2020-08-28
「さ、だらだらしてないで、部活行くよー」
放課後、昨日のことで職員室に真紅の代わりに僕が呼び出されて、担任から文句を言われたことを真紅に話していると、気づかないうちに七夕が後ろに来て、怖い顔で僕を睨んでいた。
その顔に恐れをなしたのか、真紅はじゃあ、俺、帰るわと早口で言って一目散に教室から出ていった。仕方がないから、大人しく僕は七夕に連行されて、校舎3階にある文芸部の部室の中に入った。
「遅いよ、後輩たち。週に一度の活動日だというのに。まあ、別にいいんだけどね」
中には、長髪ですらりと背の高い女子生徒がソファーに座っていて、ホッチキスをこちらに向けてきた。
「すみません、天川先輩、葉のやつが来るの渋ってたのを引っ張ってくるのに時間がかかったんですよー」
「はあ、葉君も、もっとしっかりしてくれないとねー」
とりあえず、一言すみませんと謝ると、天川さんは、別にいいから、はやく仕事仕事とホッチキスを渡してきた。
それからは、しばらくは三者三様、無言でひたすらホッチキスで、以前に印刷しておいた文芸誌のページを冊子上に折ったものをひたすら止めに止めまくった。カチカチという音が頭に響いた。
「いやあ、でも今年は君たちのおかげで大分、楽だわー。昨年なんかさ、聞いてよ、私一人で、150冊全部作ったんだよ。先輩は幽霊部員だし、神代も紅葉もさー、あいつら書くだけ書いて、手伝いやしない。まあ、別にいいんだけどさー」
もう残すところあと10冊ほどだった。僕と七夕はそうなんですかと、そろって相槌を打った。
「ところで150冊も作って、売れるんですか?天川先輩」
「うんまあね、そこは友達とか先生とかに押し売るんだよ。あとは、幽霊部員の3年生の先輩にね。しかも、これ、紙も学校の備品をパクッてるし、印刷も学校の印刷機使ってるから、実質タダなんだよねえ。一冊100円で売るから、儲けは1万5千円だよ。これをみんなで山分けというわけだ」
ふふふと笑う天川さんの顔は悪人のようで、その顔に僕と七夕は声を上げて笑った。
読んでくださりありがとうございました。