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102、商業の街スピカ 〜話がゴロッと変わり……

 ラスクさんは、優雅な笑みを浮かべて、ギルド前に集まっていた冒険者達の呼びかけに応えている。本当に英雄かのようだ。


 しかし、どうしてラスクさんが、神官様と一緒に? あ、そういえば、今朝、僕の件を神官様に話して来るって言ってたっけ。


「なぜルーミント様が、こんな頭のおかしな子供のことを……」


「うん? 彼が変わっているのは認めるけどね、頭は悪くないんじゃないか?」


 ラスクさん、いい人だ。


 突然、背後からバチンと頭を叩かれた。ちょ、神官様、何なんですか。


「ヴァン、あなた、何をしたの?」


「いえ、別に……」


「フランちゃん、彼は、狂人と呼ばれるアイツと話したみたいだね。今日は、アイツが下級ハンターの講習当番だったはずだ」


「狂人? あの、極級ハンターかしら。ふぅん、なるほどね」


 神官様は、なぜか納得している。


「ヴァンくん、何の話をしたんだい? 学校があったから、講習会には出ていないのだろう?」


「アドバイスをもらったんです。凄腕ハンターを目指すならって」


 僕がそう答えると、ラスクさんは怪訝な顔をした。この話をしてはいけなかったのかな。



「ルーミント様、その子は、狂人に憧れていると言っていましたよ」


「だから、奴は、あんな取引を持ちかけたんだ。一日雇うだけで金貨100枚だと、とんでもない値段をふっかけていた」


「その子は、金貨100枚を作る力があるようなことを言っていたけど」


「狂人が普通に話せるなんて知りませんでした。魔獣と化していると言われていますし」


 なんだか、収拾がつかない。みんな、ラスクさんにアピールしたくて必死だ。SSランクってすごいんだな。しかし、ゼクトさんのことを、ここまでひどく言うなんて……。


「アイツが、一日金貨100枚で、何をするという取引なんだい?」


「神矢を集めると言っていました。その子が極級ハンターになりたいと訴えていて……」


「まさか、アイツが、この子の神矢集めを手伝うと言ったのか? 丸一日? なぜ……」


 ラスクさんは信じられないという顔で、僕の方を向いた。僕も信じられない。夢みたいな話だ。


「はい、僕が雇っていいって……」


「その子供がトロッケン家を批判したのを聞いたらしいですよ。ビードロの生息地で、話したことがあるみたいです」


 僕が口を開くと、他の人達の大声で、邪魔されてしまう。冒険者って声の大きい人が多いんだな。


 しかし、こんな場所で、トロッケン家のことを話すのはマズイ……。どうやって誤魔化せば……。



 すると、ラスクさんは笑い出した。


「あはは、なるほどな。ボックス山脈で出会ったけど、見逃されたということか。まぁ、アイツの気持ちはわかる。ヴァンくんは、利用価値が高いからね。しかし、金貨100枚とは驚いたな」


 僕には相場はわからない。だけど、めちゃくちゃ高いよね。ありえない値段だとみんな口々に言っている。


 もしかしたら、騙されているのだろうか。でも、それでもいい。金貨100枚を貯めれば、僕の神矢集めに付き合ってくれるんだ。たとえ、神矢が得られなくても、ゼクトさんと共に時間を過ごすことができるなら、それだけでも金貨100枚の価値がある。


「神矢ハンターの相場は、一日当たり金貨1枚ですよ。その100倍の値段をふっかけられたのに、その少年は貯めると言っていました」


「この子は、頭がおかしいとしか考えられない。いや、そもそも金貨の価値が理解できていないのか」


 なんか、ボロカスだな。反論しないと……。


 だけど、ポーカーフェイスだけでは、見た目はどうにもならない。精霊師だとラスクさんが言っても、みんなの反応は薄い。


 精霊使いのことだと思っているのかもしれないな。僕も、その違いは、わからなかったんだから。どうしよう……。僕は、これから冒険者ランクを上げなきゃいけないのに。



 神官様の方を見ると、彼女は片眉を上げた。呆れられたのだろうか。だよね、こんな風に叩かれて反論できずにいるんだもんな……。


「ヴァン、水辺のお茶会の世話係、許可したわよ」


「えっ? あ、はい」


 考えろ! これは、きっと神官様がくれたチャンスだ。まだ、ポーカーフェイスの効果は続いている。スゥハァと深呼吸をした。


 ラスクさんの方を見ると、ニコニコしている。いま、この話をしても構わないということなのかな。僕が、この状況から抜け出すために利用することになるけど……。


 迷っている場合じゃない。神矢を集め、凄腕のハンターになるためには、手段を選んでなんていられない。


 僕は、ラスクさんの方を向いた。


「ラスクさん、例の件、お受けします」


 すると、ラスクさんはニコニコしながら口を開いた。


「どっちのことかな? そんな言い方だと、両方だと思ってしまうよ」


 えっ? 両方?


 ラスクさんは、マルクの方もチラッと見た。マルクは、上品な笑みを浮かべているけど、何も考えてない顔だ。


「そちらの坊やは、ヴァンくんの友達かな? 村で聞いた話から考えると、マルクくん?」


 マルクは、自分の名前が出て驚いている。ラスクさんとは面識はなかったのか。


「はい、マルクです、ルーミント様」


「キミも精霊師かな? 輝きの精霊が、二人に加護を与えたという噂を聞いたんだが」


 うん? 尋ねなくても、ラスクさんには見えるんじゃないのかな。あっ、その技能を隠しているのか。こんな場所で使ったとバレることは言わないよな。


「はい、そうです。俺とヴァンは、同時にスキルを得ました」


 マルクは、少し戸惑いながら、そう返答した。だよね、知られたくないはずだ。


「じゃあ、マルクくんも一緒にどうかな?」


「はい? 一緒にとは?」


 マルクが、水辺のお茶会の黒服をするのか? 貴族なのに、逆なような気がする。似合うかもしれないけど。


「俺が所属するパーティへの勧誘だ。『ブルーノレア』に加入しないかい?」


「へ?」


 マルクは、ポカン顔だ。まわりにいた冒険者達も、シーンとしている。


「ヴァンくんも勧誘したんだけどね、冒険者ランクが低いからって断られたんだ。たぶん、一人だと不安だからだと思うんだよね。マルクくんも加入すると言ってくれたら、ヴァンくんも快諾してくれると思うんだが」


「へ? ノレアの中の青!? ええ〜っ?」


 僕にはマルクの驚きがわからない。でも、珍しいレアスキル持ちばかりが加入しているって言ってたっけ。ラスクさんは、自分がリーダーだとは言っていない。彼が所属しているということは、リーダーもSSランク、パーティもSSランクってことだよね?



「ちょっと、その話は聞いてないわよ」


 神官様が、ムッとした顔をしている。そうか、商工冒すべての後見人だもんな。


「フランちゃんに言ったら、反対されるじゃないか」


「当たり前じゃない。ラスクさんのパーティなんて、私でさえ、臨時のパーティにさえ入れてくれないくせに〜」


 うん? 神官様がキャピッとしてる。


「ウチは、レアスキル持ちしか加入できない決まりなんだ。フランちゃんも、何かを得たら勧誘するよ」


「いらないわよー」


 そう言いつつ、神官様は、バチンとまた僕を殴った。ちょ、横暴に凶暴が加わってるんですけどー。


「あはは、フランちゃんを怒らせると可愛いね。マルクくん、どうかな? 加入してくれないか」


「ルーミント様、俺は家名を名乗れないザコなんですが……」


「それは、冒険者としては、逆に大歓迎だよ。それに、キミも事情を知っているなら、トロッケン家に追われているだろう? 加入してくれたら、手出しはさせない」


 マルクは、ハッとした顔で僕を見た。何か合図をされたけど全くわからない。僕が首を傾げると、マルクは苦笑いだ。でも、何かを決めたかのように、ラスクさんの方を向いた。


「俺は、まだBランクですよ?」


「最初からSSランクの人は居ないよ」


 二人は、ふふっと笑い合っているように見えた。


「ヴァン、加入するか」


「ええっ? 僕は、まだEランクだよ」


「えっ? もう二つも上がったのか」


「うーん、いや、あの、超初心者なんだけど……」


 神官様の方を見ると、また片眉が上がった。えーっと、拗ねてる? 僕には、キャピッとした顔はしないんだよね。たまには、キャピッとしてくれてもいいんだけど。


「よし! 話がまとまって良かった。サブリーダーがその辺に居たから、紹介するよ。気が変わらないうちに加入手続きをしてもらおう。フランちゃん、ヴァンくんの後見人としてなら、臨時のパーティ加入を認めるよ」


「ほんと? わぁっ、ラスクさん、ありがとう」


 何、その笑顔? 僕は、なぜかモヤッとした。



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