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序章 首斬ル死神
人生の転機を問われたら、僕は間違いなくこの日のことを話すだろう。
彼女に殺された、この日のことを。
それはバイトの帰り。二十三時を回り、街頭や部屋から漏れる明かりが消え、街全体が眠りについたかのような静かな夜だった。
「ひっ……!?」
──血が足元に滲んでいく。
少し顔をあげるとそこには首無し死体。
いいや、首ならあった。《《彼女》》が抱えて持っていた。もう片方の手に血に染まった刀を携えて。その姿はさながら死神のようだ。
そんな彼女が今度はこちらに刃を向ける。
長く黒い髪を振り乱し、刀を向ける彼女の姿に僕は。
──ああ、綺麗だ……。
刀が振り下ろされた。
その瞬間、黒い、暗い世界が僕の身体を包んでいった。