01
「前から君のことが、好きだったんだ!!……付き合ってくれませんかっっ!?」
「ごめんなさい」
(はぁ、またやってるな。もう、振られたの三十人目だぞ。でも、新聞部のネタにはなるかな。今回はわりかし相手の男は常識の通じる奴だな)
告白されている、女子生徒は小島春花、高校二年生。校内一番の美少女で、成績もよく性格もよいため、とても人気がある。許嫁がいると、噂されているため誰とも付き合わないと噂が流れている。
(新聞部のネタになるから、このままでいいけどな)
屋上から二人のいなくなるのを確認すると屋上の死角からでた。そして、大きく伸びをした。それから、フェンスの金網から運動場を見る。運動部がランニングをしていた。みんな、頑張っているな。そして、ベンチに座ってリュックから水筒を取り出して冷たい麦茶を飲んだ。おいしい。
一息付けたし、部室に戻るか。立ち上がろうとして、ふとスマホが地面に落ちているのが目に入った。これは、おそらく彼女のスマホだろう。これは、まずい。しかし、どうすることもできない。
(拾って学校の落し物係に届けるか、そのまま放置して部室に行くか)
だが、考える意味はなかった。
「危なかったーーー! うっかりしてたな……っ! え、え、えっと、光一くん、こんなところで何してるのかな?絶対、さっきの見てたよね?」
「ああ、そうだ。目撃したのはたまたまだ。決して、わざとではないよ」
通じるかは怪しいが、一応弁解をしてみる。
「それなら、これはっ! どうゆことなのっ! 私のことよね?」
俺が書いた、学校新聞を見せてくる。彼女の名前は伏せられてH.Kと書かれているが、白石光一と俺の名前はきっちり記されている。仕方ない、ここはきっちり白状しよう。
「そうだよ。小島さんのことだよ」
「やっぱり、そうよね。出来れば止めてほしい」
「別に、いいけど」
断る理由もないので、素直に応じる。
「えっ、いいの? あっさりすぎて逆に驚いた」
「別にネタに困っている訳ではないから。それより、誰とも付き合わないから、ここまで続いたんだ。ここらで終わってよかったよ」
俺は、一息入れるため、チョコの入ったスティックパンを取り出して、一口齧る。
その様子をじっと見られている、他に用事でもあるのだろうか。
「帰らないの?一人にしてもらいたい。それとも、パンでもいる?」
俺は、リュックからパンを取り出し、ティッシュで包んでから、投げた。
「うわっ、わ、ちょ、いきなり、投げないでよ……いただくわ」
「これで、今回のことは、水に流してくれ。ついでになぜ誰とも付き合わないか、聞いておきたい。場合によっては、力になれるかもしれない」
「理由なんて、たいしたことじゃないわよ。今は、恋愛に興味がないの。友達と遊んでたいの」
「そうゆう理由か。つまらないな」
「つ、つまらないって、ひどくない?」
「どう思おうが、俺の勝手だ」
俺は、最後の一口を食べて、リュックを背にかけ、立ち上がり屋上を後にすることにする。
「小島さん、俺部室に行くから、じゃあね」
ちなみに、俺は部長だ。そんな器ではないのだが、うちの部はあまりみんな来ないので必然的に、だいたい活動に熱心なのは俺くらいだ。もっと、積極的にやってほしい。