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6、リースリング村 〜新たなスキル

「何かスキルを……いや、神矢を得たのか? レベルはまだまだ上がらないからのぉ」


「爺ちゃん、レベルって、なかなか上がらないの?」


「あぁ、大抵は一年でひとつレベルが上がるものじゃ。早ければ半年で上がることもあるけどな」


「へぇ、じゃあジョブは十年経てば、超級になるんだね。隣の畑のおじさんは、まだ上級のままだって言ってたけど」


「あぁ、アイツは『農家』を片手間にしかやっていないからじゃ。そのうち娘達が継ぐだろうけどな」


「ふぅん、そっか」



 僕は、目の前に浮かぶジョブボードの画面に目を移した。ジョブボードと書かれた場所には、新着の知らせが出ている。


「新着の知らせが出てて……ええっ!? 何これ」




 ◇〜〜◇〜〜〈ジョブボード〉New! ◇〜〜◇


【ジョブ】


『ソムリエ』上級(Lv.1)


 ●ぶどうの基礎知識

 ●ワインの基礎知識

 ●料理マッチングの基礎知識

 ●テースティングの基礎能力

 ●サーブの基礎技術

 ●ぶどうの妖精

 ●ワインの精




【スキル】


『薬師』超級(Lv.1)


 ●薬草の知識

 ●調薬の知識

 ●薬の調合

 ●毒薬の調合

 ●薬師の目

 ●薬草のサーチ

 ●薬草の改良

 ●新薬の創造



『迷い人』中級(Lv.1)New!


 ●泣く

 ●道しるべ




【注】三年間使用しない技能は削除される。その際、それに相当するレベルが下がる。



【級およびレベルについて】


 *下級→中級→上級→超級

 レベル10の次のレベルアップ時に昇級する。

 下級(Lv.10)→中級(Lv.1)


 *超級→極級

 それぞれのジョブ・スキルによって昇級条件は異なる。


 〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜




 迷い人? 迷い子ってこと? それに一番上の技能、な、泣く? いやいや、ちょっと待って。どういうこと?


 さっき、妖精さん達が僕のことを、泣き虫とか迷い子とか言っていたから、それがまさかのスキルになったのかな。



「ヴァン、どうしたのじゃ?」


「爺ちゃん、変なスキルなんだ。『迷い人』って知ってる?」


「それは、山歩きをするときには便利なスキルじゃよ。ワシにはないがの」


「妖精さん達が、僕に泣き虫とか迷い子になるとか言ってたから、スキルが増えたのかな」


「ふぉっほっ、そんなことでスキルが増えるなら、誰も苦労せんよ。妖精達が言っているのは、ヴァンが小さい頃の話だろう。よく、あぜ道から畑に落ちて泣いておったし、ぶどうが実ると畑でよく迷い子になっていたからのぉ」


「そうだっけ?」


「あぁ、ヴァンは大きくなったのぉ」


 爺ちゃんは、懐かしそうに目を細めている。なんだか僕は、少し恥ずかしくなってきた。話題を戻そう。



「爺ちゃん、どうして僕にこんなスキルが増えたのかな」


「神矢を得たのではないのか?」


「うん、神矢は、赤い矢を見つけただけだよ」


「級は、どうなっておる? 下級かの?」


「中級って書いてある」


「それなら神矢じゃ。習得したスキルなら下級だからな。ゴミ拾いをしているうちに、どこかで触れたのだろう。普通は異変に気づくんじゃが、『迷い人』でしかも中級なら、気づかない程度の違和感かもしれんな」


 ゴミ拾いの時の異変? ずっと周りに妖精さん達がいたから、僕の意識は彼女達に向いていたんだよね。だから、気づかなかったのかな。あっ、水路!


「爺ちゃん、隣のおじさんの畑でね、あぜ道に空いた穴を塞ぐ手伝いをしたときに、何か虫に刺されたみたいになったんだ」


「ふむ、じゃあ、そこで神矢が刺さったのかもしれんな」


「でも、昨日、おでこに刺さったときは、痛くも何ともなかったよ?」


「ヴァン、それは、昨日はまだ印が現れていなかったからじゃ。昨日の神矢は、何のスキルだったのじゃ? 神官様が情報が多いのだろうとおっしゃっていたが、それにしても、あんなに辛そうな儀式は初めてじゃよ」


 爺ちゃんは、神官様が下手くそだと思っているのかな。彼女のあの怖い笑顔を思い出して、僕は少しゾクッとした。


「あの神矢は、『薬師』だったよ」


「おぉ、そうか! それは良いスキルじゃ。皆も喜ぶぞ。『薬師』は、中級でも十分役に立つ。上級になると、確か高価な治療薬も作れるようになるはずじゃ」


「ん? 超級だよ」


「へ? ヴァン、今、何て言ったのじゃ?」


「ジョブボードに『薬師』超級って書いてあるよ」


 爺ちゃんは固まってる。ピクピクしてる。わっわっ、どうしよう、驚きすぎて死んじゃう?


 あれ? 頭の中に何か浮かんできた。何これ? 腰痛? 


「爺ちゃん、大丈夫?」


「あ、あぁ、あぁ、大丈夫じゃ。驚きすぎてちょっと腰をひねってしまっただけじゃ」


 あっ、『薬師』ってことは、僕は、薬を作れるんじゃ?


 僕は、ジョブボードに目を移した。うん、薬の調合っていう技能がある。でも、どうやって使うんだろう?



「そうか、だから神官様は、儀式にあんなに時間がかかり、そして、あんな言葉をおっしゃったのじゃな」


「うん?」


「ほれ、ヴァンの印が現れた場所のことで、悪い大人に利用されるとおっしゃっていただろう? 手を使う『薬師』なら、その作り出す薬の効果も増幅されるはずじゃ。しかもそれが超級なら、とんでもない高価な薬も、命を奪う毒薬も作れるからの」


「えっ!? 毒薬? あ、ほんとだ。毒薬も作れるみたいだ」


「ヴァン、村の人には、超級だということは内緒にしておこう。高名な薬師でも上級が多いと聞く。ジョブ『ソムリエ』は数少ないが、ジョブ『薬師』も同じくらい少ないんじゃ」


「そっか、うん、わかった。でも、階級を聞かれたらどうしよう」


「神矢のスキルは、大半が中級じゃ。上級もそれなりに含まれるが、超級は非常に稀なものだから、皆、中級だと思うじゃろ」


「極級の神矢はないの?」


「あぁ、神矢ハンターの手記を読んだことがあるが、神矢の階級は三種類だと書いてあったな」


 へぇ、神矢ハンターっていう『ハンター』もいるんだ。あっ、そっか。ハンターも生産職と同じくらい、たくさんの種類があるんだっけ。


 下級のときは分かれてないけど、生産職は中級からは、衣食住に分かれるんだ。ハンターも似た感じなのかな?


 あれ? そういえば、僕はぶどう畑のことは、もう何でもできるのに、どうして『農家』のスキルがないんだろう?



「爺ちゃん、僕のスキルは二つだけなんだ。『農家』がないんだけど、僕、習得できているよね?」


「おぉ、そうじゃな。ヴァンは、ぶどう畑のことなら何でもできる。じゃが、ぶどうのことしか知らぬじゃろ? 生産職の下級スキル持ちは、衣食住の生産物の知識を持っているぞ」


「あっ、そっか。習得するなら『農家』の前に、下級生産職からだよね。僕、ぶどう畑以外のことは、全然知らない」


「ふぉっほっ、そうじゃな。おっと」


 爺ちゃんは、顔をしかめた。あっ、腰が痛いんだ。僕は、ジョブボードに目を移した。何度見ても、見るだけでは使えない。



「爺ちゃん、スキルの技能ってどうやって使うの?」


「慣れてきたら、使おうとイメージするだけで使えるが、ジョブボードに触れると、より一層発動スピードが速くなるそうじゃ。もしや、ワシの腰の薬を作ってくれるのか」


「うん」


「おぉそうか、薬草などが揃っていないと作れないな。行商人が来たときに必要な薬草を買うとしよう。ワシはわからんから、ヴァンが選んでくれ」


「それなら僕が、近くの山で薬草を摘んでくるよ」


「山は、ダメじゃ。最近は、魔物がうろついているからな」


「えーっ」


 イテテと腰をさすりながら、爺ちゃんは立ち上がった。爺ちゃんは、腰痛は農家につきものだと言ってるけど、でも辛そうなんだよね。




「ちょっと、畑に座り込んで何をしているんだい? ヴァンの祝いの用意ができているよ。うん? シャンパンかい?」


 口うるさい農具屋のおばさんがやって来た。捜してくれていたのかな? でも、僕、ちょっと苦手なんだよね。


「あぁ、ウチの畑の木に引っかかっていたのをヴァンが見つけたんじゃ。祝いのために、冷やそうと思っていたのだが」


「じゃあ、氷水に突っ込んでおくよ。氷魔法を使えるのは……あ、いた。ちょっと、マーク! こら、聞こえているのはわかってんだよ。このシャンパンを冷やすんだ」


 おばさんは、シャンパンを持って、ぎゃんぎゃんわめきながら離れていった。はぁ、あのシャンパン、僕、飲めるのかなぁ。



「さぁ、ヴァン、主役が泥だらけの作業着では笑われる。着替えておいで」


「うん、爺ちゃんは?」


「ワシは、村長にヴァンの話をしておくよ。あれこれと、いろんな人から尋ねられるのも面倒じゃ。村長から話をしてもらうことにしよう」


 僕は頷き、家に着替えに戻った。



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