第一話③
「おいこらあ!寝るんじゃない三舟ェ!!」
ハッ!
反射的に飛び起きた。あれ、なんで学校にいるんだ?今ハンバーガー屋にいて、山盛りのポテト……
「ヨダレ垂らしてお前は何歳だ!!補習くらい真面目に受けんか!!」
「ほしゅう!!」
教室中がガヤガヤと音を立てて笑った。
そうだ。俺補習の最中だった。ハンバーガー屋は……ポテトの山は…?夢かよちくしょう……。
「いいか!来年の今頃は受験だ!お前らの進路を決める大切な時期だ!今からしっかりやっておかねば後で必ず後悔する!いいな!」
キーンコーンカーンコーン……
はあ。
笹部の声マジででけえ。今更スパルタ教師なんて古ィんだよこのてっぺんハゲ野郎。
学期末テストの結果は、案の定最悪だった。俺と同い年くらいの数字たちをいくつ見た?もう数えたくもねー。俺のツレA、Bは、当たり前のように毎度余裕でパス。まあ、そりゃそうか。ツレB…いや、一樹なんて学年二位だし。あんななのに。俺とノリとか似てるのに!
だから補習は毎度恒例、俺一人のイベントだ。
はあ。
デカい溜息をついてから、全く使わなかった教科書を順にカバンにぶち込んでいく。めんどくせー。早く帰ってゲームしよ。
そう思いながらふと左端の席を見ると、なんかやたらと笹部に話しかけられている奴がいた。
「阿倉、お前が補習を受けているとは…どういうこった。テスト中腹でも下したのか?変なものでも食べたか?」
あくら……?
なんとなく聞いたことある名前を、頭の引き出しから引っ張り出す。
あ、こいつ。
学年一位の天才、阿倉だ。一樹がいつも「今回も阿倉に負けたァ!!」て怒ってるから思い出した。でも確かに、そんな頭いい奴がなんで補習に?
天才阿倉は、正面からあれこれ聞く笹部に見向きもせず、遠くを見つめたまま答えた。
「別に。おしりと桃の共通点って何かなって考えたら時間過ぎてしまって」
「ぶっ!!」
一瞬にして二人の視線が俺に向いた。
しまった!つい吹き出してしまった。
いやでも、だって!なんなんだその言い訳!そんなあからさまに無理なこじつけ、無表情で言うなよ!
笹部は、俺を見て一度眉を上げ下げした後、後頭部をかきながらやれやれと溜息をついた。
「次はもっとまともな言い訳を期待してるぞ」
呆れたようにそう言うと、笹部はそのままヨタヨタと教室から出て行った。
いつの間にか周りの奴らも帰り、爆音の笹部が去った今、俺と阿倉二人きりの空間はやたら静かに感じた。




