第一話④
カーカー、カー…
窓の外で鳴いているカラスの声をこんなじっくり聞いたことねーぞ。
誰もいない教室に、学年一位の、そして無口な阿倉と二人。なんだこの異様な空気は…。
思わず息を呑んだ、というか唾を飲んだけど、その音すらも響いた気がする。
いつも俺の周りは騒がしいから、こんなシンとした空間はあまり経験がない。
この奇妙な状況から早く脱したくて、慌ててカバンを抱えて席を立とうとしたけど……刺すような阿倉の視線を感じ、体がピタリと止まった。
反射的に阿倉の方を見ると、バチっと目が合ってしまった。
「な、なんだよ…」
頭より先に口が動いていた。
いや、こんな奴放っといて帰ったらいいだろうが〜!と、もう一人の俺が心の中で叫ぶ。
阿倉は、学年一位の頭脳をもちながら、運動神経も抜群にいいらしい。文武両道というやつだ。顔もめちゃめちゃかっこいい。芸能人か?おまけに高身長。神様って不公正だよな…。基本無表情だからちょっととっつきにくい感じはあるけど、そういうところが女子はいいらしい。
俺もたぶんそんなイメージをもたれるから、中身を知ったら絶望されんだろうな…
なんていろいろ考えていると、じっと俺を見ていた視線がようやく黒板に移った。
「別に」
なんだよ別にって……。
今度は声に出さずに言えた。読めねー奴。もういいや。
そこでようやく現実に引き戻された俺は、すぐにカバンを抱えて教室を出た。
廊下に出ると、どこからか金木犀の香りがした。
誰かの残り香か…?まさかてっぺんハゲ…?いや、ないな(笑)




