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2020-08-26
「うわあああ、桜木ィー」
始業前、あと五分ほどで、担任が教室に入ってくるであろう早朝、読書をしていたところ、いつの間にかそこにいた真紅は僕の肩を思い切り揺さぶった。
「自転車がパンクした―。しかもチェーンまで外れやがった。一体どうしてくれるんだー」
朝から相当に難儀だったらしく、真紅は両手を拳にして悔しそうに僕の机に拳を打ち付けた。
「僕に言われても仕方がないし、まあ寿命だった思うしかないね」
「俺の自転車は若くして亡くなった学生とかじゃねえ」
つっこみと一緒にまたも拳を真紅は打ち付ける。ここまで、取り乱す真紅を見るのは、久しぶりで、申し訳なかったけど、見ていて少し面白かった。
「宮内君、自転車のことは後にして、とりあえず席についてください」
時計を見ると、もう八時半だった。担任の言葉に、真紅は悔しそうに僕の顔を見ながら、しぶしぶという感じで自分の席に戻っていった。
読んでくださりありがとうございました。