表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

451/574

451、自由の町デネブ 〜うん?

「ヴァンさん、昨夜、ここに居てもらって正解でしたよ」


 町の中心にある池は、真っ黒に変色していた。王宮の魔導士達が大勢、池を取り囲んでいる。


「ボレロさん、町の結界もあったはずですが、破られたのでしょうか? 他の被害は?」


「結界は無事です。だから、地下水脈からの侵入ですね。ゼクトさんが昨夜、見回りをしてくれていたので、人への被害は今のところ大丈夫です」


 そう聞いて、僕は少しホッとした。


 昨夜、クリスティさんが来たのは、僕達を守るためか。それにゼクトさんが、ここに貴族を集めたのも、パーティに出ないと言ったのも、このためだ。



「これは、昨夜に降った神矢の影響でしょうか」


 僕がそう尋ねると、ボレロさんは険しい表情で頷いた。


 北の大陸には、スキル『道化師』の神矢が降った。それを異界の住人に拾わせるために、昨夜は、影の世界との行き来が緩められていたようだ。


 番人をしている闇の精霊達が、神の指示によって、門を開いたのだと思う。


 だけど、この状況は……。



「昨夜は、皆、家から出ないようにと指示されていました。平地側の建物には、ゼクトさんが、結界を張ってくれたんです。だから、獲物を得られない悪霊達が、朝になっても留まってしまったようです」


「池の底ですか」


「すべての井戸も黒く染まっています。それに、おそらく……」


 ボレロさんは、声をひそめた。


「昨夜は、警戒していたので対応できましたが、2種類いるようです」


「悪霊と、異界の住人ということですか?」


「いえ。目的の無いモノと、狙いのあるモノです」


 ボレロさんの視線は、一瞬、階段へ向いた。フロリスちゃんか……国王様もかな。




「あの、ちょっといいですか」


 窓の外を見ていると、ギルドの職員が近寄ってきた。ボレロさんに用事かと思ったら、彼は僕をまっすぐに見ている。


「やはり、ヴァンさんに依頼するしかないかな」


 ボレロさんがそう尋ねると、職員さんは頷いた。ちょ、何? 嫌な予感がする。


「ヴァンさん、いま、ジョブ『神官』の方々や、聖魔法を使える人達に、井戸の浄化をしてもらっています。ですが、キリがなくて……」


 ボレロさんは、申し訳なさそうに、とんでもないことを言っている。


 王宮からも、魔導士がたくさん来ている。そんな彼らに抑えられないものを、僕に排除できるわけがない。


 闇の精霊に誘導を依頼しても、何モノかに命じられて池に潜んでいるモノは、闇の精霊の指示では動かないだろう。


 強制的に排除するなら、デュラハンか。


 だけどデュラハンも、昨夜は疲れただろうな。日の出とともに、異界との行き来を止めるために、かなりの力を使ったはずだ。



「ボレロさん、ゼクトさんに無理なことなら、僕には絶対に無理ですよ」


「いえ、ゼクトさんには依頼できていません。彼は、明け方までずっと対応してくれていたので、今は休んでもらっています」


「あっ、そうですよね」


 あちこちに結界を張るだけじゃなくて、それを維持しなければいけない。ゼクトさんは徹夜だったはずだ。



「王宮から精霊師を呼べたら良いんですが、王都も同じ状態です。特に王宮付近がひどい。だから、ここへは派遣できないと断られました」


 国王様がいるとわかっていて断るのか。ノレア神父だろうな。


 もしかしたらノレア神父自身も、奴らのターゲットなのかもしれない。国王様だけが狙われているというのもおかしいもんな。



「影の世界の住人は、王都にまで行ったんですか。北の大陸からは距離があるのに」


「ヴァンさん、この町とそれほど離れていませんよ。昨夜は、この町の上空が真っ暗になったんです。悪霊に埋め尽くされていたようです」


 それは、想定していた。だから、ブラビィは結界を強化していたはずだ。だけど、地下水脈にまではブラビィの結界は及ばないか。


 でも結界が破られてないなら、井戸を通れる大きさの悪霊は入ってきても、巨大な影の住人の侵入は、完全に防げたということだ。


「町の結界がなければ、今頃は全員アンデッドにされていましたよ」


 職員さんは、そう言うと、ガタガタと震えている。アンデッドとは少し違うと思うけど……。


「ヴァンさん達は、無事だったでしょうけどね。なんとか、お願いできますか?」


 ボレロさんのお世辞にもならない言葉に、僕はあいまいな笑みを浮かべるしかなかった。



「とりあえず、池の様子を見てみます」


 僕が階段の方を振り返ると、国王様は軽く合図を送ってきた。フロリスちゃんは任せろってことだろう。


「助かります。扉も今、封鎖しているので、魔道具を使って出ますね」


 ボレロさんは、手に持つ魔道具を作動させると壁の一部が透明になった。僕達は、そこから外へ出た。




 魔道具を通り、僕の後ろから来るボレロさんに話しかけようと振り返って、僕は、そこで息を飲んだ。


 建物の外壁の一部が変色しているように見える。クリスティさんが張った結界に突っ込んで、そのまま動けなくなったのだろう。悪霊ではない。これは……。


「ボレロさん、このせいで扉を開けられないんですね」


「はい。結界が捕獲している状態だそうです。気持ち悪い魔物ですよね」


 ボレロさんには、魔物に見えるのか。僕から見れば、奇妙な多肉植物だ。まぁ、植物系の魔物かもしれない。


 手の届く範囲は切られているが、池から勢いよく飛び出してきたのだろう。クリスティさんの結界がなかったら、建物を突き抜けたかもしれない。


 角度からして……やはり、僕達の部屋が狙われたか。僕は全く気配すら感じず、爆睡していた。



「あぁ、ヴァンか。お手上げだよ」


 池に近寄っていくと、顔見知りの王宮の魔導士が話しかけてきた。


 彼らは池から何も出てこないようにと、水面を聖魔法のベールで覆っている。


「覗いても大丈夫ですか?」


「あぁ、今は完全に眠っている。やはり、日の光には弱いらしい」



 池の中を覗くと……池の中からも無数の目が、こっちを見ていた。思わず叫びそうになる。この目は何だ? 人というより動物っぽい。


 だが、ボレロさんの話とは違う印象を受けた。池の底でジッとしている奴らには、怯えしかない。


 この町の人を喰うために、夜が来るのを待っているようには見えないな。



「この動物っぽいのは、異界の魔物でしょうか。たくさん居ますね」


 僕がそう言うと、王宮の魔導士は首を傾げた。


「悪霊じゃないんですか? 夜になる前に浄化しないと大変なことになります。王都も、いま、地下水脈が使えない状態です」


 彼には見えてないのか。


「悪霊もいますが、動物の方が多いです。あの建物の結界に突き刺さっている多肉植物は、魔物かもしれません。だけど、池の底には……あぁ、居ますね」


 自由に動き回るから植物とは言えないか。だけどクリスティさんの結界バリアに突き刺さっているのは、植物に見える。


 影の世界の住人は排除するのではなく、共存すべきなんだ。やはり、この町から始めなければいけないか。



 だけど、どうしようか。


 僕は、ジョブボードを開いてみる。うん?




 ◇〜〜◇〜〜〈ジョブボード〉New! ◇〜〜◇


【ジョブ】


『ソムリエ』上級(Lv.7)New!


 ●ぶどうの基礎知識

 ●ワインの基礎知識

 ●料理マッチングの基礎知識

 ●テースティングの基礎能力

 ●サーブの基礎技術

 ●ぶどうの妖精

 ●ワインの精




【スキル】


『薬師』超級(Lv.6)New!


 ●薬草の知識

 ●調薬の知識

 ●薬の調合

 ●毒薬の調合

 ●薬師の目

 ●薬草のサーチ

 ●薬草の改良

 ●新薬の創造



『迷い人』上級(Lv.3)


 ●泣く

 ●道しるべ

 ●マッピング



『魔獣使い』極級(Lv.Max)


 ●友達

 ●通訳

 ●従属

 ●拡張

 ●魔獣サーチ

 ●異界サーチ

 ●族長

 ●覇王



『道化師』極級(Lv.4)New!


 ●ポーカーフェイス

 ●玉乗り

 ●着せかえ

 ●なりきりジョブ

 ●なりきり変化(質量変化、無制限)

 ●喜怒哀楽



『木工職人』中級(Lv.10)


 ●木工の初級技術

 ●小物の木工



『精霊師』超級(Lv.10)New!


 ●精霊使い

 ●六属性の加護(超)

 ●属性精霊の憑依

 ●邪霊の分解・消滅

 ●広域回復

 ●精霊ブリリアントの加護(極大)

 ●デュラハンの加護(極大)

 ●ラフレア



『釣り人』上級(Lv.10)


 ●釣りの基礎技術

 ●魚探知(中)

 ●魚群誘導



『備え人』上級(Lv.3)


 ●体力魔力交換

 ●体力タンク(1倍)

 ●魔力タンク(1倍)



『トレジャーハンター』中級(Lv.3)


 ●宝探知(中)

 ●トラップ予感



『神官』下級(Lv.7)New!


 ●祈り



『薬草ハンター』超級(Lv.1)New!


 ●薬草の知識

 ●毒薬草の知識

 ●薬草のサーチ(大)

 ●異界の薬草サーチ(中)



【注】三年間使用しない技能は削除される。その際、それに相当するレベルが下がる。


【級およびレベルについて】


 *下級→中級→上級→超級

 レベル10の次のレベルアップ時に昇級する。

 下級(Lv.10)→中級(Lv.1)


 *超級→極級

 それぞれのジョブ・スキルによって昇級条件は異なる。


 〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜





日曜日はお休み。

次回は、3月21日(月)に更新予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ