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閑話②DemonEyes

「「ねぇ?どうすんの?創一?」」

「好きにやらせればいいだろ?」

─────

神門創一(9)┃

─────

戦地に全くそぐわない⋯⋯純白な髪色。そしてウルフよりも少し短いくらいの髪型の創一が怠そうに切り傷だらけの指で頭を掻きながらそう呟く。


「創一〜!」


そう言うと、コルトが逃げるように創一の背中に隠れる。創一は慌てつつも「どうした?」と気にかけている。


「リードが虐めてくるんだよ!酷いよね?」


コルト迫真の名演技に、思わずリチャードが半笑いで立ち上がる。


「おい!嘘だろ?言い掛かりはよせ!創一!本当は大体の状況分かってるだろ〜!?違うよな?お前は俺の味方だよな?な?」

「じゃあリードが悪いなぁ〜」

「へへ〜」


創一がコルトの頭を撫でる。そのままニヤッと悪い笑みをリチャードの方へと向ける。


「て⋯⋯めぇ!創〜一〜!!」


ギリギリと歯軋りをしながら片頬を上に上げるリチャード。


「よし、一芝居終わったところで、点検にもどるぞ〜みんな〜」

「はーい」


その様子はまるで幼稚園の課外授業。そのまま綺麗に横並びになって何処かへと歩き出そうと数歩歩き出した時だった──。


ジジ⋯⋯。

創一が自身の胸ポケットに入っている無線の音が聞こえ、視線を落とした。


『こちら、北西アルファ中隊。現在、敵からの攻撃により後退中!繰り返す!「北東」へ全力後退中!』


『無線を聞いた、こちら北西チャーリー分隊!北東キャンプに向かって前進中!』


『こちら北東キャンプ代表ヘンリー。了解した。すぐに動く、必要物資と予測敵数と規模を』


『北東は余裕そうだな。ならば、300程の寝床と量産武器でもいいから弾薬と補充スペースを至急頼む!』


『北東羨ましいぜ!なんでそんな余裕なんだ?こちらは40もない。似たようなモノで頼む!』


『双方の話メモしたぞ!そりゃそうだろう?

ここにはあの(●●)|最上級傭兵集団──ソルワンゴールド《アドバンスドオリジン》のガキ共が張ってんだ。こちとら暇で暇で仕方ねぇよ』


『⋯⋯⋯⋯』

『⋯⋯⋯⋯』


『『あのアドバンスドオリジン!?』』


無線機からは凄まじい音割れと共に兵士達からの驚きの声がすぐに分かる。


『ちょっと契約外だからな。聞いては見るが、もしかしたら援護してくれる可能性があるから、その時はまた追って無線を入れる』


『説得頼むぞ!』

『こちらも!』


その一言の後、無線機の音が途切れた。


「⋯⋯⋯⋯」


一部始終を聞いていた創一が数秒ののち、踵を返す。


「創一〜!指示は?」

「おいリード?お前がリーダーなんだからな?俺の指示なんかいらんだろ?」


するとリチャードが口笛を吹きながらそっぽを向く。


「だって⋯⋯俺の指示より、創一の指示じゃないとコイツら動かないんだもん」


口笛を吹きながら何処か恥ずかしさと寂しさ、そして悔しさが感じ取れるボソボソとした言葉が返ってくる。


なんとなく察した瞬間──溜息をこぼす創一。


「分かったわかった。今回は聞いてやるが、しっかり勉強しろよ?」

「創一〜!!!」


パァッと犬のように嬉しさを身体で表しながら創一を真っ直ぐ見つめているリチャード。


そして創一率いる10人は、ヘンリーとヒューズがいるテントまで移動した。



「お〜!来たな!創一!」


ヘンリーが歳不相応な若い笑顔を向けながら手を振る。対して創一は歳不相応な大人な手の上げ方で合流する。


「それで?俺達はどうすりゃいいんだ?」

「そう急かすなよ創一。とりあえずお前達には、一旦この北西と北東の間にあるこのだだっ広い森で待機してもらう。10人フルで動員すれば──いけるか?」


ヘンリーが確認のアイコンタクトを創一に向ける。


「ハッ、誰に向かって言ってんだ?ヘンリー」


分かっていたように「ふん」と鼻で笑い、そのまま地図を見ながら長考するヘンリー。


「まぁ恐らく、深追いはして来ないだろう。アイツらのバックにいるのは⋯⋯多分、政府だろうからな」


「なっ!?」「⋯⋯」


ヒューズが有り得ないと声を呑み、創一は無言でそれを聞き流している。


「ヘンリーさん!それはどういう!?」

「創一がいんだ、とりあえず細かいこたぁ後だ」


「しかし!」と続けようとしたヒューズの隣から、ドスの効いた低い声が突然聞こえる。


「おい、そこのお兄さん──黙って聞け。俺はグズグズしてる馬鹿みたいな頭の悪い奴が大嫌いなんだ」

「君にはわからないだろう!?」

「ヒューズ!」

「⋯⋯っッ!」


異常なほど研ぎ澄まされた、猛獣と同等かそれ以上の威圧がヒューズに向けられる。


それは歳不相応過ぎるモノで、どういう生活をしていればそんな表情が出来るのか想像もしたくないほどだ。


'なんだ?この子供──いや、この兵士は'


見られただけで身震いがする。

例えるなら、絶対に人を噛まないと言われている虎と同じ檻に入れられて、近くで唸り声が聞こえた時のようなか恐怖感といえばいいのか。


勝手に全身が震える。重低音をライブで聞いているかのように。


「⋯⋯今、俺が作戦聞いてんの。お前はどこの所属か知らねぇけど、ここに居なかったんだから管轄外だろ?黙って聞いてろよ。邪魔なんだよアホがよ」


今思えばこの時、私が一言返さければ──この男と仲良くなる事は一生なかったのかも知れない。


'いくら子供でも──限度ってモノがあるだろう!!!'


ヒューズは正義感溢れるエリート。黙って見過ごせるはずが無かった。


ただ、突っかかる相手さえ間違えなければ──の話だ。


子供(●●)は黙っ──」


話している途中、突然自分の視界が上下反転していることにかなり遅れて気付いた。そして事態に気付いたのはそれから更に数秒後だった。


「ガハッ!」


瞬速と呼べる程一瞬でヒューズに足払いをしてそのまま宙に一回転する。回転終わり、ヒューズは仰向けで地面に落ち、創一がヒューズの後頭部を足で踏んづけていた。


「ヘンリー、とりあえず作戦は森で待機した上で、味方以外、虫一匹も通すな⋯⋯それで良いな?」

「あぁ、ソイツは一応エリートだ。お手柔らかに頼むよ」


そのまま創一が足をどけてヒューズの髪を掴んで広い場所へと移動し、ゴミを捨てるように片手で放り投げる。


「ぐっ⋯⋯!」

「⋯⋯⋯⋯」


鬼のような怒りを剥き出しにしている創一の双眸に、残りの九人が「あ~あ~」と何かを察したように一斉にヘラヘラ笑いながら崩れた資材の上に雑に座った。

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