ラブコメおにぎり
なろうラジオ大賞2応募作品です。
お米の銘柄を探してみて下さい。
「好きです!」
放課後の教室に、鈴の鳴るような少女の声が響く。
窓から夕日の光が射し込み、彼女の長く艶やかな黒髪と、越光高校のミルキークイーンとも称えられる白い肌を照らす。
好みのストライクゾーンど真ん中、『秋田 小町』さんからの告白に、夢心地の僕はもちろんOKしようとしたが。
「僕も……」
「白いごはんが好きです」
えっ?
「私は、三度の飯より白いごはんが大好きなんです!」
「ええっ?」
愛の告白じゃなくて、カミングアウト?
ラブコメが始まるかと思ったら、始まったのはLOVE米でした。
「私が好きなご飯のお供は、カツオの塩辛です♡」
「塩辛って、イカじゃなくて?」
秋田さんは、ふふーんと得意気に。
「塩辛にもタコとか牡蠣とかサーモンとか、色々種類はありますよ? 中でも一番はカツオの内臓の塩辛で、塩気が強い沖縄や鹿児島産のものがお気に入りです。山盛り白ごはんにピンク色の塩辛をたっぷり添えて、一気にかきこめば、もうもうもうっ♡」
いやんいやんと、モジモジする彼女。
おかしいな、僕が一目惚れした秋田さんはこんな娘じゃなかったはずだが。
「あとは、卵も捨てがたいです」
「というと、TKG?」
すると、秋田さんはチッチッチと舌打ちをする。
「甘いですねー、お米を30回噛んだ時のように甘いです。私は目玉焼き丼にしていただきます。あと、醤油マヨを混ぜて焼いた半熟スクランブルエッグを乗っけるとか」
にこまる~っと満面の笑みを浮かべる秋田さん。
卵かけご飯だったら、ウチで作った棚田米をオススメしようかと思ったんだけど。
「それから、魚卵系ですね。イクラとかタラコとか、プチプチ食感がたまんないです。あと、ちりめんじゃこと高菜も捨てがたい」
いや、捨てなくていいけど。
「そして最後に控えしは、おにぎり! 有明海産の極上な海苔をオーブンで炙ってくるりと巻いて、醤油マヨを付けて食べれば最の高」
親指を立てながら、秋田さんはだらしない笑顔を晒す。そんなにおにぎりが好きなのか?
「という訳で、雪若丸くん。私と付き合ってくれませんか?」
「急に、ここで!?」
「実は私、農家のお嫁さんになるのが小さい頃からの夢ぴりかだったのです。私と結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか?」
確かにウチは、10ha以上の田んぼを持つ大農家だけども。
この超展開は、森のくまさんもビックリだ。
こうして、僕こと『雪若丸 農林48号(本名)』と彼女のラブストーリーが始まった。
おし米