて、この生活が存在しない世界のこと。しかし、それは強い願いというわけではない。俺は花音がいて幸せだ。誰よりも花音のことを大切に思っているし、愛している。


「……俺の小さな望みなんて浅はかだろ。もっと、俺よりも強い願望を持っている人間はいるはずだ」


━━━━そんなの私に言われたって知らないわよ。私は可能性を持たざる者を求めてやって来たんだから。


はあ、と呆れたようにため息をつくロベリアに、俺は少しムッとしながらも「とにかく」と続ける。


「お前が俺んとこに来たのは見当違いだ。世界の終焉って言われたってどうにもできないし、もっと別の…強そうな奴にお願いしろよ」


━━━━駄目よ。君じゃないと、出来ないことなのよ。


「んなこと言われても無理っつったら無理!」


俺はキッパリした態度のロベリアを摘み上げ、窓を開けた。ずっとここに居座られるのも困るし、花音が変なことに巻き込まれるのも御免だからだ。


━━━━ちょっと!何するのよ、離しなさい!


「誰か親切な人に頼むんだな!さいなら!」


俺は摘んだロベリアをそのまま窓の外に投げ捨て、ピシャリと窓を閉じる。投げ捨てられたロベリアは窓を叩きながら「ちょっと!?」等と文句を言っていたが、しばらくすると諦めたのか、音はピタリと止んで静かになった。


「………ふう、全く……何だったんだ、あれは……」


冷静になって考えてみると、アレは確実に人間ではない奇怪な生物だった。相当疲れていたのか、俺はなぜかロベリアのことをアッサリと受け入れて話を聞いてしまっていたが……もしかしたら危なかったかもしれない。


「………幻覚、じゃないよな?」


両手で頬をパンと叩くが、痛みは感じる。どうやら夢ではないらしい。


恐る恐る窓を開けてみると、さっきまで大騒ぎしていたロベリアの姿かたちは全く無くなっていた。


元々、ここには存在していなかったかのように。


「………風呂入って寝るか」


俺はグッと背伸びをして立ち上がる。

ようやく現実に引き戻されたかのように感じる頭でロベリアのことを思い出すが、なんだか段々信じられなくなってきて、全てが夢だったかのように思えてきた。


でも、それはそれで納得できる。

あんなのは普通じゃない。存在してはならないものだ。


俺は部屋のドアに手をかけ、ちらりと窓の方を振り返る。もちろん、そこには誰もいない。少し安心して、俺は今度こそ風呂に入るために部屋から出て行った。



――――
















どうして、また同じ選択をするの?


私は遠ざかっていく黒猫の後ろ姿に手を伸ばす。


届かない。

遠く、遠く、どこまでも遠く。


私のせいなのに。

私が全てを終焉に導けば、それで解決するのに。








運命は変えられない。



夢の中の出来事ってなぜか夢の中では信じちゃいますよね。絶対にあり得ないことも当たり前のように感じるし、本当だと思うこの現象は何と言うのでしょうか。


でも、夢から覚めた瞬間にそれは忘れ始めてしまうんです。なんだか儚くて寂しいですね、夢って。


最近ハマり始めたゲームがありまして、そのゲームで神引きする夢を見た時は泣きたくなりました。本当に儚い夢です。

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