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31、ボックス山脈 〜同じ神矢を得たとき

「隠し事? えーっと……あっ、崖の下の草原に、神矢が落ちているみたいなんだ。元気になったら、一緒に探しに行かない?」


 マルクは、またポカンとしている。どうして? やっぱ、まだどこか、調子が悪いのかな?


「ヴァン、『薬師』のスキル、上級じゃなくて超級だろ」


「えっ? そっち? あー、うーん、まぁ、マルクだからいっか。そうだよ、超級だ。だけど、利用されるから話さないようにと言われてる」


「やっぱり、そうか。ぶどうのエリクサーの性能が半端ないから、そうじゃないかとは思っていたんだ。さっきの毒消し薬で確信したよ。あんなものは、上級薬師には作れない。それに、グミのようなポーションもね」


 そっか、ゼリー状のポーション、便利だと思ったんだけどな。他の人には、使えないか。


「そっか、黙っててごめん」


「いや、超級薬師なんて、会ったことがないほど貴重だから、言わない方がいいのは正論だ。それに、ヴァンの印は、増幅の印だからね。神官……特に、魔術の苦手なトロッケン家には、絶対に知られてはいけないよ」


 マルクもそう考えるんだ。やはり、アリアさんに知られないようにしたのは正解だったんだな。


 どこから伝わるかわからないから、これからも秘密にしておかなきゃ。あっ、ビードロ……。


「マズイ! いま、魔物のうちの一体が、僕の言葉を理解するんだった」


 僕が振り向くと、ヒョウのような魔物達は、僕達の様子を見ている。でも、あれ? さっきの個体はどれだっけ?



 キョロキョロしていると、彼らの声が聞こえてきた。


『おい、おまえを探しているんじゃないか?』


「そうか?」


『おまえを呼んだんじゃないのか?』


「いや、ワシにはわからない言葉で話しているぞ」


 声の聞こえ方で、さっきの個体の声は鮮明に聞こえるけど、見分けがつかないよ。



「ヴァン、魔獣使いのスキルに慣れていないんだな。操ってここまで登ってきたということは上級か?」


「魔獣使いは、崖を落ちたときに得たスキルなんだ。だけど中級だったよ。通訳と友達を発動していると思う。マルク、このスキルに詳しいの?」


「中級じゃないだろ。隠さなくてもいいぜ。魔獣使いは多いんだ。上級も超級もかなりの数がいるぜ」


「もうマルクに隠し事はしないよ? 中級だったんだけど、途中から、僕を乗せていた個体だけが話を理解するようになったんだ。でも、今は、僕の言葉はわからないみたい。技能の効果が終わったのかな」


 あれ? また、マルクはポカンとしてる。ちょっと、ポカンとしすぎじゃない?



「ヴァン、崖から落ちてから、また神矢に触れたんじゃないか? ってか、おまえも、かなりの怪我だったんだな。上着が、かなりひどいことになってる」


「あっ、そういえば青い矢……ふふっ、マルクも、ボロボロだよ。うん、僕は死にかけたかな。必死でぶどうのエリクサーを食べた。もし、瓶入りのエリクサーなら、開けられずに死んでいたかもしれない」


「だから、グミのようなポーションを創造したのか」


「マルク、その、グミって何?」


「ん? 知らないのか? お菓子だよ。固いゼリーみたいな食感で、いろいろな果物の味がある」


「へぇ、さすが貴族だね。僕、お菓子なんてほとんど食べたことがないよ」


「貴族というより、冒険者のお菓子かな。ほら、食べてみる?」


 マルクが、器を取り出し、フタを開けた。まるで宝石のように色とりどりの綺麗なゼリーだ。ひとつを指でつまんで口に放り込んだ。固いゼリーだな。でも食感が癖になりそう。


「甘くて美味しいね」


「携帯食は、味気ないからな。こういう物は、商業ギルドに売ってるんだ。ヴァンが創造したそのポーションも、商業ギルドに持ち込めば、いい値段で売れると思うぜ」


「そう? そっか、そうすれば、他の人にも使ってもらえるね」


「あぁ、だけど、他の超級薬師に知られたら、模倣品を作られてしまうかもしれないけどな」


「便利だと思うから、作れる人が作ったらいいと思うよ」


 あー、また、マルクがポカンとしてる。何度目だろう?



 その隙に、ジョブボードを確認しておこうかな。崖に引っかかっていた青い矢は、魔獣使いだったみたいだけど。




 ◇〜〜◇〜〜〈ジョブボード〉New! ◇〜〜◇


【ジョブ】


『ソムリエ』上級(Lv.1)


 ●ぶどうの基礎知識

 ●ワインの基礎知識

 ●料理マッチングの基礎知識

 ●テースティングの基礎能力

 ●サーブの基礎技術

 ●ぶどうの妖精

 ●ワインの精




【スキル】


『薬師』超級(Lv.1)


 ●薬草の知識

 ●調薬の知識

 ●薬の調合

 ●毒薬の調合

 ●薬師の目

 ●薬草のサーチ

 ●薬草の改良

 ●新薬の創造



『迷い人』中級(Lv.6)


 ●泣く

 ●道しるべ



『魔獣使い』上級(Lv.2)New!


 ●友達

 ●通訳

 ●従属

 ●拡張




【注】三年間使用しない技能は削除される。その際、それに相当するレベルが下がる。



【級およびレベルについて】


 *下級→中級→上級→超級

 レベル10の次のレベルアップ時に昇級する。

 下級(Lv.10)→中級(Lv.1)


 *超級→極級

 それぞれのジョブ・スキルによって昇級条件は異なる。


 〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜◇〜〜




 やっぱり、魔獣使いだったんだ。しかも上級! あれ? いきなりレベル2?


「マルク、魔獣使いは上級になっていたけど、なぜかレベル2になってるんだ。ねぇ、マルク! 聞いてる?」


「えっ? あ、あぁ、えっと何?」


「だからー、魔獣使いが、上級になってるんだけど、レベル2なんだよ。どうして?」


「同じスキルの矢を得たからだよ。同じ級ならレベルは5上がるし、ひとつ下の級ならレベルは1上がる」


「へぇ、そうなんだ」


 なるほど、『迷い人』レベル6になっているのは、同じ中級の神矢を得たからだな。


「ヴァンの場合は、中級を得た後に上級だから、上級レベル1に中級の分が加わって、上級レベル2なんだよ」


「そっか。同じスキルの神矢を集めれば、どんどん上がるんだね」


「いや、ほとんどの神矢は中級だから、上級までは上がるけど、そこで止まるよ。中級の神矢をいくら集めても、上級レベル10で止まるんだ。昇級はしない」


「そうなの? じゃあ、上級の神矢を得たら超級になれるんだね」


「いや、上級から超級へは、上級の神矢では上がらないんだ。でも、上級レベル10になれば、そのスキルを使い続ければ、早ければ一年で、超級に昇級できるけどね」


「ふぅん、そっか」


 神矢は、スキル上級に到達するための神からのギフトなんだね。そこから先は努力しなさいってことなんだな。


「マルク、ということは、ハンターの神矢を集めればいいんだよね。そしたら、ハンター上級から超級になれる。凄腕ハンターの域だよ」


 僕は、嬉しくなって勢いよくそう提案してみたけど、マルクは、なんだか変な顔をしている。頭をかきながら、言いにくそうに口を開いた。


「あー、まぁ、うん……。ただ、ハンターの神矢は争奪戦がすごいからな。神矢ハンターが、まず、独占してしまうから無理だよ。地道に、下級ハンターの講習を受けて、ミッションをこなしていくしかない」


「神矢ハンターって、神矢を見つけるハンターだよね?」


「そうだよ。神矢ハンターは、みんな、最上級を目指すからな。目指せるから、ってことなんだけど。神矢情報をいち早くつかみ、先回りしてしまうから、ハンターの神矢は、彼らに独占されてしまうんだ」


「えっ? でも、中級ハンターの神矢なら要らないんじゃないの?」


「神矢は、見た目では級なんてわからないだろ。金色の神矢なら、スキルか富かさえ、わからないし。神矢ハンターの技能は知られていないけど、奴らもわからないんだと思うよ」


「あっ、そっか」


「だから、青い矢が『ハンター』のときは、神矢ハンターがすべて取り尽くしてしまう。狙うなら、金色の矢しかないけど……」


「金色の神矢なんて、めったに降らないよね」


 せっかくいいアイデアだと思ったのにな。やっぱり、地道にコツコツしかないよね。




「ヴァン、そいつらの一体だけに技能を使ってるの? みんなおとなしいけど?」


「えっと、たぶん僕を乗せてくれていた個体だけかな。いつ効果が消えるかとビクビクしてだけど」


 そうだ、従属の効果が消えたら、襲い掛かってくるよね。


「はい? そういう系の技能って、期限の定めがないものは一生有効だよ? 魔導学校で習わなかった? だから、慎重に使うようにって。下手に傀儡くぐつや下僕を増やしすぎると、普通の生活ができなくなるから」


「えっ? 一生!? 知らなかった」


 ちょ、どの個体だろ? 見分けがつかないよ。



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